最初の1匹

レイジが来た

またまた約束してしまった　と、言うより

何の気なしに言った一言　「また、釣りに連れってったる！って　おっちゃんゆうたやん」

その約束の言葉を信じている少年の希望を壊す事は出来ない

嘘つきは民主党の始まり！

ちゃんと約束は守らねばならない　大人なのだから



難しいフライフィッシング　子供には無理かも知れない

でも、レイジがこの釣りの面白さや　自然と向き合う事を

解ってくれれば　私達の活動にとっても大きな前進になる




今のレイジにとって　フライフィッシングは魚を釣るだけの手段である

それで良い　魚にそしてフライフィッシングに触れる事が大切なのだ



レイジの作ったフライで釣らせたかったが　忘れてきたので仕方なく

見やすい　＃１４パラシュートつけて釣り開始



芝生の上とは違い　キャスティングもままならない

リズムが狂い　ノットの連発

ティップにフライが絡まり　ティペットごと交換



相手はカワムツ　反応はあるが　フッキングには至らない

カワムツの猛アタックに気分も高ぶる

勝手に釣らせようと助言はしないでおこうと思ってたが

もどかしさを感じているので　ラインの処理とアワセを教えた


サウスポーのレイジ　グリップを持つ左手の中指でラインを挟み弛みをとる

最初は　ラインの弛みをとる事も出来なかった

当然、魚が出ても合わせが出来ない

誰もが思い知る　懐かしい苦い思い

彼もその思いを感じていた

「何で釣れへんの？　おっちゃん釣って」

「おっちゃんが釣っても意味あらへんやろ　レイジが釣らんと！」

小さなカワムツ相手に　少しフライが大きかったようだ



あきらめかけた　その時

レイジの竿が曲がり　竿先から生命の躍動感が伝わる

以前　レイジが言っていた言葉を思い出した　「竿が曲がって　手に伝わってくる感じが好きなんや」

今、その瞬間を感じている

しかも、初めてのフライフィッシングで

「やったな！凄いやん」　

リリース方法を教えた　手を濡らし　そっとリリース

満面の笑みで見送った

カワムツ相手でもニジマス相手でも　全く関係ない

肝心なことは　フライで釣った最初の魚

恐らく彼は忘れなないだろう

思い出の1匹を