「安倍首相、麻生大臣。
あなた方は調査される側で
『再調査しない』と言える立場にありません」
自死職員の妻
相澤冬樹 | 大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者) 3/21(土) 17:24
参照:拙ブログ関連記事
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「すべて佐川局長の指示です」 森友事件で自殺した財務省職員「遺書」
安倍首相と麻生財務大臣に自死した赤木さんと妻の声は届くか?GettyImages
けさ21日、1通のメッセージが携帯に届いた。財務省近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)からだ。俊夫さんは、森友事件で公文書の改ざんを上司に強要され、心を病んで自ら命を絶った。昌子さんは18日、真相解明を求めて佐川宣寿元財務省理財局長と国を相手取り裁判を起こした。同日発売の週刊文春は俊夫さんがのこした「手記」を初めて明らかにした。“魂の叫び”と言えるその手記には、これまで知られていなかった改ざんの経緯が生々しく綴られていた。
ところが翌19日。安倍首相は国会で「検察ですでに捜査を行い、結果が出ていると考えている。麻生太郎副総理兼財務相の下、事実関係を徹底的に調査し、明らかにした」と答弁。森友事件と公文書改ざんについて再調査し真相を解明してほしいという遺族の願いを拒否した。
また麻生財務大臣も「新たな事実が判明したことはない」「(2018年公表の)財務省の報告書に尽きる」「再調査を行うという考えはない」と突き放した。
「安倍首相と麻生大臣は調査される側で、再調査しないと発言する立場にない」
遺族の思いを拒絶するこれらの発言。昌子さんはメッセージで次のように綴っていた。
「安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。
麻生大臣は墓参にきてほしいと伝えたのに国会で私の言葉をねじ曲げました。
この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場にないと思います。」
あまりにも理路整然とした見事な指摘に、私はしばしメッセージから目が離せなかった。そしてすぐに昌子さんに電話した。
「素晴らしい言葉ですね。本来ならマスコミや評論家が口にしなければいけない言葉です。この言葉を記事で紹介してもよろしいですか?」
「はい、紹介してください。私は夫の死の真相が知りたいんです。どうして夫は改ざんを迫られなければならなかったのか?改ざんの原因は森友学園への土地売却ですよね。どうしてあんなに値引きして売らなければならなかったのかも知りたいです。夫の手記は新事実だと思います。もう一度調べてほしいんです」
赤木俊夫さんの遺書。「ありがとう」の「り」が涙でにじんでいる(撮影・相澤冬樹)
新事実満載 赤木俊夫さんの「手記」
安倍首相と麻生財務大臣は「財務省が2年前に出した報告書で調査は尽きている」「自死した赤木さんの手記に新事実はない」と主張している。
だが、そうだろうか?
- すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。
赤木さんの手記には「すべて、佐川理財局長の指示です」(撮影・相澤冬樹)
- 本省理財局中村総務課長(当時)をはじめ田村国有財産審理室長などから(近畿財務局の)楠部長に直接電話があり、(改ざんに)応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長(に)報告したと承知しています。
- 美並局長が全責任を負うと言っていました。
「美並局長が全責任を負う」こんなこと財務省の報告書にはない(撮影・相澤冬樹)
- (会計)検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました。
- 平成30年2月の国会で(中略)麻生財務大臣や、太田理財局長(当時)の説明(中略)は、明らかに虚偽答弁なのです。
これらは財務省の報告書にはなく、すべて新事実だ。ほかにも、改ざんに関わった財務省と近畿財務局の人物が実名で明らかにされている。新事実が満載なのだ。明らかに新事実があるのに「新事実がない」と言うのは、それ自体が虚偽であり、赤木俊夫さんがのこした「手記」を貶める印象操作だと批判されても仕方あるまい。
しっぽ切りを恐れていた赤木俊夫さん(撮影・相澤冬樹)
安倍首相の「心が痛む」に「それなら調査を」
安倍首相は「真面目に職務に精励していた方が自ら命を絶たれたことは、痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む思いだ」とも述べた。この発言について昌子さんに尋ねた。すると…
「本当に胸が痛むんなら再調査しますよね。
再調査しないのにこんなこと言われても…何だか白々しい感じがします」
森友学園を訪れた安倍昭恵首相夫人。小学校の名誉校長に就任していた(関係者提供)
相次ぐ激励のメッセージ
首相と財務大臣が再調査を拒む一方で、報道で「手記」や提訴のことを知った大勢の方から赤木俊夫さんと昌子さんに共感と励ましのメッセージが相次いでいる。
私と毎月、ユーチューブで「メディア酔談」という配信をしている高校新聞部仲間でメディアコンサルタントの境治は、この話題をテーマにした20日の配信で「みんなで『#赤木さんを忘れない』というハッシュタグを広めよう」と呼びかけたところ、トレンド入りを果たした。
その一人、東京新聞の望月衣塑子記者は次のようにツイートしている。
またテレビ朝日「サンデーステーション」のキャスター、長野智子さんは、以下のようにツイートしている。
電通で過労自死した高橋まつりさんの母、高橋幸美さんは次のような言葉をツイートした。
久米宏さんはTBSラジオ「ラジオなんですけど」で文春の記事を読み上げてくれた。
私たちにできること
3連休が終わるあさって23日から再び国会審議が始まる。安倍首相と麻生財務大臣は何と答えるのだろう?また「新事実はない。再調査はしない」と答えるのだろうか?
安倍首相と麻生財務大臣はまた「再調査はしない」と言うのか? Getty Images
「それはおかしい」と思うなら、誰にでもできることがある。与党・自民党、公明党に意見を届けることだ。党のウェブサイトには市民のご意見を受け付けるページがある。
自民党https://www.jimin.jp/voice/
公明党https://www.komei.or.jp/etc/contact/
ここに意見を寄せるのだ。「再調査すべきだ」でも、「遺族の声に耳を傾けないのですか?」でも、「遺族が納得できるように真相を解明すべきだ」でもいい。私はこれまでの取材経験で、自民党にも公明党にも筋の通った人たちがいることを知っている。多くの市民の声が寄せられれば、そういう人たちが「これはいけない」と動きやすいようになる。
最後に、私が一度訪れたことのある大阪のバーのマスターが、はてなブログに綴った文章の末尾をご紹介する。
【私は、この日本と言う国が好きで、日本国民である事に、誇りを持っている。その気持ちが揺るがないような、国であって欲しいと、ただただ切に願う・・・】
本当にその通り。これぞ本物の愛国者だ。私も切に願う。
#赤木さんを忘れない
【執筆・相澤冬樹】
週刊文春の記事は以下のサイトで読めます。
文春オンライン:https://bunshun.jp/articles/-/36667
改ざんを強要された赤木俊夫さんの無念を晴らすために真相解明を(妻提供)
参考:「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間
NHKを辞めた私は大阪日日新聞記者として、再び森友事件の取材を始めた。
ずっと頭に残っていたのが、今年3月7日に自ら命を絶った近畿財務局の上席国有財産管理官・Bさんの存在だ。彼はなぜ、どのように改ざんに関わったのか。財務省の調査報告書や関係者への取材を通じて、見えてきた新事実がある。
前述したように、安倍首相が「私や妻が関係していれば、総理を辞める」と答弁したのは、昨年2月17日。その3日後の20日に行われたのが、財務省による「口裏合わせ」だ。
そして24日、佐川宣寿理財局長(当時)が「保管期間が一年未満なので面会記録は廃棄した」と答弁。一方で、理財局の中村総務課長に対し、残っている記録があったら廃棄するよう指示している。この中村氏が実際に改ざんの陣頭指揮を執った人物だ。夏の人事で大臣官房の筆頭参事官に就任している。
近畿財務局による文書改ざんが始まるのは2日後の26日。日曜日にもかかわらず、本省理財局が近畿財務局の担当者に出勤を求めている。首相答弁や局長答弁によほど慌てたのだろう。どの公文書のどこをどう書き換えるのか、事細かく指示が出された。実は今まで報じられていないが、この日の夕方に呼び出された一人がBさんだった。
近畿財務局には、3月7日にも「書き換え案」という形で改ざんの指示が届く。本省の中村課長らから指示を受けた財務局の管財部長が、Bさんに伝えたという流れだ。最初は小幅な書き換えだったが、翌8日にかけ、さらに追加の書き換え指示が来る。
上席というポジションは本省からの指示と現場の摺り合わせが求められる役職だ。だが、Bさんは「これはおかしい」と意見するタイプだった。一方で経験豊富で仕事ぶりには上司からも一目置かれていた。そんなBさんゆえに、改ざんという不正に手を染めることが許せなかったのだろう。
財務省の調査報告書には「配下職員」という表現でBさんたちが改ざんに抵抗した姿が記載されていた。
〈近畿財務局の統括国有財産管理官の配下職員は、そもそも改ざんを行うことへの強い抵抗感があったこともあり、本省理財局からのこの度重なる指示に強く反発し、平成29年3月8日までに管財部長に相談した〉
だが、結果は「書き換えは必要」と変わらなかった。Bさんはこれ以降、次第に体調を崩し、夏の人事での担当替えを強く希望していたがかなわず、休職に追い込まれてしまう。
そして今年3月7日、朝日新聞が改ざん疑惑を報じてから5日後、苦悩の末に自ら命を絶つことになる。
なぜ国有地は格安で売却されたのか。その謎は解明されていないし、誰も責任を取っていない。小学校を無理に認可しようとしたのは大阪府だ。国と大阪府はなぜそこまでしてこの小学校を設立させたかったのか。
森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件だ。
国の最高責任者は安倍首相、大阪府の最高責任者は松井一郎府知事。
2人は説明責任を果たしたと言えるだろうか。
2人が説明しないなら、記者が真相を取材するしかない。
私がNHKを辞めた最大の目的は、この残された謎を全て解明することだ。
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