海外にも活路を見出すD社。中国事業が高配当を続ける中、新たにベトナムで合弁事業を開始した。売上高も3年以内にグループ全体の20%に当たる100億円まで引き上げる。その原動力となり、海外事業を一手に引き受けるKEVINサイトウ副社長に話を聞いた。
●段ボールから印刷紙器・パルプモールド等幅広く事業展開しています。規模はどれぐらいですか。
全体の売上高は持分適用会社のタイを含め約65億円。当社の連結売上高が500億円なので、約10%強が海外である。遅くても3年以内にグループ全体の20%に当たる100億円、営業利益では最低でも5億円は上げたいと思う。上積みは好調な中国と、新しく立ち上げたベトナム工場をどれだけ乗せられるかだ。
●拠点はどこに。
段ボールを生産しているのがタイと中国・蘇州。マレーシアはパルプモールドが中心になっている。香港、上海は技術を持った包装専門商社を目指して開設した。
最初はマレーシアで93年。当時は相次いでユーザーが東南アジアへ進出、各国の経済成長率も高かった。96年にはタイに大型工場を新設したものの翌年のアジア通貨危機で大きな打撃を受けた。これも今では良い経験になっている。
香港は94年。中国経済が成長していくエネルギーを感じたが、今以上に法整備が完全でなく、ファブレス・設備無きメーカー(委託生産方式)でスタートした。当初から企画、提案に重点を置き、包装技術のスペシャリストと営業をペアにして送り込んだ。
委託先も広東省一帯で100社以上の段メーカーを回り、ベストな企業を探した。幸い、段ボールもパルプモールドも最適なメーカーと巡り合い、双方にとって欠くことのできないパートナーシップを築いている。段ボールや印刷紙器、パルプモールドの他にも、化成品・ブリスターパック・取扱説明書等あらゆる包装材を取り扱い、工場を新設したタイやマレーシアより、こちらのビジネスモデルの方が好調だ。上海にも同じスタイルを適用し、開設した。僅か半年で黒字転換し、創業赤字も速やかに解消し、開設後3年で配当が可能になるほど売上・利益ともどんどん伸びている。
●蘇州との連携は。
ここはDN社が97年に設立した段ボール一貫工場である。当時はまだDN社と私が社長を勤めていたNHPは別の会社で、それぞれ事業活動していた。NHP上海は、香港での成功をもとに委託生産でやっていたので、段ボールは蘇州にお願いしようと。この頃、日本国内では合併前の業務提携が進み出していたが、海外では一歩進んでもっと強く結びつこうと、NHPから蘇州へ資本参加し、この資金で工場を強化した経緯がある。
●ベトナムでの新事業、どう展開していきますか。
中国で大々的にオペレーションしている主要ユーザーが、カントリーリスクの分散もあり、ベトナムに出始めている。このユーザーから、“ベトナムにはきちんとしたパルプモールドを作れるサプライヤーがなく、ぜひ現地で供給してほしい”と話があった。
我々は元々、パルプモールドを単体のビジネスとはとらえていない。営業戦略的な切り口に使う。日本でも段ボールで新規ユーザーを開拓する時、ただ単純に段ボールだけ持ち込んでも無理でしょう。緩衝能力が高く、複雑な形状のパルプモールドを一緒に持って行けば、興味を示していただける。これで口座を開き、当社の実力を認めてもらえれば、印刷紙器、段ボールへと進めていく。パルプモールド、個装箱、そして外装箱、この三位一体セット販売が鉄則だ。
また、パルプモールドは売上げ規模が段ボールほど大きくない。これだけで投資回収するのは大変だ。段ボールも生産できる工場を新設しようと考えたが、ユーザーの工場は稼動を控え、もたもたしていれば他社から資材調達してしまう。時間との競争もあり、今回はベトナムの段ボールメーカーとの合弁事業を選択した。我々のノウハウを入れ、日系企業にマッチした品質に仕上げる。パルプモールドについても、段ボール工場の空いているスペースに設備を入れて行う。
●既存の工場をどう強化しますか。
彼らが導入したコルゲータは月産150万平米ぐらいの能力しかない。オートスプライサ、カッター、スリスコ等を順次入れ替え、250万平米は生産したい。
●KEVINさんはNHP時代から海外事業を任されています。海外の包装事情に変化はありますか。
本当に1人で何でもやった。年間200日以上、海外を飛び歩いた。工場立地から建物、設備、人の採用に資金繰り。稼動すればマネージメントと、何から何までやらせていただき、非常に勉強になった。変化といっても日系企業がユーザーであり、要求は日本と同じ。環境対応も同様に厳しくなってきた。
一般的にユーザーは、高付加価値の製品は日本、シンプルで付加価値は低いが量の出るものを海外で生産する傾向にある。海外で安い製品を作っているから品質要求が日本よりゆるやかかと言えばそんなことはない。これにつれ、現地段メーカーの印刷レベルも向上した。
●独資、委託生産、合弁事業と色々な方法をとってきましたが。
NHP時代の93年、最初にマレーシアへ出る時に1番悩んだのもそこだ。独資はフリーハンドで自由に経営でき、合弁は相手方の良い所を活用できる。
その当時から、色々な人の意見を聞き、自分でも研究したが、合弁にするかしないかは、相手がいないと事業として成り立つかどうかで判断することだ。“生産は非常に強くても、販売は代理店任せ”では独資は無理で、現地でしっかりした販売網を持つ合弁相手が必要になる。
マレーシアも香港もタイもスタート時は独資。スタート時からの合弁は今回のベトナムが最初で、“時間を買った”意味合いが強い。
●海外の段ボール企業、儲かっていますか。
業者の数はどこの国でも多く、競争は激しい。中国・広東省で見れば、激しい競争の中でも日本より利益率は高い。10%近く上げているようだ。当社の香港でも今期の配当は、資本金を超える230%を実施した。
製造原価に占める原紙代は、日本と変わらないか、むしろ高いかもしれない。しかしそこから先、労務費や設備等の減価償却費が低い。ロットは大きくスケールメリットがある。日本で作るプリンターが月間5万台だとしたら、中国、ベトナムでは50万、80万台。1回決まると売上げも大きく伸びる。我々がやらないような手作業で細かな仕事をうまくこなし、稼いでいる。
●海外企業経営者のどこに、良さを感じますか。
全般的に言えるのは、経営者が若いこと。若さの活力を感じる。オーナー企業が多く、日本の役員会のような根回しなど無い。意思決定のスピードが早く、常に前向きに進んでいけるところが良い。
●中小、ボックスメーカー、今からでも海外に出ることは可能ですか。
ニッチの分野はたくさんあり、いくらでも可能性はある。現実に我々とは違う切り口で実績を上げているボックスメーカーもある。
●段ボールから印刷紙器・パルプモールド等幅広く事業展開しています。規模はどれぐらいですか。
全体の売上高は持分適用会社のタイを含め約65億円。当社の連結売上高が500億円なので、約10%強が海外である。遅くても3年以内にグループ全体の20%に当たる100億円、営業利益では最低でも5億円は上げたいと思う。上積みは好調な中国と、新しく立ち上げたベトナム工場をどれだけ乗せられるかだ。
●拠点はどこに。
段ボールを生産しているのがタイと中国・蘇州。マレーシアはパルプモールドが中心になっている。香港、上海は技術を持った包装専門商社を目指して開設した。
最初はマレーシアで93年。当時は相次いでユーザーが東南アジアへ進出、各国の経済成長率も高かった。96年にはタイに大型工場を新設したものの翌年のアジア通貨危機で大きな打撃を受けた。これも今では良い経験になっている。
香港は94年。中国経済が成長していくエネルギーを感じたが、今以上に法整備が完全でなく、ファブレス・設備無きメーカー(委託生産方式)でスタートした。当初から企画、提案に重点を置き、包装技術のスペシャリストと営業をペアにして送り込んだ。
委託先も広東省一帯で100社以上の段メーカーを回り、ベストな企業を探した。幸い、段ボールもパルプモールドも最適なメーカーと巡り合い、双方にとって欠くことのできないパートナーシップを築いている。段ボールや印刷紙器、パルプモールドの他にも、化成品・ブリスターパック・取扱説明書等あらゆる包装材を取り扱い、工場を新設したタイやマレーシアより、こちらのビジネスモデルの方が好調だ。上海にも同じスタイルを適用し、開設した。僅か半年で黒字転換し、創業赤字も速やかに解消し、開設後3年で配当が可能になるほど売上・利益ともどんどん伸びている。
●蘇州との連携は。
ここはDN社が97年に設立した段ボール一貫工場である。当時はまだDN社と私が社長を勤めていたNHPは別の会社で、それぞれ事業活動していた。NHP上海は、香港での成功をもとに委託生産でやっていたので、段ボールは蘇州にお願いしようと。この頃、日本国内では合併前の業務提携が進み出していたが、海外では一歩進んでもっと強く結びつこうと、NHPから蘇州へ資本参加し、この資金で工場を強化した経緯がある。
●ベトナムでの新事業、どう展開していきますか。
中国で大々的にオペレーションしている主要ユーザーが、カントリーリスクの分散もあり、ベトナムに出始めている。このユーザーから、“ベトナムにはきちんとしたパルプモールドを作れるサプライヤーがなく、ぜひ現地で供給してほしい”と話があった。
我々は元々、パルプモールドを単体のビジネスとはとらえていない。営業戦略的な切り口に使う。日本でも段ボールで新規ユーザーを開拓する時、ただ単純に段ボールだけ持ち込んでも無理でしょう。緩衝能力が高く、複雑な形状のパルプモールドを一緒に持って行けば、興味を示していただける。これで口座を開き、当社の実力を認めてもらえれば、印刷紙器、段ボールへと進めていく。パルプモールド、個装箱、そして外装箱、この三位一体セット販売が鉄則だ。
また、パルプモールドは売上げ規模が段ボールほど大きくない。これだけで投資回収するのは大変だ。段ボールも生産できる工場を新設しようと考えたが、ユーザーの工場は稼動を控え、もたもたしていれば他社から資材調達してしまう。時間との競争もあり、今回はベトナムの段ボールメーカーとの合弁事業を選択した。我々のノウハウを入れ、日系企業にマッチした品質に仕上げる。パルプモールドについても、段ボール工場の空いているスペースに設備を入れて行う。
●既存の工場をどう強化しますか。
彼らが導入したコルゲータは月産150万平米ぐらいの能力しかない。オートスプライサ、カッター、スリスコ等を順次入れ替え、250万平米は生産したい。
●KEVINさんはNHP時代から海外事業を任されています。海外の包装事情に変化はありますか。
本当に1人で何でもやった。年間200日以上、海外を飛び歩いた。工場立地から建物、設備、人の採用に資金繰り。稼動すればマネージメントと、何から何までやらせていただき、非常に勉強になった。変化といっても日系企業がユーザーであり、要求は日本と同じ。環境対応も同様に厳しくなってきた。
一般的にユーザーは、高付加価値の製品は日本、シンプルで付加価値は低いが量の出るものを海外で生産する傾向にある。海外で安い製品を作っているから品質要求が日本よりゆるやかかと言えばそんなことはない。これにつれ、現地段メーカーの印刷レベルも向上した。
●独資、委託生産、合弁事業と色々な方法をとってきましたが。
NHP時代の93年、最初にマレーシアへ出る時に1番悩んだのもそこだ。独資はフリーハンドで自由に経営でき、合弁は相手方の良い所を活用できる。
その当時から、色々な人の意見を聞き、自分でも研究したが、合弁にするかしないかは、相手がいないと事業として成り立つかどうかで判断することだ。“生産は非常に強くても、販売は代理店任せ”では独資は無理で、現地でしっかりした販売網を持つ合弁相手が必要になる。
マレーシアも香港もタイもスタート時は独資。スタート時からの合弁は今回のベトナムが最初で、“時間を買った”意味合いが強い。
●海外の段ボール企業、儲かっていますか。
業者の数はどこの国でも多く、競争は激しい。中国・広東省で見れば、激しい競争の中でも日本より利益率は高い。10%近く上げているようだ。当社の香港でも今期の配当は、資本金を超える230%を実施した。
製造原価に占める原紙代は、日本と変わらないか、むしろ高いかもしれない。しかしそこから先、労務費や設備等の減価償却費が低い。ロットは大きくスケールメリットがある。日本で作るプリンターが月間5万台だとしたら、中国、ベトナムでは50万、80万台。1回決まると売上げも大きく伸びる。我々がやらないような手作業で細かな仕事をうまくこなし、稼いでいる。
●海外企業経営者のどこに、良さを感じますか。
全般的に言えるのは、経営者が若いこと。若さの活力を感じる。オーナー企業が多く、日本の役員会のような根回しなど無い。意思決定のスピードが早く、常に前向きに進んでいけるところが良い。
●中小、ボックスメーカー、今からでも海外に出ることは可能ですか。
ニッチの分野はたくさんあり、いくらでも可能性はある。現実に我々とは違う切り口で実績を上げているボックスメーカーもある。
疲れましたがそれなりに充実した出張であったと思っております(現地で予期せぬハプニングもありましたけど…)
KEVINさんの記事の事は現地駐在と飲んだ際にも話題になり、内容そして「お写真」について盛り上がりましたです。
写真については「格好良くてAND…」というワタクシと同じ感想をチャイナ駐在諸君も言っておりましたぁ~(笑)。
出張ご苦労様でした。忙中閑あり。常平のローストチキン堪能でき何よりです。
新聞の写真については、逆光で最悪の写り。まるでヤクザですね。
私も来月から中国・香港にのり込み始める予定です。
また機会があったら、いろいろ教えて下さい!
今も、僕は香港、中国ですよ。
面白いところ紹介しましよう。