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(4)スキー天国
その日ばかりは、寝不足も気にならない。2月の真夜中。凍てつくような寒さの中で、ダウンジャケットを着た24歳の青年は行動を始める。車にエンジンをかけ、暖気運転を行う。そしてスキーを車のキャリアに括り付ける。吐く息が白い。そうこうするうちに仲間が集まってくる。雪山に出発だ。その前に、一軒、寄る所がある。青年の彼女の家だ。彼女は青年よりも1歳年上だ。歳を聞くまでは、まさか年上とは思っていなかった。自分より二~三歳は年下に見えた。背が小さくて、可愛く、付き合い始めても年上と感じたことは無い。彼女を拾って雪山まで走る。目的地が近づくにつれてアドレナリンが身体を横溢する。何とも言えないワクワクした気持ち。日の出とともに滑り始める。朝のゲレンデの凍てついた雪を削りながら滑っていく。実を言うと年上の彼女は青年よりもスキーが上手い。小学校に上がる前からスキーをやっているので、負けてしまう。普段、年よりも幼く見える彼女がゲレンデに出ると背筋がシャンと伸びて颯爽となるのが好きだった。ガンガン滑ると雪山でも汗がでる。ロッジのベランダで休憩を取り、ビールを飲むのが最高だった。この年上の彼女とは、スキーやテニスを通じて、日に日に距離が縮まっていった。そんな或る日、彼女から突然、電話があった。青年の家の近くまで来ているという。びっくりして青年は家を飛び出し、彼女を迎えた。「どうしたの?」彼女は半分ベソをかいている。「今、親に無理強いされたお見合いの帰り。私、知らない人と結婚なんかしたくない。」「じゃあ、僕と結婚しようよ。」その数ヵ月後に二人は婚約した。
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(5)Good Luck & Good bye
或る日、25歳の青年は目的も無く百貨店の上りのエスカレーターに乗っていた。待ち合わせのための時間潰しだ。反対側には下りのエスカレーターがある。そこで、あまりに親しみのある顔とすれ違った。20歳から3年半殆ど毎日一緒に同じ時間を過ごした彼女だ。二人は、悲劇的な事件のために別れることになった。青年が本当に心から血を流したのは、その時が初めてだった。すれ違った彼女も青年に気が付いた。二人はエレベータを駆け下りて再会した。でも、直ぐに言葉が出ない。最初に口火を切ったのは彼女のほうだった。「A君に聞いたよ。結婚したんだって。私と別れてから随分、早かったわね。」「うん・・・」「あなたが結婚したと聞いて、私もふんぎりがついた。お見合いで半年前に結婚したんだよ。」「そうか・・・」幸せかい?と青年は聞こうとしたが、あんまりな質問だと思い、止めた。「もう、お腹に赤ちゃんがいるのよ。」と彼女は言った。青年は驚いたが、顔には出さず「身体、大事にしろよ」と言って微笑んで、その場を去った。彼女に背を見せながら、青年は一人ごちた。「Good Luck & Good Bye」
その日ばかりは、寝不足も気にならない。2月の真夜中。凍てつくような寒さの中で、ダウンジャケットを着た24歳の青年は行動を始める。車にエンジンをかけ、暖気運転を行う。そしてスキーを車のキャリアに括り付ける。吐く息が白い。そうこうするうちに仲間が集まってくる。雪山に出発だ。その前に、一軒、寄る所がある。青年の彼女の家だ。彼女は青年よりも1歳年上だ。歳を聞くまでは、まさか年上とは思っていなかった。自分より二~三歳は年下に見えた。背が小さくて、可愛く、付き合い始めても年上と感じたことは無い。彼女を拾って雪山まで走る。目的地が近づくにつれてアドレナリンが身体を横溢する。何とも言えないワクワクした気持ち。日の出とともに滑り始める。朝のゲレンデの凍てついた雪を削りながら滑っていく。実を言うと年上の彼女は青年よりもスキーが上手い。小学校に上がる前からスキーをやっているので、負けてしまう。普段、年よりも幼く見える彼女がゲレンデに出ると背筋がシャンと伸びて颯爽となるのが好きだった。ガンガン滑ると雪山でも汗がでる。ロッジのベランダで休憩を取り、ビールを飲むのが最高だった。この年上の彼女とは、スキーやテニスを通じて、日に日に距離が縮まっていった。そんな或る日、彼女から突然、電話があった。青年の家の近くまで来ているという。びっくりして青年は家を飛び出し、彼女を迎えた。「どうしたの?」彼女は半分ベソをかいている。「今、親に無理強いされたお見合いの帰り。私、知らない人と結婚なんかしたくない。」「じゃあ、僕と結婚しようよ。」その数ヵ月後に二人は婚約した。
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(5)Good Luck & Good bye
或る日、25歳の青年は目的も無く百貨店の上りのエスカレーターに乗っていた。待ち合わせのための時間潰しだ。反対側には下りのエスカレーターがある。そこで、あまりに親しみのある顔とすれ違った。20歳から3年半殆ど毎日一緒に同じ時間を過ごした彼女だ。二人は、悲劇的な事件のために別れることになった。青年が本当に心から血を流したのは、その時が初めてだった。すれ違った彼女も青年に気が付いた。二人はエレベータを駆け下りて再会した。でも、直ぐに言葉が出ない。最初に口火を切ったのは彼女のほうだった。「A君に聞いたよ。結婚したんだって。私と別れてから随分、早かったわね。」「うん・・・」「あなたが結婚したと聞いて、私もふんぎりがついた。お見合いで半年前に結婚したんだよ。」「そうか・・・」幸せかい?と青年は聞こうとしたが、あんまりな質問だと思い、止めた。「もう、お腹に赤ちゃんがいるのよ。」と彼女は言った。青年は驚いたが、顔には出さず「身体、大事にしろよ」と言って微笑んで、その場を去った。彼女に背を見せながら、青年は一人ごちた。「Good Luck & Good Bye」
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