10回の連作を終えて、どのような形で日常のBlogに戻っていいのか自分自身で迷っている。
このBLOGを開設したとき、僕のコンセプトにあったのは、日常の日記のようなものではなく、KEVINサイトウという実在とも、架空ともつかない人物の毎日のモノローグを通して、いつしか大きなストーリーが描かれていくというものであった。
しかし、BLOG初心者の自分には、構想力、文章力等の能力不足に加え、時 . . . 本文を読む
石像と化したボブは、生まれ故郷であるグアムへと運ばれた。
この巨大な石像を運ぶのは、容易なことではないが、ボブに救われた島の人々が貧しい中からもお金を募って運搬費を捻出した。
島の人達のボブに対する敬愛の念は、海よりも深い。
小型の運搬船でグアムに運ばれたボブの石像は、昔、日本兵が防空壕を作って隠れていた場所の近くにひっそりと建てられた。
僕は、ボブに会いにいった。
石の塊とな . . . 本文を読む
2004年12月26日、クリスマスの翌日。スマトラ沖を震源地とする地震が、大津波を起こし、各地に酷い被害をもたらした。
その日、ボブはインドネシアのある小さな島に居た。
その島にとっては、有史以来のと言ってもよい巨大なる海柱が島の至る所を蹂躙し、島は壊滅的な打撃を被った。
ボブは、被害に傷ついた人たちを救済するため、神の如き活躍を見せた。
海中に沈む人を海の底から引き上げ、息を蘇 . . . 本文を読む
バーベキューを食べ終えて、満腹になった僕は、レストランのベランダに座り海を眺めていた。
巨大なオレンジの夕陽が、間もなく漆黒の海に消えようとしている。
気付いたらボブのママが、枯れ木のような身体を僕の隣に置いていた。
その動きがあまりに静かなせいか、或いは僕が沈み行く夕陽を見ながら思いに耽っていた故か、ママの存在に気がつかなかった。
ママにバーベキューのお礼を言った。本当に美味しか . . . 本文を読む
ボブのママに会った。
巨人であるボブの体躯から、Big Fat Mamaを想像していたが、ボブのママは枯れ枝のように痩せて、黒褐色の皮膚に細かい皺がびっしりと刻まれた老人だった。
ママは、僕を歓迎するために椰子のジュースを出してくれた。
何度も椰子のジュースは飲んだことがあるが、あまり旨いものではない。
ママは鉈のような厚い刃物で器用に椰子の実を刻んで、ストローをさして、僕に差 . . . 本文を読む
僕に届いたハガキは、グアム発ボブのママからだった。
僕も、このone decade中に、何度も住む国を変えたのに、よくぞ届いたものだ。
かなりの転送を経て、僕の手元に来たハガキは、汚れてボロボロになっているものの、僕は世界の郵便システムを見直した。
ボブのママはいつか機会があれば、僕に会いたいとハガキの中で書いていた。
まとまった休みの取れた2006年の春、僕はグアムに飛ぶこととし . . . 本文を読む
ボブを助ける?さて、どうしたことか?
ボブは、何かをして欲しいと直接要望したわけでもない。
ただ、莫大な価値があるであろう財宝の入った袋を、初対面である僕に預けたまま、立ち去っただけだ。
僕はビジネスマンだ。
僕がボブを助けるために選ばれたのが本当なら、ビジネスの知識を駆使することを求められたが故だろう、と勝手に解釈することにした。
或る筋を使い、この財宝をスイスの地下銀行 . . . 本文を読む
僕はボブに尋ねた。「何故、初対面の僕にこんな大切なものを見せるんだい?」
ボブは、当然のように答えた。
「だから、言ったろ。俺には、海のことが全て分かるんだ。岩陰に隠れて俺を引き裂こうと舌舐めずりしている邪悪な奴らの存在も、俺になついて餌を欲しがっている可愛い魚たちのことも、獰猛に見えても実はひどく臆病な連中のことも、静かな存在なのに手を出せば指など簡単に引きちぎってしまう恐ろしい奴らの . . . 本文を読む
バーベキューを残らず平らげた僕は、砂浜に横になった。
寝転んで見る青空は、どこまでも澄んで、高い。そして、海を渡る風が心地良く頬を愛撫する。
ボブも僕の隣で寝転んで、同じように真っ青な空を眺めていた。
暫く、静かな時間が過ぎたが、やにわに立ち上がったボブは100mほど離れた所にうち上げられたオンボロ船の方へ歩いていった。
この動くかどうか分からない廃船のような船が、ボブの住居を . . . 本文を読む
海から上がった僕は、エアーボンベとスーツを脱ぎ捨て、へたり込むように砂浜に腰をおろした。
二体の白骨を見た驚きと興奮から、早鐘のように打つ心臓の鼓動は治まることがなかった。
そんな僕の傍らで、ボブは大きな身体にはに似合わない器用さで、焚き木に火を熾し、潜水中に自ら捕らえた魚に加え、どこから調達したのか段ボール箱一杯のパプリカ、タロ芋、トウモロコシ等の野菜と牛肉を持ってきて、それらを串に . . . 本文を読む