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旅日記

望洋−103(プレスコード、ラジオコード)

59.GHQの言論統制(続き−2)

59.5.プレスコード

昭和20年9月10日の「新聞報道取締方針」「言論及び新聞の自由に関する覚書」(SCAPIN-16)が発令された。
しかし、この覚書は、検閲の規準としてはあいまいで、解釈がむずかしく、違反も多かった。

そこで、この覚書の具体的規律として、9月19日、「日本に与うる新聞遵則」(プレス・コード)(SCAPIN-33)が発表された。

その前書きには、次のように書かれていた。

<前書>

連合軍最高司令官は日本に言論の自由を確立せんが為茲に日本出版法を発布す。

本出版法は言論を拘束するものに非ず寧ろ日本の諸刊行物に対し言論の自由に関し其の責任と意義とを育成せんとするを目的とす。

特に報道の真実と宣伝の除去とを以て其の趣旨とす。

本出版法は啻(ただ)に日本に於ける凡ゆる新聞の報道論説及び広告のみならず、その他諸般の刊行物にも亦之を適用す。

<SCAPIN-33>

OFFICE OF THE SUPREME COMMANDER FOR THE ALLIED POWERS
19 September 1945
AG 000.73 (18 Sep 45) CI
(SCAPIN-33)
MEMORANDUM FOR IMPERIAL JAPANESE GOVERNMENT.
THROUGH Central Liaison Office, Tokyo.
SUBJECT  Press Code For Japan.

1. News must adhere strictly to the truth.
2. Nothing shall be printed which might, directly or by inference, disturb the public tranquility.
3. There shall be no false or destructive criticism of the Allied Powers.
4. There shall be no destructive criticism of the Allied Forces of Occupation and nothing which might invite mistrust or resentment of those troops.
5. There shall be no mention or discussion of Allied troops movements unless such movements have been officially released.
6. News stories must be factually written and completely devoid of editorial opinion.
7. News stories shall not be colored to conform with any propaganda line.
8. Minor details of a news story must not be overemphasized to stress or develop any propaganda line.
9. No news story shall be distorted by the omission of pertinent facts or details.
10. In the make-up of the newspaper no news story shall be given undue prominence for the purpose of establishing or developing any propaganda line.
For the SUPREME COMMANDER:

(和文)

1、報道は真実に忠実でなければならない
2、直接又は間接に公安を害するようなものを掲載してはならない
3、連合国に関し虚偽的又は破壊的批評を加えてはならない
4、連合国進駐軍に関し破壊的に批評したり、又は軍に対し不信又は憤激を招くような記事は一切掲載してはならない
5、連合軍軍隊の動向に関しては、公式に発表解禁となるまでその事項を掲載し又は論議してはならない
6、報道記事は事実に即し、編集者の意見は一切加えてはならない
7、報道記事は宣伝目的の色を着けてはならない
8、宣伝の強化拡大のために報道記事中の些細な事項を強調してはならない
9、報道記事は関係事項や細目を省略する事で内容を歪曲してはならない
10、新聞の構成において、いかなるニュース記事も、宣伝路線を確立または発展させる目的で不当に目立つようにしてはならない。


右崎正博はプレスコードについて次の様に述べている。

プレス・コードにもとづく検閲は、民事検閲局(CCD)の手によって実行されたが、その検閲はきわめて巧妙で、「検閲の際、削除を命ぜられた部分は必ず削り、その他の部分を加筆訂正してはならず、しかも削除の痕跡をとどめてはならない」とされるほど徹底したものであった。

検閲がきわめて寛大で、自由な印象を与えるよう配慮されていたのである。

しかし、このような検閲は、占領軍およびその政策、ひいては占領軍の諸指令を実施に移した日本政府に対する批判的報道をもいちじるしく困難にしたのである。

しかも、プレス・コードの規範性はきわめて重く、その違反に対しては発行禁止、業務停止はもちろん、軍事裁判(軍法会議)により重労働が課せられた事実も伝えられている。

こうした検閲の運用は、当時のマス・コミ関係者を戦慄させるのに十分であった。

そのため、新聞各社は、「検閲週報」を自社内に流して検閲にかからぬ用心をしたことが伝えられている。

しかも、そうした措置は、発行禁止や業務停止、あるいは発行直前での記事の差し止めによる経済的打撃を回避するという経営上の配慮によって、多くなされたのであるが、それは、経営上の配慮を通して、占領軍当局の意図を貫徹させるものにほかならなかった。

今日の「自主規制」は、こうして、プレス・コードのもとでつちかわれたのである。

 

59.6.ラジオコード

プレスコードに続いて、9月22日「日本に与うる放送遵則(ラジオコード)」(scapin43)が発令された。

これはラジオ放送についての行動基準より具体的に示したもので、放送は絶対に真実に即すること、直接又は間接に公安を害するようなものを掲載してはならないこと、連合国に関し虚偽的又は破壊的批評を加えてはならないこと、放送内容は宣伝目的の色を着けてはならないことなどを規定した。

<SCAPIN-43 一部>

 

OFFICE OF THE SUPREME COMMANDER FOR THE ALLIED POWERS
 (SCAPIN-43)
22 September 1945
MEMORANDUM FOR : THE IMPERIAL JAPANESE GOVERNMENT THROUGH : Central Liaison Office, Tokyo
SUBJECT.                    : Radio Code for Japan

1. News Broadcasts
a. Newscasts must adhere strictly to the truth.
b. Nothing shall be broadcast which might, directly or indirectly, disturb public tranquility. c There shall be no false or destructive criticism of the Allied Powers.
d. There shall be no destructive criticism of the Allied Forces of Occupation and nothing which might invite mistrust or resentment of those troops.
e. No announcement shall be made concerning movement of Allied troops unless such movements have been officially released.
f. Newscasts must be factual and completely devoid of editorial opinion.
g. Newscasts shall not be colored to conform to any propaganda line.
h. Minor details of a newscast must not be over emphasized to stress or develop any propaganda line.
i. No newscast shall be distorted by the omission of pertinent facts or details.
j. Presentation of news items in newscasts shall not be so arranged as to give undue prominence to an item for the purpose of establishing or developing any propaganda line.
k. News commentary, analysis and interpreting of the news shall strictly conform to the above requirements.
(以下 略)

 

(和文)

1.ニュース放送
a.ニュース放送は真実を厳守しなければならない。
b.直接的または間接的に、公安を妨げる可能性のあるものは放送されないものとする。
c.連合国に対する虚のまたは破壊的な批判があってはならない。
d. 連合国の占領軍に対する破壊的な批判があってはならず、それらの軍隊に対し不恨みを招くようなものはあってはならない。
e. 連合国軍隊の動向に関し、正式に発表されない限り、報道を行わないものとする。
f.ニュース放送は事実に基づいて行われ、編集者の意見を加えてはならない。
g.ニュース放送は、宣伝の目的を以て、色付けしてはならない。
h.ニュース放送の細部の強調によって、報道内容を強調し過ぎたり、発展させたりしてはならない。
i. 関連する事実や詳細の省略によって、ニュース放送が歪められることがあってはならない。
j.ニュース放送でのニュース項目の提示は、宣伝方針を確立または発展させるる目的で項目を過度に目立たせるように配置されてはならない。
k.ニュースの解説、分析、およびニュースの解釈は、上記の要件に厳密に準拠するものとする。

2.娯楽プログラム
演劇、(風刺的またはこっけいな)寸劇、ドラマ、詩、バラエティ番組、コメディーなどを含む娯楽番組は、ニュース放送の1-aの節に記載されている要件に準拠し、特に以下に重点を置くものとする。
a. 政治的意図のもとに主義や思想を強調する宣伝を助長すると解釈される可能性のあるテーマは使用してはならない。
b.直接的または間接的に、軍隊または連合国の人々を軽蔑するテーマは使用されないものとする。また、直接的または間接的に、それらの連合軍および人々を嘲笑する傾向があるテーマは許可されない。

3.情報と教育のプログラム
農業、林業、鉱業、銀行などの主題に関する講義と講演を含む情報教育プログラム。歴史や地理などのテーマに関する講義や講演。政府機関からの有益な性質の発表。およびその他の関連する種類のプログラムは、以下に準拠するものとする。
a. 資料は厳密に事実に基づくものとし、すべての通訳および編集は事実に基づいて行われるものとする。
b.材料はいかなる宣伝もしてはならない。
c. 公安を乱す傾向のある意見や声明は禁止される。
d. 連合国間の関係に有害であると解釈される可能性のある、または連合国のいずれかを不評にするような資料は使用してはならない。

4.商業プログラム
商業会社が広告目的でラジオを使用する場合、これらの会社によって作成された台本は、上記の方針に厳密に準拠するものとする。

 

59.7.GHQの放送番組の指導

GHQは日本の非軍事化と民主主義を根付かせることであった。

その占領政策目的達成のための一つの方法として、マスメディアを利用した。

放送分野に於いても放送検閲や番組指導などの介入を行った。

9月22日にGHQに民間情報教育局 (Civil Information and Education Section:略CIE)が設立されここが、放送指導の中心的な役割を担った。

CIEのスタッフは戦時中、宣伝・心理作戦を担当してきた部隊などから集められている。

CIEは東京・内幸町の放送会館の一部を接収して事務室とした。

59.7.1.日本のラジオ放送の開始

日本のラジオ放送は大正14年(1925年)3月22日に、社団法人東京放送局(JOAK:現在のNHK東京ラジオ第1放送。略称:AK)が放送したことから始まる。

戦前、戦中を通じてラジオ局はNHKしかなく、民放局ができたのは昭和26年9月1日から中部日本放送が、初の民間放送を開始した。

<終戦直後のラジオ>

59.7.2.ラジオ番組「真相はかうだ」

戦後日本の非軍事化と民主化を推進するために、CIE(民間情報教育局)が企画したキャンペーン番組戦で、昭和20年12月9日より10回にわたり、社団法人日本放送協会(現・NHK)のラジオ第1放送・第2放送で同時放送された。

戦時中の日本軍の実態を暴露し、責任を追及した構成・脚本・演出をすべてCIEラジオ課が担当し、「南京大虐殺」や「バターン半島死の行進」など、日本軍の残虐行為をドラマ仕立てで再現した。

日本人にとっては抵抗感のある内容が聴取者の反感を買い、わずか10回で終了し、昭和21年2月から『真相箱』に刷新した。

(以下Wikipediaより抜粋)

番組の内容を巡って、これらはGHQ作成であることが隠蔽されたために、日本放送協会へ手紙や電話などが殺到した。

その中には「あの放送は面白い、軍部の罪悪をもっと徹底的にたたいてくれ」と好意的に捉える意見もあったが、それらが抗議や非難などの批判的な内容が大半であることを知ったGHQは、その成果を取り入れてより巧妙にそれに続く番組を作成、1946年(昭和21年)2月以降「眞相箱」、「質問箱」などへ形を変えながら、1948年(昭和23年)1月まで放送を続けた。

 

<続く>

<前の話>

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