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「抱擁、あるいはライスには塩を」 江國香織

2011年01月25日 | 読書
変わったタイトルの江國香織さんの小説。

「抱擁、あるいはライスには塩を」
(江國香織 集英社)

三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とは―。
東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。
ロシア人である祖母の存在、子供を学校にやらない教育方針、
叔父や叔母まで同居する環境、さらには四人の子供たちのうち
二人が父か母の違う子供という事情が、
彼らを周囲から浮いた存在にしていた。

江國香織さんの小説って、
好きな人はものすごく好きだし、
嫌いな人は手に取ろうともしないタイプだと思う。

私はというと、かなり好き・・・だった。
「きらきらひかる」が衝撃的に好きで
出る作品全て読んでいたくらいだけど、
最近はなんだか、ついていけなくなった、というか
あまりにも理解できない世界になりつつあったので。

だいたいが、エキセントリックな主人公で
自分の価値観で周りなど省みずに生きているふう。
やたらとオシャレで生活臭のしない生活。
日本じゃないみたいな。

でも、私は江國さんの描く、空気の匂いがするような
文章がとても好き。
ちくっと心に刺さるような言葉や
ひそやかな宝物にそっと触れるような感覚が。

この「抱擁、あるいはライスには塩を」も
そんなまったくリアリティのない設定
(こんな人たち絶対に私の知るところにはいない)なのに、
とてもリアル(登場人物たちが、ほんとうに
東京のひっそりしたお屋敷で生きている人たちの
ように思える)な世界だった。

章ごとにに時の流れが行き来し、
語り手も代わる。
ありがちな手法なのに、そう感じさせない。
物語をますます奥行き深く魅力的にしていく。

なんて緻密に組み立てられた物語なんだろう。

久しぶりに「読み終えたくない本」だった。
まるで私も柳島家の家政婦になって
(決して家族の一員にはなりえない!)
流れゆく年月をそばで見てきたような気がした。

古い洋館の匂いや、薄暗い部屋の意匠、
彼らが身に付ける洋服の生地の手触り、
食卓に並ぶ料理の匂いを感じた気がした。

決して、登場人物に共感はできないし
周りにいたら理解できるとも思えないけれど。

読み終えて、私のそばにいる小さな息子がとても愛しく思えた。 ​

・・・今回、私の文体もちょっとこの小説を引きずっているかも(笑)
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