その訃報に接したとき、僕は愕然とした。
KSさんと僕は、歳も離れているし、
とくに親しいわけでもなく、
ビジネス上のおつき合いがあるわけでもなく、
むろん身内でもない。
そんな僕でさえ、しばし茫然とした。
ご家族(とくにご内儀)のお嘆きは、察するにあまりある。
KSさんは先年、自身の対談集(非売品)を出版された。
その巻末に出会った人の名が全員列記してあるのだが、
不肖この僕の名前もあった。
そのご縁で、その対談集をKSさんから頂戴した。
その本の中で、KSさんは、
福沢諭吉は「一身にして二生」と言いましたが、
私の場合すでに「一身にして三生」と述べて、
自分の人生をことさらに面白がっておられる。
KSさんは、慶応義塾大学を卒業後、JALに就職した。
その後、中津出身でもないのに、中津にやってきて建材会社の社長を務めた。
さらに紆余曲折があり、中津市教育長の重職に乞われて就いた。
このとき社長職を辞しただけじゃなく、会社から一切身を引いたのは、
いかにもKSさんらしかった。
その後、体調を崩し、教育長を辞任された。
「サラリーマン」「経営者」「教育長」
つまり、この3つの仕事のことを、「三生」とおっしゃっているのである。
KSさんは、渾身クレバーで、
ウィットに富んだユーモアを持ちあわせ、
度外れた人情味がありながらもクールに思考し、
決断したことには必要以上の責任をもつという、
僕からみれば、スーパーマンだった。
KSさんが大病を克服し退院されたとき、
僕もその快気祝いの末席に加わらせていただいた。
すっかり完治したと安心していたのだけど、
病根は絶えてなかったのだろうか?
今夜、KSさんのお通夜がおこなわれる。
KSさんの長眠は、単に敬愛する人が亡くなったというだけじゃなく、
この地域にとっても大きな損失だと思う。
今は、静かにご冥福をお祈りするばかりだ。
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