SIDEWALK TALK

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春日龍神

2016-10-27 09:22:23 | アート・文化
Letter生来の出不精だから気乗りしなかったんだけど、
嫁さんに急かされて、九州国立博物館の特別展
「京都 高山寺と明恵上人 - 特別公開 鳥獣戯画 -」に出かけた。
案の定というか、想定以上に混み合っていた。
来訪者の多くが、鳥獣戯画を目的に2時間以上の行列に並んでいた。


ようやく九博に入場し、展示室に入ると、
いきなりその鳥獣戯画が展示されていた。
コンベアで運ばれる回転寿司のように、
僕らは係員に促されて牛歩で鳥獣戯画を通り過ぎた。


鳥獣戯画を過ぎると、みんなは他の展示物にはさほど興味ないのか、
イッキにゆっくり鑑賞できる環境になった。
実は僕の目的は鳥獣戯画じゃなくて明恵上人に関する展示だったから、
気乗りしないといいながら、けっこう楽しめた。


酔狂なことに、若いころ、能を嗜んだことがあって、
明恵上人が登場する「春日龍神」という仕舞を舞ったことがある。
それにここ数ヶ月、トイレで、
密教と華厳宗、そして空海に関する本を読んでいたから、
高山寺の歴史にも興味があった。


そういう(トイレの)ことがあって、
不空三蔵や恵果の肖像画には何となく親しみを覚えたし、
その師である金剛智三蔵に関する展示も興味深かった。


学生時代「春日龍神」を舞ったときは、無知だった。
演目の内容も知らず、お師匠さんの言うがままに手足をバタつかせていた。
ただでさえヘタクソだったのに、これじゃいい仕舞ができるはずがない。


博物館鑑賞なんてガラじゃない。
けれど、古代インドや唐帝国、密教や華厳宗、空海や明恵上人、
さらには僕の青春時代も仄かに感じさせてくれた。
たまには出不精の殻を破ってみるのもいいと感じた休日だった。

迷宮迷走

2015-09-08 13:15:43 | アート・文化
Letter五輪エンブレムが白紙撤回になった。
ネットメディアを中心に佐野氏への攻撃がかまびすしかったけど、
ここにきて擁護する検証記事もチラホラみかけるようになった。
要するに「ヨ」と「E」、「丼」と「#」はパクリか?
フィロソフィーがちがえば、似て非なるものだという論理。


デザインにとどまらず、学問にしろ、芸術にしろ、
まったくの無からオリジナルを創作できる天才は、
数千年に1人ぐらいしかいないんじゃないか?


たとえば、絵画。
牛の絵を描こうとしたとき、凡人はほとんどの場合、
牛そのものよりも、誰かの描いた牛の絵を想像して、
もっと言えば誰かの画法を模倣して描く。


天才画家といわれる人びと、ピカソやジョルジュ・ブラックでさえ、
セザンヌのキュビスム理論の影響なしに語ることはできない。
その存命中、オリジナリティが際立ちすぎてて、
画壇からも社会からも孤立していたゴッホでさえ、
日本の浮世絵に傾倒しその影響を受けた。


芸術は、先人へのオマージュや過去の秀逸作からの影響を重ねに重ね、
迷走しながらも(迷走こそ芸術だけど)前進していくものだと思う。
だからといって、僕は佐野氏を擁護する気にはなれないのである。


五輪エンブレムに関しては、百歩譲って、
なるほど専門家であるデザイナーの検証が当てはまるかもしれない。
けれど、佐野氏のキャリアが限りなく黒にちかいグレーだということを、
もしくは真っ黒だということを、僕らは知ってしまった。
どうしても釈然としないのである。


今回の一連の問題で、実は僕が憤慨しているのは佐野氏よりも組織委員会。
真実もない、ユーモアもない、謝罪もない、反省さえない、
あの上から会見には嘔気さえ覚えた。
このままの体制で運営を続けていけば、
第2、第3のエンブレム問題、競技場問題が起こりはしないだろうか?


五輪は誰の為に?そして何の為に?
(彼らが言うところの)僕ら一般国民やマスメディアはもちろんだけど、
あの組織委員会の人たちにこそ、もう一度この原点を見つめ直してほしい。

一汁三菜

2013-12-07 12:58:59 | アート・文化
Washokuユネスコ無形文化遺産に
「和食(日本人の伝統的な食文化)」が登録された。
むろん日本人として誇らしく喜ばしいし、
登録に向けた活動に取り組んできた人びとの労をねぎらいたい。
TPP で何かと農産品の間税問題が喧しい昨今、
日本食材の輸出増加という有形の実利もあるかもしれない。


しかし、現代の日本人で(とりわけ自分自身がそうなのだけど)
一汁三菜のスタイルで食事している人などほんの一部にちがいない。
子ども達のみならず、いまや大人でも
ファストフード、ハンバーグ、カレー、パスタを好物にあげる人が多い。


報道によると、ユネスコへの提案書では、
和食を「自然を尊重する日本人の精神を体現した食に関する社会的慣習」と位置づけた上、
(1)正月や田植えなど年中行事との密接な関わり
(2)四季や地理的多様性による新鮮な山海の幸
(3)自然をあらわした美しい盛り付け
などを特色に挙げていた。
いや、これ崩壊してるよね。


そもそも「和食」の定義とは何だろう?
広義に解釈すれば、ラーメンもカレーライスもナポリタンも餃子も和食といえる。
けど、日本側の申請者もユネスコも、これを了としないだろう。


一汁三菜どころか、お膳に料理をのせて食べることさえ稀。
そもそも一般家庭には、そのお膳すらないのでないだろうか?
さらに言えば、お箸をきちんと使える日本人も減っているにちがいない。


クドクドととりとめなく書き連ねてきたけど、
この世界遺産登録は、日本人が和食を見つめ直す契機になれば
さらに意義深いものになると思う。
かく言う僕自身が深く反省すべきだし、
自戒の意味を込めてこのエントリーを綴ってみた。

速攻ランチ

2013-11-11 12:55:35 | アート・文化
Toastランチをサクッと済ませることを、
日米のビジネスマンの共通点のひとつとして挙げていいと思う。
日本では、立ち食いそばや店屋物、定食屋さん、牛丼等の丼もの。
アメリカだと、路上でのホットドッグがその代表格だろうか?
最近はアメリカ発のファストフード店が多数、そこかしこに存在してるから、
なおさら共通点が増えている。


僕自身、ランチはサクッと済ませる方だ。
通常はトーストとミルクだけで、ランチに5分もかからない。
これは、ひとつには昼間っから満腹になると、
午後からの労働意欲が低下することを防ぐため。


もう一つの理由は、「晩ご飯が趣味」を標榜している僕としては、
できるだけ空腹でその時を迎えたいからだ。
「 Hunger is the best sauce 」
これに尽きる!


とはいえ文化度が高い人(国)からみれば、
なんともチープな食習慣だろうと揶揄されるにちがいない。
そんな蔑みとも同情ともつかぬ声を遠くに感じながら、
僕は速攻ランチを今日も食べるのだ!


美と技の継承

2013-06-20 11:11:11 | アート・文化
Kakiemon第十四代 酒井田柿右衛門 先生がお亡くなりになった。
昨日、葬儀告別式が執りおこなわれ、僕も参列させていただいた。
先生のご功績を僕ごときが述べることはおこがましい。
しかし、ご葬儀での弔辞を拝聴すると、
改めてその偉大さに畏敬の念を覚えずにはいられなかった。


先生と面晤を得たのはそう多くはないが、
超一流の人独特のスマートネスを身につけておられ、
尊大さなど微塵も感じたことがない。
美の巨人の圧倒的なオーラをその穏やかすぎるお人柄で何重にも内包し、
けっして僕らに無用なプレッシャーを感じさせることがなかった。
というより、(失礼ながら)取っつきやすく気さくな人だった。


先生のお言葉で、幾つか胸に残っているものがある。
「ヒラメキよりもコンスタントを、綺麗なものより美しいものを求めよ」
という金言もそのひとつだ。
350年以上にわたり受け継がれてきた柿右衛門様式をご自身の中で昇華し、
それを後世に繋いでゆく。
その重圧たるや、僕ら凡人の理解の及ぶところではないだろう。


先生は15日に鬼籍に入られた。
葬儀をことさらに6月19日に執りおこなったのは、
この日が初代柿右衛門の命日だったからだそうだ。
このことひとつをとっても、
跡をお継ぎになる十五代先生や窯の皆さんのお覚悟が察せられる。


柿右衛門先生のご逝去は、有田焼や陶芸界のみならず、
日本にとってもたいへんな損失だと思う。
不帰の報に接した今、茫然とした心情はぬぐいきれないけど、
先生のご功績を称え、その威徳をお偲びするばかりだ。


当初、このエントリーはタイトルを「巨星墜つ」にしようと思って書き始めた。
柿右衛門先生は巨星中の巨星にはちがいないが、
お目にかかったときの先生の印象と何かそぐわないと思い「美と技の継承」にした。
ご冥福をお祈り申し上げます。

We were looking for America

2013-02-11 17:00:00 | アート・文化
Real_steel_2HDDに録ってあった映画『 Real Steel 』がよかった。
単細胞と笑われようが、僕はこの手の映画にはウルっときちゃう。
父と子(とロボット)の絆を描いたストーリー。
ロードムービーのような、美しい撮影も秀逸だった。


多感なころ、J.D.サリンジャーの小説を読みふけったり、
映画『 Rocky 』シリーズを残らず観たり、
ジャック・ケルアックのペーパーバックを持ち歩いたり、
マックやKFCのジャンクフードに舌鼓を打ったり、
ブルース・スプリングスティーンのロックンロールを聴いたりして過ごしていた。
アメリカの放つ光を、何の疑問ももたずに無邪気に信じていた。


『 Real Steel 』は、近未来を描いた作品なんだけど、
僕の青春時代の古き良きアメリカを感じられてうれしかった。
若いある時期のメンタリティと確実に呼応して、
僕の心のどこかに今もわずかに残っているイノセンスを刺激したんだろう。


奇を衒ったプロットが多い昨今、
展開もエンディングも想定内の映画があってもいい。
アメリカ合衆国は、自国の利益のためなら手段を選ばない、
戦争だって人殺しだってやるクソッタレな国だ。
けど、こういう眩い光の部分を見せつけられると、
悔しいけど、どうしようもなく強い憧憬を覚えてしまう。

道成寺 - The Dream goes on -

2012-12-24 10:37:47 | アート・文化
Dojoji酔狂なことに、僕は大学時代、能楽を少しかじった。
それなりに稽古もしたし、能の歴史や体系も学んだけど、
卒業後はフェイドアウトするように能から離れた。
けれど、果敢にも(無謀というべきか?)、
能の世界に飛び込んでいった先輩や後輩がいる。


今般、プロの能楽師になった後輩が『道成寺』を披いた。
素人解釈で言わせてもらうと、
『道成寺』は最高峰の演目に位置している。
彼にとっても特別な演目にちがいなく、
『道成寺』を披いたことは
彼の能楽師としてのフェイズを更新したことになると思う。


この演目のクライマックスのひとつは「鐘入り」という所作なのだが、
その鐘入りの際に他流派だと鐘の直下から入るのが一般的。
櫻間家では「斜入」と称して斜めから鐘に入る。
これは非常に危険で、
タイミングが合わないと鐘にぶつかるだけでなく、
下手をすれば釣鐘の下敷きになってしまう。
ことに金春流、とりわけ櫻間派にとって、
『道成寺』はさらに特別な存在だろう。


世襲、血脈主義がメインストリームの伝統芸能の世界で、
二十歳を過ぎてからその道を歩くことの困難さは言うまでもない。
僕は観能にいけなかったが、聞くところによると、
舞台は大成功で、能楽堂もフルハウスだったとのこと。
夢を叶えた後輩に最大限の祝意を贈りたい。


おめでとう!
The Dream goes on

ヴィンセント・ギャロ

2012-12-01 09:04:38 | アート・文化
Essential_killing好きな芸能人、いやアーティストというべきかな?
とにかくヴィンセント・ギャロが、僕は好きだ。
彼は、ミュージシャンであり、俳優であり、映画監督であり、画家でもある。


ギャロを好きだといっても、彼の作品にさほど精通しているわけじゃない。
画家としてのキャリアについては知らないし、興味もない。
初めてギャロを知った作品、彼が監督・主演を務めた映画『バッファロー'66』だけで、
好きな理由が充分すぎるからだ。


WOWOW で、そのギャロが主演した映画『エッセンシャル・キリング』が放送された。
ギャロの役柄は、敵である米兵をバズーカで爆破し、
米軍に攻撃されて捕えられたアラブ人テロリスト・ムハンマド。
どうやら、その際、聴覚を失ったという設定らしかった。


奇妙なのは、主役のギャロには台詞が一切なかった。
いわゆる逃亡モノなんだけど、ギャロが演るとギャロの世界観になるから不思議だ。
ラストシーンも、ギャロ的に模糊っとしててギャロっぽい。


『エッセンシャル・キリング』をみて、久しぶりにギャロ熱が再燃した。
ギャロが主演の他に監督・製作・脚本・撮影・編集・衣装・メイクまでも手がけた
『ブラウン・バニー』という作品がある。
この作品をもう一度みてみたいんだけど、TV じゃやらないだろうな。


フランダースの犬

2012-11-28 11:21:45 | アート・文化
Flanders2ということで、フェルメール展にいってきた。
ていうか、フェルメール展じゃなかった。
正確には「ベルリン国立美術館展」で、
フェルメールの作品は1点しかなかった。
それに気づかずに、前売り券を買っていた。
ま、所詮、そんなレベルだ。


いうまでもなく、僕は絵画に精通していない。
それどころか、さして興味がない。
けど、たまにはアートに触れるのもいいもんだな。


小雪がナレーションしてる音声ガイドが秀逸だった。
だから僕のような門外漢でも、それなりに楽しむことができた。
とりわけ「絵画の黄金時代」のチャプターは、
好きな17世紀のオランダがフィーチャーされていたので特に楽しめた。


僕的には、フェルメールよりも、
レンブラントの絵を鑑賞することができたのがうれしかった。
レンブラントについては以前、司馬遼太郎さんの「街道をゆく:オランダ紀行」で
少し読みかじったことがある。
本には絵画やエッチングだけじゃなく、
その半生も描かれてたから、興味深く鑑賞できた。


帰宅してググってみると、勘違いにまたひとつ気づいた。
アニメ「フランダースの犬」でのネロの最期のシーン、
アントワープ大聖堂の絵画「キリストの昇架」の作者はレンブラントだと
独り合点してた。
が、正解はルーベンス。


実は、今回の展覧会には、
このルーベンスの「聖母被昇天」の下絵が展示されていた。
迂闊なことに、僕はチラ見しただけで通り過ぎた。
それが、今回の展覧会の唯一の心残りかな?

取り持ち女に会いたい

2012-11-23 13:21:46 | アート・文化
Torimochionnaガラにもなくフェルメール展のチケットを買ってるんだけど、
未だに行けてないし、行くメドもたってない。
会期、もうすぐ終わっちゃうんだよな。


この3連休が最後のチャンスだった。
初日の今日は、残務処理があって出社。
明日は、遠い遠い(距離じゃなくて縁)親戚の法事。
あさっては、懇意にしていただいている長唄のお師匠さんの社中の会


もっとも絵画やフェルメールに、さして興味があるわけじゃない。
単なる物見遊山、野次馬根性ってやつだ。


会期終了もちかいし、3連休だし、博物館はごった返してるだろう。
人が多い場所は好きじゃないけど、チケットを無駄にするのももったいないし...
長唄の先生には申し訳ないけど、
社中の会、ぶっちぎっちゃおうかな。