たつのこ半畳記 350

坐禅会情報・四季折々の様子を伝えるときどき日記。
令和3年に開創360年を迎えている起雲山大龍寺のブログです。

★お釈迦さまの弟子となる 《看取りのはなし4》

2021年12月11日 | おはなし
★半年後の予約 《看取りのはなし1》
★何よりのお薬 《看取りのはなし2》
★できることをする 《看取りのはなし3》




彼女のお戒名を考えるにあたって、
改めて、本人が歩んできた半生についてお話をお聞きしました。

今でこそ彼女は一人で一家を護っていますが、
これまで様々な人たちとの出会いや別れがありました。
身体の難病にも悩まされ、まさに四苦八苦の中にもありましたが、
どんな困難にも、人間の尊い精神を見失わないよう生きてこられた方でした。

お話と呼応する写真もたくさん見せてもらいました。
その中には、数十年昔の拙寺で撮られた法事の写真など、
史料としても貴重な写真がたくさんありました。



お戒名は、その場ですぐにはできません。
私自身がじっくりと考える時間をいただいて、
数週間後、原案を携えてご自宅へ行きました。

本人がしっくりこない場合には再考することも想定しつつ、
お戒名の一文字一文字に籠めた仏教の教えや
これからの人生に向けた私の願いなどをお話しさせていただきました。
彼女は、お戒名の文字から伝わってくる印象、発音の清々しさ、
家族のお戒名がおのずと連想されることなどから、
一目見て、大変快く受け入れてくれていました。
そして私の言葉を聞き漏らさないようにと注意深く耳を傾けてくれましたが、
第一印象は最後まで変わらず、お戒名の原案がそのまま本決定となりました。

受戒の儀式は、日を改めて修行する予定でいましたが、
病状のことも考えると、車で送迎したとしても拙寺に来てもらうのは難しく、
彼女の自宅で受戒の儀式を修行することにしました。



そして当日。
椅子に腰掛けて儀式を勤めるため、キッチン横の食卓を祭壇としました。
持参のご本尊さま(20㎝ほどの掛け軸)をはじめとする仏具などを配置し、
自宅仏壇に祀られている家族のお位牌や写真も並べて、
大龍寺で行う儀式と同じように修行ができるようにしました。

儀式の進行は彼女の体調に合わせることにしていましたが、
式の直前に痛み止めを飲んでいたこともあってか、大過なく進められました。
約一時間、彼女はきちんと椅子に腰掛け、
お唱えや、席上での礼拝なども略さず勤められました。
私も、お授けする戒律のこと、お戒名のこと、
これからの生き方など、丁寧にお話をさせていただきました。

この日、彼女はお釈迦さまの弟子となりました。



【注記】
この記事は本人の事前了解があり、個人情報保護のため一部改変をしています。
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