たつのこ半畳記 350

坐禅会情報・四季折々の様子を伝えるときどき日記。
令和3年に開創360年を迎えている起雲山大龍寺のブログです。

★できることをする 《看取りのはなし3》

2021年08月19日 | おはなし
★半年後の予約 《看取りの話1》
★何よりのお薬 《看取りの話2》





彼女が一番心配していることは、自分が亡くなってしまうと、
一家を護る人、両親と兄の供養をする人がいなくなってしまうことでした。
財産管理や役所への事務手続き等は行政書士の先生と進めているそうで、
私は、彼女の宗教面、精神面での関わりに専念することができました。


そして、相談を重ねる中で、本人が心配していることが、

 (ソウギ) 本人の葬儀に関すること

 (カタチ) 一家の墓地と仏壇に関すること

 (ココロ) 一家の供養に関すること

 (オカネ) お布施に関すること

に分けて考えることができるとわかりました。
彼女からは、この病気にかかるずっと前から、これまでの苦難を聞いていたため、
それらの出来事が透けて見える辛い決断もありました。


そのような時を過ごす中で、彼女が触れていないことがひとつありました。
それは自分自身のお戒名に関わる事でした。





彼女の病状次第で、緩和ケア病棟への入院を打診している病院では、
月に1回、経過観察の診察があり、私は車で同行、付き添いをしていました。
彼女から、かつて立ち寄っていた飲食店と食材店が横浜中華街にあると聞いており、
ある日の診療のあと、お食事を口実に、中華街まで足を伸ばすことにしました。
彼女はとても喜んでくれて、車中ではずっと喋りっぱなしでした。
そして話が両親と兄の供養や、お墓のことなどになった時、
ズバリ、彼女が自分自身のお戒名についてどう考えているか、聞いてみました。





彼女は、大龍寺が「生前戒名」を勧めているのは承知しており、
でも「永平寺別院で3日間の加行と大龍寺での得度式」というのは、
いまの自分の病状では無理だと諦めていたそうです。


修行は蔑ろにはできませんが、障壁になるのも考えものです。
体力的に参加できない方には、大龍寺での半日修行や、
中には、自宅の病床で横たわっている方への授戒など、
それぞれに合わせているこれまでの事例を紹介しました。


彼女は今のような病状でも、お戒名を受けられる可能性があることがわかり、
何度も念押しをして「お戒名を受けたい」という気持ちを伝えてくれました。

「ご両親、お兄さん、そして貴女の4人が
 堅い縁で結ばれた家族であるとわかる、
 あなたらしいお戒名を考えましょう。」

と私が応えると、彼女はとても喜んでくれました。
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