Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

●第19回「リラックス言語とディスカッション言語~日本語は、非論理的か?」

2007-09-01 22:55:29 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

●リラックス言語とディスカッション言語
~日本語は、非論理的か?

Critical Thinking のクラスで、面白い論文が取り上げられた。

「オーストラリアで勉強している東南アジア留学生への誤った共通認識」がそれで、以下5つの(誤)認識が述べられている。

東南アジアからの留学生は、
1.学習への表面的なアプローチをする暗記型学習者である。
2.受動的な学習者で、授業に参加しない。
3.自国の留学生で固まり、地元オーストラリアの学生と交わりたくない。
4.分析やクリティカル・シンキングのスキルがない。
5.彼らの学習法は、なかなかオーストラリアのやり方に調整できない。
というもので、これらの認識は、オーストラリアの教育界では一般的だった(今でもそうなのかも)らしい。

論文では、この一つ一つに、実証的な反論をして、誤認識だという結論に至っている。

でも、この論文を読みながら考えたのは、これは、東南アジア留学生だけではなくて、日本人留学生でも当てはまりそうだということです。

上の1、2、4、5をまとめると、オーストラリア(だけではなく、西欧的だと言える)の理想的学習者は、

暗記型ではなく、分析やクリティカル・シンキングが基本で、授業には積極的に参加する、能動的な学習者である、ということになる。

さて、今日の議論は、この論文の中ではなく、もう少し、広い議論なのです。

『日本語は、あいまいで論理的でないとか、日本人は論理的でない』と西欧人からよく聞かされる言葉だけれど、
本当にそうなのかを、考えてみたい。

今日の仮説:
『日本語は本来リラックス言語で、英語はディスカッション言語なんじゃないの?』

週末は、よく近くの Yarra Bend Park へウォーキングへ行きます。
この山あり、谷あり、川ありの公園を踏破するには、3時間以上かかるくらいの広さです。
こちらメルボルン市民は自転車に乗るのが好きで、週末には、かなりの数のサイクリストがこの公園を走り回っています。日本では鎌倉の山道をハイキングするようなもので、メルボルンではシティ(中心地)から30分の公園でも、このリゾート感覚を楽しめるのが、特徴です。

さて、川沿いのお気に入りコース(幅50センチ位の細道)を高野山の修行者をイメージし早歩しながら、上記のことが浮かびました。

そもそも、日本語での会話の目的って、なんか疑問を解こうとか、口に出してお互いの意見を交流する、というところにはないのでは。そうじゃなくて、日本語は、会話して、良い人間関係をつくる、維持するのが目的の言語なんじゃないのかなって。

日本社会は、「内と外」の区別があって、日本語は、内でのリラックスを求める会話というか、団欒が基本になっている言葉じゃないのかって思う。
だから、日本語会話が論理的になっていない、という外国人の指摘は的を得ているかもしれません。

でも、外の仕事場での会話、特に仕事中の日本語は、日常会話とは大きな相違がある。それは、仕事や学問の分野では、日本人は、(非常に)論理的だと思います。
一方、英語西欧文化の人々にとっては、内も外もない、すべてが、論理的に会話する!
仕事場でも、論理的でないとおかしいし、家庭でも、議論が当たり前。今いるシェアハウスのカップルは、しょっちゅう、論理的に議論していますし。
どこで、くつろいでいるのやらって思います。
リラックスになるのには、日本語を学習するのもひとつの手かもしれません。

ところで、冒頭の「誤認識」の議論にもどりましょう。
クリティカル・シンキング(含むクリティカル・リーディング、ライティング)は、
「学習によって獲得できる」、
というのが私の経験的結論です。

当然、英語を話したり、書いたりするときは、論理的であるのが必要条件で、
かつ
クリティカルでなければ十分になりません。
論理的であろうとするところは、日本の大学ではやっていないようですが、いかがでしょうか。
日本の大学院の修士か博士課程では、論理的かつクリティカル・ライティングをやっているかも知れません。
あの大前研一氏主催の大学院では、論理の権化のような学院長のもと、クリティカル・シンキングが厳しく実施されているようです。

それでは、どのような方法によって、クリティカル・シンキングが獲得できるのでしょうか。

別の機会にそれをお話しましょう。

【参考】
Charlmers, D. and Volet S. (1997). Common Misconceptions about Students from South-East Asia Studying in Australia, Higher Education Research & Development, Vol. 16, No.1

Yarra Bend Park:
http://www.parkweb.vic.gov.au/1park_display.cfm?park=225