Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

★☆第48回「自然、人間、挑戦/忍耐」~慰めから励ましへ☆★

2009-11-22 03:43:16 | ■日本人はどこへ往く?

★☆第48回「自然、人間、挑戦/忍耐」~慰めから励ましへ☆★

地震列島の日本では、古来から、自然への尊敬、畏怖や服従という感覚が一般的であった。これは、クルックホーン&シュトゥロットベックの「バリュー・オリエンテーション理論」トロンペナーズの「7次元文化モデル」に指摘されるまでもなく、日本人の間では共通認識となっている。

一方、欧米的考え方では、自然は征服すべきものとの信念があり、機械としての自然対象との感覚である。

日本的な考え方では、自然の驚異をそうやすやすと取り除くことは不可能であり、一度自然災害の猛威を経験すると、人間の無力感を感じる。その無力感を克服するには、「忍耐力」が最も大切な人間的対応であると考えられてきた。反対に欧米では、自然は征服すべき対象であるから、それに果敢な「挑戦」をして立ち向かうことが大事な人間的要素と考えられている。

この自然への忍耐、つまり自然への共生という習慣は、人間関係にも大きな影響を及ぼしている。人間関係でも、挑戦して相手を倒す、というよりも、耐えて、調和を持って、共生していくことが長年の日本人の知恵となっている。従って、耐えて耐える人を「慰める」ことが普通である。

欧米の文化では、どうか。自然に対しても立ち向かう。人間に対しても挑戦する。これが普通の感覚らしい。挑戦している人には、「励ます」ことが当たり前となるのだ。

さて、「第42回日本人の自律心を育むには?~エリクソンの人生8段階発達理論から」で触れたことだが、欧米人の励まし方の例をDr.Gary Chapmanのミリオンセラー(世界で300万部以上)の書物で検証してみよう。

彼は、結婚カウンセラーとして30年以上の経験をもち、まずい人間関係を克服し、より良い人間関係をつくるために「愛のコミュニケーション方法」を提唱している。愛のコミュニケーション方法とは、愛を表現するにはどうしたらいいか(愛の表現方法)というものだ。カップル向け、独身者向け、家族向けなど、いろいろな愛の方法集を刊行しているが、ここでは、カップル向けの有名な「5つの愛の伝えかた」を紹介する。

1.Words of Affirmation 「肯定的な言葉のやり取り<はい=イエス>」
2.Quality Time「二人で過ごすステキな時間をつくる」
3.Giving/Receiving Gifts「互いに贈り物を送ったり、受取ったりする」
4.Acts of Service, Acts of Help「奉仕やお手伝いをお互いに。家事育児などのシェアから自分たち以外の社会へのボランティア活動など」
5.Physical Touch「2人の触れ合いを大切に」

これら5つの基本的な愛の伝え方を、まずお互いに理解し合うことが必要。
つまり、相手はどの方法で、自分の愛を表現したがっているか、ということだ。
これは、相手の気持ちを忖度するのに長けている日本人には容易にマスターできるものだ。相手の愛の表現方法に気がついたら、それを素直に受け入れれば、自分自身の満足につながるだろう。もちろん、相手にも、自分の愛の表現を気づかせる努力も必要となる。そうすることで、お互いのコミュニケーションが良い方向へ発展し、2人の間の関係を克服できるんだ、ということになる。

こんなことを考えていたら、
たまたまNHK Worldで、「Hometowns in Focus/ハイビジョンふるさと発」 "Enduring Words ~Poet of Hiroyuki Tsutsui~"(2009年11月20日)で、歌人の笹井宏之(本名 筒井宏之)が取上げられていました。

日本人の家族(母やおばあさん)への愛の表現は

・シゲヨさん、むかしのことをはなすとき百合にならなくてもいいからね

(宏之さん本人のブログより:僕にはフィクションの歌が多いのですが、「シゲヨさん」は珍しくじっさいにいる人、祖母です。)

・冬ばってん「浜辺の唄」ば吹くけんね ばあちゃんいつもうたひよつたろ

(宏之さんの父のブログ:宏之が祖母のためにフルートで吹いてくれた「浜辺の唄」)

・葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある


笹井宏之の短歌より印象に残った句です。

・ひきがねをひけば小さな花束が飛びだすような明日をください

・ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす

・風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが

・えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください  (脚注を参照)


日本文化の優れた遺産のひとつ、短歌には、
これだけの(愛の)表現方法があるのになあ、と、
現実日本の家族や人間関係のつながりの希薄さに失望しながら、
この現代社会の有り様が、これまで耐えてきたことの代償だとしたら、
こんな不幸な国民はないでしょうに。

どうやら、
これからの人間関係では、
耐えることよりも、励ますことの方が、
なんだか得ることが多いような気がします。


◆上記の写真は、【些細】短歌というみじかい詩を書いています/笹井宏之とジェニファー・ロペス(JL)のアルバム「Brave」から。JLの歌詞や映画は、女性の強さや女性への励ましが中心コンセプトになっているものが多い。

◆(脚注)
「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください」  
エーエンと口から、永遠と口から、永遠解く力を下さい
(エーエンは嘆き悲しみの声)との解釈も可能。

◆参考:
Dr. Gary ChapmanのWebサイト
彼の日本語訳の書物 「愛を伝える5つの方法」は、キリスト教文化を基盤とした2人への励ましの言葉になっている。


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