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京を彩る  その2等伯への旅

2015年11月24日 | 日記
東山通りの泉涌寺前バス停までもどって208系統のバスに乗り智積院に到着です。これを書いていて思い出しましたが、降車のために両替していると、バスの運転手さんが「早く早く」と怒気を含んだ声で急がすのです。渋滞で気が立っているのはわかりますが、せっかく楽しく観光している客に向かってその態度は何なんだ、スムーズにやってたじゃないかと今言い返しておきます.

 智積院は主な観光コースからはずれているせいか、京都が一番混雑するこの季節でもすいていました。拝観受付のすぐわきの収蔵庫に入室すると、長谷川等伯・久蔵親子を初めとする一門が描いたという「松に黄蜀葵図」、「桜図」、「楓図」、「松に秋草図」などの障壁画が襖に描かれたその状態で目にに飛び込んできます。幹や枝の激しい動き、紅葉や桜の写実性、空や池の抽象性、全体の構成といった面では圧倒されるものがありました。秀吉・千利休・狩野永徳といった史上の大物が絵の背景に存在することからくる迫力も感じました。ただ、いずれも桃山時代を代表する障壁画で金地に極彩色で描かれているはずですが、全体的に色彩に乏しく、私にはよく言われる豪華絢爛さという面はあまり感じられませんでした。作品の劣化を防ぐためや、当時の雰囲気をもたせるために照明を落としている部屋の薄暗さも影響していたと思います。
 私が入室した際の先客は4人のみ、1人は欧米系の50歳代くらいの外国人で、ゆっくりと時間をかけて鑑賞した私が退室した後も残っていました。日本の歴史には日本人ほど詳しくないはずですから、作品そのものに興味を惹かれていたのだと思いますが、郷土の先輩をちょっと誇らしく思いました。

 収蔵庫を出まして拝観券がセットになっている名勝庭園に向かいました。智積院に対する私の知識は等伯の障壁画どまりでしたので、目的を達した虚脱状態で、お寺さんには申し訳ないのですが、あとはついでのような気がしていました。ところが、やはり紅葉の色合いがもう一つの利休好みという庭園よりも、講堂の襖絵に目が点になりました。それは、先ほどの「桜図」、「楓図」のレプリカなのです。その鮮やかさに驚嘆させられました。金色ピカピカということももちろんあるでしょうが、楓や桜やその他描かれている対象の赤や緑や桜色等々、本物に私が感じられなかった豪華絢爛さがこれでもかというくらいに迫って来るのです。当時の人が度肝を抜かれたというのは本当に納得です。400年の時を経た本物の古色蒼然さを見た後これを見て、表と裏、完全な作品を目にしたという満足感でいっぱいでした。
 やっぱり京都に来てよかったとしみじみ思いました。

 上野の東京国立博物館の「松林図屏風」も七尾の美術館の企画展で見ましたし、等伯のもともとの出発点の仏画も七尾のお寺で何点か見せてもらったことがあります。襖に描かれた桐の文様を雪に見立てて一気に描き上げたという高台寺・圓徳院に現存する「水墨山水図」も見ました。等伯の世界をかなり目にしたことになりますが、ますます関心が深まりました。本法寺や大徳寺、妙心院にまだまだ見たい作品がありますのでまた京都に行くことになります。

 帰ってから、あの講堂には、現代日本画壇の第一人者田渕俊夫画伯の60点に及ぶ襖絵も奉納されていたことを知りましたが、現地ではわかりませんでした。写真で見るとこれも素晴らしい、でも後の祭りです。智積院にも足を運ぶことになりそうです。
(その3へ つづく)

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