懲役と禁錮を「拘禁刑」に一本化する刑法等の一部を改正する法律(以下「拘禁刑法」という。)のどこか問題なのか、どうして即時廃止にすべきなのか徹底的に解説していきます。
■どうして懲役と禁錮に分かれているのか
みなさんは、そもそもなんで刑法が懲役と禁錮に分けられているのか、疑問に思ったことはありませんか。大半の犯罪は懲役なのに、内乱や過失などどうして一部の罪は禁錮となっているのでしょうか。
そもそも、懲役は犯罪者を刑事施設内に収容して、労働という罰を与える刑罰です。これに対し、禁錮は犯罪者を刑事施設内に収容するだけです(希望すれば労働することもできます)。
どうしてこのような違いがあるのでしょうか。それは罪の性質の違いにあります。昔から悪い事をやれば罰を与えられますよね?ここで言う「悪い事」とは心の中の動機の話です。
大半の犯罪、例えば殺人や窃盗などは、動機自体が道徳に反しており、「悪い事」だといえます。ですから、単に刑事施設に収容して街の安全を図るだけでなく、労働という罰を与えて反省させるのです。
しかし、過失犯(無意識の犯罪)は、動機自体が存在せず、道徳に反することなどあり得ません。内乱は、本人の心の中では「正義のため」にやっているわけですから、動機自体は道徳に反していません。
行動自体は危険なので収容する必要はありますが、道徳に反しているわけではないので、反省させる必要はないわけです。
そのため、刑法では伝統的に、先程のような破廉恥罪(道徳的に許さない犯罪)には懲役を、非破廉恥罪(危険だけど道徳に反するわけではない犯罪)には禁錮を課してきたのです。
■内心の自由を奪う「拘禁刑」
一方、拘禁刑への一本化では、上記の破廉恥罪と非破廉恥罪の区別がまるで考慮されていません。拘禁刑では、刑事施設に収容するとともに、単に労働を課すだけでなく、指導も行うことができるとしています。
しかし、これでは特に内乱罪などの非破廉恥罪に対し、単に危険だから収容するというのを超えて、「お前の思想が間違っている」という指導が可能になってしまいます。思想犯取り締まりの第一歩のようにも受け取れます。
更生プログラム、更生プログラムと盛んに言っていますが、過失犯や内乱犯をどう更生させるのでしょうか。過失犯は「注意しとけば...」などまだ分からないでもないですが、最終的には「お前の存在が間違っている」的な方向に進みかねません。労働を課すのも不適切です。
内乱犯は先程も言った通り、思想自体を取り締まることにつながります。思想を取り締まることは、全ての国民に等しく保障された内心の自由の侵害です。
■拘禁刑法を廃止し、懲役刑の改善を!
拘禁刑への一本化は内心の自由を侵害するものです。更生プログラムについては懲役刑のままで労働のところにプラスで「指導」を書き足せば十分です。わざわざ拘禁刑にする意味がありません。パフォーマンスです。はっきり言って。
一刻も早く、この拘禁刑法の施行を中止し、即時廃止することを強く求めます。
(参考)更生プログラムのための刑法改正案
刑法の一部を改正する法律案
刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
第十二条第二項中、「刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」を「刑事施設に拘置する」に改め、同項の次に次の一項を加える。
3 懲役に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。