面白かった。
よい映画であった。鑑賞後の気持ちのよさと言ったらない。
もうちょっと色々見せてほしかったな、もう少し主役二人の演技を見たいなと、名残惜しい。
実話ベースの映画である。
この映画は、クリント・イーストウッドが監督で、映画が出来上がった時に、映画の中に出てくるジャーナリストの女性かな、女性が勤める新聞社かな、とにかく、訴訟にまでなったのかな、ニュースになったのを記憶している。ボイコット運動まで起こったはずだ。せっかくの前評判の良かった映画に、なんとなく水を差す感じになってしまった感があった。営業収益もそのせいもあってか、さえなかったと聞いている。もったいない。
案の定、
映画を見てみて、文句を言われる理由が理解できた。
ボイコット運動に至った理由は、女性が体を使って情報を得ようとしたと言う部分の様で、女性軽視につながるからだ。
映画の中の彼女が悪役なんだ。これは、彼女の演技もさることながら、監督の演技指導の結果だ、間違いなく。性格悪くできていて、本人からしたら、相当腹も立つだろう、訴訟も起こしたくなるだろうと言う出来だった。でも、決して、映画の中で体を使うシーンがあるわけではなく、彼女が後に反省し、涙するシーンもある。むしろ、それくらいのプロ根性で仕事をする、剛腕女性記者と言う立ち位置だ。決して悪意のみで表されているわけではない。彼女の存在もこの映画の中で至極のスパイスになっている。
映画のタイトルは、「リチャード・ジュエル」、1996年の米国アトランタオリンピックの会場で爆発が起こった時に、その爆発を未然に察知し、犠牲を最小限に抑える事ができたヒーローと持ち上げられた警備員の男性の名前だ。
ところが彼は数日後、今度はFBIから爆発物を置いた容疑者として取り調べられることになり、その情報を個人的な関係を使って得た女性新聞記者がリークし、再び今度は以前にもまして、大々的にニュースで取り上げられることになる。
その彼の弁護を引き受ける事になるのが、サム・ロックウェル演じる弁護士なのだけど、彼が実質主役になっている作りだ。
クリント・イーストウッドの映画は、正義の味方と悪役がはっきりしている事が多い。
それから、この映画でもそうだけど、俳優さんの肩書や有名度関係なしのキャスティングがいい。味のある役者さんをうなずける配役で起用しているのだ。監督のこれも手腕と言える、すごい。
映画を見終わった時の清涼感は、西部劇のようであり、水戸黄門や遠山の金さんを見た後の感覚に、すごーく近い、と思う。つまり作りは簡単で、演技が凝ってる。悪役が憎いくらい悪役で、良い人が、馬鹿がつくくらい善人だったりする。
この映画を見て、
クリント・イーストウッドの「グラントリノ」をもう一度見たいなと思ったのは、私だけではないはず。
同じクリント・イーストウッドの映画でも「ミスティック・リバー」や「ミリオンダラーベイビー」とは、また違った路線だ。
サム・ロックウェルは、ステファンキング原作の「グリーンマイル」と言う映画の中で彼が演じた、それこそ極悪人もいいとこの差し歯?金歯?の死刑囚のイメージが強い。この時の演技は、ちょっと震えがくるくらい、クレージーだった。演技派の俳優さんだけど、あまり他に類を見ない怪しい、不思議な演技をする役者さんだ。
アメリカの日野正平、と言ったところ、かな。
彼は、いつも悪役が多いのだけど、その傾向が近頃少し変わってきた様子。
「スリービルボード」の中では悪だけど、ホントに悪なのか、中身は善人なのかよくわからない、そんな役回りを演じておられる。悪人と言われる部類に入る人間の深い心のふちを、微妙な演技で魅せる彼だからできる。この映画のラストシーンは良かった。
映画に独特な魅力を加味することのできる貴重な俳優さん。
彼の出演作品で、是非見たいのがある。
ブッシュを演じた「VICE」 それと、「コンフェッション」と言う映画だ。
是非、鑑賞しなければと考えている。