競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

よっ、横綱!13

2017年03月09日 | よっ、横綱!
 今日は千秋楽なので、初日と同じような協会の挨拶があります。その後幕内土俵入り、横綱土俵入り、そして幕内取組開始です。
 昨日横綱富士ケ峰関に負けた明日川関は、今日は平幕月光関との対戦です。両者ともここまで7勝7敗。この一戦に勝ち越しを賭けます。相撲取りにとって8勝7敗と7勝8敗は、たった1勝の差なのに、天と地ほどの違いがあります。両力士ともここは絶対勝ちたいと思ってるはずです。
 いよいよ取組の時間となりました。両者見合って、手を付いて、手を付いて、手を付いて! 発気揚々! 残った!
 立会月光関は若干変化。昨日の富士ケ峰関のような蹴手繰りを仕掛けてきたのです。けど、明日川関にとって蹴手繰りは、昨日の今日です。同じ手には引っかかりません。さっと脚を上げて避けてしまいました。空振りした月光関が振り返ると、その胸に明日川関の頭が飛び込んできました。そのまま押し出し。2人の身体は絡まったまま、土俵の外にすっ飛んで行ってしまいました。晴れの勝ち越しは、明日川関の方でした。

 取組は進み、今度は市松関と赤富士関の取組です。赤富士関も7勝7敗。今日の一番に勝ち越しを賭けます。一方市松関はここを勝てば12勝3敗。12勝3敗なら優勝決定戦に進出する可能性があります。
 市松関は相撲ファンの大半に嫌われてるので、場内は赤富士関を応援する声ばかりになってます。
 いよいよ立会の時間となりました。見合って、手を付いて、発気揚々! 残った!
 なんと、赤富士関も蹴手繰り。ただ、富士ケ峰関や月光関はすれ違いざま蹴手繰りを仕掛けてましたが、赤富士関は一度立ち止まって、サッカーボールを蹴るような蹴手繰り。これはダメです。市松関は右方向に振り向いてのかち上げ。クリティカルヒットではありませんが、赤富士関の喉に肘がヒットしました。赤富士関はちょうど蹴手繰りをしてるとき、つまり片足立ちの状態だったので、バランスが崩れ、脆くも尻もちをついてしまいました。
 市松関勝利。これで12勝3敗。優勝戦線に生き残ってしまいました。市松関のアンチばかりの場内は、かなりがっくしです。
 支度部屋では富士ケ峰関と富士泉関が並んでモニターを見てました。まずは富士泉関の発言。
「市松関、勝っちゃいましたね」
「ああ。
 しかし、めったに見ることがない蹴手繰りを今日2度も見るなんて、わしの蹴手繰りは相当インパクトがあったんだなあ・・・」
「昨日の銀奨関の出し投げも、横綱のまねっぽかったすねぇ」
「ふふ、そうか」
 横綱はちょっと照れてるようです。

 いよいよ三役揃い踏みの時間となりました。富士ケ峰関と富士泉関は同時に土俵に上がりました。帰り入幕で、しかも幕尻に近い富士泉関が三役揃い踏みに上がるのは、異例中の異例だと思いますよ。
 3力士が同時に柏手を打って、四股を2回。そして逆の脚で四股を1回。これだけですが、千秋楽の大事な儀式です。
 三役揃い踏みが終わって、次は両小結の一戦。と言っても、両小結ともかなり負けがこんでます。それでも千秋楽らしい大一番になって、西の小結西都関が勝利。5勝10負で終了となりました。
 続いて大関銀奨関と平幕富士泉関が土俵に上がりました。昨日の銀奨関の敗北に、理事会はかなり荒れたようです。とりあえず横綱昇進の条件は、まず富士泉関に勝つ。その上で誉関が富士ケ峰関に勝った場合は、同点決勝で誉関に勝つ。万一富士泉関に負け、その上で同点決勝になった場合は、例え優勝したとしても、今場所の横綱昇進は見送られるそうです。
 一方富士泉関もここで負けるわけにはいきません。横綱朝桜関との約束があるからです。ま、横綱から見たら、あまりにもしつこく「許してください!」と言ってくるものだから、とりあえず繕った約束なんだけどね。
 銀奨関の四股ですが、今日はちゃんと脚が上がってました。さすがに今日は変な緊張感はないようです。
 懸賞旗は2巡しました。朝桜関が休場してるとはいえ、大関対平幕とは思えないくらいの懸賞旗です。両力士の人気の高さが推し量れます。実際の声援は半々てところかな?
 いよいよ時間となりました。この大一番、両力士はどんな相撲を見せてくれるのでしょうか? 
 両者見合って、見合って、手を付いて、発気揚々! 残った!
 立会定評のある富士泉関ですが、今日は銀奨関の方が一歩先に立ちました。で、両前みつを取りました。そのまま一気に寄って行きます。あっと言う間に土俵際に。富士泉関、ピンチ。と、富士泉関は両手で銀奨関の両手を振り払いました。正確に言えば、両手を真上から真下に裁断するように思いっきり振り下げ、前みつを掴む両手を切ったのです。
 次の瞬間、富士泉関は横にさっと身体を引きました。引き落としです。でも、さすがにそれには引っかかりません。銀奨関は振り返ると、富士泉関が右四つで組んできました。両者がっぷり四つに。がっぷり四つは内掛けがある富士泉関に有利です。富士泉関は銀奨関の身体を思いっきり引きつけ、内掛け。でも、銀奨関も負けるわけにはいきません。上手ひねりで最後の抵抗。富士泉関の身体が大きくぐらつきます。けど、ここは先に技を出した方の勝ちでした。富士泉関、勝利です。
「うぉーっ!」
 ものすごい歓声が上がりました。今日も座布団が飛びます。飛びまくりです。その中で富士泉関は分厚いご祝儀袋と弓矢の弦を手にしました。その顔は思いっきりの笑顔です。
 富士泉関勝利で横綱富士ケ峰関優勝か準優勝の可能性が出てきました。葵親方が今場所富士ケ峰関に課した条件、優勝か準優勝が現実になってきたのです。
 一方負けた銀奨関はとぼとぼと土俵を降りました。12日目横綱朝桜関が故障したときは、横綱昇進間違いなしと言われたのに、そこから3連敗。横綱昇進はあえなくついえてしまいました。相撲はほんとうに恐ろしいですね。

 千秋楽結びの一番は、横綱富士ケ峰関対大関誉関戦。もし誉関が勝てば初優勝です。逆に富士ケ峰関が勝てば、5人が12勝3敗で並ぶことになります。とてつもなく大事な一戦となりました。
 誉関は10日目まで勝ち星を並べましたが、11日目と12日目は格下に敗北。13日目は横綱朝桜関に不戦勝。14日目の銀奨関戦は、銀奨関が変に緊張してて、勝ち星を拾うことができました。誉関は11日目以降は明らかに調子が落ちてます。小兵のせいでスタミナが切れてしまったのかもしれませんね。
 それに対し横綱は、今日は大好きな競馬を控えてます。今日は明らかに横綱に分があります。しかし、競馬やってないから横綱有利って、何か変ですよねぇ。
 ただ、1つ富士ケ峰関には嫌なデータがあります。実は富士ケ峰関は、横綱になってから1度も千秋楽で勝ったことがないのです。信じられないデータですが、ほんとうなんですよ。ま、11回中10回までは横綱朝桜関だったから、仕方がないと言えば仕方がないことなのですが。
 懸賞旗が廻ります。富士ケ峰関も誉関もいまいち人気がないとは言え、やっぱり千秋楽結びの一番です。20本くらい廻りました。
 今日横綱に力水をつけた力士は富士泉関でした。富士泉関は「頑張ってください」と眼で合図を送りました。それに対し横綱は、微笑みで返事をしました。なお、富士泉関は勝ち残りで、最前列の特等席でこの大一番を見物します。
 いよいよ時間となりました。先に誉関が腰を割りました。続いて富士ケ峰関が腰を割ります。両力士とも片手を土俵に付けました。見合って、見合って! 発気揚々! 残った!
 誉関は胸にぶちかまし。右手を差します。それに対し横綱は、左上手を掴みます。誉関は半身で横綱の胸に頭を付けました。ここから膠着状態。10秒、20秒、30秒。じりじりと時間が過ぎていきます。
 しびれを切らした横綱がついに動きました。左上手投げ。上手投げで相手の体勢を崩して、右手で廻しを掴む作戦のようです。が、誉関は上手投げを下手投げで返してきました。両者とも体勢が崩れます。先に相手の下手を取ったのは誉関でした。誉関は両差しとなり、そのまま寄って行きます。そうはさせじと、土俵際で横綱が右上手投げ。負けじと誉関は左下手投げを打ってきました。
 投げを打ちあったまま、2人の身体が完全に停止しました。その先は奈落の底のような土俵の外です。
「うおーっ!」
「ぐわーっ!」
 2人の意地の張り合い。ただ、下手投げと上手投げを比べたら、上手投げの方が有利。おまけに、両力士とも右利きです。つまり、今は右上手投げを打ってる横綱の方に分があるのです。が、誉関はここで一か八か左脚をぴょーんと上げ、横綱の右脚を大きく跳ね上げました。これをきっかけに2人の身体が同時に崩れ始めました。
 横綱の身体が若干先になったまま、2人の身体が土俵下に落ちていきます。土俵の下の床に横綱の顔が近づいてきました。が、横綱は受け身をとりません。横綱は最後の最後まで落ちる時間を稼ぐ気のようです。けど、このままでは顔面から落ちてしまいます。どうする、横綱?
 ぐしゃーっ! ついに横綱は顔面から鈍い音を立てて落ちました。それとほぼ同じタイミングで、脳天から落ちてきた誉関が右手を床に付けました。
 行司の軍配は?・・・ 行司の軍配は誉関の方に上がりました。誉関優勝? いや、すぐに手が挙がりました。手が挙がるとは、物言いがつくという意味です。今回は計3本の手が挙がりました。2本の手は審判役の親方の手でしたが、もう1本の手はなんと富士泉関の手でした。富士泉関は自信を持って手を挙げたのです。それを見て観客はみんなびっくりしました。ルール上控えの力士が物言いをつけてもいいのですが、そんなことはめったにありません。20年に1回あるかないかの珍事です。それを帰り入幕の富士泉関が千秋楽の結びの一番でやったのです。これはある意味、事件ですよ。
 親方衆が土俵に上がりました。これから協議です。ちなみに、この協議に富士泉関は参加できません。


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