競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

よっ、横綱!12

2017年03月07日 | よっ、横綱!
 いよいよ時間となりました。2人とも見合って、手を付いて、発気揚々! 残った!
 誉関は右手でさっと銀奨関の下手を取りました。左手ははず押し。身体は低くくして、頭は銀奨関の喉のあたりに。銀奨関は左手で上手を掴み、右手は誉関の左肘を掴んでますが、身体がかなり立ってます。ここまでは誉関ペース。
 ここで銀奨関が体を大きく開いて、上手出し投げ。昨日の富士ケ峰関の下手出し投げをヒントにしたのかな? でも、銀奨関の投げは不十分だったのか、誉関は身体をさっと左1回転させ、難を逃れます。この瞬間誉関の身体は銀奨関の左手側にありました。誉関は勝機とそのまま銀奨関の身体を抱きかかえました。この体勢では銀奨関はどうすることもできません。銀奨関の身体はあっけなく土俵を割ってしまいました。誉関の勝利です!
 うおーっ! すごい歓声が上がりました。座布団が飛びます。飛んできます。「危ないですから、座布団を投げないでください!」と場内アナウンスが連呼してますが、そんなの関係なく座布団が飛んできます。
 支度部屋では富士泉関は小さくガッツポーズ。
「よっしーっ!」
 土俵の下では富士ケ峰関がニヤッとしました。
 これで銀奨関は12勝2敗。誉関も12勝2敗となりました。富士泉関は11勝3敗。実はもう1人11勝3敗の力士がいます。市松関です。これから土俵に上がる富士ケ峰関が勝てば、11勝3敗は都合3人になってしまいます。

 そしてその富士ケ峰関が土俵に上がりました。今日の相手は突貫小僧明日川関です。明日川関はここまで7勝6敗。ともかく頭で突っ込んでいく、典型的なぶちかまし相撲を得意としてます。今日も頭から突っ込んで行くと思います。
 この2人、これまでの対戦を見てみると、5勝3敗と明日川関の方に分がありました。最近では3場所前に対戦があって、そのときは横綱が両手でぶちかましを止めようとしたのですが、両手ともはじかれ、一気に押し出されてます。横綱は今日はどんな手を使うのでしょうか?
 富士ケ峰関悪という図式がまだ残ってるのか、観客の半分以上は明日川関を応援してます。
 いよいよ時間となりました。富士ケ峰関が片手を土俵に付けます。が、明日川関はなかなか手を付きません。富士泉関戦のときのようにじらしているのです。これも明日川関の戦法です。今場所も何度もやってました。と、いきなり両手を土俵に付けました。立会です。
 明日川関はやっぱり頭から行きました。それに対し富士ケ峰関は、ちょっと左の方に飛びました。時計で言えば、11時の方向です。
 2人の身体がすれ違いました。と、その瞬間明日川関の身体かぴょーんと飛んだのです。そして土俵にずさーっと落ちました。いったい何があった?
 リプレイが始まりました。立会2人の身体がすれ違います。このとき横綱の右足が明日川関の左足首に蹴りを入れたのです。蹴手繰りです。蹴手繰りを喰らって明日川関の身体が飛んでしまったのです。
 蹴手繰りは注文相撲です。横綱が注文相撲とは卑怯な! と、場内は罵声だらけになっちゃいました。
 そんな中、横綱が微笑みながら倒れている明日川関に右手を差し出しました。明日川関も微笑みながらその手を握り、立ち上がりました。で、その場で横綱に挨拶したのです。
 この行為に場内はびっくりです。明日川関は徳俵のところでもう1度横綱に挨拶しました。この行為はルール上の挨拶なのですが、かなり深々と挨拶してました。
 ぼくはちょっと気になって、明日川関の支度部屋に行ってみました。明日川関と相撲記者の会話によると、明日川関はいつも心の片隅に注文相撲を想定していて、相手が立会突き落としやはたき込みをやってきても、十分対処できるようにしてるんだそうです。でも、蹴手繰りはまったく想定してなかったみたい。
「さすが横綱だよ。自分が気づかないことを平気でやってくる」
 と会話を結んでました。明日川関に恨みつらみはまったくありませんでした。納得の敗北だったようです。
 さてさて、もう1度星勘定しましょう。銀奨関と誉関が12勝2敗、富士ケ峰関と富士泉関と市松関が11勝3敗となりました。このうち明日千秋楽に銀奨関と富士泉関、そして富士ケ峰関と誉関がぶつかります。もし富士泉関と富士ケ峰関が勝ったら、4人が12勝3敗となるのです。さらに市松関が勝ったら、5人が12勝3敗。う~ん、優勝同点が5人になったら、決勝戦はどうなるんだろう?
 ちなみに、横綱朝桜関も今のところ12勝1敗1休なのですが、たぶん出てくることはないと思います。

 翌日葵部屋の玄関の前に、いつものショーファードリムジンが停まり、そして玄関から富士ケ峰関と富士泉関が出てきました。
「頑張れ、富士泉~!」
「優勝しろよーっ!」
 周りにはたくさんのファンが集まっていて、声援を送ってます。あまりのファンの数に警察の人が交通整理にあたってます。すごい人気です。5日前は芸能レポーターだらけだったのに。でも、明らかに富士泉関の方に声援は集中してました。
 まず富士ケ峰関がリムジンの後部座席に乗り込みました。続いて富士泉関が乗り込みます。乗り込む瞬間富士泉関はファンに手を振りました。その瞬間、
「きゃーっ!」
 すごい黄色い声です。これじゃまるでアイドルです。リムジンが走り始めました。
 その車中、富士ケ峰関と富士泉関との会話が始まってました。まずは横綱から。
「おまえ、すごい人気だなあ」
「あはは、自分でもこんなに人気になってるとは、思ってもみなかったですよ」
「わしも頑張らないといけないな。今日誉に勝たないと、準優勝もなくなっちまうし」
 と、ここで富士泉関はずーっと疑問になってたことを横綱にぶつけてみることにしました。
「横綱、この前の話ですが、うちの親方は3場所前から横綱の成績が悪かったらクビにすると、本当に言ってたんですか?」
「ああ、あれか・・・ あれはウソだよ。あれを初めて聞いたのは、今場所直前だ」
 ああ、やっぱし。
「どうせたちの悪い脅かしだろうと思ってほっとくつもりだったが、どうも心の奥に引っかかっていたなあ・・・ お前のお蔭でなんとか優勝が見えてきたな。感謝するよ」
「い、いえ、自分は何もしてないっす」
「どうだ。わしもお前も今日は一緒に勝って、優勝同点ていうのは?」
「あは、一昨日もそんなこと言ってましたよねぇ。そんなことになったら自分と横綱で優勝決定戦ですよ。いいんですか?」
「あははは、構わないさ。わしもお前の内掛けを破る手を考えておいたんだ」
「へ~、どんな技なんでしょう? 見てみたいですねぇ」
 しかし、まあ、1週間前はあんなに反目し合ってたのに、ここまで仲が回復しちゃうなんて。あれは仲のいい夫婦がたま~に見せる夫婦げんかみたいなものだったのかな?
 ところで、横綱が大好きな競馬ですが、昨日横綱の部屋を見に行ったら、昨日はいっさい予想はしてませんでした。それだけ横綱は今日の一戦に賭けてるみたいです。ま、昨日の馬券の結果だけはチェックしてましたけどね。

 富士ケ峰関と富士泉関が会場に着きました。なんとそこには吉報が待ってました。富士泉関は敢闘賞と技能賞が決まっていたのです。これはすごいことですよ。富士泉関は限りなく新入幕に近い帰り入幕なのに、三賞の内、2つも受賞したんですから。
「すごいなあ、いずみ」
 横綱富士ケ峰関が祝福の言葉を言ってくれました。
「い、いや~、まぐれですよ」
「わしは殊勲賞と敢闘賞はもらったことはあるが、技能賞はなかったなあ。あれはみんな欲しがる賞なんだ。内掛けと13日目の三所攻めが認められたんだろうな」
 いやいや、それだけじゃないと思うよ。富士泉関は立会抜群なものがありました。あの立会なら立派な技能賞ですよ。
 ちなみに、殊勲賞は横綱富士ケ峰関に勝った佐々丸関と市松関が受賞しました。殊勲賞は基本横綱に勝った力士に与えられる賞です。佐々丸関は満場一致だったみたいだけど、市松関は異論続出だったみたい。まあ、あの危険なかち上げを連発されちゃうとねぇ・・・ 結局記者クラブとしては、横綱富士ケ峰関に勝ったという事実だけを尊重したみたい。


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