日々のメモ帳

日常生活での、ちょっと気になった事や、面白かった事などメモしていきます。

『品質不正』/日立化成㈱調査報告書から

2018-12-19 15:26:42 | 品質管理
前ブログで日経記事を受け、『製造業/『品質不正』という言葉をどうとらえるか』というMEMOを残したが、11月22日、日立化成㈱より今回の不正につき『調査報告書』が公開された。
三連休前でこの間日産の前会長逮捕などがあり、新聞等ではあまり大きな記事とはならなかったが、HPに全文が掲載されている。
膨大なページ数なので画面では確認しきれず、一部をプリントアウトし、この数週間学ばせて頂いた。
品質管理のありかたと言う点で、示唆に富む解析がなされており、過去同じような製造業に携わった者として、痛切な指摘も何ヶ所かあった。

『当社製品における不適切な検査等に関する特別調査委員会の報告書について』『調査報告書』(PDF)」日立化成株式会社(2018年11月22日)

この調査は、委託された同社と利権のない法律や会計事務所に属する何十人ものメンバーと、技術関係の方で、5ヶ月近くもかけ、社員への直接アンケートや各事業所を訪問され,品質にかかわる不適切行為の精査をされたとの事。
報告では、各事業所で発見した品質不適切の具体的な内容と共に、これを引き起こした業務実態、実行者、指示命令系統なども詳しく精査されている。さすが法律家を中心とした精査と感心させられた。
又、この調査では、事実関係を残すため電子データーをデジタルフォレンジックと言う新しい技術で、保全と検証をされたとの事。
森友事件ではないが、削除ファイルまで復活されたようであり、これらを基に各事案の源流まで遡った鋭い原因究明と事実関係の解析もなされている。

報告書の最終項では、会社全体としての問題を引き起こした本質的な原因につき鋭く切り込み解析がなされ、これらを受けて再発防止にむけた提言がまとめられている。

本報告書は日立製作所の内製的メーカーという少し特殊な会社での品質に係わる不正事案の再発防止に向けた報告ではあるが、日本の製造業。特に電気や自動車産業などを頂上とする産業へ素材を供給するメーカーが課せられている『今後のあり方』を問う内容と読み替えれる。
日本の製造業が培ってきた『高機能を維持しながら少量多品種の生産をどう継続させる』かとの課題が見えて来たような気がする。今後、大手で対応できなくなった製品を維持するために、中小へ移管させる事も出て来る可能性があり、ここでの品質保証の課題事項でもある。

最終頁の結語で(抜粋)
『日立化成の目の前には、
 開発段階ないし開発部門における不適切行為の調査、
 不適切行為対象製品の性能検証、
 国内子会社や海外拠点及び海外子会社の調査、
 不適切行為対象製品に関する顧客への連絡と対応、
 これらと並行した再発防止策の策定と実行
 など、取り組まなければならない課題が山積している』
との記載があり、さらに
『不適切行為対象製品に関する顧客への対応については、
 不祥事を起こした負い目はあるものの、
 サプライチェーンを展望した責任を果たすことを根幹に捉え、
 顧客との健全な関係性の第一歩としてほしい』
『サプライチェーンを展望した責任を果たすことは、
 ひとり日立化成だけの力で実現できるものではない
 サプライチェーンを構成する全ての関係者と日立化成が
 協同して、サプライチェーン全体の健全化を推し進め、
 我が国のものづくりの信頼回復を遂げていくことを切に希望する。』
とまとめられている。

報告でも書かれているが、今回の事案は、事業領域が大きく異なり、上場間で合併した旧新神戸電機に端を発した問題ではあるが、日立化成のサプライチェーンが、日立G内での子会社的な位置づけでのあり方から、新たに合併した会社が持ち込んだ今までの日立G以外の顧客、さらには、今後の発展のための『脱日立G』としての新規顧客獲得策まで議論を進めてほしいと示唆されている様にも思われる。

一方報告の中で、個々の製品群の売上額が決算報告等では明確に読み取れないが、一つのユニットで歴史ある何十品目もの銘柄を抱えた製品群の売り上げが年間50億円と記載されていた。
社全体の売上げは、7000億円近くであったかと思うが、この規模であれば、大企業の中にある中小企業であり、機能製品を残すためには仕方がないが、採算性や全社管理となると、これら少量多品種の生産を継続させる点で、今後のあり方も議論されるかと思われる。

サプライチェーンを支えるため『供給責任』を果たすことは重要であるが、会社維持のためのコストも加味した運営も急務であり、今回出て来た品質に係わる課題事項をすべて供給元で負担する事は到底できない可能性がある。
このため、規格項目削減となると、ユーザー側でも検証作業が必要となるが、上下関係で『いまさら』感もあり、なかなか受け入れてもらえない可能性がある。
供給維持のための価格への転嫁やさらなる理不尽な要求が継続すれば、『供給停止』も最終手段として考える必要があり、歴史あるOLD製品であればあるほど、供給側と共に受入側との技術面での相互理解も必要となってくると思われる。

このような事態となると、今までの歴史を知りえていない担当者では、ますます対応が難しくなるかもしれないとの思いであり、先のブログでの反省事項が再度頭をよぎってしまった。
+*前ブログで
・『データー改竄問題』は『顧客第一主義』が原因。
・規格値変更は膨大作業。現行踏襲。データー改竄
・定年退職者発生、『規格値』採用経緯が消滅。
・『カイゼン』で『顧客要求』に合う測定法工夫。
これらが不幸な事態を引き起こしたのでは。
・・とのまとめを書いた。

膨大な資料なのでまだすべて読み切れていないが、日本を支える製造業としての今後のあり方をあらためて考え直す内容であり、過去同じような機能化学品を扱う業界に在籍した者として、心痛む内容である。

以下、『調査報告書の結語』から感じた事をまとめてみた。

(1)『サプライチェーン全体の健全化』①
 本報告書では、個々の品質問題以上に、製品群やそのマーケットでの
 位置づけ重要性を勘案し、今後の事業展開を心配されている節もある。


日立化成の製品群は、大手メーカーで大量に汎用品として販売している商品ではない。
どちらか言うと多品種(品質毎も含め)少量の機能性樹脂や、技術が進歩し日本から出ていった老テックになりかけている電気関連の部品もある。
その特性からまだ小規模ではあるが高機能製品として需要があり、これらをどう残すかが問われているかと思われる。

先週末の新聞では、日立化成も日立Gから分離させられるような記事もあり『サプライチェーン全体の健全化』という点で大きな課題となるかと思われる。

例えば、今回の精査の中でも出てきていたが、数年前に合併の新神戸電機でも製造している『銅張積層板』などもその一つかと思える。
積層板は家電製品などの伸長とともに紙フェノールからガラエポへかなり移行したが、紙フェノールでも軽量で安価な事から、両面実装や高蜜化が進み、ハンダ耐熱やピール強度等、積層板に対する要求特性が高くなり各社とも高機能化競争をしてきた。
これが今回の規格値制定の中で問題となっている所であるような気がしているが。

その後電化製品の生産が中国へ移り、基盤自体も現地生産化が進んだため、汎用の積層板は海外移転から、現地メーカーの安価生産品に押され、国内生産は殆どなくなったが、一部の高機能化製品はまだ国内で生産されているようである。

この高性能な積層板が供給されなくなると、AIや自動運転といった電子制御機器への影響が出て来る事になるかと思われる。

このため、日立化成など国内の積層板メーカーも、採算や事業規模での観点から、事業撤退となると、顧客側からは供給責任での抵抗も大きく、すぐにはやめれない分野となり、一方で、要求品質はさらに高くなる事も想定され、板挟みとなりかねない。

報告書の中に
『当委員会は、本調査の過程で、サプライチェーンを展望した責任を果たすことと相容れない態度を示そうとする顧客側の対応に、日立化成が苦慮したケースもある事を仄聞した』
との記述があるが、
顧客が電子材関係、自動車、塗料、化学業界など、購買が強い所であれば、無理難題を言われる可能性があり、担当者ではなく、事業戦略を説明できるトップ交渉が重要になるのでは思われる。

特に過去何十年も供給している歴史製品では、4Mなどでの変更が起こった場合、顧客側でも相当検証に負荷がかかり、おのずと同品質での供給責任が突き付けられる可能性がある。
逆に、購入側でも業界を理解した危険予知、SCMを立てていただく必要があり、都度適切な報告が供給側からも必要となのかもしれない。

ただ、顧客側も若い担当者に代わるなどの中で、面談時間が限られ、供給側から相手方への情報提供も少なくなる事も多く、この点も業界全体としての課題なのかもしれない。
(日立ご出身の現経団連会長が文系はもっと数学や物理、化学を学ぶ必要があるとのご発言は、このあたりに通じる気がする。)

過去小生も、化学の教科書にもあまり出てこない反応性を有するメラミン樹脂やエポキシ樹脂などの機能性高分子を担当していた事がある。
当時の売り上げは年間十憶強で、何千億も販売している社内では、小規模ビジネスであったため、関係会社への製造移管や一部製品の事業譲渡を行う作業を行った事がある。

この際、『期限を切って出荷をやめるように』とTOP指示が出されたが、機能を買っていただいていた製品のため、顧客目線での作業を行う事となった。
高々月1千万円程度の販売商品でも、顧客での他プラント生産品や、譲渡先製品での切替検討作業で、機能特性がきっちり得られるかと言う検証とさらに先の顧客での確証を得るのに1年近くを要した。
現有の生産プラントが止まるタイムリミットが切られる中で検証作業や供給責任を果たすための在庫積上げなど、顧客側からの無理難題に対応し、この間の品質保証に苦慮したことが思い起こされた。

国内の同業他社が撤退してくれば、最後の『ババ抜き』となり、調査委員会が残された『サプライチェーン全体の健全化』という点が、品質問題以上に大きな課題となる事は否めない。
経営者として『偽装問題』では責任をとる事にはなるが、日本の基幹産業を維持していく上でこの機能分野でのビジネスのかじ取りの方が難しくなるかと思われる。

(2)『サプライチェーン全体の健全化』②
本報告書では不適切行為で判明した製品の出荷先が明確では無かったが、同社がモーター巻線用ワニスや積層板から、半導体材料、カーボン製品、さらには合併した会社でのヒューズ供給などから判断すると、顧客は日立製作所、もしくはその関連会社が主体かと考えられる。

過去からモーター巻線(エナメル線)や紙フェノール積層板には熱硬化型のフェノール樹脂などが主に使われているが
・反応性がある樹脂であるため輸送が難しい
・各最終製品に応じた特殊な配合物を混合させる必要がある
・エチレンプラントの様な大型設備でなく、反応釜さえあれば生産可能
・電機メーカーの秘密保持
などの点で、内製と言われる自社内生産や限定の製造委託先への受託生産されることが多く、化学業界でも特殊な扱いとされてきた。
同様な生産は、過去塗料やインキ、マイクロカプセル等のメーカーでも行われていた事もあるが、現状は委託先へ出されている事が多いかと思われる。

このフェノール樹脂などの生産する場合、親会社の研究部門が構造体を設計する場合もあり、子会社や生産委託先では製造のための条件検討を行う必要があるが、親子の力関係では親指導型となることは否めない。
最終特性が得られた製品を供給する際は、当然規格値が決められ、この管理は生産者側で担保する事になるが、製品設計を行った親会社に対するコミットとは逆に、最終製品は親会社の加工された製品として品質保証されるから大丈夫等との甘えも出てくる可能性がある。
一方で、外部へ生産を託した所では、何が何でも供給先から突き付けられた規格項目、管理幅の踏襲は絶対であり、下請けとしての悲哀が出て来る可能性がある。

今回の報告書でも何カ所か出てきているが、試作から本格生産、継続生産の中では、このような反応性を伴う樹脂は振れ幅もあり、自社で判断できない場合は、『先行サンプル評価』『特採申請』といった作業で安易に対応する場合も出て来る。この感性も、親子以上に上下関係の歪ではないかとも思われ、逆に言うと『特採申請』で不良品が出ても、供給先で処理できるようであれば、製造工程での異常も見逃す危険性もあるのではと危惧される。

今回の事態も日立G全体での問題でもあり、多分、巻線用ワニスなどは他の化学会社へも生産委託をされているかと思うが、この品質監査をそのまま日立化成へ適用されていれば、今回の様な問題が長年継続されることはなかったのではないかと思われる。

この他、電気部品に用いる化学材料は秘密性が高いが故に、上記で述べた通り内製化が多いと思われ、電機メーカーが海外へ進出してもついて行くことになり、ここでも親子や生産受託での上下関係、系列化と言ったしがらみは取れず、このあたりも日本型サプライチェーンの大きな課題かと思われる。

報告書にあった半導体封止用エポキシ樹脂なども、構成するエポキシ樹脂や配合剤はすべて外部購入ではあるが、樹脂を乗せるためのノズルからの流動性や、焼き付けやリフロー特性で配合設計も変わってくるかと思われる。この薬剤を同社が系列を超えて、例えばパナソニックGに販売できる事は動議的に不可能とも思われ、日本の電子材産業が海外へ出て行く中で、G内での伸長展開も難しくなる。さらに封止剤専業メーカーとの競争となると製品設計力と品質保証両面での製造となり、将来性を考える必要がある。

日立製作所の先にある自動車産業までを考えた時、車がEV化、自動運転化されると、モーター設計、Li-B等の蓄電池、さらには電子部品設計で新しい素材が必要となる可能性もある。Gパワーの中での日立化成のポジションが、親子、下請けとならないような、開発でのイコールパートナーへもっと強く舵が切れればいいのであるが。

社方針の中に『落穂ひろい』との言葉があったが、下請け的マインドとも読みとれ、これが今回の会社風土を悪くしている様にも思える。
やはりGで縛られるのではなく、新しいビジネスを積極的に切り開く思想が出てこないと、品質を含めた『行動規範の高揚』にはつながらないかとも思われる。

もう一点、日立製作所との関係では、昔からの『縦割り社会』が浸み込んでいる可能性もある。
この点でも新たなサプライチェーンを見つけ出すことで、全社横横断のプロジェクトなどが生まれ、再生する事を期待したい。
暴論であるが、『住友ベークライト』のような、大手の化学会社の巨大組織の一員ではなく、グループの枠にとらわれない一匹狼として、電気と化学をつなぐ専門会社となる事も、日本のサプライチェーンを再構築すると言う点で必要なのかもしれない。

特殊な化学品は製造設備や周辺環境、さらにはこれに係わるコストもあり、過去からの蓄積も必要で、少量多品種の生産を中小へすぐには渡せない事もあり、前項①での事業継続も含めての組織つくりも急がれる所かと愚考する。

(3)『統合・合併した会社運営の一体化
      (国内子会社や海外拠点及び海外子会社の調査)』

本報告では直接触れていないが、日立化成は、もともと内製的原料を供給していた化学工場が独立し、その後、G内の関連した部品や化学製品を供給する多種、異種の工場が合併し運用されている。
このため、生い立ちが違う会社での文化、イズム、さらには過去の社員教育を含めての一元化に対する取り組みが今後の大きな課題と思われるが、本報告では詳細には解析されていない。
会社規模や仕事のやり方が違う会社同志では、コンプライアンスマインドの温度差はすぐには解消できないと思われる。
社内をどう一体化するかが経営陣に課せられた先決課題とも言える。さらには、今までの文化が違った会社の海外拠点までコントロールするとなると、組織力、特に人力がさらに必要となる可能性がある。

この吸収合併の問題については、小生が担当していた製品を子会社へ移管時に痛切に感じた事でもある。
まず1点目は親会社と子会社の関係である。
子会社へは親会社から社長、関係役員、さらには実務担当の管理社員までが出向や定年後再雇用の形で送り込まれ、落下傘部隊と揶揄された事もある。
当初は親会社から移管された製品を子会社が製造する場合、親会社のマザー工場経験者が製造ラインや管理の中心となって子会社を支えたとの事であるが、その後、マザー工場も縮小し、人的な面で部門を異とする出向者も増えた事もあり、子会社独自の文化との融和に時間がかかる場合も出てきている。
この背景には、出向者の能力の違いもあるが、受け入れる側での融和力、理解力も必要となり、今回の問題で、現場任せになっていなかったかが心配である。
即戦力のためには、親会社からの派遣する人材は、地の利が必要であるとも感じている。

二点目は子会社間の合併である。
親会社の経営的な意向で、強引に関係する子会社A,Bを合併させたため、この融和に10年近く有している。
合併前の子会社A、Bは各々生産工場を有し、そのまま本社組織だけを統合後の主会社Aへ移し、社名もAを踏襲したが、統合合併させられた会社、B側の社員の不満は大きく残っていた。(この統合前後の移管作業となり、生産から出荷開始まで色々と問題を生じた。)

子会社A,B社では生産品目も大きく異なったため、合併直後は旧の子会社A,B独自での生産対応をしばらくは踏襲する事になったが、人事管理はともかくとして、安全管理、品質管理などは、現状、見掛け上は一体化したが、まだ2本立ての様相は否めない。
ただ統合前の子会社A側が比較的人的には余力があり、生産ラインのトップなどが交流する中で融和が図れ、B側の工場空スペースに新設の工場を設置するなどで、やっと一元化が計れる事になって来た。
A側から見ても、本社機能は残されているが生産規模ではB側がはるかに大きくなり、10年も経つと両社の古い人間も徐々に定年退社し、この違和感が無くなって来たのは事実である。

会社として、役員会や主要定例会議などを双方の工場で開催するなどでの均等化の努力もあるが、人の心を動かすまでには時間が必要である。
この真の心の充足感が満足されないと、品質管理基準の一体化、さらにはコンプライアンス遵守といった基本の考え方の浸透もされにくいのではと思われる。

今回指摘の多かった事業所は、2014年旧日立粉末治金、2016年旧新神戸電機、旧日立化成ポリマー、旧日立化成フィルテックなどのとの合併での組織一体化が行われた所である。
まだ合併・統合後時間が浅いので、管理システムなどを含めて十分に構築出来ていない事が、今回の調査で如実化したのではと思われる。

小生が係わった子会社では、ISOやJIS対応での一体化も検討を進めているが、生産品目が大きく異なったり、生産方法が少量からバルクに近い製品となると取りまとめも難しくなり、個々での議論も必要となった。
何れにしても『ルール順守』が出来る管理とするためには、全社横断で、内容を熟知した、全体を見渡せる部門が必要となり、この構築が最優先かもしれない。

あわせて、生産移管を外部の子会社へ出す場合、長さや重量と言った単純な規格幅で管理できればいいが、今回問題発生の『機能を規格値で評価できない』製品などについては、品質管理面では子会社などへの移管以上に問題が出て来る。

小生が経験した中でも、製品はSPEC内でも、包装材の管理が出来ておらず、天向けのドラム缶に水が溜まっていた中へ製品を充填してしまったなど、管理レベルはさらに高度とする必要があり、この項とは異なる所で実態把握した上での検証、改善が必要となるかもしれない。

親子の会社関係、生産委託委託先との関係いづれも、委託する側からのしっかりとした指導と、受ける側も、受け取る力を最大限発揮する事が肝要であり、このためには上下をなくすことが必要なのでは感じている。

(4)『開発段階ないし開発部門における不適切行為の調査』
報告書の仔細内容で蓄電池などの所は門外なので判断は難しいが、斜め読みした中で、今回の問題の根底は、『品質部門ではなく、製品化する中での研究や開発部門の関与が大きかった』との事が指摘されているが、接着や塗料、硬化などの反応性を有する分野、独特の事なのかもしれない。
前々項(2)で少し触れたが、電機部品製造メーカーの内製工場、下請けとしての開発について、もう少し検証が必要かもしれない。
この点で『開発段階ないし開発部門における調査』が、製品を仕上げていく中で、どの段階でどのような役割をしたのかの検証を受ける必要があるかとも考える。

この問題発生の同じような機能性樹脂の開発に携わった者として少し言い訳的になるが・・
農薬や医薬などの化学品の開発は、スクリーニング段階の薬効で主成分の構造が決定し、それを効率よく生産する事で製品化されるが、巻線用ワニスなどに使用する反応性のある樹脂(熱硬化性樹脂)は、顧客側で最終の機能検証を行いながら仕上げていく必要があり、製品決定と開発から製造までのステップも異なり、規格値決定も少しあいまいさが残ってくることは否めない。
この点、顧客側との最終取り決めを『開発設計』だけに責を負わすわけにはいかないかとも考える。

ワニスなどでは、過去の色々な知見から原料を探し、硬化特性などから概略組成を決め、自社内で最終品の評価が出来ない事もあり、フラスコ段階のラボ品の提供から始まる。もしくは、ユーザー側からフラスコ試作の合成ルートを入手し、この再現性検討からのスタートとなる事もある。

このラボ品で特性が得られれば、組成や分子量などを変えたラボ品で周辺検討を行い、合格すれば少し大きなスケールで試作し拡大評価を受ける。
これでOKとなれば、顧客側での周辺データー採取、実製造に向けた問題点検討も含め、何回かの少量試作機でのトライアル生産を行う。
このステップで最終の電気機器まで組み込めるレベルの確認がなされ、再現性や耐久性などに問題が起こらなければ、仮規格を策定し実生産機での試製造。顧客側では量産一歩手前の量産製造となり、合否を待つことになる。
この後、顧客側でのラインテストのための仮製品供給が必要となり、実機でのトライアル生産を継続するが、売り上げが立たない事が多く、開発部門扱いで、検査成績もここからの発行となる。
末端顧客での耐久試験が長引けば、受注確定までに数年かかる事もあり、本格生産開始となる。

この間、試作段階で決めた仮規格は、特性を得るための製造条件の微調整や、実機での何ロットかの実績から見直しをかける必要が出て来るが、受注時に取り交わす購買仕様書では、すでに顧客側では仮規格が正式規格となっている場合もあり、変更に手間がかかる場合もある。

前(2)の所で記載したが、反応性のある機能性樹脂は反応途中で縮合なども起こるため、農医薬のようにきっちりとした構造体の純度を求める事が難しい。さらに反応装置(釜)の容量が変わる事での反応条件や、使用する原料を汎用工業製品へ切替えるなどで、出来上がる製品分子量も振れる事が多い。
この分子量の一つの指標として製品粘度規格を決めるが、規格化しにくく、管理幅を逸脱する事が出て来る。
又、機能特性を成分含量で代替する事もあり、樹脂量を不揮発分で測定したり、比重値で求める事もあるが、機能を保証するものではない。
このため特性を求める必要があり、JISやISOに規定されている評価や、開発途中で最終製品に近いモデル品を作成し、その機械的特性から機能を評価してきたことを踏襲して評価する事も行っており、これが規格値として決めていれば都度、手間はかかるが測定が必要となる。

旧日立化成ポリマの徳島工場での、剥離試験の基材として『OHPフィルム』使用など、剥離剤の機能を代替して指標とする数値を創意工夫で求めだすために検討を行い、顧客との仕様書にも盛り込んだ事からの『データー偽装』となってしまっている。
本当に末端の剥離性能が、この『OHPフィルム法』で正しいのかどうか。必要なのかどうか。

何れにしても、機能化商品は、ポリエチレンなどのBIGな商品ではなく、反応釜で一つ一つ炊き上げる小ロット、多品種が多く、その開発は、大手の化学会社の中でも中小企業的な『手作り製品』に近い所は否めなく、今後『開発』が難しくなってきそうである。

中小の化学会社では、原料取り扱いや反応後の釜の洗浄、危険物対応、専門性などで簡単に受け入れられる所も少なく、機能化学品継続のためには、当面大中化学会社の二軍、三軍での対応が続くのかもしれない。

(5)『サプライチェーンを展望した責任を果たすこと』
本報告書では従業員教育や部門内教育、さらには担当製品の知識教育などがあまり取り上げられていが、『サプライチェーンを展望した責任を果たすことは』を考えるためには、担当している製品がどんな所で使われ、どのような重要性があるのかの認識が、コンプライアンス遵守、品質維持には重要な因子と感じている。

今回問題があった製品が、1900年代、平成前の製品であれば、若い担当者にしてみると生まれる前、入社前であり、平成元年入社の社員でも50代の幹部社員ではあるが、ちゃんとスタートまでの歴史が共有されていたかと感じている。

前ブログでも書いたが、製品を開発時の設計思想や、そこでの取り決めが品質規格の改訂書類の中に残されていればいいが、単なる改訂履歴だけであれば、前項で書いたような『なぜその規格が決められているか』という事が見えなくなってきてしまう。
これが伝承的に『測定をかえても大丈夫』『改竄しても大丈夫』さらには『測定しない』となってしまい、最初の規格値で決めた取り決めが危険予知となってこない。

当然管理範囲の逸脱は工程内での異常であり、何かの変化点であるので、これを見出す重要な指標である事は間違いない。

これに加え、製品がどんなところへ使われているかと言う教育がさらに重要である。
昨今定年で開発当時のベテランが去る中で、最終の使用先が見えなくなっており、これが最も危ない事である。
今回の調査報告の中では、この数値を求めない事や改竄する事での危険性まで明確には書かれていないが、Li-Bなどであればボーイングでの火災事故が起こったような暴走もあり、積層板では基盤不安定での制御不能といった事態が起こるかもしれない。

サプライチェーンの出発点であるが、最終どこまで使用されているかを知る事も、供給者としての責務であり、これを知る事で品質に対する意識は格段と向上するかもしれない。
さらに現状に照らし合わして、不要、陳腐化した規格値も洗い出しが出来、顧客との真の技術的対峙も出来るとも思われる。

このためには、製造する技術部門だけではなく、営業部門の担当者でも勉強しておく必要があり、『門前の小僧』で文系の担当者も知識吸収を急いでもらいたいものである。

さらに、OLD製品は受ける顧客側でも認知されないものとなっている可能性があり、購買担当者へも常々情報提供が必要かと感じている。単に製品周辺だけでなく、この素材製造にかかわる原料背景や生産設備回りなども十分説明しておけば、中国からの原料手配不可や何らかの生産設備不具合での生産ストップ時の対応など、双方でのBCP、SCMが整うと思われる。
LowTecな製品であればこそ、重要な作業であり、末端への影響度も小さくできるかと考える。

冒頭の所でも記載したが、下請け的になるとこの気概も低下し、製品への愛着も希薄になるが、古い担当の方が在籍の間に何とか整備される事が重要であろう。

さらに、全社での製品知識高揚も必要であり、どこの工場でどんな製品を作り、さらには、こんな所へも使用されているという事が判れば、先項で酷評した『落穂ひろい』もあらたな開発のネタとして拾い起こせる事となるのではなかろうか。

*;*:*:***
1週間ほどかけてのメモ記述となった
 内容のダブりや語句のミス、打ち間違えもあるかと思う
 順次訂正していきたい。

あわせて、原因分析のまとめで
『本調査において判明した各種の不適切行為は、
・・日立化成の行動規範が形骸化している事』と結論付けられ
その背景には
「1.品質に対する過信・甘え、品質の軽視」
「2.サプライチェーンを展望した責任感の欠如」
「3.顧客からの要求やプレッシャーに対し迎合する姿勢
  さらには面従腹背の姿勢」
といった全社的な組織風土が大きく影響と解析されており
これが「現場における品質に対する意識の欠如」に繋がり長期にわたる不正行為が発生したとの事。

品質保証部の役割が
「適正な検査と品質管理活動の推進」ではなく
「顧客クレーム処理する事の重視」という目的の誤認や、
これが部門横断的な規範意識の鈍麻となり
「品質保証担当者が社内規定や顧客との取り決めに
   違反する事に対する心理的抵抗が少ない」となって

いるなどと言う厳しい究明もあり、この点もう少し報告書を読み解いてみたい。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日経『「ヒット商品番付」で... | トップ | 2019年始動開始 年始の話題と... »
最新の画像もっと見る

品質管理」カテゴリの最新記事