コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

「旅日記」

2005-01-03 10:26:16 | 
さて、ここからが問題です。
「原文ママ」は、原文を母親が書いたという意味ではありません。
母は5年前の正月に遠くに行ってしまい「まだ文もみず」です。

紀行文をいつ書くのか、という問題は、語り論の中でかなり重要な意味を持ちます。
近代以前、旅をしながら、全く同時に文章を書くというのは、ほぼ不可能でした。乗り物に乗れば別?
たとえば、紀貫之が船の中で『土左日記』を書いたとか、清少納言が牛車の上で筆を執ったとか? 芭蕉は、馬に乗ったまま短冊書いたといってますが。
つまり、現在進行形で書かれていても、書いているのはどこかに落ち着いたあと。下手をすると旅そのものが終わって随分たってからなワケです。
曾良の『旅日記』にしたって、歩きながらではない。

近代小説の中には、「乗り合い」車中の描写が見えますが、それだって、回想です。芥川がいくら優れた描写力があったにもせよ、蜜柑が放り投げられる前から何か予知して観察・筆記始めてたわけはなく、その衝撃から遡るしかない。

ところが、あ『電車男』まだ読んでないんですが、携帯電話やモバイルコンピュータの急激な発達は、単純にコミュニケーションツールとして、ではなく、記録媒体、携帯筆記具として、生成されるテクストに同時性という問題をもう一度突きつけて居るんじゃないかと。

私が「旅日記ー1~3」でやろうとしたのは、とりあえず、移動しながら書くこと。実際には、思考の流れと、文字化、さらに空間移動にはずれが生じるので、完全に「意識の流れ」描写にはならないわけですが。

今後、時間があったら、手を入れて、「書く現在時」から回想的にかたりなおして見たり、いろいろ試してみようかな、と。
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6 コメント

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いつ執筆したか (鶴岡法斎)
2005-01-03 11:44:12
これは結構重要な問題かと思います。

自分の場合はことエッセイにおいては目の前に誰か「いる」と仮定してその相手に話しかける、という手法を使っています。

要は徹底した無駄話文体。自分が「評論は向かん」とマンガ原作の方向に「転職」したのもこの文体が半ば完成してしまったことが原因のひとつといえます。
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仮想読者 (こにた)
2005-01-03 11:55:07
法斎さんありがとうございます。



実は、論文を書いている時にも、誰か具体的な読者を想定することがあります。

もちろん、今学生たちが取り組んでいる卒業論文やレポートのように、特定の教師にわかってもらえればいい、というようなものではなく、パブリックなものとしてでも、ということです。

学生の文章も全部公開にしないと、なれ合った表現が多くてまずいんですが……。



時間だけじゃないんですよねぇ。

仮想された執筆環境という枠の中に語り手は棲息している、という話。



この話、続きそう。
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大衆ってのは (鶴岡法斎)
2005-01-03 13:53:15
不特定の「個人」ですからね。

自分はやっぱり漫談や落語からの影響が強いのかな。

お客さん相手に話をするっていう。

ネットの普及でリアルタイム執筆というのが「それはそれ」で確立されたものになるかもしれません。

ただ読み返したときにそれは「作品」足りうるのか、とかいろいろ考えさせられますが。
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そうなんですよ (こにた)
2005-01-03 13:57:05
さっきの1~3は、「作品」たり得ているのかどうか、どこをどういじったら作品になるのか。

携帯小説みたいなものは、メディアが外出してるだけで頭はそっちに入り込んでるので別。描写や意識の流れの実況としてのリアルタイム執筆の可能性って、もう一回考え直していい気がするんですよねぇ。
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三島の (鶴岡法斎)
2005-01-03 19:04:21
豊饒の海の最期のあたり。

車で移動するシーンが妙にリアルタイム執筆っぽくて不気味なんですよね。
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 (こにた)
2005-01-03 19:11:35
そうですか。

家に帰って読んでみよう。



透の居た監視所、大学の近くらしいんですよ。

まだ探し当ててないんですが……。

静岡だったか清水だったかから、駒越にいって、そこで車降りて、イチゴのハウスの道を上っていくんですよね。

あ、見てみます。
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