コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

予感

2010-10-21 14:42:11 | 鞠水
日曜の龍津寺須弥山儀イベントは、予告通りの歴史的快挙になりました。

一昨年の静岡ハリストス正教会イベントも大盛況で素晴らしい会になったんですが、基本、学生たちの勉強の発表会におつきあいいただいた、という感じがありました。

今度は、本格講演会です。

そして、只今最後の追い込み中。
これは、すごい講演会になると思います。
そこらの美術館の講演会を凌ぐ充実した内容、そして勿論、解説付きで本物の鑑賞が出来て、しかも無料。
そして、1回限り。




私が静岡ハリストス正教会について識ったのがいつだったのか、はっきり憶えていませんし、正直山下りんという人のこともそれまで知らなかったように思います。
それ以来、ずっと気になっていて、知り合いの主催するコンサートでアークホールに行った時、初めて聖堂に入れて戴いたのでした。これは、ホンの3年くらい前の話です。

それで、08年度の授業で取り上げた。

授業の取材を通して、改めて、この聖堂やイコンの文化財的価値の高さと、その置かれている現状を考え、このままではいけない、と言う気持ちが増すばかりでした。
発表会終了後すぐに、講演会・見学会を定期的に開催したい、と、周りに触れて回ったのですが、やっぱり私が動かないと率先してやろうと言う人は出てきません。
そんなわけで、一年あいてしまい、しかも、他の企画とも色々重なる中での開催になってしまいました。
しかし、そのおかげで、吉田稔美さんから、金沢百枝さんというとても素敵な先生をご紹介いただけた訳です。

吉田さんは、絵本作家、イラストレーター、それから、ピープショーという、ヨーロッパの覗き絵本のようなモノを作ったりしている方ですが、西洋古典に非常に造詣が深い学究肌。
今回の画像資料も既に戴いているんですが、これ、眺めているだけでも愉しい!

山下りんという、ちょっと形容しがたい壮絶な人生を送った女性画家の作品とヨーロッパを含む美術状況、そして、御自身を含む現代の末裔たちにまで及ぶ、大きな物語になりそうです。


金沢さんは、中世ヨーロッパの美術史が御専門で、ルネサンス以前の宗教美術に光を当ててこられた方です。
我々になじみの西洋美術が“芸術”として開花する前に存在した作品たちにも、素晴らしいアイデアがあり、技術があり、美があるということ。それから信仰生活に根ざした美術。
今回は、中世宗教美術史の中のイコンというお話の予定だったのですが、どうやら山下りんにも踏み込んだお話をして下さるようです。

お二人とも、山下りんは“専門外”のはずなんですが、その魅力に取り憑かれてしまったようで、お二人にとっても、新しい挑戦になりそうです。



龍津寺でもしつこく言ったことですが、私がこういうイベントを開くのは、勿論自分自身の好奇心を満たしたいから、というのがあります。逆に、大学や学生のため、と言うのは表向き必要だけれどそれほど意識しているわけではないし、“地域貢献”だとも思っていません。

ただ、この場所に伝えられて、今存在している素晴らしい物を、ちゃんと次の世代に引き継いでいく使命みたいな物は、古典籍や浮世絵を扱っている江戸文化研究者として、常に意識しています。

小島の人たちは、素晴らしい共同体社会の中で、有形・無形の文化財を継承していく意志をはっきり持っているように感じます。
静岡ハリストス正教会の皆さんも勿論そうなのですが、真摯な信仰の場であるが故に、一般市民とのつながりが希薄になりがちで、あまり知られないままここまで来てしまっています。

わたしは、ここを美術館にしろとか、貴重な文化財は安全な収蔵庫に保管せよ、とか言うつもりはありません。
まして観光スポットなど論外。
ここは、信仰の場です。
そして、イコンは信仰に欠かせない重要な“道具”です。
だから、このまま、大切にずっと後まで伝えていく必要がある。

私たちは“部外者”で、信仰生活とは関係ないけれど、場合によったら相反する思想を持っている人もいるかもしれないけれど、それでもこれらを文化財として後世に伝えていくことに、少しでも力になりたい。
少なくとも私はそう思っています。

そのために、私の出来ることは、まず、それがなんなのか、少しずつでも良いから地域の皆さんに知って頂くことだと思っています。

大きな箱の美術館を作って有名な作品を陳列するのも結構な話だと思います。入場料収入を成功の基準にするならそれで大成功のはず。
しかし、そうやって外からやってくる素敵な物ばかりに目を奪われて、自分のすぐそばにある、唯一無二の大切な物を喪いかけていると言うことに気づかないのでは本末転倒でしょう。

地域の文化を支えるとはどういう事なのか、専門家筋では全く話題にもならないだろうふたつのイベントを通して私が発するメッセージなど、ほんの僅かな人たちにしか届かないと思っていますが、少しずつでも何かが変わっていってくれれば、と祈っています。


当日はお二人の著書を販売します(勿論サイン会も)。
是非この機会にお求め下さい。

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