KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

伊豆・城山南壁

2019年10月26日 | フリー(伊豆)

日程:2019年10月26日(土)日帰り
天候:
同行:カワちゃん、ホソダくん、弟子、くりりん(我が社の山岳部)

 この10月は季節外れの台風が続いて、関東甲信地方の各地も甚大な被害が出た。
 山でも八ヶ岳で美濃戸口先の橋が流されたり甲斐駒黒戸尾根の登山道が五合目辺りで崩壊。当然岩場にも影響が出て、しばらくジム通いの日々が続く。
 10月最後の週末、ようやく天気が少し回復するということで居ても立ってもいられず、我が社の山岳部の有志で伊豆方面へ。
 土曜に城山、日曜に城ケ崎と一泊二日の予定で出かけたのだが・・・。
 
 まずは城山。
 結局、昨夜も雨が降ってしまったので、少しでも乾くことを期待して土曜昼に現地集合とする。
 ところが先行したカワちゃんからの連絡では上の岩場、峠の駐車場への林道は台風の余波で閉鎖しているとのこと。

 しかたなく南壁にしたが、それでも下から見上げる城山は雨を大量に吸っているようでこれまで見たこともないほどに黒々としていた。
 アプローチの山道からして水が流れ、沢歩き状態。こんなのは初めてだ。

 それでも物好きはいるもので、南壁下に着いてみると数組の集団がスラブに取付き、中にはマルチをやっている人たちもいる。
 この秋の長雨で、皆さんよほど欲求不満になっていたようで・・・。

 ただ壁にも大きな沁み出しがあって、登れるのは限られた範囲だけ。
 ブルースカイとスクールゾーン一帯は大きな染み出しがあってダメ。マルチも上半分は濡れている。
 とりあえず、登ったのはこちら。

ホームボーイ 5.8
アミーゴス 5.9
とんとん拍子 5.8

 

 
 
 皆でそれぞれ交替しながらリードするが、「アミーゴス」は出だしのスラブが濡れていてヒヤヒヤ。
 「とんとん拍子」は割と乾いていて、今日のコンディションの中では快適に登れた。
 
 新人のホソダくんは今日が外岩デビュー。ジムでは2級をコンスタントに登るらしいが、初めての外岩、しかもまだ数回目のロープクライミングがこの悪い条件では酷だったろう。
 しかし、高校の体操部出身だけあって、さすがの体幹。本日リードでこれだけ登れるなら、すぐに5.12とか行っちゃいそうだ。

 終盤、ビレーをしてたら突然後ろから声を掛けられ、振り向くと旧知のjuqcho氏。こうした岩場で会うとは珍しい。
 女性二人を連れ、西南カンテを3ピッチまで登ってきたとのこと。上の様子を聞くとやはりワイルドボアなどは台風被害で閉鎖されているらしい。
 
 連れの女性一人が物足りないのか登りたそうにしてたので、我々がやっていた「とんとん拍子」を登ってもらう。
 いつもよりは湿っぽいのでジワジワと慎重に登っていたが、ハングの下に着いたところでjuqcho氏が「もうその辺にしといたら。」と言って強制(?)終了。
 こちらは全然構わないので、最後まで登らせてあげたらいいのになぁ。

 最後にカワちゃん、ホソダ、弟子が「ロンググッドバイ」5.10bを登る。

 
 自分は今月初めの台湾帰国後から喉の調子が悪く、本日は岩場に着いた頃からとうとう声が出なくなってしまった。
 一応、みんな一泊のつもりで用意をしてきたが、城山ではこれ以上登れるエリアがなく、明日予定していた城ケ崎も高波のせいで微妙である。

 しかたなく今回はこれで終了。いつもの太陽食堂でフライ定食など食べてお開きとする。
 熱海経由の下道で帰ったが、途中で湯河原花火大会に遭遇。岩はシケていたが、季節外れの花火を鑑賞できて、まぁこれはこれで良かったか。

 

2019台湾の旅 #4-龍洞、九份、士林

2019年10月09日 | 海外
四日目(10/8)天候:
 行程:台北-基隆-龍洞岩場視察-九份-台北-士林夜市-北投温泉街-台北-桃園国際空港
 
 さて、いよいよ今回の旅の最終日。
 主たる目的の玉山登山は、無事に主峰、東峰、北峰と二日間で富士山より高い3峰を登ることができ満足だ。
 本日は観光と視察を兼ね、台北北部をぐるっと回ってみることにする。

 
朝の台北中心街(左)と港町・基隆
 
 台北のホテルを早朝チェックアウトし、まずはバスで北部の港町「基隆」へ向かう。
 ちなみに旅のガイドブック「地球の歩き方」では「キールン」とフリガナがあるが、実際これだと現地の人になかなか伝わらない。
 バスのアナウンスでも言っていたが「ジーロン」が正しい発音のようだ。
 まったく「地球の歩き方」め!などと一人毒づいていたら、バスの網ポケットにしっかりその本を残したまま下車してしまった。
 すまん!「地球の歩き方」。
 
 まぁ今やスマホがあれば、こうしたガイドブックは不要だが、自分の場合、画面が小さくアプリが限られているガラホなので、この先やや不安ではある。
 とにかく片言英語で現地の人に聞き回り、本来のバックパッカースタイルで臨むしかない。
 
 基隆はメイン通りで降りた目の前がもう港になっており、なかなか風情があった。
 自分が住む横浜も港町だが、ちょっと雰囲気が違う。行ったことはないが、ビートルズの聖地リバプールももしかしたらこんな感じかと思ったりした。
 
 残念ながら今回はここでゆっくりできない。
 今日の主な目的はここから再びバスに乗って40~50分ほど先の「龍洞(ロンドン)」である。
 そこは海に面したクライミングの岩場で高さは約50m?幅は約1km?南北にわたってスッキリとした岩壁が連なっている。
 最初よくわからず、また下車のベルを押したにも関わらず運転手にスルーされ、奥の南口の方まで進んでしまいバスを降りる。
 平日ということもあって特にクライマーらしき人たちの姿を見かけることもなく、岸壁沿いの遊歩道を歩いていく。
 城ケ崎のようでもあり、伊豆七島の式根島の海岸線のようである。「火曜サスペンス劇場」の舞台になりそうな断崖が続く。

 
 
 だいぶ歩いた所で下方にチラッと学校のような建物が見えたので適当に降りていくと、そこが北端の「校門口(School Gate)」だった。
 近くにいたダイバーに聞いて、さっそく岩場を視察。よく見るとゴーロの中にうっすらと赤ペンキで矢印があり、歩きやすい道を示している。

 

 で、最初に迎えてくれたのはなぜかヌーディスト集団!
 まだ20代らしき若い台湾女性がトップレスで二人、しかも一人はもう今にも産まれそうな巨大なお腹を抱えている。
 
 その他にはバスタオルを腰に巻いた男性が数名、そして岩場から落ちたのか腹に大きな傷を負い、血だらけになっている関取のような男。
 スタッフやカメラマンもいて、どうやらB級映画の撮影らしいが、ちょっとマジマジと見てしまった。w(さすがに写真は無し)
 
 その横では本来のいるべき人たち、クライマー集団がトップロープで講習をやっていた。
 今回、シューズ、ハーネスは持ってこなかったので登ることはできないが、リーダーらしきニイちゃんにエリアについていろいろ教えてもらう。
 そして昨夜のうちに台北の「登山友」でトポ「ROCK CLIMBIG TAIWAN」を買っておいたのだが、このトポは秀逸。
 写真が美しいし、初見にも関わらず、すぐにトポと現場が照合できてしまう。
 
 
 
 
 
 
 
 結局、この日は「Long Lane」「Music Hall」というエリアまでをつぶさに観察。
 岩は砂岩でスポートルートのボルトはケミカル、乾きは早そうでフリクションはバチ効きといった印象。
 「I'll be buck !」近い内、必ず戻ってくるぜと岩場を後にする。
 
 その後、たまたま見つけたタクシーで「九份(キューフン)」へ移動。
 
 

 日本人にはお馴染みの階段と赤提灯の観光地。あの宮崎駿に強くイマジネーションを与えた町並みだが、いつの間にか町の方が宮崎駿人気に預かってる気配が漂っていて、土産物にジブリキャラが目立つ。
 アンチ宮崎の自分としてはあまり面白くなく、また9年前来た時よりさらにメイン通りが「江ノ島」化してしまって、ちょっと残念である。
 チャーハンを食べて、台湾女子の営業スマイルに負けてお土産を買ったら、即退散。

 

 

 

 バスで台北へ戻り、登山用品店巡りの続き。
 patagoniaに寄り、オリジナルTシャツに期待したが、残念ながらメンズは売り切れ。
 台湾スタッフに「メンズ、ソールドアウト!ザンネン!」と片言の日本語で言われる。いや、そんな力強く言わなくても・・・。w

 
 
 さらにMRTで「士林(シーリン)」へ移動。
 ここも9年前に来たが、夜市で賑わう町だ。ここならではのローカルフードが満載で、人気の「小腸包大腸」を「西瓜ジュース」と共に買うが、それほど旨いものでもない。
 正直、台湾フードは味が薄く微妙な味わいで、同じアジアン・フードなら自分は断然「韓国」派である。
 お土産のパイナップルケーキ、干支の文字盤がシブい腕時計(700円・笑)など買って、次へ移動。

 

 

 MRTに乗り、市街北部にある「北投(ベイトー)温泉」へ。
 ここは温泉街で、一番安く手軽な露天風呂公園を目当てに行ったのだが、ここで一悶着。
 混浴なので水着着用となっており、わざわざ日本から持ってきたのだが、水着にも良し悪しがあっていわゆるトランクスタイプはダメとのこと。
 そんなの知らずに券売機でチケットを買い、入ったらオババが水着を見てコレはダメだから改めてダサいスクールっぽい水着をここで買えと、のたまう。
 あまりにも一方的な言い方にちょっとムッとし、「じゃあいいや、入らないからペイバック。」と言ったら一度払ったお金は返さないと言う。
 はぁ?ここで思わずブチ切れる!

 【要注意!】ピッタリしたスクール水着でないと不可。
 
 悲しいことに中国語で文句を言えないので、英語で悪態をついてその場を後にしたが、思い直してまた戻り、後から来た別の客に事情を話して買い取ってもらった。ボンビー・バックパッカーはただでは転ばないのだ。
 たかが日本円にして140円ほどの話だが、不条理は納得できない。とにかく男女ともにここはスクール水着のようなピチッとした水着でないとNG。派手なビキニはどうなのか、そこまでは確認できなかったので定かでない。
 最新版には書いてあるのかもしれないが、「地球の歩き方」はこういう情報こそしっかり書いてほしいよなぁと思った。(基隆のバスに忘れて、今はもう手元に無いが・・・。)
 
 最後は再び台北に戻り、ホテルから荷物を回収。
 昨夜と同じ食堂で激辛小籠包を食べる。
 今回は弾丸スケジュールのため時間が無かったが、台湾のFBフレンズがこちらを気にかけ、コメントを入れてくれたのはやはり嬉しい。
 まぁ、また近いうちに来るでしょう。

 
最後に食べた激辛小籠包(左)と、龍洞の岩場トポ(右)※台湾で買うと約2,450円(楽天で見たら4,920円!海外通販でも3,000円)
 
 最後は再び桃園国際空港でビバーク。
 フードコートの椅子を3つ並べて横になり、翌朝の便で無事帰国。
 お土産込みで総予算6~7万円ほど。3泊6日?のそれなりに濃い旅が終わった。

 
シンガポールのスクート航空。中国表記だと「酷航」。でも別に酷くはなかったよ。

2019台湾の旅 #3-玉山登頂(北峰)

2019年10月07日 | 海外
三日目(10/7)天候:
 行程:排雲山荘3:00-玉山主峰の肩4:30-北峰6:10~25-排雲山荘8:30~9:00-塔塔加登山口12:30-阿里山-高鐵・嘉義-台北

 さて、昨日のうちに主峰、東峰に登ってしまい、概ね目標達成となり今日はもう下山してもいいかなと思ったが、昨日より良い天気なので、再び登ることにする。

 玉山の通常の登山パターンはここ排雲山荘で午前2時に起床、朝食。3時には出発して5:40の日の出を頂上で迎えるというもの。
 ほとんどの者がそのタイムスケジュールに合わせて行動している。
 で、何となく自分もそれに合わせて出発。

 
この日の朝食は、肉まんとお粥だった。

 夏の富士山のように御来光目当ての登山者で渋滞するかもと懸念していたが、元々、排雲山荘の宿泊客が一日約100名と限られているので、適当に間が空き、それほどストレスは感じない。
 
 昨日までの頭の張りは朝食の後、すっかり消え、気分は上々。テーピングのおかげで左足首の痛みもまるで気にならない。
 しかし調子に乗って、また少しペースを上げるとすぐに息が切れる。四千m弱の高さはダテじゃない。
 前方を歩いていたカップルのうち、若い女性の方がいきなりうずくまり嘔吐するなど、やはりここはそれなりの高度なのだ。
 
 ロックシェイドを登り切った所が主峰と北峰の分岐点。
 大抵の者が主峰に行くので北峰へ行くのは自分くらいかと思ったら、それでもチラホラとそちらへ向かう者のヘッデンの明かりが見えた。
 
 北峰へは一度ザレた急斜面をガーッと下り、その後しばらく樹林帯の中の馬の背の斜面、そして最後に北峰への登り返しとなる。
 日の出を迎えたのはちょうどその登り返しの部分で、これまで外国の山も含めていくつものその瞬間を見てきた自分にとってそう目新しいものではなかったが、やはり感慨深い。

 
 
 北峰(3,858m)は頂上に立派な気象観測所があり、大きな建造物があって興覚めするかと思ったが、その展望台テラスから見る主峰と東峰はなかなか雄大で、これはこれで来てみて損は無かった。
 真の頂上は観測所の裏手にあり、ここから見る玉山北方の景観もまた見事。台湾の空はどこまでも青く広がっていた。
 十分満足して北峰を後にする。

 

 

 主峰から見た北峰
 
 主峰肩への登り返しはまたキツそうだったが、そうでもなかった。ようやく高度に馴れてきたのだろうか。
 排雲山荘に寄って最後の食事。どこかのブログでここで出る最後のラーメンが旨いと書いてあったような記憶があるが、本日の麺は薄味のフォー(ベトナム麺)みたいで、お代わりしたくなるほど旨くは感じなかった。
 またしても昨日からの二人組と会い、お互い天気に恵まれて良かったと喜び合う。

 下りは行き交う人たちと挨拶しながら進んでいく。
 見た目は同じ東洋人で変わりはないが、こちらが知っている中国語は「ニイハオ」と「シェシェ」ぐらい。
 何か言おうとして英語が出てしまうと途端に「どこから来ましたか?」と会話となり、交流が始まる。
 日本も来年オリンピックだが、このぐらい外国人とフレンドリーにならないとダメだよなぁ。(自分もそうだが)英語で話しかけられるとすぐ行き詰まって逃げるし・・・。

 

 

 

 途中でいろんな人たちと記念写真を撮ったりして、のんびり下るが、それでも予定していた時間より早く下山できた。
 東埔山荘でデポしておいた荷物を回収。
 阿里山、嘉義と往路とまったく同じ経路を取り、再び台北へ。登山用品店巡りをしてから予約していたホテルへ落ち着く。
 三日振りのシャワーで汗を流し、台湾ビールと焼肉麺で一人祝杯を上げた。

 
豪華なホテル前景。実はこの中にバックパッカー宿があって、素泊まりシャワー&wifi付きで798円/泊(笑)


2019台湾の旅 #2-玉山登頂(主峰・東峰)

2019年10月06日 | 海外
0日目(10/4)天候:
 仕事を午前中に切り上げ、午後から有休。
 これから台湾一人旅、三泊六日?の予定である。
 昨年は何かと忙しく、海外は二年振り。
 台湾は9年振り二度目だが、近場で日本と似ているとはいえ、やはり少しでも日常の世界から離れるとなるとイイ歳こいてワクワクしてしまう。
 
 夕方、成田空港着。
 横浜からだともちろん羽田の方が近くて便利だが、自分はこの成田までの距離が心の準備ができるというか、高揚感が湧いてきて好きである。
 今回利用するのはシンガポールのLCC「スクート航空」。
 今や時期によっては往復1万円も切る?ほどの台湾だが、今回は2万円+諸費用といったところ。北海道や沖縄へ行くより全然安い。

 
久々の成田空港。いつものように萌え系雷神さまが見送くられて出発。
 
 とりあえず台湾での必需品として、噂の台湾simカードを購入。
 1,000円ほどのプリペイド式で、スマホで付け替えれば通信は五日間向こうで使い放題。重くて嵩張るレンタルwifiはもう古い。
 とは言うものの自分が持っているのは二年前のガラホ(スマケー)で、実は設定が意外と大変だった。
 買ったはいいがなかなかうまくいかず、途中で諦めかけたほど。
 だが、あれこれやっているうちに何とかなるもので、向こうで突然繋がった時はちょっと感動してしまった。
 
 機は予定通り成田を20時30分に経ち、2時間ちょっとで台湾の桃園国際空港着。
 時差は台北の方がきっちり1時間遅れなので、現在23時過ぎ。面倒なので時計は日本時間のまま修正せずに過ごすことにした。
 
 着いたのが夜中なので、このまま空港でやり過ごす。
 何とか柔らかめのソファーの充電可能スペースを確保したが、冷房が効き過ぎてけっこう寒い。
 pataoniaのパフジャケットを着込み、冬山ビバーク体制で朝まで過ごす。
 

一日目(10/5)天候:
 行程:台北8:21-高鐵「嘉義」9:48~10:10-阿里山BT12:40~13:30-東埔山荘14:20
 
 本日は移動日。
 さっそく便利な「イージーカード」を自販機で購入。これは台湾版suicaで、地下鉄やバスの運賃、コンビニでの飲食物など大抵のものに使える。
 駅の自販機はもちろんコンビニでもチャージ可能で、帰国の際には払い戻しも可だ。
 (以下、費用は当時のレートで日本円に換算。1台湾ドル≒3.5円とする。)
 
 まずはMRT(地下鉄)で台北市街へ移動。(約40分)
 車窓からは日本と似た風景が広がるが、やはり南国のせいか全体的に緑が濃い。

 
台湾に着いたら、まずsimカードとeasyカード。(左)
巨大な「台北」駅(右)
 
 台北駅のコンビニで肉マンとアスパラガスジュースという妙な朝食を買い、そのまま新幹線(高鐵)で「嘉義」へ。(約1h30m、3,660円)
 さらに駅前バスターミナルから路線バスに乗り「阿里山」まで。(約2h30m、960円)
 阿里山は聞くところによると「台湾の上高地」などと呼ばれ、そういうイメージを持っていたのだが、バスの終点となるターミナルは特に何もなく殺風景なところ。
 
 さらに午後になって猛烈なスコールとなり、辺りは灰色一色となる。
 今回、事前の天気予報では登山日の二日間とも雨マークで、もしかしたら玉山は登れないかもと半分諦めモードでここまで来たが、さらにその感を強くする。
 実際の観光地としての阿里山はここからさらに少し先になるようだ。

 
「嘉義」から「阿里山」へ向かう路線バス(左)
阿里山バスターミナル。観光地とししての阿里山はさらに奥?で、ここにはセブンイレブンしかない。(右)
 
 ターミナルにあるセブンイレブンで明日からの行動食を調達。
 山小屋での朝夕の食事は頼んであるが、玉山ではこの先、売店などは一切無く、この阿里山バスターミナルのセブンが最終補給地点となる。
 
 予約していたチャーター車が到着。
 ここから登山口の上東埔駐車場までは車で40~50分ほどかかる。なぜかこの辺りはタクシーが一台も走っていないので阿里山から上東埔までは事前に代理店に頼むなどして車を確保しておいた方が良い。(「計画編」参照)
 
 上東埔駐車場着。
 売店などは無く、あるのはトイレのみ。雰囲気としては富士山の富士宮口五合目と似た感じか。
 この日はその下にある「東埔山荘」に泊。(素泊まり1,100円+食事2食1,000円)
 食事は事前予約しておいたが、基本的に素泊まりを想定しているようで、他の台湾人登山者はカップラーメンなどを持参していた。
 お湯は使い放題なので、自分もそうすれば良かった。

 
上東埔駐車場(左)と東埔山荘(右)
 
 早めに到着したので、登山道の下見を兼ねてこの日のうちに登山届を提出する。
 歩いて20分ほどで、登山管理所と警察があり、そこでパスポート提示と共に日本でプリントアウトしてきた国立公園入園許可証、玉山入山許可証を提出。
 これでようやく入山できるわけだ。
 登山管理所は玉山国立公園の自然を紹介すると共に、スマホの充電やお湯も無料でもらえるので便利だ。

 
登山管理所(左)と、その隣にある警察(右)。それぞれに届を出して準備完了。
 
 東埔山荘に下って早めの夕食。
 同じテーブルに座った台湾男性二人組がとても親切で、オレンジをくれたりして、しばし談笑する。
 明日、登山管理所から塔塔加登山口までのシャトルバス(所要10分)の始発は6:30。
 最初はそれに乗るつもりだったが、彼らはそれを待たずもっと早い時間に歩いていくと聞いて、自分もそうすることにした。
 
 今日の天気を見ると台湾、特に山岳地帯は大陸性の天気で、午前中は晴れるが、午後になるとスコールが起きそうな気がする。
 できれば明日早出して一気に主峰、そしてできれば東峰まで登ってしまおう。
 ただ一つ気になることがあって、今回の旅の直前にどこかで左足首を捻ってしまったようで、時々痛む。大きな腫れなどはないが、こんな状態で足が最後までもつだろうか。念のため明朝はテーピングできつめに固定しておこう。

 
東埔山荘の夕食風景(左)とベッドルーム(右)
 
 
二日目(10/6)天候:
 行程:東埔山荘3:30-排雲山荘7:40~8:00-玉山主峰9:40~10:00-東峰11:30~50-主峰13:10~30-排雲山荘14:45
 
 結局、朝3時には目が覚めてしまった。
 東埔山荘のベッドはいっぱいで、隣のイビキがひどかったらヤダなと思っていたが、台湾の人たちはみな静かで、おかげでぐっすり眠れた。
 
 朝食も摂らずに、そのまま3:30には出発。
 辺りは真っ暗だが、昨日少し下見をしているし、ヘッデンと星明りで特に迷うことはない。
 
 登山管理所から塔塔加登山口までは車で10分らしいが、歩くとけっこう長く感じる。
 下山時はやはりシャトルバスを使おう。(約350円)
 大抵の登山者はシャトルバスを使って明るくなってから登り始めるが、もちろん暗い内からヘッデンを点けて登っている人たちもいる。

 
石碑があるだけの塔塔加登山口(左)と、「孟禄(モンロー)亭」と呼ばれる最初の休憩スペース(右)
 
 塔塔加登山口は大きな石碑があるだけで、何もない所。
 道は一本で、指導標もあるので真っ直ぐ登り続ける。
 登山道はよく整備され、雰囲気としては箱根のハイキング道である。
 道標はきっちり0.5kmごとに設置され、ペース配分の目安になる。
 
 東屋だけの「孟禄(モンロー)亭」、立派なテラスのある「白木林」の休憩舎を越えていく。
 特に後者は眼前に頂上稜線が望め、快適なビバークポイントだ。

 
登山道の指導標は0.5kmごとに設置され、今どの辺の位置にいるかわかりやすい。

 
展望の利くテラスのある「白木林」は、快適な休憩所(左)。途中にある「大肖壁」という大きなスラブ壁(右)
 
 玉山の七~八合目に相当する「排雲山荘」(3,402m)に到着。
 通常のペースでおそらく5~6時間のところを4時間10分。時間的には少し余裕ができ、これなら今日中に主峰を越えて東峰まで足を延ばせそうだ。
 排雲山荘のスタッフはなぜか台湾人ではなく、フィリピンとかタイとかもっと色黒の東南アジア系だった。
 
 

 不要なウェアなどを小屋にデポして、さらに登り続ける。
 少し飛ばし過ぎたのか頭痛というほどではないが、頭が重いので、ここから先は一段ペースを落とす。
 もうこの先は富士山の頂上付近と同じ、そしてさらにその高さを越えていくのだ。
 それでも主峰への登山道は台湾の人々と同じく、どこまでも優しく、斜面は急になってもできる限りジグザグに切って傾斜を感じさせないようにしている。
 空気は薄いが、富士山の登山道よりはよっぽど登りやすい。

 

 
 
 しかし、ここまで晴れていたものの、頂上に近づくにつれ天気は悪化してきた。
 頂上直下のロックシェイド(落石避け)の手前で雨具を着用。この時間になると下山する人が疎らにいるだけで、自分もよほど出直そうかと思った。
 それでもあと少しと思い直し、登り続け、ようやく主峰(3,952m)に到着。
 
 雨はそれほど激しくないが、立っていると倒されそうな強風だ。
 岩陰で風を避けているとそれでも後から登ってくる者がいて、お互いに写真を撮り合う。
 やたら元気なニイちゃんがいて、こちらが一人で写ろうと思っているのに勝手にシャシャリ出て肩を組んでくるのには苦笑したが。

 
台湾最高峰、玉山主峰 3,952m
 
 とにかく風が強く、このまま長居すると身体が冷え切ってしまうのでそそくさと下山しようとしたが、ふと見ると東峰の方からも2、3組やってきた。
 中には若い女子もいて、(彼女でも頑張れたなら、自分でも行けるかも。)と冷えた心に火が点いた。
 それに長年の山の経験からこうした山の悪天は風が強ければ、その分すぐにまた雲が切れたりすることも多い。
 
 その読みは見事に当たり、しばらくするとあっという間に雲が切れ、再び青空が広がり始めた。
 ナイス!これなら行ける。
 迷うことなく東峰へ向かった。

 

 
主峰から東峰への道。鎖や道標となるテープは随所にあるが、台湾では上級コースとなっているようだ。
 
 東峰への道はバリエーションルートぽく、鎖場とザレの連続だった。
 しかし、指導標や目印のテープ、鎖はかなりしっかりしていて不安は無い。北アの岩稜を経験していれば十分な程度である。
 ただ、この辺りで標高3,600~3,800mとなり、日本では経験できない縦走となる。
 頭がフラフラしている可能性もあるので、十分注意したいところだ。

 
東峰頂上直下の鎖場(岩はしっかりしているが、ほぼ垂直)、そして東峰頂上。
 
 東峰への最後の登りはほぼ垂直の鎖場だが、岩はしっかりしていて問題無し。
 そして、東峰(3,869m)に登頂。
 昨日の台湾二人組も「玉山に初めて来た外国人が一人で東峰まで行くのはスゴイ。」と言っていたが、それができて嬉しい。(だが、実際にはそれほどハードなわけじゃない。) 
 20分ほど一人で頂上を満喫。

 下りの鎖場を慎重にこなし、再び主峰へ戻る。
 先ほどの悪天が嘘のように落ち着いた主峰にはもはや誰もおらず、ここでもたった一人の頂上を満喫。
 とりあえず目標達成の安堵感をしみじみと感じながら、頂上を後にする。


 
再び主峰を経由してから下山する。
 
 その夜は排雲山荘泊。(素泊まり1,800円+食事三食2,100円+寝袋代1,000円)
 高度と興奮のせいか頭の張りはなかなか消えず、11時間行動で疲れているにも関わらず、なかなか寝付けなかった。

 
排雲山荘の夕食準備(左)と、親切にしてくれた台湾の二人組(右)

2019台湾の旅 #1-ニイタカヤマノボレ・計画編

2019年10月04日 | 海外

 さて、2013年から続いていた海外登山だが、昨年(2018)は諸々の都合で行くことができず。
 そろそろ禁断症状が出てきて、どこでもいいから日本の日常を飛び出したいと思って、思いついたのが台湾である。
 当初は龍洞でのクライミングを予定していたが、諸般の都合でこちらは延期。
 おそらくいつかは行くであろう海外の山リストから、ベタだが今回は台湾最高峰の玉山を計画した。

 玉山は、かつて台湾が日本の統治下の頃、「新高山」と呼ばれ、昭和初期の方には馴染みの深い山。
 「ニイタカヤマノボレ一二〇八」は日本が太平洋戦争を仕掛ける(敢えてこう書こう)際の暗号にもなった山である。
 標高は主峰が3,952mで富士山3,776mより高く、近年はマレーシアのキナバル、タンザニアのキリマンジャロよりもさらに身近な海外登山の第一歩とも言える。
 今やネットで検索すれば多くの人の登山記が見つかり、今さら自分が書くこともないが、備忘録として残しておこう。
 個人で登ろうと思っていない人にはまったくつまらない内容なので、あしからず。

 まず、玉山へ登るには大きく分けて三つのパターンがあると思う。
 A 日本のエージェンシー、ツアーで登る。
 B 現地のエージェンシー、ツアーで登る。
 C 個人手配で登る。

 そして、それぞれのメリット/デメリットは、
 A 安心、安全/料金が高い、団体行動(予算は約20万円)
 B 手配が楽、安い/言葉の問題、団体行動(予算は約6~7万円)
 C 安い、自由/手配が大変(予算は約5~6万円)
 
 自分が選んだのはもちろん「C」であるが、玉山個人登山の場合、最初の鬼門となるのが事前の手続きである。
 台湾の山は基本的に国が管理していて、フラッと行って勝手に登るわけにはいかない。まずここが面倒くさくて個人登山を断念する人も多いと思う。
 手続きとしては、
1 玉山国家公園への入園申請
  台湾国立公園入園オンライン申請のHP(日本語表示あり)   
   
  玉山は毎日解放しているわけではなく、入れる日が限定されていて、まず上記HPから入園申請する必要がある。
  主峰だけなら登山口から往復10~12hほどの日帰り登山も可能だが、通常は七合目付近にある排雲山荘(パイウンロッジ)に一泊しての二日間行程。
  小屋は114名が定員で4か月前?から先行申請可能で早い者勝ちだが、自分が思い立ったのが出発の2か月前でその時点で既に満員。
  かと言って打ち切られるわけではなく、溢れた者で抽選となり、結果は出発の1か月前になって初めてわかる。外国人優先枠もあり。
  実は昨年の秋も申し込んだのだが、クジ運がいいのか、一人なのでスッと割り込めたのか、自分は二回とも当選した。
  人数が多いとメンバーの一部が当選、一部が落選ということもあるかもしれない。
  あと申請の際は緊急連絡先を決めなければならず、日本国内で構わないが電話番号の他、緊急連絡先の身分証明IDを求められる。
  日本のマイナンバーや運転免許証、保険証No.は当然、国際的に通用せず、そうなると留守宅となってくれる人のパスポートNo.が必須だ。

 
 
玉山国立公園の入園許可書(左)と入山許可書(右)
この二つを3部コピーし、登山管理所と隣にある警察署、さらに排雲山荘に提出しなければならない。

2 航空券の手配
  当然、格安航空券(LCC)も出発間近よりなるべく早い時期の方が安いものを確保できる。
  上記入園許可を確認してからの航空券確保では遅いので、ここは玉山へ行けなくてもダメなら観光でもと割り切って上記日程に合わせてeチケットを確保してしまおう。どうせ往復でも1~2万円代だし。
  ちなみに何かの都合で行けなくなった場合、こんな保険もある。チケットガード保険

3 現地警察への登山申請、その他宿泊先、交通手段等の手配
  当選したら自分の場合、排雲山荘コースだったので、三日以内に指定の現地銀行口座に山荘利用料金を振り込まなければならない。それを振り込まなければ、せっかく当選したといっても正式な許可とならない。しかもクレジットカード決済不可!
  ここが一番冷や汗をかいたところで、自分が当選通知をもらったのが金曜の午後3時。
  仕事を終えて、すぐに大手の郵便局や都市銀の窓口に出向いたが、たかだか1,800円を振り込むのに手数料が5~7千円かかると言う。
  ネット銀行の口座を持っていれば手続きは早いが、それでも3千円ほどかかるらしい。
  しかも明日、明後日は土・日だし、入金間に合うのかとヒリヒリしたが、それは後述の手配で一気に解決。
  次に宿泊先だが、玉山登山の場合、登山口のさらに下にある東埔山荘がよく利用されている。
   
  ここは国家公園と関係なく、自分で予約しないといけないが、メール受付は無く、電話受付は中国語のみ。
  さらに交通手段だが、台北から嘉義までは鉄道かバス。嘉義から阿里山までは路線バスと公共交通機関があるが、阿里山から登山口の上東埔駐車場まで(車で40~50分)は何らかの交通手段を確保しなければならない。(歩くのはまず現実的でない!)
  東埔山荘のHPにワゴン車チャーターについて書かれているが、これも中国語による電話受付のみ。
   
  せっかくここまで自分で申請、当選したものの、その先で中国語三千年の歴史が重くのしかかり、行く先は難攻不落と思えるのだった。

  しかし、ここで救世主現る!
  何かの拍子に偶然見つけたツアー会社にこれこれこういう事情でと問合せ先にメールを送ったところ、海外送金、警察への申請、東埔山荘の予約、途中の交通手段確保とその他諸々の雑多な手配を一気に片づけてくれた。
  全て併せた手数料も自分で海外送金するより全然安く、土曜午後に連絡したにも関わらず日曜午前中には全て解決。
  安い!早い!丁寧!と三拍子揃ったサービスに驚いた。
  それがここ。
  Satis Tour(サティスツアー) お勧めします!

  この会社の強みは本社が台湾、支社が東京にあるため、お願い事はすべて東京支社へ日本語でOK。
  台湾の本店と連携して即座に動いてくれることだ。
  ここまで長々と書いてきたが、早い話、個人登山の場合もここに一切任せてしまって間違いない。
 
4 旅の行程
  というわけで、全体のスケジュールは次のとおり。
  10/4(金)午後から有休を取り、夜の便で成田から台湾へ。そのままエアポートビバーク。
  10/5(土)移動日。桃園空港(MRT)台北(新幹線)嘉義(路線バス)阿里山(チャーター車)東埔山荘泊
  10/6(日)東埔山荘から登山一日目、排雲山荘泊。
  10/7(月)排雲山荘を出発、登山二日目。そのまま下山し、台北まで戻る。
  10/8(火)一日観光。龍洞、九份、士林など。そのままエアポートビバーク。
  10/9(水)早朝の便で昼前には成田着。半日休んで翌日から出勤。
 
 登山に関しては上記A、Bのツアーではまず主峰のみの登頂となるが、やはりそれだけではもったいなく、北峰や東峰にも登りたいとダメ元で追加申請してみた。
 台湾では単独行の人は少なく、まして玉山東峰は台湾「十峻」の一峰として上級コースに位置付けられており、わけのわからん日本のオッサンは即座にハネられるだろうと思ったらあっさり許可をいただいた。

 登山に関して参考にしたのは、こちらのHP
山と道-ラボ渡部の玉山登頂記 (トレイルランナーのペースなのでタイムは真似できないが、参考になる。)
Taipei Hiker (こちらは日帰り。台湾の山の概要がわかりやすい。)     
   
 28Lザックにウェストバッグ、サンダル履き。空港でのゴロ寝を除けば三泊六日?という弾丸バックパッキング。
 一泊で日本の山へ行くより全然気軽な格好で、成田から出発した。