KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

穂高滝谷・出合から四尾根

2019年09月15日 | アルパイン(無雪期)
日程:2019年9月13日(金)午後~15日(日)
天候:三日間とも
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目 鍋平P13:40-新穂高-蒲田川右俣林道-滝谷避難小屋17:15
 
 さて今回は、出合からの滝谷。昨年7月に挑んだものの条件が悪く、途中敗退したルートのリベンジである。
 まぁリベンジといっても、時期が落ち着いて条件さえ整ってくれたら自分たちにも登れるはずと、それほどの気負いは無い。
 
 まずは準備面。前回学習した点として、今回は二人ともウェアと靴を沢仕様にした。
 前回は最初の雄滝までもけっこう徒渉があり、そのたびに登山靴を脱いだり履いたりしたが、最初から沢靴であればそのまま徒渉ができる。
 かつて登った一ノ倉沢本谷と同様、この滝谷もラバーソールの沢靴の方が効率的だ。
 
 また、ここ数年の記録では温暖化の影響か、9月ともなるとアイゼンは不要に思われたが、直前になってガイドで「ギリギリボーイズ」の佐藤裕介氏のHPを見て思い直し、保険として軽アイゼンを持つ。
 あとは食料も含めて軽量化を図り、私が36L、弟子のヒロイは28Lのザックに納めることができた。
 
 三連休の渋滞を懸念して一日前に年休を取り、金曜朝に小田原発。
 午後1時頃に新穂高へ着くが、平日だというのに既に駐車場は満杯!しかたなく手前に戻って昨年同様、鍋平Pに停める。
 年金登山者が多いのか、それとも働き方改革で休みが取りやすくなったのか。最近は平日でも登山口の駐車場確保がまず第一の関門である。
 
 林道を進み、夕暮れ前には滝谷避難小屋へ。
 本日は先客無く、この時点では我々のみ。遠慮なく小屋内に荷物を広げる。
 遺体が一時安置されることから怖がる人もいるが、小屋内は綺麗に整頓されており避難小屋としては快適である。(ただしネズミは住んでいる。)
 
 
途中見かけた巨大キノコ(左)と滝谷避難小屋(右)
 
 水汲みに沢へ下りていくと、滝谷出合から稜線までクッキリと見え、しばし観察。
 しかし、雄滝の上を見て愕然とする!めっちゃ雪渓が残っているじゃないか!
 アイゼンは持ってきたものの、私は8本爪、弟子は4本爪の気休め程度。前爪無しであの雪渓を越えられるだろうか。早くも「敗退」の二文字が頭をよぎる。
 とにかく明日行ける所まで行ってみるしかない。
 
 その夜の夕食は、前祝いとして猪肉のジンギスカンでスタミナを付ける。
 夜になって単独のおじさんがやってきて、この日の小屋は三人のみの静かな夜だった。

 
夕暮れの滝谷(左)と「猪ジンギスカン(略してシシジン)」(右)
 
 
二日目 滝谷避難小屋5:12-雄滝5:45~7:40-無名の滝8:00-滑り滝9:00~10:40-合流点12:40-スノーコル14:20
 
 朝3時半起床。簡単な朝食を済ませ、薄明るくなった5時過ぎに出発。
 木橋を渡って右岸から歩き始めるが、最初の雄滝まで30分ほどで到着してしまった。
 前回は水量が多く、ここまで来るのに何回も徒渉し、けっこう時間がかかったのに・・・。

 
 
 雄滝の巻きは前回登った滝寄りのカンテではなく、今回はネットでよく見るブロック状の岩が連なっている凹角ラインへ。
 一見、簡単そうに見えるが、取り付くと意外と悪い、というか登りにくい。手頃なホールドが無く、ザックの重さで後ろにひっくり返りそうだ。
 しばし躊躇した後、空身で突破。
 置いてきたザックはロープに結び、弟子には一緒にフォローしてもらう。

 
 
 そのまま木登りピッチをツルベで登り、雌滝が望める小尾根の頭に出た後、今度は右手の雄滝落口へ向かって草付きトラバース。
 前回はこのトラバースも湿った草付きで滑らないようけっこう気を揉んだように覚えているが、今回は踏み跡も明瞭で特に問題無くスタスタ歩けてしまった。
 思ったよりも早い時間に雄滝を越えて一安心。さらにその上で懸念していた雪渓が実は白い岩肌だったことがわかり、これはラッキー!
 今回一番の不安材料は落石と雪渓のブロック崩壊だったが、雪が無ければかなり有利に事が進む。

 
 
 しかし、やはり甘かった。その一段上の「無名の滝」で巨大なスノーブリッジが出現。
 本流をアーチ状に跨いでいて今にも崩れ落ちそうだが、幸い雪に厚みがあり、ここは素早く潜って突破する。
 ホッとしたのも束の間、その後、別の箇所で雪渓の一部が大崩壊。物凄い破壊音が響き渡る。やはり滝谷は怖ろしい。

 
 
 

 そして滑(ナメ)り滝。
 ここはネットの記録でも楽に通過できる時とイヤらしい時があるようだ。
 大まかに三段に分かれるが、まず一段目は左岸から。
 スラブをラバーソールの沢靴でペタペタ行くが、水流沿いは黒ヌメがテカテカ光り、いかにも滑りそう。
 自然と乾いた上へ上へと追いやられてしまう。
 残置ハーケンは疎らにあるが、どれもこれも年数が経ち、半ば浮いているものばかり。強めにテンションかけたらポロッと抜けてしまいそうだ。
 けっこうランナウトしつつ、適当な所で自分のハーケンを一本ガッチリと打ち足し、ピッチを切る。

 続く二段目。けっこう岩が立ってきて、またホールドも逆層気味。
 弟子が自信ないようなので、ここも自分がリードする。
 A0も使って一段上がり、その後、水平トラバースだが、途中でランナーが取れない。ここはリードもフォローも絶対に落ちれないところだ。
 グレード的にはせいぜいⅢ+~Ⅳ級だが、気持ち的にはルート中、一番シビレた。

 
 
 続く三段目は水流渡って右岸側。
 乾いているが、思ったより立っている。爪先に余裕のある沢靴なので、慎重に登った。
 とりあえず、これで下部の核心は全て越えたはず。しかし逆に、ここまで来るともはや退却不可能となる。
 振り向くと、いつの間にか後続パーティーが一組近づいてきていた。

 

 その先はしばらくゴルジュ状の小滝が続く。
 そして、また雪渓。中央の割れ目をそのまま上まで抜けれたら良かったが、さすがにそれは無理だった。
 左右どちらかの雪渓に上がる際、自分は最初傾斜が緩い左側を選ぼうとしたら、弟子が右側を主張。
 上がってみたら自分が行こうとした左側の雪渓は先端が船の舳先状になっており、行き詰まりになっていた。
 雪渓の急な個所はまず8本爪アイゼンの自分が登り、その後、バイルをロワーダウンして交替で使い回した。

 
 
 雪渓がようやく切れた辺りが合流点。
 複数のガレ沢と支尾根が複雑に入り込んできて悪天の時などわかりにくいだろうが、今日は良い天気。
 B沢の巨大CSを目印にトポとGPSアプリで照合し、ドンピシャでC沢に入る。
 最後の水場で各自3Lほど水を汲み、この先、またしばらく小滝が続く。ガレは多少安定してきたが、延々と続く「岩の墓場」は体力的にキツい。
 
 太腿が悲鳴を上げる頃、ようやくスノーコルへ上がるトラバース道を確認。(ケルン2つあり)
 疲れているが時刻はまだ午後2時過ぎ。自分としては一日で稜線に抜けられると見込んでいたが、下部で時間がかかり、この先継続するには微妙な時刻だ。
 急ぐ計画でもないので、今日はここまで。スノーコルでビバークとする。

 
 
 ツェルトを張っていると、しばらく間が開いたと思っていた後続のお二人が到着。
 てっきり男二人だと思ったら、先ほどの滑り滝をリードしていた赤ジャケットは何と女性。あの「山登魂」と聞いて、なるほど強いなと納得する。
 
 二人は今回アイゼンを持たず、我々が行った左岸寄りの雪渓は右岸のA沢寄りを登ったとか。それぞれ興味深く情報交換する。
 申し訳ないがスノーコルは我々のツェルトだけでほぼ一杯なので、二人はさらに上のテン場へ向かっていった。
 
 夕方、ブロッケンが現れる。
 どちらかというと不吉な前兆だが、ここまで来たら後は四尾根を残すのみ。午後になると滝谷特有のガスが湧くが、幸い天気の崩れは無さそうだ。
 けっこう疲れたので、早めに就寝。今回は軽量化のため防寒着にシュラカバーのみだが、心配していた寒さはなく、思いのほか良く眠れた。
 
 
三日目 スノーコル5:30-四尾根Cカンテ8:00-ツルム9:30-終了点11:30-涸沢岳13:20-穂高岳山荘13:40-白出沢-新穂高18:20
 
 本日も晴れ。夜中トイレに起きると月明りで回りの岩壁が幻想的に浮かび上がり、我ながら凄い所にいるよなぁと実感した。
 
 簡単な朝食を摂り、出発。
 既に山登魂の二人はCカンテまで登っている。気合入ってるなぁ。
 本日はクライミングシューズに履き替え、まずは簡単なリッジをコンテで登っていく。
 途中、やはり快適なビバークサイトがあり、先の二人はここに泊まったのだろう。
 そのすぐ先が四尾根の取付きとなる。
 
 最初の2~3ピッチを交互に登る。せいぜいⅢ級程度で易しいが、浮石が多く、短めにピッチを切る。

 
 
 Aカンテは自分、Bカンテは弟子がリード。
 どちらも傾斜は寝ているが、Bカンテは部分的にホールド乏しく、ややトリッキー。
 だが、ふだん一癖も二癖もあるジム課題を登っているだけに、弟子はソツなくこなす。

  
 
 リッジを少し下って、Cカンテは自分がリード。
 先のA、Bカンテより傾斜は立ってくるが、ホールドはあり快適。

 
 続いて、落ちてきそうなピナクルへ向かって登るルンゼは、弟子がリード。浮石多く、やや気を遣う。

 
 
 ピナクルからツルムへ続く凹角フェースは自分がリード。トポではⅢ+となっているが、ふつうにⅣはあると思う。
 
 ツルムに到着。小休止した後、すぐ目に付く支点からコルへ向かって20mほど懸垂下降する。
 
 8P目、クラックフェースからチムニーは弟子がリード。
 下部は問題なく登れたが、上部の抜け口でやや苦戦。少々岩の間に入り込んでしまったようでザックが挟まり、もがいている。
 最後はA0で突破したが、本人は悔しそうだった。

 
 
 最後は核心、Dカンテ。
 私は以前、リードで登っているが、ここは最後のワンポイントだけボルダーちっく。
 左手カチ、右手はクラックの中に入れ、豪快に乗り越すのだが、はっきりしたフットホールドが無く、二箇所ほどスメアで凌ぐことになる。
 空身だと何てことないが、アルパインだとザックを背負っているのでこれが負荷となり、思い切ったムーブをするには多少の度胸が要る。
 自分も一回躊躇し、仕切り直し。その後、右手のクラックの中に掛かりの良いサイドプルのガバを発見。腹を決めてどうにかフリーで突破した。
 フォローの弟子はパワー系が苦手なため、ここはおとなしく最初からA0で突破。まぁイイでしょう。
 
 そこから簡単なリッジを少し登り、終了点。なぜかそこだけしっかりしたハンガーボルトが打ってあった。
 出合からの滝谷、ついに完登。やっと終わった。
 たしかに最後の四尾根は全体の1/4程度でおまけのようなもの。下部こそが核心と言える長いルートだった。
 
 
 
 背後に広がる雲の平から笠ヶ岳へ繋がる稜線を眺めながら、しばし小休止。
 そこから大キレットの縦走路はすぐで、我々も奥穂側に向かって進むが、ここも渋滞エリア。
 反対側から来た登山者の言によると、先ほどまでキレットの鎖場で立ち往生した人がいて二時間ほどの渋滞が生じていたとか。
 先月の剱の「カニのヨコバイ」もそうだが、最近はチャレンジ精神旺盛だが、背伸びして明らかに実力不足の人が多いと思う。
 我々もヘタレであり、スピードも速くないことを自認しているが、少なくともルートについては自分のハードルを見極めているつもりだ。

 
 
 何とか渋滞は回避でき、涸沢岳を経由して穂高岳山荘へ。ここも人だらけ!
 さらにその上、奥穂への道は登りも下りも大渋滞で、ちょっと異常な光景である。
 
 ゆっくり休んだ後、白出沢の下りにかかる。
 広いゴーロの涸沢を岩に印されたペンキ印を頼りにガンガン下る。
 途中、沢の渡渉が数回あり、後半は左岸の樹林帯の道を行く。
 先行する中高年登山者を何組か追い越したが、途中ちょっとわかりにくい箇所があり、これから暗くなるにつれ、あの人たちは大丈夫だろうかと少し気になった。

 
 林道に出て、あとは気力で足を運ぶだけ。沢靴で下り続けていたため、既に爪先はマメがつぶれ、ヘタしたら爪が死んでいるかも。
 新穂高に到着したのは既にヘッデンタイム。スノーシェイドを下って、いよいよ試練の鍋平Pへの登り返しかとウンザリしたところで、神が降りてきた!
 
 後ろから見知らぬワゴン車がスーッとやってきて、こちらから頼んだわけでもないのに鍋平まで乗せてくれると言う。何という神対応!
 昨年、我々も南ア・易老沢の帰りで単独のおじさんを拾ってあげたり、剱で滑落怪我人を世話したり、それなりの功徳を積んできたわけだが、やはり神様はどこかで見ていてくれているのだ。
 三重ナンバーのお二方、本当にありがとうございました。
 
 〆は「ひらゆの森」で。露天がいくつもある大浴場ながら500円とリーズナブルで☆☆☆☆。
 出合からの滝谷は、同じ無雪期アルパインでも他のグラビアルートに較べ、体力、技術はもとより判断力、突破力が求められるロング・ルート。
 日程は短いが、先のGWに登った剱の北方稜線(全山縦走)をギュッと圧縮したような同じ疲れを感じた。

上越・ナルミズ沢

2019年08月25日 | 沢登り
日程:2019年8月24日(土)~25日(日) 前夜発一泊二日
同行:キタムラ、ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目 天候:
 行程:宝川林道広場7:20-広河原10:10-大石沢出合12:20-魚止めの滝13::20-二俣-テン場15:00
 
 今回は部の女子たっての希望で、お馴染みナルミズ沢へ。
 この二週間は剱、甲斐駒と体力的にハード系が続いたので、ホッと一息といったところ。
 ナルミズは2001年に土合から東黒沢からの継続で行ったきりなので、実に18年振り!かつての思い出通り美しいままであればいいけど・・・と期待十分、不安半分といった気持ちで出かける。
 
 前日の金曜、車で神奈川を出発。
 圏央道、関越道を走り、谷川岳方面と分かれ宝川温泉の林道へ。夏草を掻き分けノーマルのフリードで入れるだけ入ったところの大きな広場に深夜着。
 女子二人はシートをフルフラットにして車内で、自分はそばにテント張って仮眠。

 翌朝はまずまずの天気。
 やはりナルミズに来たからには晴れてもらわなくては困る。濃い青空があってこそ、あのグリーンの流れが映えるのだ。
 四駆ならもう少し奥まで入れるが、我々が駐車した大広場から奥の車止めまで歩いてもせいぜい20分ほど。
 車止めにも既に先客の車が2台ほどあった。

 
 
 この先、入渓点の広河原まで約2時間。
 しばらくは左手に宝川を見ながら平坦な林道を行くが、樹間越しに見る本流はこの時点で美しく、途中にはあの葛根田川を思わせる長いナメがあったりする。
 秩父の西沢渓谷同様、脇道があるからほとんどの人は先を急いで下流は割愛するだろうが、実際下流から水線通しで行ってみたらけっこう面白いかもしれない。
 
 ほぼ平坦な林道をちょうど一時間歩き終わったところから傾斜がキツい山道に入る。登りと山腹を巻くトラバース道がまた一時間ほど続く。
 途中ではマムート(マムシ)が現れるという一幕も。途中で小沢が流れ込み、ぬかるみからアプローチシューズを避けながら進んで行く。
 数か所悪い部分にはトラロープが設置されており、ありがたく使わせてもらいながら沢床へ降りていくと徒渉点。
 ここで沢装備に整える。
 
 小休止後、右岸に徒渉し、なおも30分ほど山道を進むと、左手からウツボギ沢が入ってきて、そこが「広河原」。
 さすがに18年前となると、ちょっと違うイメージがした。
 本流右岸には朝日岳へ延びる山道が続いているが、ここから入渓する。

 
 
 この先は文章では説明不要。
 緑の眩い美しい釜とナメ、数々のウォータースライダーとミニ・ナイアガラと、まさに沢のテーマパークである。
 ネコまっしぐら、弟子、大はしゃぎ!


 途中、釣り?に来ていた若者軍団と擦れ違うが、やはりこれだけ人気の沢では釣果は厳しいよう。
 しかし、少し行った先の浅めのプールでは20cmほどの岩魚がスス-ッと走るのが確認できた。
 
 陽射しはまずまずだが、本日は少々風があり、調子に乗って水に浸かり続けているとさすがに身体が芯から冷えてくる。
 途中のウォータースライダーでは自分は着地に失敗し、フワフワと足の届かない位置に流され、一瞬溺れるかとアセった。
 その他は特に危険な箇所もなく、それぞれのライン取りで進む。

 前方にはジャンクションピークのスラブ帯が聳え、これで回りが熱帯雨林の植物ならまさにジュラシックパークである。
 中間の大石沢出合を過ぎる。が、ナルミズ沢はまったく飽きさせない。

 

 
 途中で後続の中年女性二人組に先を譲り、この沢唯一の滝らしい「魚止めの滝」(8m)に到着。
 今回、念のため40mロープに各自ハーネスまで身に着けてきたが、ややヌメるものの慎重に登れば問題無し。
 滝の右側凹角を各自順番にフリーで越える。(Ⅲ級-)

 
 
 やがて二俣。ここは右俣へ。
 そろそろ沢形も狭くなり、時間的にはテン場を探さなければならない。
 最高の一等地があったのだが、残念ながら先行の女性二人組に一足先に取られてしまった。

 
 弟子のヒロイが空身で先まで偵察に行くが、スペースはあっても下が池塘ぽかったりしてイマイチ。しかたなく通過した二俣まで引き返す。
 一等地はかなり余裕があるので引き返し際、それとなく先ほどの女性に「上はいい場所、無いですね~。」と告げると「下の二俣にもありましたよ。」という返事。
 ちょっとぐらい分譲してくれてもいいのに!・・・と内心思いながら、まぁ自分らも、もしすぐ隣にうるさい連中がドヤドヤと押しかけてきたらヤダしなと思い、ここは我慢。
 二俣左岸高台に位置を決めた。

 
 
 流木の数は限られているが三人で何とか搔き集め、最初は火付きが悪かったものの女子二人が頑張ってくれてどうにか着火。
 水遊びし過ぎたおかげで、せっかく持ってきた冷えたビールは飲む気にならなかったが、それでもこのところ不発続きだった焚火の夕餉ができて本当に良かった。
 夜はシェルターの下、三人で川の字になって寝るが、一番沢側にいた自分は傾斜で夜中何回か外にはみ出していた。(もしかしたら二人に蹴飛ばされたのかもしれない。)

二日目 天候:のち
 行程:テン場7:30-修行の滝(仮称)8:30-天国の詰め10:15-朝日岳-分岐点-宝川林道広場15:00
 
 明るくなってから起き出し、まずは火起こし。
 昨日の熾きが残っていたので、朝のコーヒー、にゅう麺で簡単に朝食を済ませる。

 

 ごみを残さないよう、テン場を撤収。
 今回感心したのは、とにかくこのナルミズ沢は本当に周辺にごみや人工物が無く、美しいままであることだ。
 
 流れは次第に細くなってくるが、トイ状になってもなおも深い釜を持った小滝が続き、最後まで楽しませてくれる。
 どこで泊ったのか後続の男女三人組が追い付いてきたので、ここでも先を譲り、我々はチンタラと名残惜しむように詰めていく。

 

 
 
 そして最後は「天国の詰め」。
 前回来た時もたしかに綺麗だったが、近くで見ると草原というより笹っぽい印象が残っていた。
 が、今回改めて来てみると写真で見るイメージどおりで、天然芝とまではいかないが誰かが整備したんじやないかと思えるほど綺麗な草原だった。(自分はここに来るとなぜか頭にスピッツの「ロビンソン」がイメージ曲として流れる。)

 

 
 
 ひとしきり緑の草原をユルユルと登っていくと、ようやく笹原に代わり、先行三人組の後を追うように稜線へ詰めていく。
 本日は朝からガスが湧き、あまり遠くの展望は利かない。が、陽射しがキツイと却ってキツいので、曇天くらいの方がちょうどイイ。
 
 ジャンクションピークで小休止。木道を進み、途中で白毛門方面と分かれ、分岐を左に。
 スラブ帯のトラバース道から樹林帯の急な下り、そして沢沿いに合流し、最後は往路と同じ単調な林道でスタート地点に戻ってきた。
 
 宝川温泉は高いので、〆は湯の小屋温泉へ。
 当てにしていたクチコミの良い湯宿は残念ながら14時で終了のため、「湯元温泉」の内湯(800円)へ。
 源泉かけ流しといっても有笠のような覚悟の要るような熱湯でなく、ほど良い温度の素朴ないいお湯でした。
 
 ナルミズ沢は赤木沢(富山)や葛根田(岩手)より全然近いし、天気が良ければ毎年行ってもいいかも。(ただし、相手によりますが・・・。)


南ア・黄蓮谷右俣

2019年08月18日 | 沢登り
日程:2019年8月17日(土)~18日(日) 前夜発一泊二日
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目 天候:
行程:竹宇駐車場6:30-日向山登山道-尾白川林道7:30-尾白川本流8:50~9:00-黄蓮谷の二俣13:00-千丈ノ滝13:40-坊主滝14:30-逆くの字滝17:00-BP18:00
 
 さて先週の剱岳が終わって今週はレストのつもりだったが、急遽台風一過となり好天が期待できそうなため、上越か迷った末に山梨へ。
 夏の黄蓮谷は9年振り二度目。下流域は登れない滝が連続し高巻きも多いが、上流は南アルプスの天然水が流れる花崗岩のナメ滝をグイグイ登れて豪快かつ快適な好印象だった。
 対する相方は初めてで、いずれにしろいつかは行こうとしていた課題である。

 前夜発で、竹宇側の駐車場に深夜到着。
 けっこうな車の数で、これは明日の黄蓮谷も何パーティーか入るかもと思いながらテントで仮眠。

 翌朝明るくなってから出発。
 黒戸尾根方面へ少し進み、途中にある標識の所で右手の日向山方面への登山道に入る。
 ここから一時間ほど辛抱我慢の登りが続き、朝一番の身体には辛い。尾白川林道に合流し、そのまま左手奥へ進む。
 数年前の土砂崩れがそのまま林道を埋めていたり、途中のトンネルも出入口が土砂で狭くなっていたりで、この林道もますます自然に還っていく気がする。

 

 先行する三人パーティーを追うように、林道終点からFIXロープの設置してある急斜面を川床へ下る。
 下り着いた所で挨拶をすると、彼らは尾白川本谷へ行くとのこと。
 
 
 
 沢装備を身に付け、我々も出発。
 この辺りは我が山岳部の定番の遊び場だが、相変わらず黄色い川床に澄み切った流れが美しい。
 最初に出合う幅広滝は右岸(左側)の滑り台状スラブを登るのもウォーミングアップになるが、先も長いので割愛。
 しばらくは大きな釜を持ったスラブ状の滝が続き、右岸通しに巻いていく。
 その時点で気付いたが、どうも今回はいたるところに黒ヌルが付いていて、全体的に水流沿いは悪そうな気配がする。

 鞍掛沢出合を過ぎ、なおも巻いたりナメ床を歩いていくと「噴水滝」。
 噴水といっても、大きく水が吹きあがっているわけでもなく、言われてみて「ああ、たしかに少し噴水かも。」といった感じだ。
 左岸には特異な花崗岩の壁が大きく被さってくるように立っている。

 


 

 やがて顕著な二俣。右が尾白川本谷で、左が黄蓮谷。いよいよここから再スタートということで小休止。
 黄蓮谷本流に入ったすぐの釜で、すばやく泳ぐ岩魚を発見。ここまで来ると魚影は濃くないが、やっぱりいますな。

   

 この先、三段の千丈滝、坊主滝と直登困難な大滝が続くが、いずれも巻き。
 何となくこっちかなと左右どちらかに行ってみると大抵微かな踏跡の巻道がある。
 かつての相方タケちゃんの「なるべく本流から離れず、巻きも極力小さく。」の教えの通り進むが、それでも今回は少し適当に高巻いたため、本流へ戻るのに二回ほど短い懸垂下降を強いられる。(前回は一回もしなかった。)

  左が千丈滝。右が坊主滝。

 黄蓮谷の二俣となり、本流の右俣へ。
 自分では普通のスピードだと思っていたが、気が付くと前回より二時間遅れで少々焦る。
 やはり年々、体力は落ちているのか。

 この辺りから奥千丈滝となり、傾斜はそこそこあるが、登りやすい階段状の滝となり、稜線に向かってグイグイ高度を稼いでいく・・・そんなつもりでいたのだが、予報に反して空は曇りがちで肌寒い。
 なるべくシャワーを避けて右に左に適当に進むが、これまた予想していなかった黒ヌルがあり、けっこう進路を絞られる。

 


 「逆くの字滝」は寒いので水流を避けようと思ったが、やはり側壁はヌルで滑る。ここは軽くシャワーを浴びつつ頑張って直登。
 その先のスラブ状も前回は沢靴のフリクションを効かしてチャチャッと越えて行ったように記憶しているが、今回はヌルヌルしていてとても手が、いや足が出ない。

 左岸に逃げ、大高巻きしてテン場を探すが、平坦な場所は皆無。
 相方もかなり疲れた様子で、これ以上は暗くなってしまうというところで打ち切り。二人がギリギリ横になれる場所を見つけ本日のテン場とする。

 今回、持ってきたのはツェルト、タープでもなく、先日中古で買ったモンベルのフライとグランドシート。これにポールを組み合わせるとテントセットで持ってくるよりは軽いシェルター仕様となる。
 剥き出しのタープよりは虫を避けられ、ツェルトよりも快適スペースが確保でき、なかなか使える。
 ただ今回は場所が狭く、グランドシートの隅は宙に浮いた状態。焚き火もできないのが残念だった。


二日目 天候:
 行程:BP5:45-コーナースラブ9:00-稜線10:30~11:00-七丈小屋12:00-竹宇駐車場16:30

 あまり快適な場所ではなかったが、疲れもあってまぁまぁ眠れた。
 簡単な朝食をとって左岸の高巻きから続行。

 はっきりした踏跡はあるので不安はないが、それでもここは本当に黄蓮谷なのだろうか。
 前回来た時よりかなり様子が違うので、もしかしたらトポにある「三角岩の沢」へ入ってしまっているのでは。
 しかし、ちょっとした所には残置のハーケンやスリングがあったり、また本流の滝も何となく見覚えがある形だ。

 

 そうこうしているうちに前方に先行パーティー(男性二人?)を発見。
 やはりここは黄蓮谷で間違いなかった。それにしても前回こんなに大高巻きした覚えはないのだが。
 滝の状態によって年々高巻きするパーティーが多くなって踏跡も整備?されてきたのかもしれない。


 適当な所から奥千丈滝の上部へ降り、ようやく本流に戻る。
 奥の二俣を左に進み、最後はコーナースラブだ。
 先行Pのセカンドが左の壁伝いに抜けていったのを遠目に見つつ、近づいてみるとここも黒ヌルで覆われている。いやぁ、ここよく登ったなぁ。
 傾斜はそれほどでもないが、とても左の壁、コーナーに沿って行ける気がしない。
 しかたなく残置を最大限に使ってスラブから右側の草付きに逃げるようにクリアしたが、けっこう悪かった。
 
 
 
 最後、残置頼りの涸れ滝がもう一段あって、そこも遠慮なくA0クリア。
 後は踏跡を辿って少し登れば頂上直下に出たはずと記憶していたが、ここでも詰めを少し左寄りに採ってしまったようで、途中ハイマツ帯に入り込んだりしてけっこう長い。
 最後は予想をはずれて、頂上から15分ほど下の黒戸尾根に出た。

 晴れていれば、この場にザックを置いて頂上まで登っておきたいところだが、あいにく今日はガスっていて展望は期待できない。
 甲斐駒は二人とも何度も登っているので、今回は「ま、いいか。」と、頂上は割愛。靴をアプローチシューズに履き替え、そのまま下山する。


 しかし、下山も長い。
 結局、二週続けて日本三大急登と呼ばれるうちの二つ(早月尾根、黒戸尾根)を下ることになり、久々に大腿四頭筋に来た。
 
 道すがら色とりどりのキノコがあちこちにあるので、写真に撮る。
 前述のタケちゃん曰く、(素人による)食べられるキノコの見分け方として、
 
 ・色が地味
 ・表面がヌメっている
 ・笠の裏に黒い斑点が無い
 
 の三つがまず基本中の基本らしいが、やはり食用キノコの判別は難しい。
 誰かが言っていたが、「別に山でキノコ食べなくても生きていられるし、そこで冒険したくない。」という意見はもっともだと思う。

  
 

 五合目から下でもやはり早月尾根の時と同様、にわか雨に降られたが、たとえゴアテックスでも雨具を着れば蒸れそうな気温だったので、沢のウェアであることを幸いに濡れながら駒ヶ岳神社へと下った。
 今回は先週の剱の疲れもあって、ややハードな行程となったが、来月に控える別の沢?に備えて良いプレ・トレーニングになったということで相方には許してもらおう。

【今回の教訓】大雨が降った後の沢はヌルが多い(よーな気がする)

剱岳八ツ峰Ⅵ峰フェース

2019年08月12日 | アルパイン(無雪期)
日程:2019年8月8日(木)~11日(日)前夜発三泊四日+α
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目
 天候:
 行程:立山駅7:00-室堂9:00-剱沢13:00-長次郎谷15:00-熊ノ岩17:00
 
 昨年夏のⅥ峰&チンネ、今年春の北方稜線に続いて、またまた来てしまった剱岳。
 今年の目標は昨年CフェースだけだったⅥ峰のA~Dフェース継続、そしてチンネの隣に鎮座するクレオパトラニードルの登攀である。
 
 前日夕にヒロイ号で小田原を出発。
 中央道を松本で降り、岐阜回りで深夜に富山入り。そのまま富山電鉄「立山」駅前の駐車場でテント泊する。
 
 翌朝は早くから登山客で大賑わい。やはり日本人らしく「山の日」は山で、それもできれば剱のような山で過ごしたいというわけか。
 ケーブルカー、バスと乗り継ぎ、室堂入り。
 途中、あの名高い称名滝の前を通るが、時を同じくしてクライマーの中嶋徹氏がフリーソロで完登したというニュースを聞く。
 凄いなぁ。でも我々へっぽこクライマーは「クライミングJOY」でイイのである。

 
今回のファッションアイテムは麦わら帽子 (^^;)
 
 室堂到着。
 昨年はここで予想外の強風雨に見舞われ、初日からバスターミナルに監禁状態となったが、今年は爽やかな快晴。こんなに良過ぎる天気では後が怖いぐらいだ。
 荷物を整え出発。まさに「夏山JOY」のような景色の中をまずは雷鳥沢へ向かって歩き出す。
 
 
 
 雷鳥沢から別山乗越では、相方が珍しくバテ気味で途中二回小休止を入れる。
 身体の調子でも悪いのかと心配したが、何のことはない。今回張り切り過ぎて食材が多過ぎたとのこと。
 加えて暑さもあることから、ややゆっくりのペースで行く。長次郎谷出合からは自分がまたしてもテントとロープ2本持ちで熊ノ岩へ。(まったくしょうがねーな。)

 
 
 長次郎谷の雪渓登りはいつでもしんどいが、今回は特にきつかった。
 ザックの重さとしては明らかに三か月前の北方稜線の方が重かったはずだが、日頃の体力トレ不足のせいか熊の岩直下では思わず両腿が攣りそうになる。
 本日の熊ノ岩は我々を含め四張り。奥の方の良い位置を確保し、ベースとする。

  
本日の山メシ。今回、生玉子も持参する気合の入れよう。
 

二日目
 天候:
 行程:出発-Ⅵ峰Aフェース中大ルート7:00~8:10-Bフェース京大ルート(断念)-Cフェース剣稜会ルート10:20~12:00-帰着14:20
 
 未明に起きると早くもチンネを目指すパーティーがヘッデンを点けて、まだ暗い長次郎谷の上部を登っていくのが見えた。我々は明るくなってから出発。
 
 まずは手近のAフェースへ。
 雪渓を渡りガレた斜面を登り、取付きに着いたところで、相方がまさかのロープ忘れ!何か今回は浮わついてるな。
 しかたなく取りに戻るが、幸い後ろのパーティーに順番を越させることはなかった。
 
 中大ルートは自分は7年振り二度目。ピッチグレードはⅣ+だが、コーナークラック主体でちょっとクセがあり、登りにくい印象。
 相方にやらせようとしたが、ややビビリ気味なので自分からスタート。ツルベで登り、実質2ピッチ半。
 隣の魚津高ルートのパーティーより後から取り付いたが、すぐに追い越し、相方もソツなくこなして終了。懸垂下降で基部へ。

 
 
 続いてBフェース。
 トポを見ながらおそらく京大ルートに合流するラインから取り付くが、リードしようとした相方が最初の残置ハーケンにランナーを掛けようとしたところ、カラーンと音を立てて簡単に抜けてしまった。
 残置に頼るわけではないが、人気のA、Cフェースに較べると、やはりここBフェースは最近あまり登られていないようで落石も怖い。
 今回は二人とも「夏岩JOY」の方針なので、余計なリスクは避けることとし、Bフェースは却下。そのままCフェースへ移る。
 
 Cフェースは昨年夏、二人で登っているが、前回剣稜会のつもりがルートミスで途中からRCCルートに入ってしまったため、今回はきっちり剣稜会ルートをはずさないよう行くことにする。
 それでもまだ若干右寄りだったようで、リードの相方は時折カムをセットしながらロープを延ばしていく。

 
 
 途中で先行する学生らしき三人パーティーに追い付く。
 まだ午前中で、自分たちはできれば午後にはDフェースも継続するつもりだったので、「ランナーも共有しないで、ロープも交差しないよう行くから先に行かせて。」とお願いしたが、相手はちょっとムッとしたようで無言。
 黙っていたので了解してくれたものと勝手に判断し、先に行かせていただいたが、我々二人が終了点に着いても向こうはまだセカンドが下の方で見えないくらいだった。
 アルパインのルートは先に取り付いた者が全ての優先権を持つわけでなく、本場ヨーロッパでもスピードによって譲り合いのルールが通用しているので、まぁここは許してもらおう。

 
 
 下から登ってきているので同ルートを降りるわけにいかず(特に剣稜会ルートの上部はロープがスタックしやすい)、トポに従ってⅤ・Ⅵのコル側へ。
 途中、懸垂支点があったのでそれを使用。ちょうど切れ目切れ目に次の残置支点があり、これは早いと思ったら最後にロープスタックしてしまう。
 登り返しの回収で思わずタイムロス。下りてきたのはCフェースのRCCルートかと思ったら、知らない間にAフェースを下りてしまっていた。
 まだ陽は高い時間帯ではあったが、ここで欲張ってDフェースまで行くと残業になりかねないし、今日のところはここまでで終了。
 熊の岩に戻り、雪渓で冷やしたビールで乾杯。昼寝の後の山メシは相方が腕を奮ってくれて言うことなし!

 
 その夜はルートミスした残業パーティーがAフェース上部で大落石を起こしたり、Bフェース付近でヘッデン点けて右往左往しているパーティーがいたりして、物々しかった。
 我々もあの時、Cフェースで前に出ず、おとなしく後ろに付いていたらどうなっていたことか。

 
 
三日目
 天候:
 行程:出発-Ⅵ峰Dフェース富山大ルート6:00~9:30-八ツ峰上部-クレオパトラニードル12:00~15:00-池ノ谷乗越-長次郎谷-帰着19:00
 
 朝起きてみると、昨夜Bフェース付近でヘッデン残業している三人パーティーが下降しているのが見えた。
 どうやらビバークした模様だが、それってまさか昨日のCフェースの御三方?とりあえずご無事で何より。

 
 さて今日はDフェースからだ。
 長次郎谷を横切り、ガレの斜面を登って富山大ルートの取付きへ。
 初日にベースで挨拶を交わした男女ペアが既に1ピッチ目を登り始めている。
 
 我々が準備をしている間に後から若いニイちゃん二人組が到着。
 何となく12クライマーのような雰囲気だったので「ウチら遅いんで、途中で抜かしてくださいね。」と言っておく。
 Dフェースは自分も初めて。
 昨日、最初のAフェースで少しビビリ気味だった相方に「どうする?」と水を向けると、今日は「行きます!」と元気な返事。その意気や良し。
 
 1ピッチ目は少し変化に飛んだⅣ+ピッチ。
 どうかなと思ったが、外岩フリーで5.11aを登り、ボルジムで3級をやっている相方には問題無し。
 
 
 
 ソツなく登って2ピッチ目を引き継ぐ。
 核心は3ピッチ目なので気楽に構えていたが、特に途中でピッチを切る必要もなく、途中の2mほどの垂壁を越えスラブを詰めて行ったら、そのまま3ピッチ目まで続けて登ってしまった。
 せっかく核心のおいしい所は相方にリードで楽しんでもらおうと思っていたのに、すまんのう。
 ちなみに核心(Ⅴ-)は先ほどの2mほどの垂壁で、夏ならボルジムで6級程度。ワンポイントだけだ。
 
 4ピッチ目は左側のカンテに向かってバンドトラバース。
 後は5~7ピッチまで高度感のある剥き出しのカンテ、リッジが続いている。見た目、岩はちょっと風化した感じで不安を感じるが、思った以上にしっかりしていて快適。
 こちら側から見ると、あの易しいCフェース剣稜会ルートもちょっとシャモニーの針峰群を思わせる景観でなかなか絵になるロケーションだ。
 
 
 
 Dフェースの頭で八ツ峰縦走中のパーティーから祝福を受け、終了。
 DフェースはⅥ峰フェース群の中では一番長く難しいとなっているようだが、登ってみると快適で、かえってAフェースの中大ルートの方がイヤらしく感じるかも。
 
 小休止後、登山靴に履き替え、彼らの後に付いて八ツ峰上部へ進み、途中から右に分かれて我々はクレオパトラニードルへ。
 トラバース道から小ガリーを登り、着いたコルに登山靴やアイゼンをデポする。
 頭上にはニードルというよりドームのようなクレオパトラの先端に懸垂用の古いスリングがしめ縄のように何本も巻きついているのが見える。
 コルから上は特に残置は確認できず、容易なルートを取れば1ピッチで上がれそう。
 ネットで見かける最近の記録はおそらく、このコルからチャチャッと登っているのではないだろうか。
 
 何となく面白味に欠けるので、コルからさらにチンネとクレオパトラの間、沢沿いの微かな踏跡を辿って基部まで下りてみる。
 だが、途中からザレがひどくなり安全を期して途中まで。ちょうど槍の穂先のように見える位置からクレオパトラに登ることにする。
 
 様子見ながら、まずは自分がリード。ロープ一本で行く。
 這松混じりのスラブをやや左上気味に上がって行き、クレオパトラの東側リッジに着いたところでピッチを切る。
 一応、ルートに出たようで、古くあまり信用できないハーケンが辺りに数本打ってある。
 下を見るとスッキリしたリッジとフェースが1ピッチ分続いており、取り付くにもっと八ツ峰の手前から入るべきだったか。アプローチがなかなか難しい。

 
 
 とりあえず相方を迎え、頂上までの残り1ピッチをリードしてもらおうと思ったが、出だしがけっこう立っていて支点も怪しいため、相方は尻込み。自分がそのままリードする。
 そこからのピッチは変化に富み、なかなかワイルドだった。
 安全を期してなるべく弱点を突いた凹角沿いのラインを選んだが、それでも2~3か所明らかにⅤ+相当のポイントがあり、岩もやや風化気味のためデリケートな登りが要求された。
 
 慎重に時間をかけ、ようやくニードルの先端へ。いつ岩が剥がれてもおかしくないルートだったので、正直ホッとした。
 下にいる相方に声を掛け登ってきてもらう。途中で「登れないかも~。」とか「テンション」とか聞こえたような気がしたが、「A0でも何でもいいから登ってこーい。」とロープだけは張り気味にする。
 結局、A0連発だったようだが、まぁよく頑張った。

  ヘロヘロの図(^^;)
 
 クレオパトラニードルは実は双耳峰で、我々が着いたのは高い方。
 ここから懸垂支点がある低い方のニードルへはせいぜい4mほどだが、短い懸垂が必要となる。
 本来なら高い方に懸垂用の残置があってもよさそうだが、それが無いことからやはり最近は下のコルからチャチャッと低い方のニードルだけ登っているような気がする。
 低い方のニードルに移り、20mほどの懸垂でコルへ下る。
 
 クレオパトラの高い方から低いニードルへ懸垂するところ
 
 登山靴に履き替え、トラバース道を八ッ峰へ戻るが、最後、八ツ峰の最上部がややルートがわかりにくかった。
 懸垂を二回ほどして池ノ谷乗越直下の長次郎谷に出る。
 何とかヘッデン残業せずに熊ノ岩ベースに帰り着いたが、クレオパトラは予想以上に探検的要素が強く、時間がかかってしまった。
 
 熊ノ岩に戻ると、それまで四張りだったのが一気に20張以上の大テント村と化していてビックリ。
 本日もまずはビール。そしてバーボンと贅沢な山メシで充実した夜を過ごす。

 「ビストロ熊ノ岩」営業中
 
 
四日目
 天候:
 行程:出発8:40-長次郎谷左俣-剱岳本峰11:00~12:00-早月尾根-馬場島20:00
 
 いよいよ最終日。天候に恵まれ、とりあえず今回の予定はほぼ消化できた。
 本当はこの春に三ノ窓先に残してきた減価償却済みロープを回収するはずだったが、昨日思いのほか行動時間を取られてしまい断念。回収は次回へ延期する。m(_ _)m
 しかし、ベースから見るこの日のⅥ峰フェースの有様は凄かった。
 昨日一気に増えたパーティーが一気に押し寄せ、A、Cフェース共に各ピッチのテラスごとに数人ずつ、取付きなどは順番待ちのクライマーが団子状。本チャンの岩場というより混み合うゲレンデといった感じで、もしかしたらトップロープでも張って講習会でもやっているんじゃないかといった賑わいである。
 相方がささやかに「熊ノ岩清掃活動」などしてから、撤収。

 

 条件の良い長次郎谷左俣を詰め、そこからふた登りほどして三か月振りの本峰へ。
 夏の剱岳の混雑は相変わらず。他の登山者の合い間を縫って、ささっと祠の前で記念写真を撮る。
 今回、大学山岳部時代の友人である「剱人」ヤマモト先生(現・N山岳会副会長であーる)が赤谷尾根を登っているらしく、頂上で会えるかなと期待していたが、向こうは同行者の不調で一早く下山してしまったらしい。残念! 

 
 
 一通り休んでから通常の別山尾根を下って一見落着の予定だったが、ここでまさかの事態が発生。
 何と下山の「カニのヨコバイ」が大渋滞で、ディズニーランドのアトラクション待ちである。
 予備日を一日持っているのでのんびり構えても良かったが、一度気持ちが下界へ向かうと何としても今日中に下りてしまいたい。
 ここで室堂の最終バス時刻が絶望的になり、相方が判断したのがまさかの早月尾根下山という選択。
 
 結局登り返して馬場島へと長い尾根を下っていくが、途中の早月小屋まででもうヘロヘロ。
 水分不足と熱中症で、普段はケチって絶対買わないペットボトルを2本(相方は3本!)も買ってしまった。

 試練の早月尾根。相変わらず長い
 
 最後は先の北方稜線同様ヘッデン下山となる。風呂は入れたものの、またしても富山の鮨はお預け。
 高いタクシー代(馬場島-立山駅17,000円)が付き、途中、道の駅で仮眠を入れつつ翌日帰りとなる。
 やはり剱は最後まで「試練」を与えてくれるなぁ。いや、参りました。(^^;)

 

南ア・信濃俣河内(偵察)

2019年07月25日 | 沢登り
日程:2019年7月25日(木)前夜発日帰り
天候:
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
行程:畑薙第一ダムP 8:00-畑薙湖右岸林道8:30-吊橋9:00-信濃俣河内三俣手前13:00-ダムP 16:00

 今年の梅雨は特に長く、七月は毎週末クライミングのジム通いが続いた。
 それもようやく梅雨明けの気配となり、まずは南アルプスの信濃俣河内を計画する。昨年の易老沢に続く南ア南部第二弾だ。
 予備日を含め四日間、予報も悪くはなかった。
 しかしながら、直前になってまさかの台風接近。梅雨明けはおあずけとなってしまう。

 とりあえず行ってみようと前夜に出発。東名経由で清水ICから一般道を走るが、やはり南ア南部は遠い。
 峠越えのワインディングロードでは雨と霧により運転者本人でさえ車酔いしてしまう。
 これは先の剱岳北方稜線の入山時でも経験済みだが、視界不良による遠近感の狂いがめまいを生じさせているように思う。
 その夜は大井川鉄道「千頭」駅近くの道の駅でテント泊。
 
 翌朝はとりあえず晴れ。畑薙第一ダムの駐車場まで移動する。
 途中、東海フォレストバスの駐車場が何か大きなイベントでもやっているくらいに混雑しているのには驚いた。
 ダムに到着。もはや天候悪化が明確なので宿泊装備は車に置き、今回は最初から軽荷の偵察体勢で臨むことにする。
 
 ダムの右岸(左側)林道を30分ほど歩くと突き当たりとなり、その少し手前から右側急斜面を踏跡を辿っていくと立派な長い吊橋がある。(観光用ではない。)
 
 
 
 吊橋を渡り切ってからは二通りあり、右側は一旦高巻き道を下流側に戻り、その後、湖畔に下れるらしいが、今回はダム湖が増水していて無理。
 しかたなく左側のトラバース道を行くが、ザレた急斜面で踏跡の幅も狭く、ここはけっこう悪い。
 沢屋ならロープを出すほどではないが、最近ここで滑落し、入渓する前に敗退の記録もネットで見た。

  
 
 ダム湖からいよいよ本流に入るが、しばらく広い河原歩きと徒渉が続く。
 徒渉は深い所で膝上程度。右に左に10回くらい繰り返すが、長雨が続いたせいか流れが速く、時には二人で肩を組んでやり過ごす。
 
 
 
 

 しかし、この河原歩きと徒渉が思った以上に長い。
 結局、第一ゴルジュ手前の三俣までも届かず、制限時間いっぱいのため往路を引き返す。
 
  途中で鹿の角を拾う。
 
 今回一応、釣りの用意をしており、相方は見たらしいが、自分は魚影を確認できず。
 途中、二人で竿を出してみるが、下流域は流れの速い瀬ばかりでとても釣れそうにない。
 午後になり、いよいよ雨が降り出したので、増水になって閉じ込められる前に帰ってきた。

 
 
 楽しみにしていた梅雨明け第一弾の山行としては何とも冴えない内容だが、天気には勝てない。
 また地図で見ると距離も長く、位置的にも秘境感がある信濃俣河内だが、少なくとも下流は雰囲気も明るく、けっこう人が入っている感じだ。
 長い車と河原歩きのアプローチを考えると、またどうしても行きたいかと問われるとちょっと微妙な感じであった。まぁまた機会があれば・・・。