ロシア軍がウクライーナに侵攻した。ウクライーナ東部の親ロ派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、傀儡政権を誕生させた。ロシア軍の暴虐はこの東部2州にとどまらず、ウクライナ全土で侵略活動を展開し、2月25日夕方時点の情報では、首都キーフ(キエフ)はミサイルと戦闘機で攻撃され、チェルノブイリ原子力発電所も占拠された。
まず、このロシアのウクライーナ侵略を弾劾する。いま侵略者とたたかうウクライーナ人民、そして逮捕投獄を恐れず反戦デモに起ちあがったロシア人民に心から連帯する。国境を越えた世界人民の反戦闘争の嵐で、ロシア軍を撤退させ、プーチンを打倒し、ウクライナに平和と自由を勝ち取ろう。これは完全にテロの底なし沼になってしまったシリアに平和をもたらす道でもある。
大ロシア帝国の復活を妄想し、ウクライーナの「独立」を承認したレーニンとソ連への呪詛に満ちたプーチンの演説の邦訳を読んだ後では、レーニン主義を否定してきた私も「帝国主義戦争を内乱へ!」と叫ばずにはいられない。なおこのプーチン演説の邦訳は、 [プーチン大統領は国民にいかに「ウクライナ侵攻」の理由を説明したのか【1】1時間スピーチ全文訳](今井佐緒里氏訳)で読むことができる。今井氏の論考には、私は多くを学んだ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220224-00283560
ロシア帝国主義の全面侵攻前、ブルジョアジャーナリズムは、全面的な軍事侵攻には否定的な専門家や外交関係者の観測を伝えていたけれど、私は懐疑的だった。国境周辺に大軍が集結して、何もなしでは済むとは思えなかった。全面的な軍事侵攻になるか、部分的な軍事侵攻になるか、軍事的威嚇で終わるかは、それぞれ三分の一くらいの可能性ではないかと私は漠然と考えていた。
ウクライーナがNATO加盟を放棄して、ソ連時代のフィンランドのように中立化の道を歩めば、ロシアに隷属することになっても、独立は保たれ、全面的な軍事行動は避けられたかもしれない。しかしその道はウクライーナ側が断固として拒否したようだ。ソ連時代の民族浄化、ジェノサイドを思えば当然のことだろう。しかし、中立化以外に軍事行動を防ぐ可能性はゼロだったのではないか。
たしかに、露帝がウクライナに全面軍事侵攻すれば、公然たる国際法違反となり、米帝欧帝の巨大な制裁を招けば、すでに疲弊している経済への打撃は甚大なものになるだろう。しかし中国スタとの同盟を強化し、米帝欧帝に対する共同戦線を組めば、また大国間のパワーバランスも大きく変わる。天然ガスも中国向けに割り振れば外貨も獲得できるだろう。
もちろん、ロシアからの原油や天然ガスの供給がストップすれば、いわゆる西側の経済も打撃を受ける。しかしロシアには中国からの支援がある。中国も完全に敵にすることがあれば、西側の経済の混乱は測り知れない。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、アフリカ諸国も含めて、いかに中国人コミュニティが世界に深く根付いているかを明らかにした。アサリの産地偽装問題で図らずも明るみになったとおり、日本の食糧供給体制も中国なしでは成り立たないものになっている。製造業もしかりである。コロナ禍で、すでに自国にマスクの製造ラインがなく、中国の生産ラインを頼らねばならなくっている現状を、われわれは学んだばかりではなかったのか。
しかしウクライーナは中国スタにとっても「友好国」である。中国が初めて保有した空母・遼寧は、ソ連時代末期に建造され、ウクライーナから購入したものである。ウクライーナは中国スタのめざす広域経済圏「一帯一路」のハブであり、多くの中国人が滞在している。中国スタもまた、台湾の分離独立や、香港の民主化運動、ウイグルら少数民族の分離独立問題を弾圧してきた。ロシアが主張するウクライーナ東部・親露派支配地域の「独立」を安直に認めることもできない。以下は東京新聞からの引用。
〈合理的な判断を超えて破滅的ともみえる決断を下したプーチン大統領は、「帝国復活」の執念にとらわれているようだ。
「ウクライナは真の国家として安定した伝統がない」。プーチン氏は22日に行った演説の半分以上を割き、ロシア革命から現在に至るウクライナの歩みを延々と批判、国家の正統性そのものに疑問を呈した。
7月に発表した論文では「ウクライナとロシアは一つの民族」との持論を展開。「ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップによってのみ可能だ」と結論づけ、ウクライナの主権を事実上否定した。
こうした妄想というべき考えの根底にあるのは、ロシアは欧米とは異なる文明を有する偉大な「帝国」であるべきだとするプーチン氏の偏った歴史観と信念だ。
ロシアが欧州からアジアにまたがる真の「帝国」となったのは、18世紀後半にエカテリーナ女帝がウクライナを併合して以降とされる。ウクライナに執着するプーチン氏の念頭には、このウクライナ国家を消滅させて「小ロシア」として組み込み、同化させた歴史があるとみられる。〉
◆なぜプーチン氏は破滅的な決断を下したのか ウクライナ侵攻の背景にある「帝国」の歴史観 (元モスクワ支局長 常盤伸氏)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/162144?rct=ukraine
「ロシアをとりもろす」という大ロシア帝国復活妄想に囚われたプーチンは、宿敵の米帝と盟友の中国スタを道連れに、世界中を誰も得をしないゼロサムゲーム、いやマイナスサムゲームに巻き込んでしまった。
帝国主義戦争とは、自国の労働者を他国の労働者に虐殺させる「余剰」生産力調整であり、階級闘争を鎮圧する予防反革命であり、独占資本の人喰い豚どもを人民の血と肉汁でさらに肥え太らせるものである。
しかし、帝国主義戦争のそうした古典的図式は、すでに崩壊している。アメリカ社会がリベラルと保守反動に分断し、アフガニスタンをタリバンに明け渡した体たらくと米帝ブッシュの無能ぶりと体たらくをみて、露帝プーチンは千載一遇のチャンスとみたにちがいない。しかしこのウクライーナ侵攻はロシア帝国主義者にとっても何のプラスもなく、自らの墓穴を掘ったものというしかない。ウクライーナがロシア人に対するジェノサイドをやっているとか、「自国民」保護などという露帝のデマが通用すると思っているのか。私は米帝のインテリジェンスを見直す思いだった。今井佐緒里氏や常盤伸氏が指摘するとおり、露帝のやり方はナチス・ドイツを彷彿させるほどに「クラシック」ではあるが、米帝がおそらく史上初めて行っている「情報公開と透明性」の戦略の前には、哀れなほどに古いと感じざるをえない。今井氏のことばを引用しよう。
〈プーチンのやり方は、メディア統制ができて、その効果が期待できる時代にしか通用しない。今はどんなにメディアを統制してもしきれずに、世界中にネットで情報が出回る時代なのだ。人々を完全に盲目にすることは難しいのだ。
世界は、正規軍を投入して介入したり戦争を行ったりする時代は終わってゆき、制裁型の争いになってきたと言われて久しい。もし制裁が行われたら、時代の分岐点として歴史に刻まれるエポック・メイキングな出来事になる可能性はある。
まだウクライナ問題はまったく終わりそうにない。今回は一時的に収まって、また数ヶ月後、数年後に再燃する可能性もある。それでも、ロシアの最終的な敗北は確実である。
プーチン大統領の立場や考えは、文学的な意味では理解できる。でも、政治的には敗者のあがきにすぎない。
欧州は明らかに民主化の方向に向かっている。それはロシアも例外ではない。プーチン大統領が加齢で大幅に力が弱ったあと、あるいは亡くなったあと、ロシアの民主化が進むのは間違いないのだ。ルカシェンコ大統領のベラルーシも同様である〉
露帝のコロナ禍を理由にしたデモ・集会禁止令を恐れず、万余のロシア人民がウクライー.ナ侵攻に抗議するたたかいにたちあがった。地方議員が反戦アピールを出し、アスリートやアーティストたちがSNSで戦争反対の意志をアピールした。
ロシア当局は逮捕した1700人あまりの人びとを即刻釈放せよ!
ウクライナのある島の防衛隊は、ロシア海軍の降伏勧告に、「ロシア野郎は消え去れ」と返答して、英雄的に闘い抜き、全滅したという。いまも首都キーフではロシア軍との戦闘が続いているともいう。目の前を戦闘機が飛んでいく光景をレポートした、コロナ陽性を理由に出国を拒否され残留した日本人女性のツイートをご覧になった方も多いだろう。「プリキュアが来て守ってくれる」と妹を励ます長女さんの話を読んで、私はことばを失い、涙があふれてきた。
私はロシア軍と命がけでたたかうウクライーナ人民と、弾圧を恐れず命がけで反戦闘争に決起したロシア人民に心から敬意を表し、連帯する。
ウクライーナに平和を。プーチンと戦争の犬どもに永遠の死を!
日本にも、「日本をとりもろす」ことが夢の、プーチンを「ウラジミール」と呼んでタメ口がきける、財界の操り人形の元首相がいる。最近与党の最大派閥の領袖に収まったこの男は、今回のウクライーナ侵攻には、反対のアピールをしていた。犬以下のゴキブリ野郎、ナメクジ野郎というほかない。われわれは、いわゆる北方領土を持参金つきで売り渡した売国イベントで、この男が、「ウラジミール」と「同じゴール」をめざしていると嬉しげに嘯いていたポエムを忘れていない。
脱線となるが、『ユリイカ』2020年12月号特集「偽書の世界」に収録された原田実氏の『偽書跳梁の8年間 安倍政権が取り戻そうとした「日本」』は、史上最大の長期政権となり、今も与党に隠然たる影響力を保持する安倍派を懸念する人たちには一読を勧めたい。コロナ禍にあっても、安倍「私人」がツアーを試みた阿蘇「日の宮」こと弊立(へいたて)神社がある。この神社の先代宮司の春木秀英氏は、自称霊能者たちを招き入れ、かつて日本が世界を支配した神国で、モーゼ・釈迦・孔子・キリスト・マホメットらも日本に留学したというトンデモ説を唱える『竹内文書』をもとに独自の教義を確立する。そこにオカルト志向の強い経営コンサルタントの船井幸雄氏、「水からの伝言」の提唱者であるオカルトサイエンティストの江本勝氏などが加わってくる。そこで政財界との結びつきもでき、安倍「私人」との結びつきもできたというわけだ。
「新」資本主義と称する資本の人喰い豚どもは、マルクスが『資本論』で糾弾したとおり、全身の毛穴から血と汚物をしたたらせている。彼らはマネーという名の狂犬病に憑かれた野犬よりも危険なケダモノたちだ。世界はまるで19世紀、いや18世紀に逆戻りしたかのようだ。私はエンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』がそのまま当てはまるような状況が、21世紀の「高度」資本主義社会において実現するとは思ってもみなかった。
しかし私はまだ絶望していない。絶望するには早すぎる。絶望の入口は常に希望の扉である。
ウクライナの英雄たちは、いまこの瞬間も侵略者どもと闘い続けている。ロシア人民も戦争に反対し続けている。
日露戦争での日本の薄氷上の「勝利」も、小村寿太郎の外交活動なり、明石元二郎がレーニンのボルシェヴィキに資金提供したこともあっただろうが、決定的なのは、ロシア人民による反戦闘争の昂まりである。ロシア革命でレーニンのボルシェヴィキが最終的に勝利したのも、「パンと平和と土地を」というスローガンが、第一次大戦に反対する労働者・農民の魂を鷲掴みにしたからだ。いまロシアでは再び革命が起きようとしている。私は歴史を宿命とせず、自らの手で切り開き覆してきたロシア人民を信じる。勝ち目がないと思われた戦いで英雄的に戦い抜くウクライーナ人民、弾圧を恐れず決起するロシア人民に、私は限りない希望を感じる。闘いはいつだってこれからだ。戦争の犬どもとの闘いに終わりなどない。
首都「キエフ」はロシア語読みとのことで、ウクライーナ語に近い「キーフ」に改めた。この「ウクライーナ」も、「ウクライナ」に替わる現地語に近いカナ表記として、ウクライーナ政府が日本に希望したというものである(いずれも引用部分は異なる)。
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