武道や芸道に作法や型があるように、キャリアコンサルティングにも「作法と型」がある。キャリアコンサルティングの作法とは「傾聴」の姿勢。キャリアコンサルティングの型とは「6つのステップ」。そう考えている。
「傾聴」の姿勢の背景には、相手(相談者)を尊重するという倫理観がある。「6つのステップ」を基本とするのは、相談を通じた支援の質の維持や向上と、キャリアコンサルタント自身が結果やプロセスを振り返る時のものさしとするためと思う。個性や価値観、経験や能力、現状や目標の異なる多様な相談者に対応するのに、行き当たりばったりや自己流支援では続かない。
歌舞伎役者の坂東玉三郎さんの言葉が思い浮かぶ。「型破りな演技は、型を知らずにはできない。型を知らずにやるのは、型なしというのだ」型なしは良くない。何か一つのことを展開してゆく時には、必ずその基本を叩き込んでから前に進むよう戒める言葉だそうだ。
キャリアコンサルティングの現場では、時に壁にぶつかったり、袋小路に入り込むこともある。そんな時、つい局面を転換するために無理に相手を動かそうとしたり、その結果相手との信頼関係が揺らいだりすることがある。自己流に走り、作法を忘れてしまうからだろう。主役はあくまで相談者であり、相談者の自己決定や自立を支援することがキャリアコンサルタントの役割であると思い出せるかどうか。
「作法と型」、それらに理論を加えて支援する。頭ではわかっていたつもりのことが現場で実感されることが増えてきた。これからも、キャリアコンサルタントの仕事の基本に忠実に、謙虚に、相談者第一で仕事したい。人の人生を支援する仕事は苦労も多い。奥が深い。「長いことお世話になりました。ありがとうございました。これから何とかがんばってみます。」こんな言葉を相談者からもらった時、心から喜びを感じる仕事である。