安倍首相は、戦争法案(安全保障関連法案)について、「戦争に協力するための法律ではない」との弁明を繰り返しています。
しかし、戦争への協力の具体例を挙げて追求されると、そうした協力を行わないという法律上の根拠を示すことはできず、「法的には可能だが、政策判断としてしない」「総合的に判断する」などと逃げるばかりです。
8月25日の参議院安全保障特別委員会で、山本太郎議員が、「戦争法案は国際法違反の戦争を手助けするものだ」と、安倍首相を追求しました。
※2015.8.25安保特「原爆投下や空襲は戦争犯罪・国際法違反か?」の質問に、答弁回避の安倍総理(山本太郎公式ウェブサイト)
山本議員は、イラク中部のイシャキ村で2006年3月、米軍が民間人の家に立入り、戦後5ヶ月の赤ちゃんを含む無抵抗の11人を銃殺した事件など、イラク戦争で米軍が行った戦争犯罪の具体例を、安倍首相に突きつけました。
特に、04年のファルージャ総攻撃では、街を完全に包囲し、人の出入りを遮断、食料や医薬品も外から供給させない状態で、激しい空爆、砲撃を加え、6000人以上を殺害、3000人の行方不明者を出したこと、この頃の米兵は「息をしているものは全て撃て」と指令されており、それが大虐殺を引き起こしたこと、などを暴露しました。
そして、「これらの米軍の行為は、戦争犯罪、国際法違反ですよね?」と、安倍首相に問いました。
ところが、安倍首相の答えは、「どの程度事実にもとづいているか承知をしていないので、答えられない」というものでした。イラク戦争当時、内閣官房副長官、自民党幹事長・幹事長代理という政府・与党の要職にあった安倍首相が「知らない」とはどういうことでしょうか!?
もちろん、米軍が残虐行為を行っていたことを知らないはずがありません。
安倍首相は山本議員への答弁で「自衛隊が活動するにあたって、国際法を遵守し、国際人道法に違反する支援を行わない」と強調しました。米軍が国際法違反を犯したことを認めてしまっては、米軍への協力ができなくなる。だから「知らない」で逃げ切ろうとしたです。
あまりにも無責任な答弁です。イラクで、ファルージャで殺された人々の命を何とも思っていない。安倍首相にとって大事なのは、米国について行くことだけなのです。
日本政府はいまだに、イラク戦争がどのような戦争であったのか、自衛隊のイラク派遣が正しかったのかどうか、何ら検証せず、曖昧にしたままです。
イラク戦争が「国際法違反かどうか分からない」と曖昧にしたまま、戦争法案を成立させてしまえば、どうなるでしょうか?
自衛隊が米軍の後方支援、すなわち兵站を担えるようにすること、これが戦争法案の中心の1つです。イラクでは、米軍は、劣化ウラン弾、クラスター爆弾、白燐弾などの残虐兵器を使用しました。
※暴かれた、ファルージャでの白リン弾=化学兵器使用(アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局)
※クラスター爆弾によって、どれだけの民間人が殺されたのか(アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局)
※アメリカは非人道兵器の使用を直ちに中止せよ!(アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局)
戦争法案が成立すれば、これらの兵器を含む武器・弾薬を、自衛隊が輸送し、国際法違反の侵略戦争、残虐行為に協力することになるのです。中谷防衛大臣は、これらの兵器は「消耗品」であり、自衛隊が米軍に供給することとも輸送することも、「法文上は可能」と認めています。
※ 【安保法制国会ハイライト】劣化ウラン弾も毒ガスも核ミサイルも「武器ではない」!?「要請があっても断固拒否する」と強調するも、法文上はあらゆる武器の輸送が可能に!(IWJ)
※戦争法「武器・弾薬の補給・輸送」で非人道兵器は本当に除外されるのか(リブインピースのブログ)
戦争法によって自衛隊が担うことになる米軍の兵站が、「人殺しの手伝い」であることを、イラクの現実は示しています。
(by ウナイ)