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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[1]

2016-06-09 | 集団的自衛権

「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[1]

http://ikensosyo.org/より

訴 状

2016(平成28)年6月8日
大阪地方裁判所 御中

原 告 の 表 示 別紙原告目録記載のとおり(702名)

原告訴訟代理人の表示 別紙原告代理人目録記載のとおり(25名)

・・・(弁護士名等省略)・・・

請 求 の 趣 旨

 1 被告は、原告らそれぞれに対し、各金1万円及びこれに対する平成26年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 訴訟費用は被告の負担とする。

 との判決並びに第1項につき仮執行の宣言を求める。

【法律の題名の略称】

 この書面において、法律の題名を以下のとおり略称する。なお、特記するもの以外は第189回国会での改正後の題名である。

 ・ 平和安全法制整備法(案)=我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(案)

 ・ 国際平和支援法(案)=国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(案)

 ・ 安保法制=今回改正ないし立法された「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」を総称する

 ・ 武力攻撃事態対処法(改正前)=武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

 ・ 事態対処法=武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

 ・ 国民保護法=武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律

 ・ 周辺事態法(改正前)=周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律

 ・ 重要影響事態法=重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するため措置に関する法律

 ・ 国連平和維持活動協力法=国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律

 ・ 特定秘密保護法=特定秘密の保護に関する法律

 ・ テロ特措法=平成十三年九月十一日の米国合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議に基づく人道的措置に関する特別措置法

 ・ イラク特措法=イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法

請 求 の 原 因

第1 本件訴訟の意義

 1 はじめに

 戦後我が国の歴史は、戦争から完全に決別することから出発し、かつ、決別を貫いてきた歴史である。敗戦が示した惨状は「戦争は最大の人権侵害である」ことを誰の目にも明らかな事実としてつきつけた。敗戦の惨禍の中から日本の民衆をして力強く復興に立ちあがらせた力は国の最高法規憲法において戦争を永久に放棄することによって確実な平和が約束されたことにあると言っても過言ではない。
 本件訴訟で原告になっている人達の中には戦争体験者がいるが、彼らは戦場における加害の事実、被害の事実、そして、ふるさとにおける関係者の甚大な被害を背負って歩み出したが、自ら受けた筆舌に尽くしがたい被害が、ただひとつ最大の宝である平和によって報われたと実感しえたからこそ、爾来70年自らの生活に自信をもって暮らしてきた。外国の人に対する加害に対する謝罪も、自らの被害の回復も、平和を守りぬくことによってその回答とすることを日本人の矜持としてきた。しかし、今回安倍政権による戦争のできる国家への転換は、戦争体験者の過去の戦争の惨禍への思いをぶり返させ耐えがたい苦痛を加えている。平和によって癒された自らの戦争被害が、戦争のできる国に無法にも転換させられることにより、戦争による苦痛が倍加されている。
 そして、戦後、憲法第9条と第13条の保護のもと、戦争のない幸福な生活を送ってきた原告らに対し、今後ふりかかってくるであろう戦争と戦争に関連する権利侵害のおそれによって、日常的な不安と苦痛にさらされる生活を余儀なくされている。

 2 ありえないことが強行された。

 憲法は国の最高法規であり、「その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(憲98①)のであるから、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(憲9①)との規定に明白に違反して、戦争を行うことができるようになされた各法条は違憲であって無効であるし、2014年(平26)7月1日にかかる法制度を作ることを謀議した同日の閣議決定は不法行為を構成する違法な事実であるが、これら違憲違法行為によって集団的自衛権の行使まで行うことのできる法律が立法された。
 安倍内閣は、権力を縛る憲法を無視して、権力の側から憲法に違反する法を作り、その法によって憲法秩序をこわそうとして、前記7月1日の閣議決定をなし、議会の多数派をして違憲立法をなさしめた。
 これはソフトクーデターともいうべき無法行為といわざるをえない。安倍内閣によって立憲主義、国民主権が破壊されたのである。

 3 平和的生存権を根底とする諸権利の侵害

 国家制度として憲法第9条において戦争を放棄し憲法前文においてその由来とその淵源が人類の多年にわたる闘争と努力の結果であることを明らかにされた私達の権利、それは、平和的生存権である。平和は全ての生活を正常に営むための根源であり、逆に、戦争は最大の人権侵害であるように、平和への攻撃、平和に暮らす生活の侵害は、私達の人格全体に対する侵害をもたらす。
 本訴訟は、人間生活の根源的権利であるこの平和的生存権が脅かされようとしていること、これまで平和的生存権を制度的に保障していた憲法第9条を解釈改憲して戦争のできる制度にしたことは、すなわち、直ちに私達らの平和的生活が補償されない事態を必然的に生じさせることに対し、原告らは、この「戦争法」と特徴付けられる「安保法制」の発動を差し止め、原告らそれぞれの事情は異なっても等しく平和的生存権を侵害ないし侵害される危険による損害賠償を求めて本訴を提起した。原告らの切実な願いは、これら審理における違憲判断を通じて、これら「安保法制」の廃止を国会が議決されることである。

 4 「司法の真価が問われる」(朝日4.29社説)

 従来、本件の如きいわゆる平和訴訟と言われる訴訟に対しては余り関心を示してこなかったマスコミにおいても、とうとう「司法の真価」を問うという社説を掲示した。
 本件安保法案が審議されている最中も、そして、成立した後も、国会前に集まった人々は口々に廃案、廃止を求め、そして、今現在も廃止を求めて多くの人達が活動を行っている。
 この主権者国民の声によって、マスコミも行政権力と立法権の暴走に対して国家権力として責任をもって制止しうる機関は裁判所しかないとの判断をしている。
 この我国憲法史上最大の危機に対し、違憲審査権を有する裁判所におかれて真剣かつ充実した審理を尽くされることを求めるものである。
 なお、最高裁砂川事件判決(昭34.12.16)は、日米安保条約については高度の政治性を有するものとの理由からいわゆる「統治行為論」を適用して判断を回避したが、同判決において審査対象となる場合を「一見極めて明白に違憲無効であると認められる」場合を摘示しているところ、本件「安保法制」はその全審理の過程及び成立後も圧倒的多数の憲法学者が違憲と判断し、公言してきたことは公知の事実であり、これらの点を考えれば、本件「安保法制」は「一見極めて明白に違憲」というべき法律であり、当然に審査の対象となる法律であることを付言する。

(ハンマー)

 

 


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