ヒトラーの贋札
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原題: DIE FALSCHER/THE COUNTERFEITER
製作:2006年 ドイツ・オーストリア
製作:ヨーゼフ・アイヒホルツァー
監督:シュテファン・ルツォヴィツキー
脚本:シュテファン・ルツォヴィツキー
出演:カール・マルコヴィックス アウグスト・ディール デーヴィト・シュトリーゾフ アウグスト・ツィルナー マルティン・ブラムバッハ
キャッチコピー:完璧な贋札。それは俺たちの命を救うのか。それとも奪うのか
1943年から終戦にかけ、ナチス政権がイギリスの経済かく乱を狙い画策した史上最大の紙幣贋造事件「ベルンハルト作戦」。その贋札作りに関わった、ユダヤ人印刷工アドルフ・ブルガーの証言に基づき、脚色を加えて制作された作品『ヒトラーの贋札』です。
第二次世界大戦真っ只中のドイツ。ユダヤ人強制収容所の一画に、各地から集められた職人たちが働く秘密工場がありました。世界的贋作師のサリー(カール・マルコヴィックス)は、かつて自分を逮捕したヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)の指揮のもと、大量の贋ポンド紙幣を作る「ベルンハルト作戦」に加わることになります。その工場はかつての劣悪な環境とは異なり囚人として異例の待遇でした。しかし、贋札作りは苦悩と困難の連続でした。なぜなら、作戦が成功は家族や同胞への裏切りを意味し、失敗は仲間と自らの死を意味することだったからです。
第二次世界大戦終戦直後のモナコ・モンテカルロ。くたびれたスーツを着た男が高級ホテルに足を踏み入れるシーンから物語ははじまります。
手にしたアタッシュケースには札束が詰め込んでありました。男は部屋にスタッフを呼び身なりを整えカジノ場へ行き、狂ったように賭けていきます。その日一夜を過ごした女性は男の腕の囚人番号に気付きます。
世界的贋作師のサリー。
パスポート偽造、贋札作り、絵画の贋作・・・と非凡な才能を持っています。
しかし、あえなく御用となり逮捕。しかし彼が送られた先は刑務所ではなくなんと強制収容所!
毎日過酷な労働を強いられ家畜同然の扱いを受ますが・・。
お得意の芸術センスをフル活用し、親衛隊に絵を描いたり、壁画を描いたり・・・と収容所内でもうまく立ち回ります。
そんなある日ザクセンハウゼン強制収容所への移送が決定します。
移送中に出会った美術学生のコーリャ。彼はサリーと同じ学校に通っていました。
ザクセンハウゼン強制収容所で待ち受けていたのは、なんとサリーを逮捕して大出世したヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)。
清潔なベッド、定期的に許されるシャワー、音楽が流れる作業場。
夢のような待遇です。
彼に与えられた仕事は贋札製造。
「ベルンハルト作戦」のそれです。
彼はこの作業所で贋札製造主任に任命されてしまいます。
仲間のピンチを救いながら、それまで困難を極めていたポンド作りを完成へと導くサリー。
そのポンドは早速スパイの手により、スイス銀行、ロンドン銀行に持ち込まれ鑑定依頼されます。
結果は・・・・「真券」。
銀行に勤めるプロの鑑定士の目でさえ見破れなかった完璧な贋札が完成しました。
ポンド完成で何とか命びろいできた工員たちですが
早速次のお題がでました。
今度はドル。
ここでまた問題が。
正義感の強い印刷技師のブルガー(アウグスト・ディール)。
彼の妻はアウシュヴィッツ収容所にいます。
自分たちが贋札を作り続けることは戦争が長引くことを意味し、「同胞」への裏切りになると主張。
ブルガーはサボタージュを決意。
サリーともたびたび衝突を繰り返します。
こんな状態で作業が進むわけもなく・・・時間ばかりが過ぎていきます。
痺れを切らした親衛隊の将校から期限を提示されます。
しかも、その期限が過ぎると5人を銃殺する・・・・という条件付で・・・。
やむなく、ブルガー抜きでドル作りをはじめるサリー。
しかしその頃サリーにはもうひとつ心配事が・・・。
コーリャが結核にかかってしまっていたのです。
"敗戦”を察知したヘルツォークは国外逃亡するために自分の家族の偽造パスポートをサリーに依頼。ここでサリーは結核の薬をヘルツォークに依頼。
ふたりの取引は成立します。
しかし、やっとの思いで薬を手に入れたものの、コーリャは親衛隊により銃殺されてしまいます。
その後敗戦を知らされ塀の向こうの「同士」たちの様子を見て愕然とする工員たち。
工場も閉鎖され晴れて自由の身となります。
そして場面は再びモナコ・モンテカルロに。
カジノで大負けしたサリー。
美しいダンスシーンです。
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むはぁ・・・。
なんともなんとも。
緊張しっぱなしの約2時間・・・。
ナチスものっていうのはいつ観ても救いのない気分にさせられます。
正直、こうして内容を思い出しながら書いているだけでものすごく重い気分になりました。
戦争って本当に不条理ですね・・・。
「ベルンハルト作戦」にまつわる作品ですが、スパイや国家目線でなく、強制収容所で贋札を作っていた人々に着目して製作されていることがとても興味深かったです。
「ベルンハルト作戦」の生き証人ともいえるアドルフ・ブルガー氏。
今でも精力的に自分の体験談を人々に伝える活動をしているそうです。
本作のベースとなった『「ヒトラーの贋札 悪魔の工房』読んでみようかな。
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前田有一の超映画批評