おすすめ度
製作:1961年 日本
製作:永田雅一
監督:市川崑
脚本:和田夏十
出演:岸恵子 山本富士子 宮城まり子 中村玉緒 岸田今日子 宇野良子 村井千恵子 有明マスミ 紺野ユカ 倉田マユミ 森山加代子 船越英二
市川崑監督の「黒い十人の女」です。
毎日忙しく過ごすテレピプロデューサー風松吉(船越英二)。既婚者でありながらも優しい彼には近づく女性も多く同時期に彼と関係した人数はなんと九人!妻の双葉(山本富士子)はそんな夫を見放し、レストラン経営で忙しく過ごす事で寂しさを紛らわせています。後腐れのない関係のつもりが、女たちは風が気になって仕方がない。仕事に行きづまりを感じている女優石ノ下市子(岸恵子)もそんな一人。女たちは風のことが気になるあまり二言目には「風を誰か殺してくれないかしら」と言う有り様。ある日愛人のひとり、印刷会社のオーナー三輪子が女たちの計画を風に話します。気の弱い風は不安になり、どうして自分が殺されようとしているのか妻の双葉に相談します。
女優の石ノ下市子、本妻の風双葉、印刷会社の女社長三輪子、コマーシャルガールの四村塩、照明係の後藤五夜子、この辺から誰が何をしているか分かりませんが、虫子、七重、八代、櫛子、十糸子。以上十人が風を愛した女たち。名前、地味〜に番号ついてます(笑)。
本妻の「皆に優しいのは、誰にも優しくないってことですからね。」っていう台詞。そうそう!そうなの!と思わず大きく縦に首を振る私。
いやあ。
この作品、相当面白い!
優柔不断のダメダメ男と気の強〜い女たちのお話。
かなりいいです!
風が選ぶのは全員職業を持った生活力のある女たち。
優しいところが長所であり、最大の短所であるズルい男。忙しすぎて(?)人間としての大切な何かが欠如してるんですねえ。
風さん、困ってますね〜。
1:10の気まずい場面。
女は強い!そして、怖い!!
市子「あなたは影のない人だと私誰かに言った事があるけど、現代の社会機構の中に巻き込まれると誰でもそうなるのよ。」
市子「忙しく飛び歩いて事務的な事の処理は大変上手くなるけど心と心を触れ合わせる事の出来ない生き物になってしまうのよ。女は男に求めるものはもうないのよ。あなたの中には。だけどあなたは男の形をしている。だから抹殺されたのよ。」
風「そうなのだよ。もしそうならそれは僕のせいじゃないだろう。現代の社会機構が悪いんじゃないか。僕は被害者じゃないか!」
市子「社会機構を殺す訳には行かないでしょ?テレビ塔を殺す事は出来ないじゃない。人間が殺す事ができるのは人間とその他の動物だけよ。」
これは、市子と風との会話です。
この会話に作品の全てが集約されていますよね〜。
作品が製作されてから約半世紀経とうとしていますが、今でも充分通用する普遍的なテーマ。奥深いです。
スタイリッシュでモダンな映像も素敵です。
・黒い十人の女@映画生活
・前田有一の超映画批評
太陽がいっぱい
おすすめ度
製作:1960年 フランス イタリア
製作:ロベール・アキム
原題:Plein soleil
監督:ルネ・クレマン
脚本:ポール・ジェゴフ ルネ・クレマン
出演:アラン・ドロン マリー・ラフォレ モーリス・ロネ エルヴィーレ・ポペスコ
キャッチコピー:ギラギラと輝く太陽の下 青春の野望をのせてドロンの眼がきらめく
昨日せっかく「リプリー」を観たので、今日は引き続き「太陽がいっぱい」をば…。
中学時代の友人のフィリップ(モーリス・ロネ)を、彼の父親に雇われ連れ戻しに来たトム(アラン・ドロン)。しかしフィリップは父の元へ戻る気などさらさらなく、親の金で毎日遊び回っています。トムは金目当てにフィリップと行動を共にすしますが、自分ややフィリップの恋人マルジェ(マリー・ラフォレ)に対する傍若無人な態度に怒り、ついにある「計画」を実行する事を決意します。
監督は「禁じられた遊び」のルネ・クレマン。今さら言うまでもない名作中名作ですね。海と空と船と日焼けした色男が大いに堪能できます。
初めてこの作品を観たのは今から約20年前ですが、観終わった後暫く頭から離れなかったのを今でも鮮明に覚えています。栄光と崩壊が一度に押し寄せるエンディングがとても衝撃的でした。叙情的なテーマ曲はとっても有名ですよね。
アラン・ドロンが演じるトムはとっても上昇志向の強い男で、自分の「罪」に対してほとんど罪悪感がないんですね。ハングリー精神旺盛でとってもギラギラしています。
アラン・ドロンのこの表情!
シェクシー&デンジャラスです。
ヒロインのマリー・ラフォレ。
可憐で清純な雰囲気が素敵です。
悪ーい顔です。
女性捜査官を利用し、トムは計画を進めて行きます。
セミヌードと「はだけ率」がとても高い。
お国柄でしょうか?
ちょっとお眠なアラン・ドロンも可愛らしいですね。
すごくどうでもいい事ですが、人を殺めた後にトムってば必ず何かを食べるんですね。そういう時って本当にモノを口にする心境になるのかな??(確か「親切なクムジャさん」にもそんなシーンがあった気が… 汗)
…って。何だか作品の感想とは少し(かなり?)離れちゃいました?
・太陽がいっぱい@映画生活
・前田有一の超映画批評
リプリー
おすすめ度
原題:The Talented Mr. Ripley
製作:1999年 アメリカ
製作:ウィリアム・ホーバーグ トム・スタンバーグ
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
原案:パトリシア・ハイスミス
出演:マット・デイモン グウィネス・パルトロウ ジュード・ロウ ケイト・ブランシェット フレディ・ミルス フィリップ・シーモア・ホフマン
キャッチコピー:太陽に焦がれて、月は彼になろうとひたすら重なる……罪深き日蝕
パトリシア・ハイスミスの同名小説を映画化した「リプリー」です。今日BSで放映されていたのをたまたま観ました。
1958年のニューヨーク。貧乏青年トム・リプリー(マット・デイモン)は、日銭稼ぎのピアノ伴奏で訪れたガーデンパーティで、造船業界の大物ハーバート・グリーンリーフ(ジェームズ・レブホーン)と知り合います。彼には息子がありイタリアで父親の庇護の元、生活を送っています。ハーバードは、息子ディッキー(ジュード・ロウ)を連れ戻してほしいとトムに依頼します。ナポリで、ディッキーに会うトム。ディッキーは作家志望のマージ(グウィネス・パルトロウ)と贅沢な同棲生活を送っていました。彼は、トムから父の伝言を聞いて迷惑がりますが、トムがジャズ・ファンと知るや否や大はしゃぎ。早速彼をクラブに連れ出します。見るもの全てが物珍しいトムを連れ回しセレブな遊びを教えちゃうディッキー。いつしかトムは密かにディッキーを愛し始めます。そんなトムを疎ましく感じるようになったディッキーは、父親からトムを解任する手紙が来たのを機に、別れを告げるのでした。そして二人はお別れにサンレモへ小旅行に出かけますが…。
この作品は1960年に一度映画化されてます。
若き日のアラン・ドロンの代表作「太陽がいっぱい」です。
アラン・ドロンのトムは言うまでもなく素晴らしいですが、本作のマット・デイモンもまた違う魅力で勝負。ものすごく頑張っています。
主役のトム役はマット・デイモン
放蕩息子ディッキーはジュード・ロウ
そして、ディッキーの恋人役はグウィネス・パルトローが演じています。
貧しい青年はディッキーと知り合う事で夢のような楽しい時間を過ごします。
クラブに行ったり、クルージングしたり。
うーん…ディッキーってば罪作りです。
最初こそは上手くいってたふたりですが。
ディッキーはトムの気持ちに気付きうんざりモードに。
そして「事件は」起こるのです。
「秘密」を隠すため嘘をつき、その嘘を貫くためにまた嘘をつくトム。
そして自分の気持ちに蓋をしてどんどん深みにハマっていくんですねえ。
真面目で優しい青年なのに過ちを繰り返し破滅の道へと突き進んで行きます。
マット・デイモンの演技が切なくて胸が締めつけられます。
リメイクものとしては良い出来なんじゃないかなあ。
・リプリー@映画生活
・前田有一の超映画批評
スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理容師〜
おすすめ度
原題:Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street
製作:2007年 アメリカ イギリス
製作 リチャード・D・ザナック ウォルター・パークス ローリー・マクドナルド ジョン・ローガン
監督:ティム・バートン
脚本:ジョン・ローガン
出演: ジョニー・デップ ヘレナ・ボナム=カーター アラン・リックマン ティモシー・スポール サシャ・バロン・コーエン エドワード・サンダース ジェイミー・キャンベル・バウアー
キャッチコピー:いらっしゃいませ。そして、永遠にさようなら。
地味ーに今さら感がありますが、ようやく観ました。「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」です。
19世紀のイギリスはロンドン。フリート街で理髪店を営むベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)は美しい妻と生まれたばかりの娘と幸せに暮らしていました。ところが、彼の妻に恋をしたターピン判事(アラン・リックマン)の陰謀で、バーカーは無実の罪を着せられ、投獄されてしまいます。15年の歳月が流れ変わり果てたバーカーはスウィーニー・トッドと名前を変え、フリート街に戻って来ました。パイ店の未亡人ミセス・ラペット(ヘレナ・ボナム=カーター)の協力で2階に理髪店を構え、静かにターピン判事への復讐の準備を整えるトッドですが…。
うーん。
なかなかの流血ぶりでしたね。
何だか暫くパイは食べたくない感じです(笑)。
今回もティム・バートンならではの映像は素晴らしく、幻想的でとっても美しい!全てを失ったベンジャミン・バーカーの心情を表すような限り無くモノトーンに近い色のない世界が心に残ります。ミセス・ラペットの空想シーンの色鮮やかな映像も素敵。どんなシチュエーションでもプラーンとしたデップの表情が笑いを誘います。
「ミュージカル」なので当然皆歌います。
ジョニー・デップも歌います。
噂には聞いていましたが、思いのほかお上手でびっくり。
復讐に燃えるスウィーニー・トッド。
なんだかこの表情笑えます。ぷぷっ。
しっけい、しっけい。
ミセス・ラペットが営む「ロンドン一不味いパイのお店」は
スウィーニー・トッドの「秘密の特訓」のお肉のお陰で大繁盛♪
やっぱり(?)人肉って旨いのかなあ…。
見事に復讐を遂げるトッド氏。
まあ、ある意味めでたしめでたしなエンディングです。
個人的にはムスメと船乗り君がほったらしなのがちょっとオモロかったです。
・スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師@映画生活
・前田有一の超映画批評
けんかえれじい
おすすめ度
製作:1966年 日本
監督:鈴木清順
脚本:新藤兼人
出演:高橋英樹 浅野順子 川津祐介 片岡光雄 恩田清二郎 宮城千賀子
鈴木隆の同名小説を映画化した、鈴木清順監督の「けんかえれじい」です。
岡山の旧制中学の生徒、南部麒六(なんぶきろく 高橋英樹)はおっとりとした学生でしたが、下宿先の憧れの女性、道子(浅野順子)を馬鹿にした上級生たちとケンカになり、上級生を叩きのめしてしまいます。その様子を見ていた同校OBでケンカの達人・スッポン(川津祐介)は、麒六のケンカの才能を見込んで、ケンカの極意を伝授します。麒六はたちまち学校の不良たちを制圧し、学校最大の勢力OSMS団(岡山セカンドミドルスクール団)の副団長になります。しかし、学校に軍事教練にやってきた教官と衝突し、岡山を出て親戚を頼り会津若松へ向かいます。
高橋英樹がひたすら喧嘩をする映画です(笑)。
今から40年前の作品なのに、高橋氏の印象は全く変わらない。
スターってすごいですね。
ちなみに後ろのイイ面構えの彼は「青春残酷物語」で主演をつとめた川津祐介。
異常にテンションの高い作品です。
あまりのむちゃくちゃぶりに思わず顔の筋肉が弛んでしまいます。
岡山、会津若松と暴れ続ける麒六ですが、物語の終盤に二・二六事件や北一輝の存在を知ります。そして麒六は新しい「喧嘩の場」を求め東京へ旅立つんですね〜。実は、脚本には最後のくだりはなかったそうで、清順監督が「おもんない」という理由で勝手に付け足したもの。脚本をつとめた新藤兼人は、ちょっぴりおかんむりだったそうですが、私は将来を暗示するようなこのラストは大正解だと思います。(何様? 笑)
やんちゃな主人公と清純なヒロインが登場する、昔の青春映画の王道を堪能できる作品です。
・けんかえれじい@映画生活
・前田有一の超映画批評
青春残酷物語
おすすめ度
製作:1960年 日本
製作:池田富雄
監督・脚本:大島渚
出演:桑野みゆき 川津祐介 久我美子 渡辺文雄 田中晋二
松竹ヌーヴェルヴァーグの代表作。大島渚監督の「青春残酷物語」です。
真琴(桑野みゆき)は友人の陽子と夜遊びの帰りに車で自宅まで送ってもらおうと見知らぬ男に声をかけます。陽子を降ろした後、中年男は真琴をホテルに連れこもうとし、揉み合いになります。そこへ偶然通り掛かった大学生、清(川津祐介)に救われ、翌日二人は男から貰った「口止料」でデートをします。その日清は貯材場の木の上で、強引に真琴を抱きます。真琴は戸惑いながらもどんどん清に惹かれていき、ふたりは周囲の反対を押し切り間もなくして同棲をはじめる事となります。そしてお金に困ってはふたりの出会いと同じシチュエーションをつくり中年男から金を巻き上げる犯罪に手を染めていくのでした。
大島監督怒ってますね〜。
そして若者も怒ってます。
大人になのか、社会になのか。
自分の中で昇華しきれない何かになのか。
・
・
・
とにかく怒ってます。
清は初デート(?)で真琴に乱暴しちゃいます。
あらあら。
でも、ここから二人の愛は芽生えるんですね〜。
1960年という年は新安保条約を締結した年でもあり、社会は大きく揺れていました。学生運動も盛んで、やはり若者は怒っていました。その一方で経済は大きく上向き、まさに高度経済成長期を迎えようとしています。作中にもそれを反映させるように、本物のデモ行進や工事現場のシーンが数多く見られます。
この作品に出てくる若者2人は、そんな時代に青春を過ごしていました。ふたりは恋に落ち、お互いを傷つけ合うように愛しあいます。そして、真琴を「餌」に中年男を陥れお金を巻き上げますが、ふたりには罪悪感は全くありません。喧嘩、中絶、犯罪…いつしか破滅の道を歩んいきます。
うーん。
なかなかしょっぱいです。
今はこんな「怒れる若者」はほとんどいないかも。
私はまだ生まれていなかったので、この時代に対してあまり現実味がありませんが、政治・経済共に激動の時代だったんですね。
この作品の中には、戦後間もなくして育んだ愛も夢も志半ばで挫折した姉が登場します。彼女の過去の「失敗」と対比させながら妹、真琴の恋を描いてもあるのですが、その姉と、元恋人の間にもなにかやり切れないものを感じます。
観て爽快感のある作品ではありませんが、青春時代の若者特有の捨て身のひた向きさや、モヤモヤ・イライラ感がよく表現された作品だと思います。
・青春残酷物語@映画生活
・前田有一の超映画批評
穴
おすすめ度
製作:1957年 日本
製作:永田秀雄
監督:市川崑
脚本:久里子亭
出演:京マチ子 船越英二 山村聡 吉菅原謙二 石井竜一 北林谷栄 川上康子 潮万太郎
市川崑監督の「穴」。ジャケットのデザインが素敵で思わず手にした作品です。
警官の汚職事件の記事を書いたルポライターの北長子(京マチ子)は、それが原因で出版社をクビになってしまいます。突然の失業に落ち込む長子。そんな彼女を見かねて、同じアパートに住む赤羽スガ(北林谷栄)はある企画を提案します。それは偽の失踪事件を自分で起こしてそのルポを書くというものでした。早速出版者へ企画を売り込みに行き、賞金50万円をかけた1ケ月の失踪生活が決定します。長子は失踪資金を借りるため銀行へ行きます。融資時に長子の計画を知った支店長の白州(山村聡)は、部下の千木(船越英二)と六井と共に彼女を利用し、現金横領を企てるのでした。そして1ケ月後。「失踪生活」を終え自宅に戻ると様々なトラブルが彼女を待ち受けていました。
女は化けます。
見どころはやはり京マチ子。
彼女はコスプレを繰り返し逃亡します。
色んな京マチ子を楽しめます。
ちょとした祭りです。
ワンピースやバッグなど、とてもファッショナブルでお洒落です。
衣装なんかはカラーで観れたらもっと素敵だろうなあ…。
そうそう。この作品には作家役で石原慎太郎が登場します。ジャズ喫茶では歌も御披露しています。ある意味、男優陣でいちばん華があったかも(笑)。
そして、「阿弥陀堂だより」でメロメロになった北林谷栄さんの若かりし頃も拝めました。
シリアスなサスペンスなのかと思いきや、結構ライトな作品でした。ドタバタコメディタッチのサスペンスなので気負わず楽しく鑑賞できます。
・穴@映画生活
・前田有一の超映画批評
迷子の警察音楽隊
おすすめ度
製作:2007年イスラエル フランス
監督・脚本:エラン・コリリン
出演:サッソン・ガーベイ ロニ・エルカベッツ サーレフ・バクリ カリファ・ナトゥール
キャッチコピー:エジプトからやってきた 音楽隊が届けたものは、 人が恋しくて、 家族が大切で、 そんな当たり前のことが 大事に思える 素敵な夜でした。
水色の制服を着たおじさんたちが可愛くて何となく手にした「迷子の警察音楽隊」です。タイトルもキュートですね。
イスラエルのアラブ文化センターでの演奏を依頼されたエジプトの警察音楽隊。一行はイスラエルの空港に到着しますが、出迎えがありません。誇り高き団長トゥフィークは自力で目的地を目指すことに。ところがたどり着いた先は、目的地と1文字違いの名前の全く別の場所。そこは、ホテルなんて一軒もない辺境の町でした。途方に暮れた一行は、食堂を営む美しい女性ディナの計らいで、3組に分かれ、食堂、ディナの家、そして常連客イツィクの家に分宿して一夜を過ごすことになります。
エジプトとイスラエル。
隣接する二つの国の異文化交流をコミカルに描いた作品。
1979年、エジプトとイスラエルは平和条約を結びますが、二国間の和平合意は「非戦闘」に合意したというだけに留まり、その関係は「冷たい平和」と称されているそうです。
そんな微妙な関係であるイスラエルの地で、エジプトからやってきた男達は忘れられない夜を過ごします。
自由奔放な女性ディナとストイックな頑固おやじトゥフィークの噛み合わないデート。
パピたちのダブルデートに無理矢理同行し、奥手のパピに女性の扱いを指南をするチャラ男、カーレド。
イツィクの家で妻の誕生日に3人の団員と共に祝う(?)ディナータイム。
団員たちが過ごしたそれぞれの夜。「ちょっと可笑しくてちょっといいエピソード」が詰まった作品。優しい気持ちになれました。
・迷子の警察音楽隊@映画生活
・前田有一の超映画批評
舞台恐怖症
おすすめ度
製作: 1950年 イギリス 日本未公開
製作・監督: アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェーン・ワイマン マレーネ・ディートリッヒ リチャード・トッド アリステア・シレ パトリシア・ヒッチコック
ヒッチコックの「舞台恐怖症」です。この作品は日本未公開で、ヒッチコック的にも物語の仕掛けに問題があったと失敗を認めているらしく、ファンの間でも賛否が別れる作品なんだそうです。
演劇学院生イブ(ジェーン・ワイマン)が運転する車に乗った、友人ジョナサン(リチャード・トッド)の回想から物語が始まります。ジョナサンの愛人である女優シャーロット(マレーネ・ディートリッヒ)が夫を殺害し、その後始末をしに行ったころをメイドに目撃され、警察に追われるハメになったと言うのです。彼に好意を寄せていたイブは何とか力になりたくて、父親(アリステア・シレ)の別荘でジョナサンを匿ってもらうことにします。イブは、ジョナサンがシャーロットにはめられたのではないかと推測。そして、その証拠を見つけるためシャーロットのメイドとして屋敷へ潜り込みこみますが…。
「舞台恐怖症」とは…なんて素敵なタイトルでしょう。
なかなかグッときませんか?
まず心奪われるのはマレーネ・ディートリッヒ!何てったって美しい!!物語が進むにつれその美しさは増すんです。ちょっぴりアンニュイな美人って言うんですかね?典型的な悪女役なんですけど、彼女が出るシーンは本当に画面が輝いて見えるんです。主演のジェーン・ワイマン、完全に食われてました。(ワイマンも充分キュートで魅力的なんですが)
サスペンスの中にも、ロマンスあり、笑いありと娯楽作としてとっても楽しめる作品だと思います。父親役のアリステア・シレのコミカルな演技が楽しくてとってもキュートです。この作品の中でいちばんお気に入りの「和みキャラ」でした。
・舞台恐怖症@映画生活
・前田有一の超映画批評
イエロー・サブマリン
おすすめ度
原題:The Beatles Yellow Submarine
製作:1968年 イギリス
製作:アル・ブロダックス
監督:ジョージ・ダニング
脚本:リー・ミノフ アル・ブロダックス ジャック・メンデルソーン エリック・シーガル
ビートルズの名曲「イエロー・サブマリン」をベースに製作された長編アニメ映画「ビートルズ イエロー・サブマリン」です。
昔々、海底にペパーランドという小さな王国がありました。ある日、サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブが音楽会を開いていると、ブルー・ミニーたちがミサイルを打ち込んできます。彼らは世界から音楽と幸福と愛をなくしてしまおうとしています。命からがら逃げ切った指揮者のオールド・フレッドは、市長の命令で黄色い潜水艦で助っ人を探す旅に出掛けます。そして彼が辿り着いたのはリバプール。まず彼はリンゴに会いペパーランドの危機を訴えます。話を聞いたリンゴは、仲間のジョン、ポール、ジョージに紹介し、四人はペパーランドを救うべく、潜水艦にのりこみ旅立つのでした。
この作品は、凄い!
ビートルズファンでなくとも充分楽しめる作品です。くるくると目まぐるしく変わる映像にビートルズのサウンドが見事に調和したアニメーションは、イマジネーションを掻き立てられます。アニメ・イラスト・映像・音楽を融合させた実験的な映像はまさにサイケデリックな60年代のポップアートそのものです。
登場人物は、それぞれ現代社会に見られる様々な事象のパロディで、
ペパーランドを襲うブルーミーニーズは
よくいる「悪玉」の典型。
詩人、作曲、小説、絵画にと時間に追われて忙しがっているジェレミーは
「えせインテリ」。
音楽をこよなく愛するペパーランドの市町は
古い時代の「カリカチュア(戯画、風刺画)」。
そのほかのユニークなキャラクターたちは
「来るべき時代の象徴」。
を表しているのだそうです。
また、メンバーたちの登場のしかたや歩き方にまでこだわっています。
リンゴは、小学生のチャップリンのようなイメージ(?)で登場。みんなが32歩のところを足を引きずるように24歩で歩きます。心優しい愛されキャラです。
ジョージはカウボーイのような歩き方で、登場も瞑想のもやの中から超然と現れます。掴みどころが無く、どこか神秘的な雰囲気を持っています。
ポールは自信溢れる若い重役のようにさっそうと歩き、現代のモーツァルトのようなエリート風。
ジョンは即興師のように軽やかに歩き、生まれながらの創造者のような天才気質。
製作サイドの意図を知るとまた違った目線で楽しめますねっ。
とってもハッピーになれる作品。
おすすめです!
・前田有一の超映画批評
マーズ・アタック!
おすすめ度
原題:Mars Attacks!
製作:1996年 アメリカ
製作:ティム・バートン ラリー・フランコ
監督:ティム・バートン
脚本:ジョナサン・ジェムズ
出演:ジャック・ニコルソン グレン・クローズ アネット・ベニング ピアース・ブロスナン ダニー・デヴィート マーティン・ショート サラ・ジェシカ・パーカー マイケル・J・フォックス トム・ジョーンズ ナタリー・ポートマン.
キャッチコピー:地・球・ヲ・イ・タ・ダ・キ
ティム・バートンの「マーズ・アタック!」です。この作品、もう12年も前の作品なんですね。
ある日、空飛ぶ円盤に乗った火星人が地球にやって来ます。突然の来訪者を歓迎すべきか追い返すべきか?大統領のデイル(ジャック・ニコルソン)は決断を迫られています。急遽政府のブレーンである、楽観的な学者のケスラー教授(ピアース・ブロスナン)、女好きでちょっぴり軽い報道官のロス(マーティン・ショート)、タカ派のデッカー将軍(ロッド・スタイガー)、ハト派のケイシー将軍(ポール・ウィンフィールド)らを召集。幾度となく協議を重ね、遂に運命の決断をします。それは、彼らを受け入れる事。大々的なセレモニーで火星人を迎えますが、拍手と共に放たれた鳩を見た瞬間、火星人たちは謎のレーザー銃で誰彼構わず撃ちまくり最悪な自体となります。
これ一時期よく深夜に放映されてましたよね〜。
何故だか無性に観たくなったので借りちゃいました。
久々に観ましたが、あー。おばか。
何度観ても本当におばかな映画です(笑)
火星人と友好を結ぶ事で自分の株を上げたい大統領デイル、見た目ばかりにこだわる見栄っ張りのファーストレディ、マーシャ(グレン・クローズ)、周囲の大人達を冷静に傍観する娘タフィ(ナタリー・ポートマン)。
火星人来訪を機にひと儲けしようと画策するラスベガスの不動産王アート(ジャック・ニコルソン←二役です 爆)。彼の妻バーバラ(アネット・ベニング)は、夫とうまくいかないストレスでアル中。近頃何やら怪しいセミナーに参加しはじめ火星人にも興味津々。
カンザス州のトレーラーハウスに住むグレン一家。兄贔屓の両親と、火星人対策軍に志願する血の気の多い兄ビリー(ウド鈴木ばりのヘアスタイルのジャック・ブラック←若い!)とお婆ちゃん子のリッチー(ルーカス・ハース)。
ファッション番組の司会のナタリー(サラ・ジェシカ・パーカー)と恋人の報道記者ジェイソン(マイケル・J・フォックス)は、火星人来訪のスクープを我が物にしようと一念発起。
この人たち、かなりの確率で死んじゃいます。
(あっ。言っちゃったっ!)
しかも、かなりにべもない感じで。
ストーリーなんてあってないようなもんです。(失礼)
こーんなおばかな作品に(失礼)、超一流のクリエイターがああでもない、こうでもないと言いながら大枚を叩いて製作する事自体がスゴイです。
なのにあのチーーーープな感じ(笑)
豪華なキャスト陣だけでも観る価値はあると思います。(よく引き受けたなあと思います…笑)
色んな意味で素敵すぎます。
それにしても。
もう大概何度も観ているはずなのに、まだこんなに楽しめるとは…。
自分でもちょっとびっくり。
うーん。DVD買おうかなあ…。
・マーズ・アタック!@映画生活
・前田有一の超映画批評
ピノキオ
おすすめ度
原題:Pinocchio
製作:1940年 アメリカ
製作 ウォルト・ディズニー
監督:ベン・シャープスティーン ハミルトン・ラスク ノーマン・ファーガーソ T・ヒーウィルフレッド・ジャクソン ジャック・キニー ビル・ロバーツ
出演:ディッキー・ジョーンズ クリフ・エドワーズ
1940年にウォルト・ディズニーが製作したアニメ「ピノキオ」です。
何故今ピノキオ??って感じですが(笑)。
「白雪姫」(1937年)に続き、第2作の長編アニメとして公開された作品です。今さら私ごときが言うまでもないディズニーアニメの傑作のひとつですね。原作はイタリアのカルロ・コッローディ作の童話「ピノッキオの冒険」。ディズニー作品に特に思い入れがある訳ではありませんが、この作品は何となく印象深いのです。
初めてディズニーアニメを観た時に驚いたのが、表情豊かなキャラクターと、そのなめらかな動き。半端ない制作費用を投じて製作されたのは有名な話ですが、約70年前にこれほどの技術が確立されていたと言う事に驚きです。
今見ても全く色褪せない珠玉の名作です。
・前田有一の超映画批評
敬愛なるベートーヴェン
おすすめ度
原題:Copying Beethoven
製作:2006年 アメリカ ドイツ
製作:クリストファー・ウィルキンソン シドニー・キンメル マイケル・テイラー スティーヴン・リヴェル
監督:アニエスカ・ホランド
脚本:クリストファー・ウィルキンソン スティーブン・リヴェル
出演:エド・ハリス ダイアン・クルーガー マシュー・グッド ラルフ・ライアック ジョー・アンダーソン ビル・スチュワート
キャッチコピー
孤高の音楽家ベートーヴェン、歴史に隠されたもう一つの物語。
“第九”誕生の裏に、耳の聴こえないベートーヴェンを支えた女性がいた。
第九の誕生を背景にルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンと写譜師の女性アンナとの交流を描いた作品「敬愛なるベートーヴェン」です。
第九の初演を4日後に控えた1824年。楽譜が完成しない中、ベートーヴェンのもとに写譜師としてアンナが派遣されます。ベートーヴェンはアンナが女性であるというだけで冷たくあしらいますが、彼女に才能を感じ側へ置く事に決めます。誰に対しても高飛車で傲慢なベートーヴェンですが、甥のカールだけは溺愛しています。カールは一方的な彼の愛情を疎ましく感じています。そしていよいよ初演の日を迎えます。難聴の為指揮を怖れるベートーヴェンに手を差し伸べたのは、アンナだったのです。
うーん。
これ。
ちょっとダメでした。
迫力のある演奏シーンが印象的な予告編を見て、結構期待していたんですよね…。
演奏シーンや衣装やセットは素晴らしかったんですが、この作品の肝であるはずの、ベートーヴェンとアンナの関係が全くピンときませんでした。
うーん。
うーーん。
うーーーん。
残念!
・敬愛なるベートーヴェン@映画生活
・前田有一の超映画批評
今宵、フィッツジェラルド劇場へ
おすすめ度
原題:A Prairie Home Companion
製作:2006年 アメリカ
製作:ロバート・アルトマン 他
監督:ロバート・アルトマン
脚本:ギャリソン・キーラー
出演:メリル・ストリープ リリー・トムリン ギャリソン・キーラー ケヴィン・クライン
キャッチコピー:最後のラジオショウが終わるとき、新しいドアが開く
ロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」です。
ラジオ局WLTが放送する音楽番組「プレーリー・ホーム・コンパニオン」の収録が行われようとしています。30年以上続いたこの番組が今夜終了してしまいます。保安係のガイ・ノワール(ケヴィン・クライン)は行つけのダイナーから劇場へ、ジョンソン・ガールズのロンダ(リリー・トムリン)とヨランダ(メリル・ストリープ )は、ヨランダの娘ローラ(リンジー・ローハン -)を連れて楽屋に到着します。司会のギャリソン(本人)は、オンエア直前になっても、ギタリストとのおしゃべりをやめる気配をいっこうに見せず、ステージマネージャー助手のモリー(マヤ・ルドルフ )はやきもきしています。そんななか、舞台の幕が上がり、いよいよ最後の放送が始まります…。
DVDにはロバート・アルトマンとケヴィン・クラインのコメンタリーが収録されていて、いろいろな裏話が聞けて面白かったです。
「プレーリー・ホーム・コンパニオン」は現在も放送されている人気ラジオ番組で、司会をつとめるギャリソン・キーラーがこの作品の脚本を手掛けています。「ロバート・アルトマンのような監督に撮って欲しい」という彼の希望が共通の知人を介して実現した作品なんだそうです。ちなみに映画に登場するガイ・ノワールや、カウボーイ姿の仲良しデュオ、ダスティ&レフティは、ギャリソン・キーラーがラジオ番組中で演じているキャラクター。ラジオのリスナーであれば、更にこの作品を楽しむ事が出来そうです。
歌謡ショーはもちろん、舞台裏で繰り広げられる、それぞれのドラマが素晴らしく臨場感たっぷり!アルトマンならではの切り口で描かれる登場人物は本当に魅力的です。
一時代が終わると同時に新しい時代がはじまる。舞台を愛する人たちを優しく包み込むような目線で描かれた群像劇。観終わった後の余韻がなんとも言えない心温まる作品です。
・今宵、フィッツジェラルド劇場で@映画生活
・前田有一の超映画批評
セックス・チェック 第二の性
おすすめ度
製作:1968年 日本
監督:増村保造
原作:寺内大吉
脚本:池田一朗
出演:安田道代 緒形拳 小川真由美 滝田裕介 笠原玲子
引き続き増村保造監督作品「セックス・チェック 第二の性」です。
戦争でオリンピック出場を断念せざるを得なかった元天才スプリンター宮路(緒形拳)は、かつてライバルだった峰重(滝田裕介)から勤務している会社の陸上部のコーチを依頼されます。夢破れ、目標の無くなった宮路は酒と女に溺れだらしない生活を送っていました。誰よりも彼の才能を知っている峰重は宮路を自宅に招きコーチになるよう口説きますが、どうしてもその気になれず断るのでした。そればかりか、宮路は昔プロポーズした峰重の妻彰子を無理矢理(小川真由美)乱暴してしまいます。翌日、宮路は、峰重の会社に彰子の事を詫びに行きます。当然峰重は怒り、二度と目の前にあらわれないよう言います。その帰り偶然バスケ部のを練習が目に留まり、コーチに楯突いている鋭い瞳を持つ南雲ひろ子(安田道代)を見つけます。強いインスピレーションを感じた宮路は彼女をスプリンターとして育ててみたいと思うのでした。一度は断ったコーチの仕事でしたが、宮路はその足で再度峰重の元へ行きコーチをしたいと申し出ますが、彼のコーチ就任と同時に峰重は会社を去りました。毎日猛訓練をつづけてる宮路は、ひろ子が好記録を出すためには、女の中に潜んでいる男の能力をゆり起すこと、徹底的にエゴイストになることをアドバイスします。ひろ子は毎朝、ひげ剃り、言葉遣いも変え男性になり切ろうと努めます。そして第一回の記録会の日、日本記録にせまる好記録を出します。いよいよ自分の夢をひろ子に馳せる宮路でしたが、その前にセックス・チェックを受ける事になりました。そこでひろ子は衝撃的な診断を受けるのでした。
続けてパンチが効いています。
ヒロインは「痴人の愛」の安田道代。
今回はちょっと影のある地味めな女性を演じています。
タイトルだけ聞くと官能作品ちっくですが、立派なスポ根ドラマです。
今から40年前にインターセクシャルというテーマをとりあげているんですね。
当時としては随分すすんでいたのではないでしょうか。
今回もエキセントリックキャラが大活躍!
宮路を演じる緒形拳がすごいんです。
「今日からお前は男になれ!」
「毎日髭を剃れ!」
「男言葉を使え!」
「俺が女にしてやる!」
などなど名言が満載です。
無茶苦茶なんだけど「あの」緒形拳が言うのを聞いてたら「そ、そうですか…。」と言わざるを得ないテンションです。
今回も、様々な人物の愛憎渦巻くハードなドラマとなっています。
観た後決して清清しくはなれませんが、一度観たら忘れられない作品です。
・前田有一の超映画批評