徒然映画日記。

食わず嫌いは卒業し何でも観よう。思い切りネタバレありの「観た帳」です。

ミルク

2010年04月22日 | ★★★★★
ミルク
おすすめ度
原題:MILK
監督:ガス・ヴァン・サント
製作総指揮:ダスティン・ランス・ブラック マイケル・ロンドン バーバラ・A・ホール
製作:ダン・ジンクス ブルース・コーエン
脚本:ダスティン・ランス・ブラック
出演:ショーン・ペン ジェームズ・フランコ エミール・ハーシュ ジョシュ・ブローリン ディエゴ・ルナ
キャッチコピー:「ミルク」は、希望のはじまりだった。


ショーン・ペンの良~い笑顔のジャケに誘われてなんとなく手にした『ミルク』です。
「タイム誌が選ぶ20世紀の100人の英雄」に選出された人物・・・自らゲイであることを公表したアメリカ初の政治家だそうで。
いつものことながら、私この方のこと全く知りませんでした(恥)。


1972年のニューヨーク、一企業に勤める42歳のハーヴィー・ミルク(ショーン・ペン)は、20歳年下のスコット・スミス(ジェームズ・フランコ)と出会い恋に落ちます。二人は新しい生活を求め、同性愛者やヒッピーが多く住むサンフランシスコのカストロ地区に新居を構え、小さなカメラ屋「カストロカメラ」をオープンさせます。魅力あふれるミルクの人柄を慕って店は連日多くの「同胞」たちで大賑わい。そんな中、ミルクはゲイに差別的な商工会に対抗し、自ら新たな組織を設立。その活動を通じ様々な問題にかかわる事となり、いつしか彼は「カストロ地区の市長」と呼ばれるように・・・・。


1973年に市政執行委員に初立候補。
その後3度の落選を重ねますが、1977年ようやく4度目の挑戦にして見事当選!
この瞬間、同性愛者であることを公表したアメリカ初の議員が誕生しました。


しかし、恋人であるスコットはミルクの選挙活動で心身共にくたくたでした。
3度目の選挙を最後に政治活動を辞めると約束していたにもかかわらず
再度挑戦をしたミルク。結果、スコットはミルクの元を去ってしまいます。

悲しい別れはあったものの、政治家ミルクの快進撃は続きます。
犬の糞の放置に罰金を科した条例や、ブリッグス議員(デニス・オヘア)の支援していた
同性愛者の教職員を解雇できるという「条例6」の破棄にも見事成功。



一方、同僚であるダン・ホワイト(ジョシュ・ブローリン)。
生真面目で敬虔なクリスチャンです。


「協力しあおう」と一旦今日協定を結んだミルクとホワイト。



しかし、お互いの政治方針が合わず決裂。
以来対峙する関係となっていきます。



ミルクの華々しい活躍とは裏腹に
ホワイトはマニフェストも実現できず次第に精神的に追い込まれ・・・。
ミルクが劇的な勝利を収めた翌日、彼は辞表を提出し、その直後撤回するも市長に拒否されてまいます。


そして運命の日1978年11月27日

ホワイトによってマスコーニ市長とともに射殺されてしまいます。
ミルクの在職期間はわずか11ヶ月。48歳でその人生に幕を閉じました。


ミルクの葬儀の夜。
キャンドルライトを手にした3万人以上の市民たちが、カストロ地区から市庁舎まで行進し、その死を惜しみました。






見ごたえのある伝記映画でした。
70年代を意識した独特な映像も楽しめましたし、作品の最後に
ミルクを支えた人物たちのその後がきちんと描かれていたのがとてもよかったですね。
近々ミルクのドキュメンタリーも観たいな。


ミルクはさることながら、私ダン・ホワイトがすんごい気になりまして・・・。




ダン・ホワイトのその後。

彼の弁護士は、「ゲイに賛成的」とみなした者が陪審員になることを阻止して裁判に臨んだそうです。
また、ホワイトが鬱状態であったとし、彼が正常な精神状態ではなかったと主張。
結局ホワイトはたった5年間の服役で、仮釈。その翌年にはサンフランシスコに戻ります。

が。

風当たりは強く彼は家庭内でも孤立。1985年にはとうとう自殺されたんだそうです。
うーん。しょっぱい。

生真面目で不器用なホワイト。華やかで人の目を引くミルク。
この2人の関係ってどことなく『アマデウス』のサリエリとモーツァルトみたい・・・・。

うーん。

監督は誰?と思い最後にガス・ヴァン・サントと知る私・・・(すげー間抜け)。
いや~。
まさかあのガス・ヴァン・サントとは・・・・。
『ラストデイズ』で迷走していた(←失礼)あのガス・ヴァン・サントとは・・・・。
いやぁ。恐れ入りました。





おまけ。
 
ショーン・ペンとハーヴィー・ミルク。

 
ジョシュ・ブローリンとダン・ホワイト。


激似です。



前田有一の超映画批評



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蠅男の恐怖

2008年07月19日 | ★★★★★


蠅男の恐怖
おすすめ度
原題:The Fly
製作:1958年 アメリカ
製作・監督:カート・ニューマン
脚本:ジェームズ・クラヴェル
出演:ヴィンセント・プライス パトリシア・オーエンス アル・ヘディソン

うははは。
見つけました「蠅男の恐怖」!子どもの頃観て度胆を抜いた「ザ・フライ」の元ネタとなった作品です~。

ある日、化学者のアンドレ(アル・ヘディソン)が変死体で発見されます。現場から逃げていく姿を目撃されたアンドレの妻エレーヌ(パトリシア・オーウェンズ)が事件の容疑者に。彼女は取り調べで、警部に信じられない出来事を語り出すのでした。

物理化学者のアンドレは物体を瞬時に別の場所に移動させる物質電送機を研究してします。ある日彼は遂にシャンパンやモルモットを用いた電送実験を成功させます。そして仕上げに、自身で電送の人体実験を行います。最初は成功したかのように思えますが、機械の中にハエが紛れ込んでいたため、電送の最中に両者が交じり合い、アンドレは頭がハエで体は人間、ハエは頭が人間で体がハエという奇妙な姿になってしまうのでした。

あー。おもろい。
1958年って既にカラーなんですね~。
インパクト絶大の名シーンが山盛りです。



アンドレの妻、エレーヌとアンドレの兄フランソワ(ビンセント・プライス)。
エレーヌはなかなか真実を口にしません。
フランソワはそんな彼女を説得し、警部の前で真実の告白を促します。
そして物語は、彼女の回想シーンとしてスタートします。





試行錯誤を繰り返しようやく研究の完成が近付いてきました。
数度の動物実験を重ね、自ら実験材料に。
上手く言ったかのように思えた実験でしたが…。


「困ったことになった。助けて欲しい」
アンドレは妻に、自分の「かたわれ」であるハエ探しを依頼します。
アンドレは口がきけなくなり、顔も見せてくれません。

なんとかハエを見つけることに成功するものの、なかなか捕まえる事が出来ず焦りばかりが募ります。


彼女は、「ハエなしでもう一度単独で転送実験してみては?」と提案。
素直に従うアンドレ。


「ホラ!成功したわ!」と言い
顔にかけていた布をとったヘレンはびっくり!
バーーン!!
蠅です。
残念。

それにしても。
うーん、たまりませんな!この造型。
頭に被りものをしただけの蠅男(笑)
パーティーでの悪ふざけにしか見えません。


きゃああああああっ!!!!!!!!


ハエ化がすすみ、意識が朦朧としてきたアンドレは
自分の実験の全てを抹消して自殺することを決意します。

彼女はその自殺をお手伝いする訳ですね。
でも、そんな話を信じるはずもない警部。
彼女の病院送りが決定してしまいます。



そしてそして!




物語の最後の山場です!
ヘレンの重要な証拠となる「頭が白いハエ」を発見!
警部と、兄フランソワは驚愕!!
「HE~LP!ME~~!!」というかん高い声の先に見たものは
変わり果てたアンドレ蠅(新種)とそれを食おうとしている蜘蛛だったのです。




たまりませんな。
なんて味わい深いんでしょう。
これは私の期待をかなりの勢いで超えてましたよ(笑)
ザ・フライコンプリートDVD-BOX
本気で欲しくなってきました。

妻エレーヌのしたたかさが素敵。
愛するアンドレが亡くなっているのに(設定としては事件から数日後のはず。)
「こんなに寝て食べばかりいたら太っちゃうわ」とか
「ふぁ~よく寝た~」とか
と意外とのんき。
普通もっと凹むでしょうよ。
ってか凹んで下さい。
最後はちょっとフランソワといい感じになってるし(笑)。
まあ、そういうドライな態度込みで面白かったからいいんですけど。


前田有一の超映画批評


東京オリンピック

2008年07月01日 | ★★★★★



東京オリンピック
おすすめ度
Tokyo Olympiad
製作:1965年 日本
製作:田口助太郎
監督:市川崑
脚本:市川崑 和田夏十 白坂依志夫 谷川俊太郎

平和の祭典オリンピック。今年はオリンピックイヤーでございます。来月には北京で華やかに開催される事でしょう。という訳で今日は1964年に初めて日本で開催されたオリンピックの記録映画「東京オリンピック」です。市川崑が総監督を務めています。

ちなみに私が観たのはディレクターズカット版。オリジナルは約3時間(170分)に及ぶかなりの長尺。「記録映画」としての定義で、必ず1種目あたり1つ映像を収めなければならなかったということが原因らしい。なので、この作品は「映画」として監督が当初ベストだと考えていたバージョンな訳ですね。

国立競技場をはじめ巨額な国家予算を投じて様々な施設を整えアジア初の“東京オリンピック"がいよいよ近付いてきました。オリンピックの火はギリシャから太平洋を渡って、いよいよ日本に近づき東京はすっかりオリンピックモードです。羽田空港には、アメリカ選手団をはじめとして、各国選手が到着。万国旗のひらめく中、聖火は点火され平和を象徴する鳩が放されいよいよ東京オリンピックの開幕です。


1964年東京オリンピック開会式。画像は日本選手団の入場シーンです。
オーストラリア、フランス、イタリア、インド、メキシコ…などなど。国により制服にも個性があり、見ているだけでとっても楽しいです。

あと、(どうでもいいところなんですが)2名だけで参加したカメルーンの選手にアナウンサーの「まったく健気であります。健気であります。」っていうエールのような実況。何だか妙にハマっちゃいました(笑)。


私はスポーツ観戦が好きです。(もっぱらテレビですが…。)
アスリートのドキュメンタリーなんてもう大好物です。
そんな私にとっては、この作品はこの上ないおご馳走なんですね。

何てったって、スポーツにはドラマがあります。
感動があります。
人生そのものです。
全身全霊をかけて勝負するアスリートの姿は本当に美しいです。

この作品が素晴らしいのは、ただの「記録映画」ではないところ。実験的な手法を積極的に取り入れながら、緊張・疲労・興奮…。限界に挑戦するアスリート達の心情をつぶさに捉えた演出や、鍛え上げられた肉体をスローモーションで見せたり、103台のカメラを使用し多角的に捉えたダイナミックな映像などなど…躍動感溢れる表現はもう鼻血ものです!

ちなみに、私のお気に入りは…いっぱいあり過ぎて困りますが、

柔道の無差別級決勝。
神永昭夫選手はひとまわり体の大きなオランダの選手A・ヘーシンクに負けてしまいます。試合終了後に胴着を整えて、握手。そして最後に互いの健闘をたたえ合うかのように爽やかな笑顔を見せるのです。なんて素敵なスポーツマンシップ!たまりませんな。思わず涙線がゆるゆるです。

他にも、観客の声援を贈る姿や、プレスルームの記者団たちの仕事ぶり、競技スタッフの様子など競技とは直接関係ないギャラリーや、オリンピックに携わる裏方が取り上げられているのも興味深いです。

若干好き嫌いが別れるジャンルだと思いますが、スポーツ観戦好き、昭和好き、ドキュメンタリー好き、オリンピック好きの方にはたまらない作品だと思います。


東京オリンピック@映画生活
前田有一の超映画批評



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黒い十人の女

2008年06月30日 | ★★★★★




おすすめ度
製作:1961年 日本
製作:永田雅一
監督:市川崑
脚本:和田夏十
出演:岸恵子 山本富士子 宮城まり子 中村玉緒 岸田今日子 宇野良子 村井千恵子 有明マスミ 紺野ユカ 倉田マユミ 森山加代子 船越英二

市川崑監督の「黒い十人の女」です。

毎日忙しく過ごすテレピプロデューサー風松吉(船越英二)。既婚者でありながらも優しい彼には近づく女性も多く同時期に彼と関係した人数はなんと九人!妻の双葉(山本富士子)はそんな夫を見放し、レストラン経営で忙しく過ごす事で寂しさを紛らわせています。後腐れのない関係のつもりが、女たちは風が気になって仕方がない。仕事に行きづまりを感じている女優石ノ下市子(岸恵子)もそんな一人。女たちは風のことが気になるあまり二言目には「風を誰か殺してくれないかしら」と言う有り様。ある日愛人のひとり、印刷会社のオーナー三輪子が女たちの計画を風に話します。気の弱い風は不安になり、どうして自分が殺されようとしているのか妻の双葉に相談します。

女優の石ノ下市子、本妻の風双葉、印刷会社の女社長三輪子、コマーシャルガールの四村塩、照明係の後藤五夜子、この辺から誰が何をしているか分かりませんが、虫子、七重、八代、櫛子、十糸子。以上十人が風を愛した女たち。名前、地味〜に番号ついてます(笑)。

本妻の「皆に優しいのは、誰にも優しくないってことですからね。」っていう台詞。そうそう!そうなの!と思わず大きく縦に首を振る私。

いやあ。
この作品、相当面白い!
優柔不断のダメダメ男と気の強〜い女たちのお話。
かなりいいです!
風が選ぶのは全員職業を持った生活力のある女たち。
優しいところが長所であり、最大の短所であるズルい男。忙しすぎて(?)人間としての大切な何かが欠如してるんですねえ。


風さん、困ってますね〜。
1:10の気まずい場面。
女は強い!そして、怖い!!


市子「あなたは影のない人だと私誰かに言った事があるけど、現代の社会機構の中に巻き込まれると誰でもそうなるのよ。」

市子「忙しく飛び歩いて事務的な事の処理は大変上手くなるけど心と心を触れ合わせる事の出来ない生き物になってしまうのよ。女は男に求めるものはもうないのよ。あなたの中には。だけどあなたは男の形をしている。だから抹殺されたのよ。」

風「そうなのだよ。もしそうならそれは僕のせいじゃないだろう。現代の社会機構が悪いんじゃないか。僕は被害者じゃないか!」

市子「社会機構を殺す訳には行かないでしょ?テレビ塔を殺す事は出来ないじゃない。人間が殺す事ができるのは人間とその他の動物だけよ。」

これは、市子と風との会話です。
この会話に作品の全てが集約されていますよね〜。
作品が製作されてから約半世紀経とうとしていますが、今でも充分通用する普遍的なテーマ。奥深いです。

スタイリッシュでモダンな映像も素敵です。

黒い十人の女@映画生活
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ビートルズ イエロー・サブマリン

2008年06月16日 | ★★★★★


イエロー・サブマリン
おすすめ度
原題:The Beatles Yellow Submarine
製作:1968年 イギリス
製作:アル・ブロダックス
監督:ジョージ・ダニング
脚本:リー・ミノフ アル・ブロダックス ジャック・メンデルソーン エリック・シーガル

ビートルズの名曲「イエロー・サブマリン」をベースに製作された長編アニメ映画「ビートルズ イエロー・サブマリン」です。

昔々、海底にペパーランドという小さな王国がありました。ある日、サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブが音楽会を開いていると、ブルー・ミニーたちがミサイルを打ち込んできます。彼らは世界から音楽と幸福と愛をなくしてしまおうとしています。命からがら逃げ切った指揮者のオールド・フレッドは、市長の命令で黄色い潜水艦で助っ人を探す旅に出掛けます。そして彼が辿り着いたのはリバプール。まず彼はリンゴに会いペパーランドの危機を訴えます。話を聞いたリンゴは、仲間のジョン、ポール、ジョージに紹介し、四人はペパーランドを救うべく、潜水艦にのりこみ旅立つのでした。

この作品は、凄い!
ビートルズファンでなくとも充分楽しめる作品です。くるくると目まぐるしく変わる映像にビートルズのサウンドが見事に調和したアニメーションは、イマジネーションを掻き立てられます。アニメ・イラスト・映像・音楽を融合させた実験的な映像はまさにサイケデリックな60年代のポップアートそのものです。

登場人物は、それぞれ現代社会に見られる様々な事象のパロディで、

ペパーランドを襲うブルーミーニーズは
よくいる「悪玉」の典型。
詩人、作曲、小説、絵画にと時間に追われて忙しがっているジェレミーは
「えせインテリ」。
音楽をこよなく愛するペパーランドの市町は
古い時代の「カリカチュア(戯画、風刺画)」。
そのほかのユニークなキャラクターたちは
「来るべき時代の象徴」。
を表しているのだそうです。

また、メンバーたちの登場のしかたや歩き方にまでこだわっています。

リンゴは、小学生のチャップリンのようなイメージ(?)で登場。みんなが32歩のところを足を引きずるように24歩で歩きます。心優しい愛されキャラです。
ジョージはカウボーイのような歩き方で、登場も瞑想のもやの中から超然と現れます。掴みどころが無く、どこか神秘的な雰囲気を持っています。
ポールは自信溢れる若い重役のようにさっそうと歩き、現代のモーツァルトのようなエリート風。
ジョンは即興師のように軽やかに歩き、生まれながらの創造者のような天才気質。

製作サイドの意図を知るとまた違った目線で楽しめますねっ。
とってもハッピーになれる作品。
おすすめです!

前田有一の超映画批評



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太陽を盗んだ男

2008年06月09日 | ★★★★★
太陽を盗んだ男
おすすめ度
製作:1979年 日本
製作:山本又一朗
監督:長谷川和彦
脚本:長谷川和彦 レナード・シュナイダー
出演:沢田研二 菅原文太 池上季実子 北村和夫 

原爆を作り政府を揺する凶悪犯を沢田研二がスタイリッシュに演じた「太陽を盗んだ男 」です。

無気力な中学校の理科教師・城戸誠(沢田研二)。彼は兼ねてからある計画を企てていました。それは自分の手で原爆を作り、日本政府を脅迫する事——。
ある日それは実行されます。原子力発電所から液体プルトニウムを強奪し、遂に自宅アパートで原爆を完成させてしまいます。早速、金属プルトニウムの欠片と梅干を仕込んだダミー原爆を国会議事堂に持ち込み、日本政府を脅迫★
そして誠は、交渉人に山下警部(菅原文太)を指名します。彼は以前誠が引率していたクラスがバスジャック事件に巻き込まれたときに、自分の身を呈して救出した男でした。

1979年と言えば米ソの冷戦時代真只中。その時期に「核爆弾モノ」。
あははは…(汗)。

この作品は何と言っても沢田研二ありき!彼の魅力なしには語れないと思います。拳銃を構えるシーンなんてのは「タクシードライバー」のデニーロそのもの!ほかにも老人・泥棒・妊婦・髭メン…などなど色んなジュリーのコスプレが堪能できます。

「相棒」で再ブレイク中の水谷豊や、「探偵ナイトスクープ」(←ジャンル違うし 殴)で大活躍の西田敏行もちょい役で出演。キャストひとつとっても何かと見どころの多い作品です。

また、皇居前広場や国会議事堂、メーデーのデモ隊行進で騒然とした町並みなど、ゲリラ撮影ならではの臨場感溢れる映像もわくわくします。そして、そして!異色の競演とも言える沢田研二と菅原文太との絡みがスゴイ!ラストの壮絶な格闘シーンは釘付けになる事受け合いです。

結構社会派で重いテーマにも関わらず、粋でポップ。いつ観ても色褪せる事のない邦画史に残る名作だと思います。





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カリガリ博士

2008年06月08日 | ★★★★★


カリガリ博士
おすすめ度
原題:Das Kabinett des Doktor Caligari
製作:1919年 ドイツ
監督:ローベルト・ヴィーネ
脚本:ハンス・ヤノヴィッツ カール・マイヤー
出演:ヴェルナー・クラウス コンラート・ファイト フリードリッヒ・フェーエル リル・ダゴファー

芸術続きで(ちと強引??)1919年に制作された、ドイツ表現主義を代表するサイレント映画「カリガリ博士」です。

物語は1人の男が「恐怖体験」を語る回想シーンから始まります。
フランシス( フリードリッヒ・フェーエル)は、友人のアランと、村のカーニバルに出かけます。彼らはポスターに誘われ、カリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)が主催する見世物小屋に入場します。小屋の中ではカリガリ博士が、23年間箱の中で眠り続けている、眠り男チェザーレ(コンラート・ファイト)を紹介していました。博士は、チェザーレにどんな事を尋ねても質問に答えられると言います。そこで、アランがちょっとした悪戯心で「自分の寿命はいつまで?」と尋ます。するとチェザーレは「明日の夜明けまで」と答えるのでした。その回答に驚いた2人は急いで見せ物小屋を後にします。そして翌朝、フランシスは村人から、アランが何者かに殺されたことを知らされます。この村ではつい最近も役場の職員が殺されたばかり。騒ぎは大きくなり、連続殺人事件に発展します。平和だった村は一気に緊張が走ります。

今さら言うまでもない名作中の名作ですねっ。
映画界だけに留まらず、これまでどれだけのクリエイターに影響を及ぼしたかしれない伝説の作品です。

まず驚かされるのはその芸術性。
この作品が製作された頃のドイツの美術・工芸・写真・デザイン・建築における水準は世界のトップクラス。バウハウスの設立(1919年)なんかはその象徴とも言えます。全て書き割りによるデフォルメされたセットは本当に素晴らしく、まるで騙し絵を見ているような不思議な感覚に陥ります。メイクや特殊効果を駆使した演出も秀逸です。また、ストーリーも画期的。今ではサスペンスの定番になっている「どんでん返し」。この作品にもあっと驚く仕掛けが用意されています。

目からうろこが連続のこの作品、機会があれば是非!

ちなみに、この作品と並んで必ず名前の挙がるのが「メトロポリス」。
実はまだ観た事がありません。
セルでもこの作品だけない事が多くて…。
うーん。是非観てみたい。


カリガリ博士@映画生活
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パンダコパンダ

2008年06月01日 | ★★★★★


パンダコパンダ
おすすめ度
製作:1972年パンダコパンダ/1973年パンダコパンダ雨降りサーカス
原案・脚本・画面設定:宮崎駿
演出:高畑勲
声の出演:杉山佳寿子 熊倉一雄 太田淑子 山田康雄 瀬能礼子 峰恵研

トトロとハイジのモデルとなり、宮崎アニメの世界の原点とも言われている名作「パンダコパンダ」です。35年経とうとしている今でも色褪せる事なく幅広い層に支持されています。この作品は1972年に上野動物園にパンダ送られたことをきっかけに起きたパンダブームに便乗し製作されたアニメーションなんだそうです。

ミミ子は祖母を法事へ送り出し、しばらく一人暮らしをすることになります。夕飯の買物をして帰宅するとしかしそこには言葉を話す子供のパンダ、パンちゃんとその父親のパパンダが居ました。すっかり仲良くなったミミ子はパパンダにはお父さんになってもらい、パンちゃんには自分がママになると決め、一緒に生活をすることになりました。

いいですねえ。
パンちゃんが可愛くて仕方ない。
オープニングなんてもう最高です!
疲れたときや癒しを求めているときに観たくなる作品のひとつです。

正直最近のジブリ作品にはあまり興味はありませんが、「アルプスの少女ハイジ」(1974年)「未来少年コナン」(1978年)「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)などを観て育った世代としてはこの70年代の宮崎駿関連アニメはたまりません。

DVDには「パンダコパンダ」の続編「パンダコパンダ雨降りサーカス」も収録されています。他にも1994年の宮崎駿と高畑勲の対談や2000年に収録した高畑勲の製作秘話インタビューなど特典映像満載のおすすめの1本です。


パンダ・コパンダ@映画生活
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リング

2008年03月23日 | ★★★★★


リング
おすすめ度
製作:1998年 日本
製作:河井真也 仙頭武則 一瀬隆重
監督:中田秀夫
原作:鈴木光司
脚本:高橋洋
出演: 松嶋菜々子 真田広之 中谷美紀 沼田曜一 雅子 竹内結子 佐藤仁美 松重豊 村松克己 大高力也 伴大介 李鐘浩 柳ユーレイ 大島蓉子



リング@映画生活
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ミトン

2008年03月09日 | ★★★★★




ミトン
おすすめ度
原題:Varezhka,Рукавичка、英題:Mitten
製作:1967年 ロシア
監督:ロマン・カチャーノフ
原作・脚本:セルゲイ・ミハルコフ
脚本:ジャンナ・ヴィッテンゾン
美術:レオニード・シュワルツマン

「ロリータ&バイオレンス」と言われる私のDVDのラインナップ。(せめてファンシーと言ってほしい・・・。)その「ロリータ」部担当。1967年のロシアの人形アニメーション「ミトン」です。

ある冬の日のこと。女の子が窓の外を見ていると、子供たちが犬と遊んでいます。羨ましくなった女の子は、友達のライカ犬の子犬を貰ってきます。ところが、お母さんは大反対。いったん連れてきた子犬ですが、友達の家に返されることになります。女の子はしょんぼりして、手袋を子犬に見立てて遊び始めます。すると、手袋は子犬に変身して…。

なーんてかわいらしいんでしょう。
癒されますよ~。
思い切り疲れたときに観ると、ぽろりと涙が出そうになります。手作り感満載な素朴で暖かい人形やセットがそれはそれはキュートです。
DVDには「ママ」(1972年製作)「レター」(1970年製作)も収録されています。3作品すべて観ても1時間に満たない作品なので気軽に観れます。
うんちく関係なくリラックスしたいときにおすすめの名作です!


ミトン@映画生活
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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

2008年03月07日 | ★★★★★





ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
おすすめ度
原題:Hedwig and the Angry Inch
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
製作:2001年 アメリカ
製作:クリスティン・ヴェイコン ケイティ・ルーメル パメラ・コフラー
脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル スティーヴン・トラスク
出演:ジョン・キャメロン・ミッチェル スティーヴン・トラスク ミリアム・ショア マイケル・ピット アンドレア・マーティン セオドア・リスチンスキー ロブ・キャンベル マイケル・アラノフ ベン・メイヤー=グッドマン アルバータ・ワトソン ジーン・ピルツ 

オフ・ブロードウェイで上演されたミュージカルを映画化したロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」です。プラトンの「愛の起源」になぞらえて「自分のかたわれ」を探し求めるロックシンガーの半生を描いた作品です。

売れないロック・シンガー、ヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は全米各地を旅して巡っています。ヘドウィグは共産主義体制下の東ドイツで男の子ハンセルとして生まれますが、米兵の男性と結婚するため性転換手術を受け、その不手際で股間に男性器が残ってしまいます。しかし、渡米した途端その男性にも去られてしまったヘドウィグ。かつての夢を思い出した彼女は、韓国軍兵士の妻たちとバンドを結成します。そんなある日、同じくロック・スターを夢見る17歳の少年トミー(マイケル・ピット)に出会います。

今更いうまでもない名作ですね。
とにかくパワーのある作品です。
音楽が好きな方にはたまらない一作だと思います。
もともとは、ジョン・キャメロン・ミッチェルと作曲家のスティーヴン・トラスクが、ニューヨークの ナイトクラブでヘドウィグを登場させたのがこの作品の始まりなんだそうです。

音楽には詳しくない私でも、一瞬で引き込まれました。ジョン・キャメロン・ミッチェルたちの圧倒的なパフォーマンスがかっこいい!それでいて妙に切ないんですよね。

サントラほしいな・・・。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ@映画生活
前田有一の超映画批評



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善き人のためのソナタ

2008年02月28日 | ★★★★★



善き人のためのソナタ
おすすめ度
原題:Das Leben der Anderen
英題:The Lives of Others
製作:2006年 ドイツ
製作:クイリン・ベルク マックス・ヴィーデマン
監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ マルティナ・ゲデック セバスチャン・コッホ

東ドイツのシュタージをテーマに製作された初の作品「善き人のためのソナタ」です。これは数年に一度出会えるかどうかの私にとって、大変心に残る作品のひとつとなりました。

1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は国家に忠誠を誓う勤勉で真面目な男です。ある日彼は、反体制の疑いのある劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)とその同棲相手の舞台女優クリスタ(マルティナ・ゲデック )を監視するよう命じられます。早速ドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーはいつものように徹底した監視を開始するのです。しかし、音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界にヴィースラーは次第に共鳴していくのです。

深く、深く心に染み入る作品でした。
統一直前の東ドイツを描いた作品といえば、ちょっぴりコミカルで風刺の効いた「グッバイ、レーニン!」が記憶に新しいですが、本作では全く違う切り口で東ドイツを描いています。

1989年に崩壊したベルリンの壁。あれから約20年。これまで国内でタブー視されてきた「シュタージュ」を描いた初の作品です。製作スタッフの中には、シュタージュと接触した人も居たそうです。驚くことに、その体験はこの作品を制作するにあたるまでの17年間一度も口にしたことがなかったそうです。あるいは彼らの中では「過去」ではないのかもしれません。

ヴィースラーはドイツ人の典型のような几帳面で生真面目な男です。
ある日ドライマンの部屋から流れてきた「善き人のためのソナタ」。
それを聴いた時から彼の人生は大きく変わり始めます。

「これを本気で聴いた人は悪人になれない」

その曲には自殺した演出家イェルスカからのメッセージが添えられています。愛と自由を求める芸術家たちにヴィースラーは感情移入しちゃうんですね。

言葉少ない主人公を演じたウルリッヒ・ミューエの繊細な演技は秀逸で、その微妙な表情から彼の孤独が切ないほど伝わってきます。
それだけに、ラストの「私のための本だ」という言葉と彼の誇らしげな表情は言葉にできない感動を生みます。

善き人のためのソナタ@映画生活
前田有一の超映画批評



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タンポポ

2008年02月15日 | ★★★★★





タンポポ
おすすめ度
製作:1985年 日本
制作:玉置泰 細越省吾
監督・脚本:伊丹十三
出演:山崎努 宮本信子 役所広司 渡辺謙 桜金造

やたらお腹が空く映画だった記憶はありますが、細かいところを殆ど忘れちゃいました。・・・ってことで久々に観てみました。伊丹十三監督の「タンポポ」です。

ある日の夜、タンクローリーの運転手、ゴロー(山崎努)とガン(渡辺謙)は、通りすがりのラーメン屋、来々軒に立ち寄ります。店内にはピスケン(安岡力也)という柄の悪い男とその子分達がたむろし、女主人に絡んでいました。それを制したゴローはビスケンと殴り合いの喧嘩をしてしまします。気絶したゴローは、店の女主人タンポポ(宮本信子)に介抱されます。彼女は夫の死後、ひとり息子を育てながら店を切盛りしていたのです。翌朝食事をよばれたゴローとガン。その時の会話の流れでラーメンの味がイマイチだと思わず口を滑らせてしまいます。それを聞いたタンポポは二人の弟子にしてくれと頼み込みます。


オムライス、焼肉、北京ダック、ラーメン、パスタ・・・・ああ、お腹すいた。

「ラーメンウェスタン」、「シェーンのラーメン版」というのがこの作品のキャッチコピーだそうです。初めて観たときは小学生だったこともあり、あまり何も思いませんでしたが、今観ると豪華なキャスト陣にびっくり!それに面白い!名作のパロディあり!社会風刺あり!グルメあり!と盛りだくさん。

この作品は、タンポポのラーメン修行の物語を軸に、グルメにまつわるいくつかの人間ドラマが描かれています。なんとも人間臭い濃~いエピソードの数々が悲しくて可笑しいです。こんなに楽しい作品が、興業的にはあまり振るわなかったというのが意外でした~。

ちなみに、1985年は邦画の当たり年で洋画の興行収入を上回った年なんだそうです。当時のヒット作は大林宣彦監督の尾道三部作「さびしんぼう」、故市川昆監督の「ビルマの竪琴」、黒沢明監督の「乱」など大作が。巨匠が大活躍した年だったんですね~。


タンポポ@映画生活
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