病院で死ぬということ
おすすめ度
製作:1993年 日本
製作:伊藤宏一 関谷省吾 塚本俊雄
監督:市川準
原作:山崎章郎
脚本:市川準
出演:岸部一徳 山内明 塩野谷正幸 七尾伶子 石井育代 橋本妙 田村廣
キャッチコピー:“愛”だけが死を超える。
ガン告知を受けた患者の闘病の日々を、家族や医師らの姿を交えながら描く人間ドラマ「病院で死ぬということ」です。
末期医療に取り組む山岡医師(岸部一徳)が担当する四人のガン患者とその家族が登場。冒頭から入院患者の姿は固定カメラで淡々と映し出されます。作中に挿入されたドキュメンタリー的な演出がとても印象的でした。
1人目の患者
川村健二老人(山内明)の病室に妻の秀子(橋本妙)が入院してきます。
だが川村は大腸ガンであったのに対し、秀子は山岡医師が勤める病院では手掛けていない肺ガンであり、彼女はやがて他の病院に移ることになります。
夫婦の余命は短い。息子たちは父の願いを聞き、ある日彼を妻のいる病院へ連れていく事を決心します。たった30分の再会でしたが、それは家族にとって忘れられない思い出となります。
2人目の患者
40代の働き盛りのサラリーマン野村(塩野谷正幸)は自分の病名を知らず入院し、手術によりガンを取り出すことも告知を受けることもなく、いったん元気に退院していきます。
3人目の患者
女手ひとつで務めた子育ても終わり、ようやく自分の人生をのんびり過ごせるようになった池田春代(七尾伶子)。見舞いに来る慎二や和子ら子供たちと明るく語り合っています。
その後二度の手術を受けますが、回復の兆しが見られません。「もう治らないのでは・・・?」と感じ始めた春代の心は次第に荒んでいきます。その様子を見てこれ以上隠し通せないことを悟った山岡はついに彼女にがん告知をします。
4人目の患者
身寄りのない行き倒れで入院してきた藤井(田村廣)はかなり進行した食道ガンに侵されていました。
間もなく気管支を切開し声を失い衰弱。その後遺体は市のケースワーカーに引き取られます。
やがて野口が再入院してきます。野口も一向に改善しない体調に苛立ちをみせはじめ妻の容子ら周囲に当たり散らすようになります。
今から18年前の作品。
当時は告知をしないのが基本スタンスだったのでしょうか。
時代により考え方が異なるのは仕方のないことだと思いますが
自分の病状を正しく告知してもらえないことで疑心暗鬼になっていく患者の姿がとても痛々しかったです。
私は2年前に父を胃がんで亡くしました。
がんが見つかったときはもう手の施しようのないステージ4でした。
そのときは、父同席の元で家族といっしょにがん告知を受けました。
いよいよ終末を迎えるときは、在宅医療を選択し、自宅で父をおくりました。
個人的にはきちんと告知を受けることで、父も、私たち家族も少しずつ心の準備ができたように思います。
作品の中での野口も告知後に、徐々に落ち着きを取り戻し、一時帰宅をします。そして病院へ戻る2日前の夜、子供たちに全てを話し、残された日々を心穏やかに過ごします。
個人的な経験も手伝い、私にとってこの作品はとても心に響くテーマでした。
最後に明確な答えがあるわけでもなく、登場人物の様子を淡々と描かれています。
その姿がとてもリアルで切ない。
人の死を静かに捕らえた良作でした。
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