10月25日、安倍首相は第29回東京国際映画祭オープニングセレモニーにも出席しました。「棋士・羽生善治を追い詰めた病と闘いながら29才で亡くなった伝説の棋士・村山聖の実話の物語『聖の青春』を演じた松山ケンイチ氏と東出昌大氏が舞台上でメリル・ストリープさんらと写真撮影に応じた後に会話を交わしている最中でした。
突然舞台上に登場した安部首相でしたが、『聖の青春』の内容や出演者の紹介にも触れ、イギリスの元首相サッチャーを演じた伝記映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のセリフを挙げストリープさんを喜ばすなど、調子づいた感のある安倍首相でしたが・・・。(ちなみに、安倍首相が好きなサッチャー元首相は「核兵器をもたない世界なんて、全人類にとってより安定を欠いた、より危険な世界となるだろう。」とも述べた核兵器保持論者でした。)
東京国際映画蔡の挨拶では、調子にのり「・・話題になっている『シン・ゴジラ』も上映されるようでありますが、妻からも随分勧められまして、『あれは結構実際の映画のリアリティがある』こう言われたのですが、どうやら前半に総理大臣は官房長官と一緒に死んでしまうということでありまして・・」などと笑いをとるにいたっては、あまりにも、自虐的な意味不明で、やはりやりすぎのパーフォーマンス発言でした。会場中からは、クスクスと笑い声も漏れていました。たしか「ゴジラ(Godzilla)」は海洋廃棄された放射性物質に適応して誕生した怪獣で、そのゴジラ誕生のストーリーには、反核・「反原発」の側面があることに、安倍首相は触れることさえもできませんでした。知らなかった?それとも?安倍政権の原発再稼動政策は、政権の命取りと言う批判が政権与党側にもあることを受けた自虐ネタだったのでしょうか?
映画祭の挨拶で「安倍政権においては、日本を世界のゲートウェイにする、アジアのゲートウェイにする、こういう政策を立てています。」と露骨に安倍政権の政治宣伝をしたのも本当に恥知らずな発言でした。
先のストリープさんらとの写真撮影舞台では、首相が後にして残った「聖の青春」の3人を代表してあいさつした松山ケンイチ氏は「・・僕自身大ファンのハリウッドの名女優、メリル・ストリープさんと、そして日本を代表する『安倍マリオ』さん・・・間違えました。・・」などとの皮肉発言さえあり、これにも会場中からは、クスクスと笑い声が漏れたといいます。
菅義偉官房長官は10月28日午後の記者会見で、東京都の小池百合子知事がハロウィーンで仮装することを宣言したことに関し、記者に安倍晋三首相とともに仮装(安倍マリオの仮装期待に答え?)する考えがあるかと皮肉も問われ、「たぶん2人とも似合わない」と、仮装しない意向を示しました。
10月28日核兵器を法的に禁止する初めての条約の制定を目指す決議案が国連総会の委員会で採決にかけられ、核兵器の保有国のうちアメリカやロシアなどが反対したのに対し、中国やインドは棄権して対応が分かれました。しかし、唯一の戦争被爆国として核兵器の廃絶を訴えながら、アメリカの核の傘に守られている日本は、アメリカに同調して反対決議に回りました。オーストリアのクグリッツ軍縮大使は「核兵器の被害の実態を知る被爆者が訴えてきたことで、核兵器が非人道的だという認識が国際社会の中で広がった」として、この間、広島や長崎の被爆者が果たした役割が大きかったという認識を示していました。「交渉は今回の決議に賛成しなかった国にも開かれている。核保有国や核の傘の下にある国にも核兵器禁止条約に関わるよう促していきたい」と安倍政権の国連での「被爆者等の核兵器禁止の訴え」に反する姿勢を暗に批判していました。
(ちなみに、先に安倍首相が映画蔡で紹介した伝説の棋士・村山聖氏の母親は広島で入市被爆しているとの話もあります。やはり、安倍首相は、被爆国民の訴えよりもアメリカへの同調を優先したということなのでしょうか。今年の8月にも、ワシントン・ポストは、オバマ米大統領が戦時に核兵器を最初に使わない先制不使用宣言を検討していることについて、安倍首相がハリス米太平洋軍司令官に対して反対の意向を伝えたと報じていました。安倍首相は北朝鮮など対して核抑止力が低下することを懸念して先制核攻撃政策をアメリカに要請したのです。核兵器の禁止を訴える被爆国民の訴えと真っ向から対峙する思想の持ち主なのかもしれません。)
国際NGO、ICANの川崎哲国際運営委員は、「驚くとともに憤りを感じている。日本は核のない世界を目指すという目標を掲げておきながら、核兵器禁止条約の交渉を拒否した。日本政府はこれまで核兵器を持つ国と持たない国の橋渡しをすると言ってきたが、今回反対したことで、完全に軸足を核保有国側に移したと言える。国内でも理解されるとは思えないし、強く抗議をしていきたい」と述べ安倍政権の政策を強く批判しました。そして国連決議は、安倍政権等の反対にも係わらず、123か国の圧倒的な賛成多数(反対38、棄権16で)採択されました。
朴槿恵大統領が親友の民間人女性、崔順実氏に機密文書を渡し、国政に介入していたとの問題で、ソウルで10月29日夜に約2万人の抗議デモがありました。
与党セヌリ党は10月30日に緊急の幹部会議を開き、野党も政権に参加させる「挙国中立内閣」を設置するよう求めるまでにもなりました。与党セヌリ党は帰国した崔氏順実氏の緊急逮捕や関係者や機関への速やかな捜査を要求しています。青瓦台参謀陣の交代など、全面的な人事刷新も重ねて促して政権維持に躍起な様子です。