5月8日に北京の繁華街で酒に酔った英国人男性が中国人婦人に絡んだ事件が発生、北京の通行人数人は英国人男性を殴り昏倒させ北京警察に逮捕させましたが、その通行人が撮影した動画がネット上で公開されました。
5月15日、瀋陽から北京へ向かう特急列車の中で、ロシア人が中国女性の注意に逆切れするトラブルがありました。5月19日には、スペイン紙が「中国人はブタである」と報道したためスペイン人が批判されました。
中国国営テレビ局の司会で著名な楊氏は、「微博」で、中国の公安部に「外国のごみを片付け」、「無垢な少女たちを守る」よう求め、市民「中国女性と同棲する外国のスパイ」を一掃するよう呼び掛けました。背景には、悪質な外国人の不法滞在や買春行為があるようです。
北京には現在、約20万人の外国人が住み。721人の外国人が(2004年からの)中国のグリーンカード「中国永久居留資格」を取得しているそうです。今後は、北京では、滞在が72時間以内の外国人に対するビザ免除措置が近く実施される計画で、外国人の不法滞在や自由行動(スパイ活動も)が危惧されています。
6月1日のロイター通信や英国BBCによると、中国の国家安全部次官の男性秘書が、米中央情報局(CIA)の諜報活動に協力していたとされ逮捕されと報道しています。しかし、米中両国は、両国関係悪化を懸念して発覚後、数ヶ月もの間、この問題についての沈黙を続けてきたとも言われています。
一方、日本で話題となっている、在日中国大使館1等書記官のスパイ活動疑惑は、日本マスコミと警視庁公安部が大きく政治問題化させる方向で動いており、今後の日中両国の関係悪化に繋がることが懸念されています。
政治における日中間の懸念材料の増加とは裏腹に、6月1日から、東京と上海の外国為替市場では、米国ドルを介在させた従来の為替取引とは別に円と人民元の直接取引がスタートしました。(直接取引でドル交換手数料が節約できます。)
2004年に対中国の貿易額(輸出入合計)が対米国を上回って以来、中国は、日本にとっての最大の貿易相手国となっています。日本企業の進出も著しく、日本から輸入された基礎部品を中国の低労賃の工場で加工し欧米や世界に大量輸出されています。
毎年、米国と中国の貿易額の差は拡大してきました。2011年は、日米貿易額の15.9兆円に対し、日中貿易は31.1兆円となり、日中貿易は遂に日米貿易の倍近くの圧倒的な規模にさえなりました。(対世界貿易シェアでは日中が23.3%日米が11.9%です。)円と人民元の直接取引で、貿易だけでなく、金融為替市場においても今後の日中間の活性化が期待されています。(嫌な隣人でも日本は引っ越す分けにはいかないのです。地域距離や漢字文化や戦争との関わりだけでなく、経済的には中国は日本にとって最も近い隣人にもうなっているのです。その政治的乖離を棚上げして、中国経済を一番後押し、育てて来たのは実は日本でした。)
しかし、最近の中国経済は成長に陰りが見え、懸念されてきた住宅バブルの崩壊が危惧されます。住宅投資を推進し借金の膨らんだ地方財政への影響は予想がつかず、その崩壊の影響は、場合によっては中国経済だけでなく、中国貿易に多くを依存するようになった日本経済にとっての死活問題ともなりそうです。日本にとっては、もはや中国は、経済だけでなく、その社会構造にも影響が直結する民主化等の政治問題や人権問題さえも、もう他人事ではなくなっているはずです。かすかな光も見え始めています。昨年の広東省の烏坎村で共産党幹部の不正な土地収用に対する抗議行動が3か月続きました。汪洋・広東省党委書記が収拾に乗り出し、住民らの言い分を全面的に認め抗議行動は昨年12月に終息しました。その後、烏坎村では中国初の住民選挙を実施し村のトップを民主的に選出しました。
中国の未来については、日本だけでなく、世界経済への影響も、大きく危惧されています。中国の貿易額(輸出入)は、1978年には計206億ドルと世界第29位の規模に過ぎませんでしたが、「世界の工場」になったと言われた2000年代に、貿易輸出額はドイツや日本を追い越し遂にアメリカも抜き世界最大の貿易輸出国になりました(2011年の中国の輸出合計額は1.89兆ドルで世界2位のアメリカの1.48兆ドルの規模さえ大きく凌駕しました。
また、2011年の中国の貿易輸入は、世界最大の貿易輸入国アメリカ(輸入合計2.26兆ドル)に迫る世界2位の規模(1.74兆ドル)ともなり、もう中国は「世界の市場」にさえなろうとしています。世界の一の経済大国になろうとする国が非民主的な人権抑圧政治を取り、政治崩壊リスクを抱えることは、もう許されないと思います。
5月9日中国人権活動家・陳光誠の渡米の話題に触れたNHK海外放送の中国放映では、一時放映中断が入ったそうです。最近の中国の情報統制は厳しさを増す一方のようにも思われます。
陳光誠問題については、民主と人権の国アメリカのマスコミでは、中国の人権問題がまるで自国の問題のように、一環した批判をし続けてきました。
今日の国際社会では人権擁護や命の問題は、国境を越えて広く関心が持たれ、普遍的価値として保護されるべきものであって、内政干渉との非難や情報隠蔽行為はアナクロニズムでしかありません。
(アメリカ国務省が発表する世界各国の人権状況報告は、「世界の裁判官」として振舞う、思い上がったやり方だとの意見もあります。中国政府も、アメリカ政府からの人権批判に反発し、逆にアメリカ社会を「銃所有の権利を国民の生命身体を守ることより重視している」「失業を回避するするシステムが整っていない」とも、人種民族差別や他国への軍事覇権行為等を指摘して、毎年アメリカ社会批判を行なって反論をしています。しかし批判や反論だけではなく、改善に生かしてほしいものです。人権や命の問題に国の面子は不要です。)
盲目の中国人権活動家・陳光誠は中国山東省の出身で1994年に障害者である自身に不当な課税がされていることをきっかけに、法律を学び、北京に赴き不当課税を訴えて当局に認めさせた経験を得ました。南京中医薬大在学中の2000年には郷里の製紙工場の水質汚染に反対する嘆願を行い成功させました。
大学卒業後は、地元で按摩師として病院で働いた後、農村部で、法律相談や農民工や障害者や女性の権利擁護に取り組んできました。2003年に北京の地下鉄が障害者無償を法的に謳っているにもかかわらず、実際は料金を徴収していたことを訴え、障害者への地下鉄無償化を実施させます。地元では「裸足の弁護士」とも呼ばれました。2003年に米国を訪問し、障害者の権利が保障されたアメリカ社会を知り、中国での人権活動を一層活発化させたと言われています。
2005年6月に人口抑制関連法(一人っ子政策)を厳行して人工妊娠中絶や不妊手術を強制した山東省臨沂市の当局に対して集団訴訟を起こしました。臨沂市では、避妊手術強制や強制堕胎が実施されたと言われます。法的には2人目以降の妊娠について罰金を払わない者に地方政府は、本人の同意を条件に堕胎手術を行うことは認められていますが妊娠6か月を過ぎた手術は禁止されているはずです。臨沂市に限らず、中国の農村実態では、計画出産証なしの妊娠がばれて6か月を過ぎても虐待的な強制堕胎に至る事例がまだ少なくないと言われます。
(近年中国では、年間約8百万人もが中絶すると言われ、広く妊娠中絶が普及していますが、それは一人っ子政策の影響とも言われます。特に男子の出産を望むため女子の中絶が多く、ヤミ医療の中絶や粗雑な医療による健康被害も多く、農村では麻薬なしでの中絶行為が一般的と言われます。一人っ子政策が食糧危機を招く人口爆発を抑えたのは事実ですが、農村には子どもが多いほど幸せという価値観が歴然とあり、中国民の幸福と相矛盾する悲劇の政策とも言われます。)
陳光誠の集団訴訟の提起や海外メディアへの告発行為に対して、地元当局は反発し、彼とその家族を7ヶ月間自宅に軟禁します。2006年3月には臨沂市の施設に拘禁し、6月に逮捕、8月には、4年3ヶ月の有罪判決を下しました(公共財産を損壊し、群衆を組織して交通をかく乱させたという罪名でした。)
これらの人権侵害の動きに対し、2006年4月アメリカタイム誌は、世界で最も影響力のある100人の一人に陳光誠を選びました。そして、2007年には、彼の活動を称え、アジアのノーベル賞と呼ばれるマグサイサイ賞が授与されたのです。
そして、一昨年の2010年9月9日に陳光誠は4年程の刑を終え、ようやく釈放されました。もう中国では、かつての陳光誠の活動を知る人は少なくなりましが、それでも地元当局は、彼の活動と海外メディアとの接触やその影響を受ける民衆との接触さえ恐れたようです。各国の外交官、CNN、ニューヨーク・タイムズ、ル・モンドのジャーナリストなどが、釈放された彼に接触を試みましたが全く果たせませんでした。2012年1月に兄が亡くなったときにも外出の許可さえもでませんでした。釈放後も陳光誠は妻とともに19ヶ月間に渡り自宅軟禁されていたのです。
陳光誠の自宅の村の中には監視網があり、数百人規模で自宅が監視されていたと言われます。2012年4月22日に監視の目を逃れ、自宅の塀をよじ登り脱出し、村の外に出て支援者に連絡し、その後北京のアメリカ大使館にようやく保護されたと報道されました。
今回の米中の政治決着による渡米にあたり、ニューヨーク大学は客員研究員として受け入れる意思を表明しました。
情報統制と言えば、中国当局と対立するグーグルは、中国人ユーザーに対し、当局の観点から見て「政治的に正しくない」文言に対し、警告を表示し代わりの表現を自動的に提案する機能を提供し接続が中断することなく制限を受けずにインターネット作業を続けられる機能を非公式に提供し始めたそうです。これは、百度等の機能にも類似した機能でしょうか?。実質的に検閲にかかる記事を自主的に制限するための機能のようです。裏を返せば中国当局へのグーグルの屈服とも取れる気もします。
グーグルは、中国検閲は、ますます厳しくなっていると指摘しています。もはや政治的、経済的、社会的性格を持った事実上あらゆるキーワードの検索には当局のブロックがかけられていると伝えています。