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財政破綻したギリシャ国会前の民衆
アメリカの戦争戦略に応えて安保法制改悪を強行した強気の安倍政権は、何故か、自衛隊とアメリカ軍が燃料や弾丸を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)に関し、来年1月4日召集の通常国会への改定案提出を見送る方向で調整に入ったそうです。
本来は、安保法制の改定案に署名した後、速やかに通常国会に提出して承認を求める方針だったのですが、来年の通常国会では消費税の軽減税率や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などをめぐり、アべノミクスの失政に向け、野党からの激しい追及も予想され、安保関連でまた再度紛糾するのは避けたい「(参院選に向け)火だねは少ない方がいい」(官邸筋)との判断に傾いたためだそうです。
また、菅官房長官は、12月20日のテレビ出演で、安倍首相と大阪市長を退任した橋下氏との会談について「橋下氏が、安全保障や外交について、いろんな質問をしていた。そういうことに首相が答えていた」憲法改正の話題は「橋下氏はそれを前からずっと言っている」と発言していました。
憲法改正を掲げた衆参ダブル選挙の可能性は「衆院解散は首相の専権事項だから、私が触れることは控えたい。憲法改正は国民が議論を深めていくことが大事だ。今は深まっていない」とも答えて憲法改正を積極的に煽る安倍首相のスタンスとは、何故か距離を置いた発言をしました。
おそらく、アベノミクスの破綻リスクが見えてきたからでしょうか??・・実際のところ、安倍首相は、歴史認識の破綻と健康の破綻の他、経済破綻に怯えているのかも???
何故か、秋に発足した新生安倍内閣は、トリクルダウンの景気高揚もデフレ脱却も実現していないなかで、アベノミクスの三本の矢の行方にはもう触れず、総括もせずに、新たな「一億総活躍社会」の政策で「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」という全く新しい的を掲げてしまいました。
実際のところ、消費税の軽減税率の議論に揺れた安倍政権ですが、2014年末には1030兆円にも達した日本政府の財政赤字は、消費税10%の増税(1パーセントで約2兆円の増収見込)4兆円でも焼け石に水なのです。仮に13%に消費増税を強行しても年10兆円の税収確保で100年以上かかる計算ですが少子高齢化社会になった日本ですからおそらく100年でも無理です。
しかも、2014年度予算では、96兆円の歳入のうち不足する41兆円は新たな国債発行に頼っている始末です。
アベノミクスに応えた日銀の異次元緩和は、破綻を先延ばししているに過ぎません。日銀が国債買い入れをやめれば、国債と円の信用は毀損し大暴落しそうです。円安は一層進み、外国人に日本の資産や会社が殆ど買いしめれられ、外国人の富裕層に雇用され働く、最悪の日本の未来社会がアベノミクスの破綻でもう直ぐやってきます。
(今の不況下のインフレに悩む中国経済にも似てきます。仮に破綻すれば、あらゆる物価は高騰し、特に円安で原材料や食料やエネルギーなどの輸入価格が高騰し、日本の国民生活も大混乱に陥ります。)
平成27年度の国の国債発行予定額は新規国債37兆円、借換債116兆円でその内日銀が年間110.1兆円7割を買う予定になっているそうですが、量的緩和政策が終了すれば、もう買い手がいなくなるリスクもあり、国債による資金調達ができなれば、日本国家の財政は確実に破綻しますが、アベノミクスの結果、そのリスクを肥大化させました。もう出口政策は見つからないのです。
破綻の結果、行政機能は一部を停止、国債市場は大暴落、長期金利急騰などギリシャの比ではありません。量的緩和をこれ以上継続させれば、さらに赤字財政バブルはふくらみ、破綻清算時のハイパーインフレリスクは更に膨らみます。
しかも、東京オリンピックに費やす財政支出や東北震災復興の財政支出で日本政府の債務はさらに増え続けなければならない見込みなのです。何れにせよ、東北震災後に実体経済の回復しない日本経済は、アベノミクスの円安政策で、もう貿易赤字国にもなりましたが、もうすぐ経常赤字国に達する見込みとも言われます。現在の日本の経常収支を黒字化させ、現在の繁栄をもたらしているキャッシュは、世界一の対外債権国になった日本が世界中から得る利子を含む回収金ですが、それは過去に日本の実体経済が築いた富がもたらすフローであり、現在の実体経済ではないのです。
ギリシャのように破綻しないのは、国債を所有しているのが殆ど国内の銀行等で、その資金の背景には国民の貯蓄があるためだと言われますが、今後、経常赤字国になれば、海外へマネーが流出し、日本国内の銀行などの国内市場でも、国債は消化されなくなります。実際、これまで国債を主に保有してきた民間金融機関は、格付けの悪化を契機に急速に国債を手放し始めており、国債の新たな買い手の主流は実質的には日銀以外にない状況にもアベノミクスでなりました。これは、日本政府の財政はすでにアベノミクスのおかげで完全破綻のリスクを高めたとも言えるはずなのですが、誰も本当のことを言いません。
清算できる見込みのない無責任な債務の積み増しの借金国家の未来は途方もないインフレでいつか清算するしかありません。積極的政策はデノミでしょうか、それともデフォルトの国家破綻リスクも容認するのでしょうか、そんな未来の世代へのツケを増大させ続けているにもかかわらず、量的緩和の出口政策について明言もしない安倍首相と黒田日銀総裁はもう無責任の極みです。(おそらく量的緩和の出口は曖昧にし、消費税10%で景気はさらに低迷し、デフレは継続するものと言われています。)
かつて、第二次世界大戦時、軍事費等の膨大な支出によって財政が極端に悪化した日本は、戦後復興に向けてこの財政状態を解消する必要がありました。結局、戦争終結時のハイパーインフレで、民衆の預貯金や国債は紙切れになり、日本政府は戦前の戦時財政の赤字を民衆の犠牲によって解消するという強硬手段をとった知恵?が日本官僚にはありました。
アベノミクスの失政は、金融緩和政策による円安株高政策に終わり、実体経済が回復しなければ、結局、国民生活と中小企業からの収奪で金持ちが将来の破綻に備えるための政策であったとも言えそうです。実際のところ、安倍政権は、国民経済を犠牲にする消費税率引き上げの反面、大企業の法人税の実効税率を下げ、輸入原材料の高騰で悪化する中小企業の反面、大手輸出企業は増収をはかり、非正規雇用の拡大で労働分配率を悪化させ、マイナンバー導入で中小零細企業労働者からの税収を確保する政策の反面、富裕層の生前贈与の非課税枠を拡充しました。
歴史は必ず繰り返します。