学校教育を考える

混迷する教育現場で,
日々奮闘していらっしゃる
真面目な先生方への
応援の意味を込めて書いています。

大学受験と高等学校

2006-11-06 | 教育
今回の未履修問題でたいへん驚いたのは,
高等学校があまりにも露骨に受験シフトを
組んでいるということである。
今にはじまったことではないのかもしれないが,
どうなのであろうか。

さて,受験を考えた場合には,

多くの高校生は,
できるだけ楽に志望する大学に入りたいと願っている。

高等学校は,
できるだけ多くの生徒に受験に成功してもらいたいと願っている。
それが,高等学校の実績になるからである。

この時点で,建前論は別として,
高校生と高等学校の利害は完全に一致している。

ここで,高等学校教育はいかにあるべきかということを
度外視してしまえば,
今回のような未履修も横行するであろうし,
また,成績評価などにも
影響を与えなくはないであろう。

ひるがえって大学は通常,
できるだけ多くの優秀な学生を集めたいと願っている。

できるだけ多くの学生を集めるためには,
受験の負担を極力減らす方がよい。
そのほうが受験生のニーズに合うからである。

できるだけ優秀な学生を集めるためには,
受験科目を増やし,受験の負担を増大させる方がよい。
そうすれば,受験生の数は一部名門大学を除いて
減少することは必至である。

現在のように少子化の影響が大学にまで及ぶようになり,
受験生獲得競争が激しくなってくると,
大学は受験生の量と質のどちらを優先するかという課題に直面する。

背に腹はかえられないわけであるから,
やはりおいおい量の重視という方向に進む。

このような動きの中で,受験生と高等学校と大学の利害は
完全に一致していくのである。

かくして,受験の負担はますます軽減され,
受験のもっていた選抜機能はますます失われていく。

調査書や推薦書や各種試験制度など,
従来の入学試験制度のシステムそのものが
破綻をきたしていくであろう。

そのような時代の変化のなかで,
大学は自然淘汰されていくであろうが,
高等学校は準義務教育として命脈を保つであろう。

そのとき,
受験の成功を最大価値としているような高等学校は,
生徒に学習のモチベーションを維持させることが
ますます困難になっていくであろう。

「何のために勉強するのか」という問いに対する答えを,
それは一種の新しい物語の構築であるのかもしれないが,
高等学校は早急に取り組むべきときにきている。