学校教育を考える

混迷する教育現場で,
日々奮闘していらっしゃる
真面目な先生方への
応援の意味を込めて書いています。

引率の方法

2005-09-15 | 教育
遠足や旅行などで,
生徒集団を引率するというのは,
骨の折れる仕事である。

なかなか秩序が保ちにくいためか,
最近はクラス単位の集団を引率して歩くという機会も
減っているようにも思える。

この生徒引率の場面では,
教師の技術の有無が端的にあらわれる。

それどころか,下手な引率は生徒を危険にさらすことになる。

私が先達から教わった引率作法を,思いつくままに書き連ねてみたい。

基本的には2列縦隊で引率することが多いだろうが,
引率者の指の合図で,
歩きながらでも,
いつでも1列あるいは3列・4列に変更することができるように
指導しておくべきである。

手提げかばんなどの荷物がある場合には,
左列の者は左側に,右列の者は右側に持たせる。
つまり,隣り合った生徒と生徒の間に荷物が挟まらないようにするのである。
この荷物の持ち方ひとつで,列が乱れる原因をひとつ取り除くことができる。
また,荷物が部外者から身を守る役目を果たす可能性もある。

列を道路の右側または左側の片方に寄せて歩くようにする。
もし,向こうから一般の歩行者が来た場合には,引率の教師は,
右側通行をしている場合には,
列の右側に(相手から見て左側)に入り込まれないように上手にブロックする。
右側通行をしている列の右側に向かい側から一般の歩行者に入られると,
列を分断される原因となる。

30~40人規模の集団が信号を渡る際には,
列を崩して,横隊隊形をつくるように指導しておくほうがよい。
信号が青になったら,まず引率の教師が道路の真ん中に出て,
停車している自動車の運転者と「渡りますよ」という意味で
アイコンタクトをとった後,
生徒集団に合図(手を叩く,声をかけるなど)をして,一気に渡らせる。
ものの数秒で,全員が渡り切ることができる。

しかし,なにより大切なことは,
引率者が列の先頭を離れてはならないということである。
もし,列の後ろのほうへ行って何か指導しなければならないときには,
必ず列全体を立ち止まらせてからにすべきである。
決して,引率者の先導なしに,集団が動くようなことがあってはならない。

引率者の歩行スピードが,通常の歩行の半分程度のスピードでなければ,
集団はついて来られない。
列の後ろが走らなければならないような状態が生じるのは,引率者の責任である。

引率者は,常に後ろの列全体の動きが把握できていなければならない。
前のほうの生徒と会話をしながら歩くこともあるだろうが,
会話に熱中して,列全体の把握がおろそかになってはいけない。

このような引率の方法は,教師と生徒が共に熟知していなければならない。

生徒は,常に引率者の動きに注目して,
引率者が声を出さなくても合図で指示がわかるように
なっていなければならない。


生徒集団を絶対に安全に事故なく移動させたいという教師の使命感。
教師の指示をなぜ守らなければばらないかについての生徒の十分な理解。
このどちらかが欠けても,生徒の集団を引率することなど
危なくてできたものではない。

危ない引率風景を近頃よく目にする。

長年伝えられてきた教師としての基礎基本が
もっと大事にされるべきではないだろうか。

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