ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその86-小説 苦役列車

2013年05月29日 | 
小説「苦役列車」

私小説。
日本文学黎明期には必ずしも歓迎された小説形態ではなかった。
むしろ低俗なレベルの小説であるとも言われていた。
しかし今回紹介する「苦役列車」を代表に私小説再評価されているという。
この小説は以前このブログでも紹介した山下敦弘監督の同名映画の原作である。
ストーリーを紹介しておこう。
北町貫多は日雇い人足をなりわいにしているその日暮らしの青年である。
彼は2~3日に一度日雇いの仕事をしてその日の日当をほぼ使い切る生活をしている。
彼の一家は過去に父親が起こした犯罪によって離散となり母親との連絡だけができる状態だ。
気まぐれに日雇い仕事をし、その日暮らしを決め込んでいた彼はある日彼は日雇い現場へ行くマイクロバスの車中で同い年の専門学校生、日下部正二と知り合いになる。
日下部は貫多と違い毎日日雇いの仕事をこなす。
貫多もそれにつられ毎日日雇いの仕事を行なうようになり、日下部とも親交を深めてゆくのだが......
まず映画との違いだが映画はこの小説の日下部と知り合って以後のことが中心に描いてある。
さらに映画で設定されていた貫多があこがれる女性康子は小説には出てこない。
小説はもっとドロドロしたものだが映画ではそこまで描いていない。
西村もこの映画には不満であるという。
本題の小説に戻ろう。
とにかく作者の言葉の豊富さには驚かされる。
使用される漢字の多様さにも感嘆する。
とても昨今作家デヴューした人物の書いた小説とは思えない。
文章はどこかゴツゴツし、なかなか飲み込めないところもあるのだがそれが一種の魅力となっている。
以上のような要素から、なかなかスムーズに読み進める作品ではなかった。
しかし確固としたスタイルを持った素晴らしい小説であり今後の彼の活躍も十分に期待できるものである。
やはり映画を観るときは原作を読んでから観た方が良いと思った。
この作品は原作の方がより深く重い。
しかし映画の方も映画的には駄作とは言いがたいところがある。
是非原作を読み映画も観ることをお勧めする。
2010年発表、著者西村 賢太、芥川賞受賞作。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿