82歳でも、精力的に舞台で演技を披露していた
俳優の平幹二郎さんがお亡くなりになりました。
森新太郎の演出で、芝居を見る幸せに
心行くまで浸らせてくれるいい芝居だった。
平幹二郎は存在感といい、せりふの滑舌の良さといい
ホントに俳優の真髄はここにある
という見事な演技だった。
芝居の中で、「演技とは、芝居とは」と劇中のせりふで語る場面があったけど
それこそ、平さんの魂が乗り移ったような言葉だった。
10月9日の「クレシダ」の大阪公演の千秋楽の日は、
スタンディングオベーションで割れるような拍手喝采だったそうだ。
22日に自宅浴室のお風呂で亡くなられたというから
きっと、旅公演の疲れがようよう取れ、
拍手喝采のどよめきの記憶を思い返しながら
「あ~幸せ~」と思っていらしたかしらん?
平さんはNHKでシリーズで始まった上橋菜穂子の
「精霊の守り人」で、星読博士の最高位である聖導師の役を務めていた。
第2シリーズはもう収録済みで、
そのまま放送されるらしいけど
そのあと、あの役は誰が演じるのかな。
いい役者が、舞台を演じきって、静かに人生の幕を閉じる。
亡くなったのは残念だけど、いいよなあと思うのです。
「生ききったよね」と尊敬する。
以下は、「クレシダ」公演の前のインタビューで語った
平さんの言葉。(→「クレシダ」ホームページよりインタビュー記事の引用)
「森さんが、この戯曲の一番大きな骨格は"世代交代"ではないか、とおっしゃった。
なるほど、その点を深く掘り下げていけば作っていけるかな、と迷いが晴れたんですね。
お話の中で、シャンクが自らの欲のために少年俳優にレッスンをするんですが、
教えているうちにどんどん夢中に、一生懸命になっていく…というシークエンスが出てきます。
ちょうど台本をいただく少し前に、
ドラマーの成長を描いた『セッション』という映画を観ていたんですが、
そのシークエンスについて、森さんと異口同音に
「これって『セッション』のような感じですよね」と話したんですよ。
ああ、僕が考えているのと同じような感覚で作ろうとしていらっしゃるな、とわかって少し安心しました。
森さんはとてもしぶとく稽古を重ねる方だと聞いています。
怖れおののきつつも(笑)、良い出会いになれば嬉しいですね」
平幹二朗が気鋭の演出家とタッグを組み、
これまでにないキャラクターを表出する。
それも平にとっては初体験ともいえる、220席ほどの小劇場における挑戦だ。
日本が誇る名優の新境地を見届けずにはいられない。
「大声を出す俳優が、ささやきだけで聞こえる劇場でどうやって組み立てていけるでしょうね(笑)。
自分の新たな可能性を探せるかな、と楽しみです。
したたかな、いい加減な男が、次の世代の素晴らしい人たちを育て、受け渡していく。
また同時に、男たちが舞台に君臨していた時代は終わり、
女優たちに場を譲らなければいけない変わり目も感じさせる作品なんですね。
ある終末と新しさへの歓迎、その感動を爽やかに味わっていただけたらと思います」