サラ☆の物語な毎日とハル文庫

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  フィンドホーンで何が起こったのか?

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僕は本を広げたまま、物思いにふけっていた。
日曜の午後。
雲はたっぷり水気を含み、もうまもなく雨となって落ちてきそうだった。

「なにを、そんなにむずかしい顔をしているの?」
とレディバードが話しかけてきた。
彼女は、お気に入りの桃のシロップ煮を食べているところ。

「あのさ、スコットランド北部の海岸にある
フィンドホーン共同体について調べていたところなんだよ。
子安さんの本(『エンデと語る』朝日新聞社)の中で、
ミヒャエル・エンデがフィンドホーンの共同体について話してるんだ。それでね。」

「エンデさんはなんて言ったんだっけ?」

「フィンドホーンというのは、海岸沿いの荒地で、
全くの砂地にわずかな海岸植物が生えてる程度の土壌だったんだって。
で、生活のためにその地で菜園をつくる必要に迫られた数名のグループがいて、
その人たちは、なんと『自然の精(ガイスト)』の力を借りて、見事な菜園をつくりあげたんだよ。
冬にさまざまな種類のバラの花が豊かに咲きほこったり、
40ポンドもあるキャベツが収穫されたりね。

これは、ほかの本で調べたんだけど、その土地ではそんなこと、ありえない話なんだ。
後に多くの土壌の専門家や科学者がフィンドホーンを訪れて、
「もともとの土壌と堆肥だけで、そのような農園を作り上げることは不可能だ」と述べているんだよ。
実際、彼らは「それ以外」のものに力をもらっている。
何でも仲間の一人、ドロシー・マクリーンという女性は、大地の天使や雲や雨の精霊、
一つ一つの野菜の精霊とコンタクトして、堆肥や水の与え方、液体肥料の施し方、
作付けのやり方などを教えてもらったのだとか。
それに、フィンドホーンの農業に深くかかわった、ロックと呼ばれるエジンバラの研究者は、
エジンバラ植物園で現実に妖精に出会い、『牧神(パン)』に出会うんだよ。
そして、どのように植物を育てればいいかを直々に伝授してもらったそうだよ。
現実に妖精と交流したって言うんだ。
そんなことがあるのかな。誰だっておどろくさ」

(レディバードは眉を吊り上げる。
僕はつづける。)

「で、エンデはこう言ってる。
『まさかと思うでしょう。ありえないはずだ、と。でも、それは実際にあったことなのです。
写真があります。私は、そのフィンドホーンのことを報告した本を何冊も読みました。
こんな話を聞くと、人はにやにやしたりいかがわしいと思ったりするものです。
しかし、ほんとうにそこから出てくる結果は、おどろくべきことなのだから、
やっぱり考えてみなければならない』

エンデの発言が載っているこの本は、1986年に出版されたものだけど、
フィンドホーンは、実際いまでも活動を続けている。
年に1万数千名もの人が訪れる、規模の大きな共同体に発展しているそうだよ。
知り合いが、何年か前にフィンドホーンに短期滞在してきたと言うし。

この団体は、ユネスコと共同で平和をテーマにしたイベントを主催したりもする。
1995年の国連成立50周年のときには、
『平和活動に実績のある50のコミュニティのひとつ』に選ばれたりもしたそうだ。
グループの中心メンバー、アイリーン・キャディは、MBA(大英帝国勲章メンバー)という
勲章をエリザベス女王から授与されている。

だからさ、その現在までの実績と“妖精”が結びつくとなると、
これはとんでもない話だってことにならないか?」

レディバードは、あきれた顔をして僕を見ていた。
「あなたの目の前にいる私は何だって思ってるわけ?」

僕はレディバードをまじまじと見た。
目の前に20センチ足らずの小さな女の子がいる。

「妖精だよね。でも、物語の中の話でしょ?」

「だから何言ってるのって話ですよ。
物事を結びつける水平思考は、あなたの頭の中では働かないのかしら。
あきれたわ」
そう言うと、レディバードは、ためいきをついた。

まあ、物事を「それはそれ、これはこれ」と括弧付きで区別するのは間違っているかも。

メアリー・ポピンズの作者パメラ・トラヴァースも言っている。
「考えるということは、結びつけるということなのだ」と。
Only Connect──ただ結びつけることさえすれば。

「…激しい懐疑主義と意味を見出そうとする願いを結びつけること、
われわれの周囲に存在する非人間的世界への人間的な鍵を見出すこと、
個人を共同体と結びつけること、
既知のものと未知のものを結びつけること、
過去を現在に、
そしてこのふたつを未来と関連付けること。」

それは別物、ととらえるのではなく、結びつけて考えてみる。
一体どういうことかって。

フィンドフォーンのこの事象が示しているのは、
妖精は見える人には見える、そしてたいがい殆どの人には見えない。
しかし、少なくともそういう存在を知覚する人がいる。
説得力にはかけるけれど、そういうことかも。
(「落としどころはそれなの」というように、レティバードは首を振る。)

エンデはこんなことも言っている。
「新しい精神性の知覚という意識段階は、
人類進歩が近い将来に足をふみ入れるステップのはずですが、
それは『突然変異』的に生じるでしょう。
ロックが見たような世界を知覚する人間の数が、そのうちいきなり急激に増えると思うのです。…
でも、その知覚能力は、人間のなかで、確実に目覚めています。
大昔の人間にはだれにもあった力が、今ふたたび目覚めるわけです。
現に私は、まわりにたくさん、そういう例を知っています。
五感を超えた世界を知覚する人たち…」

たとえば人型ロボットのペッパーが19万8000円で市販される時代の流れと、
フィンドホーンの事例が訴えるような“自然の精霊”の存在は、
あまりにかけ離れた世界のように感じられもする。
けれど、きたるべき食糧難の時代とか、
もともとは自然の生きものである人間の存在のあり方などを考え合わせると、
その両方の道を探っていかなければならないのではないかと、思うのだ。
科学の夢と、地球に誕生した生命体としての潜在的な能力と。

【見つけたこと】妖精が本当に出現したと言われると、人はいかがわしさを感じる。
物語の世界にとどめておくかぎり、抵抗はない。
しかし現実に、五感を超えたところで感じ取れることを、気のせいにしたり、
あるいはなかったこととして蓋をするわけにはいかない。
物語の世界が生き生きと活動を始める原点の部分でもあるからだ。

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