三谷幸喜の芝居『酒と涙とジギルとハイド』を観た。
2014年にかけられた舞台の再演だそうだ。
思うんだけど、再演される芝居というは、観客の評価も高く
演出家も脚本家も、興行主も、いい芝居だったと実感するものが
かけられるのではないか。
だから、再演の舞台はハズレがないかもしれない。
なんて斜に構えたことを言わなくても、とても面白い芝居だった。
ロバート・ルイス・スティーブンソン原作の小説『ジギル博士とハイド氏』を
モチーフにしたシチュエーション・コメディ。
小説では二重人格のジギルとハイド。
そのように、人間を善と悪に分ける新薬を開発したはずが、
芝居のほうでは、その新薬が効かず、実験は失敗したことがわかる。
学会での発表はすぐに迫っている。
窮余の一策として、役者に別人格のハイドを演じさせることを思いつく。
そこに博士の婚約者が絡んで、てんやわんやの大騒ぎ!!
婚約者の役の優香の演技がはじけていて、笑えるしスカッとした。
舞台回しの役を担う博士の助手が、
まるでロード・オブ・ザ・リングのエルフのような見た目だったのが
妙に受けた。
何も考えずに笑えるのがいい。
人格が変わる早変わりの演出もうまいなーと思う。
よっ、三谷幸喜!
芝居はシチュエーション・コメディとうたっている。
じゃあ、シチュエーション・コメディってどういう意味?
と思って調べてみた。
演劇集団(らしい)「てにどう」の工藤剛士という人が、こんな説明をしてくれている。
★では舞台はどうかというと・・・基本的に「場面」が展開しません(例外も)。場面とは、例えば舞台がお城だとしたら、最後までお城です。途中幕が変わって、草原の場面になったり、村の場面になったりしません。三幕ものをはじめ、時間の移動こそあっても基本的に場面の展開はありません。
舞台セットが変わらずに、勝手に場所が変わるコメディはシチュエーションコメディーではありません。シチュエーションコメディーとは、コメディの上にわざわざシチュエーション(場面)という言葉がついているぐらいですから、シチュエーションがないがしろにされてはシチュエーションコメディーの範疇からはずれてしまいます。空の舞台という設定じゃなければ舞台セットが必要となり、そこには当然リアリティが求められます。
シチュエーションコメディーを成立させるためには9つ(厳密には11)の定義があり、53(細かく分けると100以上)のパターンがあります。シチュエーションコメディーでなくてもアメリカのコメディにはこのパターンが多くみられます。このパターンは、アメリカのコメディのリズムだと言えるかもしれません。
シチュエーションコメディーはさらにコメディ(喜劇)とファルス(笑劇)というジャンルに大きく分けることができます。
コメディがその人物がずっと抱えている葛藤を重点的に描くのに対し、ファルスは事件に巻き込まれることによってその人物が次々に直面する葛藤を徹底的に描くといった感じです。事件の数だけ葛藤のあるファルスと比べ、コメディは一人の人物がもともと抱えている葛藤の数に限りがありますので、笑いの量としては事件の数を増やせば笑いが増えるファルスのほうに分があるといえます。しかし人物がずっと抱えている葛藤を描くコメディは、味わい深い笑いになりやすいともいえます。