サラ☆の物語な毎日とハル文庫

「小説家はいつも心の目で見えたものだけを文章化しようとします」と村上春樹さんが語っています

 

6日に放送された『村上RADIOプレスペシャル』は

「読者の質問に村上春樹さんが答える」コメントが何本か挟み込まれていて

なかなか面白かった。

こんなコメントを話せる人って、ほかに知らない。

 

面白かったので、印象に残ったところをちょっとだけ。

見出しにあげた「心の目で見えるものだけを」というのは

3つめです。

 

「大学に入学したけれど、オンライン授業がつづいた。

学校で学ぶというのはどういうことか」という大学生の質問に対して。

 

そういえば、僕の在学中は学園紛争の真っ只中で、

ストライキとか、ロックアウトだとかで、ほとんど授業がなくて、勉学どころじゃありませんでした。

朝ね、学校に行ったら、授業があるはずの教室が閉ざされてて、

何でかと言うと、その教室で、確かね127号教室だったと思うんですけど、

昨夜あるセクトによるリンチ殺人があったとか、とにかくね、そんな乱暴極まりない毎日だったんです。

殴りあいなんて、日常茶飯事だったですね。

で、入学したばかりの人にこんなこと言っては何か申しわけないんですけど、

そんなわけでね、僕は在学中、早稲田大学ではほとんど何も学ばなかったような気がします。

英語にstreet wise(ストリートワイズ) という言葉があるんですけど、

大学の外、街の雑踏の中で学んだことのほうが多かったかもしれないですね。

ただね、それはね、かなり特殊な時代の話であって、今はずいぶん事情が違っていると思います。

だからあなたは、まじめに勉強してください、と僕が言うのも何かちょっとウソっぽいですけどもね。

 

 

一人で行く野球観戦について。

 

一人で神宮球場に行ってヤクルトスワローズを応援する。僕も同じです。

よく一人で神宮に行ってます。

 

今はだいたい一人で行ってますね。

試合開始とともに、まず生ビールを飲んで、それから神宮ハイボールにうつります。

孤独ですけど楽しいです。

まわりにどう言われようが、お互いに気にしないで頑張りましょう。

 

 

 

「目に見えるものと、目に見えないものの二択を迫られたら、後者を取る」という話を以前村上春樹さんの短編で読んだことがある。目に見えないものとの付き合い方について。

 

ボクは目に見えるものより、目に見えないもののほうを大事に考えます。

実際に目に見えるものの多くは、もちろんそうじゃないのもありますけれど、

最初は衝撃的でも、時間の経過とともに、だいたい古びて力を失っていきます。

何度もくり返し見せられると、またかよ、というような感じになってきます。

でも、心の目でしっかりと見たものは、長くいつまでも残ります。

だから小説家はね、いつも心の目で見えたものだけを文章化しようとします。むずかしいことですけど。

 

 

新しく出た翻訳本、カーソン・マッカラーズ著『心は孤独な狩人』について。

 

昔から思ってたことだけど、人の心というのは、みんなが傷を負ってるんだなという…、

で、皆が一人ひとり傷を負ってるんだけど、それをお互いに受け入れて、お互いを癒しあうということは、

ほんとにむずかしいことなんだな、というのはその本を読んで感じることです。

でも、皆がそれを求めているんだけど、

それがどうしてもうまくすっと相手が見つからない哀しみというのは、すごくその本の中に込められてて、

そういうのは小説で描くのはすごくむずかしいんだけど、

マッカラーズはきちっと描いてて、すばらしいと思いました。

(文章にすると、なんだかわかりずらいけれど、そのままに。)

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