サラ☆の物語な毎日とハル文庫

橋爪功主演『Le pere』は笑えるけど胸が詰まる芝居だった

 

東京芸術劇場のシアターイーストにかかっていた秀作芝居。

2012年にフランスで初演され、モリエール賞最優秀脚本賞をとっているそうだ。

認知症の症状を示し始めた80歳の父親とその娘の物語。

 

父親の役を名優・橋爪功が演じて

笑えて、やがて胸が詰まる芝居に仕上げている。

 

最初は「腕時計がなくなった」「あの看護婦が盗ったに違いない」

「それはお父さんの秘密の隠し場所にあるんじゃないの」

「あった」

「ところで、どうしてお前はわしが秘密にしている隠し場所を知ってるんだ」

「それはね…」

というコミカルな展開で、

演技もテンポよく、笑っちゃうのだ。

 

ところがなんだか時系列や場所や、登場人物がねじれていて、

観ているほうも、だんだん不安になってくる。

公式サイトでも言っているように、

まるでSF小説でもみるような、なんかおかしい、という感覚が

視覚を通じて提示される。

 

芝居の組み立てが、うまいなーと思う。

認知症になった父親当人の混乱と不安。

対峙する娘のほうも、気持ちが追い詰められ

どう対応していいのか途方に暮れる。

 

 

現実を写し取って喜劇仕立てにした、休憩なしの1幕の芝居。

カーテンコールはスタンディング・オベーションだった。

 

上質な芝居を観たときの満足感あり。

きっと、来年、再来年あたり、また再演されるんじゃないかと予想する。

 

【Le pere 公式サイトより引用】

時間軸も含めて、認知症になった側の視点で構成されている本作は、タイムスリップを題材にしたSF小説のような趣さえあり、頑固で居丈高な父親の振舞いで笑いを誘いながらも、ダニエル・キイスの名作「アルジャーノンに花束を」を彷彿とさせる悲しみが漂います。ついさっきの会話が実は数年前の出来事であったり、初対面のはずの看護師はかなり前から世話をしてくれていたり。誰しもに起こりうる、認知症患者からの視点で進むSFのような現実。時間という概念は記憶されるからこそ存在するもので、その記憶が混乱していった人には現実がどう見えているのでしょう。また、そうなってしまった人を取り巻く家族たちは、その人とどう向き合っていけばよいのでしょうか。本作はこうした問いを演劇的に突きつけてきます。

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