バイク・キャンプ・ツーリング

NERIMA爺、遅咲きバイクで人生救われる

1998年6月29日 北海道ツーリング 2日目

2025年01月24日 | 1998年 北海道ツーリング
6月29日(月)
(青森~函館~二股ラジウム温泉~積丹半島~余市~倶知安(旭ヶ丘キャンプ場)




 練馬から青森インターまで約700キロ。よく走った。
 午前1時半、青森インター出口でフェリー乗り場までの地図をもらい、ちょっと迷いながらも無事フェリーターミナルに到着。夏休みになると、ライダーがテントを張って、キャンセル待ちや、順番待ちをするという駐車場脇の芝生をしばし鑑賞。そのあとフェリーの時間を調べにいく。

 次の函館行きのフェリーは2時50分発。
 1時間以上もヒマなので、待合室2階の食堂でなにか腹に入れることにする。早くも北海道気分になり、ミソラーメンを注文。お客さんは他に家族連れらしい人たちが1組。食べ終わるころに、常連とおぼしき客が何人かくる。はじめての味噌ラーメン、いける。出発の20分ほど前から案内すると係員に言われていたので、バイクの近くにいると、駐車場まで大きく響くアナウンス。
「バイクでご乗船のY様。乗船準備をお願いします。バイクでご乗船の……」
 ひゃああ。なんでオレの名前が呼ばれんのよと思ったが、乗船カードに名前書いたんだっけ。というわけで、一番最初にフェリーに乗船する。他にバイクなし。こりゃ、北海道初日は単独一人旅っぽい。

 函館までは約4時間の船旅。横になるが、なかなか眠れない。レインスーツを着たほうがいいのかどうか、フェリーの甲板に出てみると、北海道方面はどんより雲が垂れこめている。雨かもしれない。晴天は期待はしないほうがよさそうだ。
 6時半くらいには函館着。
 いよいよ、北海道にバイクで最初の一歩。少々緊張するも、あっけなく上陸。予定では松前方面にいくつもりだったが、どんより黒雲に覆われている。それはそれ。気ままに進みたい方向に走ろう。反対方向の函館市内に走って5号線を北上。森町ではイカめしを食いたいが、時間が早すぎる。帰りに函館に寄りそうなので、そのときだなと、一人浮かれ気分。森町を静かに通過。

 室蘭方面の海上には垂れこめた灰色の雲。だが、斑状にところどころ雲が明るくなっている。ひょっとして晴れるかなと期待していると、しばらくして太陽が顔を出す。このぶんだと大雨の心配はないようだ。
 長万部、5号線沿いのホクレンでガソリンを入れるついでに、名物のカニメシを食べようと、向かい側にあるドライブイン(カニメシ、と、どでかい看板が掛けてある!)で朝食を摂る。開いたばかりなのか、客はほんの一握り。1000円ちょいでカニメシ、ゲット。なかなかいける。まだ、興奮状態なので、少々まずくてもそう思ったことだろう。今はなんにでも感激してしまう心境だ。
 食後、ぜひ立ち寄りたかった二股ラジウム温泉を目指して走る。
 長万部から5号線を左折すると、前後にバイクも車もいなくなる。ちなみに、この独占状態はこのあと、北海道のあちこちで経験することになる。

 二股ラジウム温泉。午前9時半には到着。
 どうやら一軒宿温泉のようだ。坂の上にある駐車場から下を見ると、古い木造の一軒家が大地にべったり張りついている。雰囲気いいなあ。適当にバイクを停めて建物に向かい、でてきた50歳くらいの宿のおばちゃんに金500円を払い、いざ北海道初温泉だなとブーツを脱ぎかけていると――
「バイク?」と、おばちゃん。
「はい」
「どこに駐めたの?」
「ええと、そこに」
「柵の中に駐めた?」
「いいえ。外のほうですけど……」
「それだと、キツネにいたずらされるから、柵の中にいれて」
「はい。……あの、どんないたずらをします?」
「食料を狙って、バイクのバッグをカジんの。それでバイクの配線をやられたりするのよ。去年も2台ほどそういうことがあったの。コードを囓られてエンジンかかんなくなって、わざわざ町から修理にきてもらったりしたんだから……」
 ――そうか。とういうことで、またブーツを履き直してバイクを柵の中に入れ直す。柵は10メートル四方くらいのものだけど、柵の高さは1・5メートルくらいしかない。キツネがその気になったら、簡単に中にはいってこれそうだ。そう思いながらも、バイクを中に入れる。柵の中にはオフ車が1台。

 風呂場に行く途中、長期滞在客の部屋が長屋のように7、8部屋ほど並んでいる。なんだか、昔の下宿屋という雰囲気だ。いや、湯治場か。開け閉てすると、ガタピシと音が立ちそうな出入り口が並んでいる。雰囲気いい。
 傾斜に沿った暗く長い廊下を突き進んでいくと、次第にむんとしてくる。温泉の熱気だろうか? 古いカーペットが敷いてある廊下をさらに下っていくと、突き当たりが脱衣所。服を脱いでいる途中から、早くも汗が吹きだしてくる。

 温泉は溶岩ドームのような中にあり、岩肌がもろに露出して、傾斜に沿って浴槽が小さな段々になっている。湯治客らしい人がちらほらいる。運転の疲れと、ろくに寝ていないこともあり、極楽、極楽と湯に浸かっていると、突然、若い女性が二人はいってくる。もちろん、水着などつけていない。場慣れしている。先客のじいちゃんと話を交わすの聞いていると、どうやら彼女たちは湯治にきているようだ。

 外にも露天風呂があったので、山の景色と渓谷の緑を眺めながら1人湯に浸かっていると、今度は別の若い女性が外にでてくる。彼女もタオル一枚のみ。景色を物珍しそうにきょろきょろしているところをみると、自分と同じ日帰りのようだ。それにしても明るい空の下、自然に振る舞うには、結構、気をつかう。この温泉と、ときおり雲間から見える紺碧の青空。ホントに気持ちいい。

 2時間ほどゆっくりして午前11時くらいには出発。厨房にいた宿のおばさんに訊いたところ、1泊5800円。昔は1部屋を雑魚寝のように多人数でつかっていたらしいが、今は他人と一緒だといやがる若い子たちもいるので、2人くらいで1部屋を貸しているという。長逗留だと料金は少し割り引きになるらしい。駐車場でオフ車できていたライダーとすこし話をする。彼はこれから江差、松前方面に向かいキャンプだという。こちらは今夜、どこにキャンプするか決めていないが、とにかく積丹半島方面を目指して出発。

 温泉で一休みしたからか、体調もすっきり、寝不足や疲れなど吹き飛んでしまい快調に走る。
 岩内から積丹半島に近づくにつれて、今日は積丹岬でキャンプしてもいいかなという心境になる。だが神威岬を過ぎたあたりから、猛烈な風。海の向こうはドス黒い雲に覆われている。どうも、こちらに向かっているような気がしてならない。風も、夏とは思えないほど冷たい。半島の岬を境にこんなに天気が違うものか。今夜だけは、ゆっくり眠りたい。まだ午後1時過ぎ。時間は十分にある。他を探そう。

 あの崩落事故のあった豊浜トンネル横を通り(道路工事のために時間差一方通行でかなりの渋滞、きょろきょろする余裕なし。トンネルが実際どうなっているのかなど、見るヒマもなし)、ニッカウィスキー発祥の地、余市を右折、しばらく走った途端に風がウソのように収まる。太陽まで顔をだしてくる。地形の関係だとは思うが、峠を境に天気が変化するような感覚だ。
 さて、どうしよう。地図を見ていると、ニセコ方面に温泉とか野営地があちこちに点在しているそうだ。とりあえず、ニセコを目指す。

 倶知安から58号をニセコの山を登る。景色がすばらしくいい。北海道上陸後、初めて景色に感動。うおーっという感じだ。ニセコパノラマラインを岩内方面に走っている途中で、対面のライダーとすれ違ったが、彼は絶叫しながら、右手を大きく振り上げくるくる回している。気持は、よーくわかる。岩内までは下りずに途中から引き返したが、もう彼と会うことはなかった。
 あとはニセコ野営場を探しまくって、右往左往する。ニセコの駅近くで場所を訊くと、「あの向こうの山と山の間あたりになるかな」
と教えられる。
 距離は10キロ以上はあるらしい。がっくり。――書き留めておいた野営場の住所はニセコなんとかとなっていたので、てっきり駅の近くと思いこんでいた。もう、冷たい缶ビールとツマミまで買ってバッグに背負っているのに……。ビールを冷やすために買った氷が背中越しに冷たくなってきて、妙に急かされる気分になる。結局、先ほどの道を引き返す。

 途中、道に迷い、りっぱなホテルの玄関前にでてしまい、ちょっと焦る。ニセコ野営場はニセコアンヌプリ(山)の頂上近く、なんのことはない、倶知安から登ってきた道をそのまま引き返したところにあったのだ。だが、テントを張っているキャンパーなどいない。人気もない。「クマ、注意」の看板だけ。ただでさえ寒いのに、夜はどうなるのだろう。ここでテントなど張ったら、かなり悲惨な目に遭いそうだ。
 ここでのテント泊、却下。
 下界にキャンプ場はないかと地図を見ると、倶知安に「旭ヶ丘公園キャンプ場」とある。結局、52号を最初に登りはじめたルートを引き返すような感じで下山。なんだか、どっと疲れる。ビールもぬるくなっていることだろう。それに日が暮れる前にはテントを張りたい。
 ようやくキャンプ場に到着。5、6基のテントに、なんだかほっとする。
「すみません。ここ、管理人さんとかいらっしゃらないんですか?」
 と、キャンプ場に備え付けのテーブルで本を読んでいた男性に訊いてみる。いないという返事。
「だまって、テント張っていいんですか?」
 OKということで、キャンプサイトの一番奥にテントを張る。
 横に川が流れているせいか、やたらに蚊が多い。テントを張る前に蚊取りセンコウに火をつけるが、あまり効き目はないようだ。集団でまとわりついてくるので、虫除けスプレーも腕、顔に吹きかける。新調したダンロップSK30テント。はじめて野外で張るわりには楽に設営(1回、家の中で試し張りしている)。それにしても、日が落ちるのが遅い。時計を見ると、もう午後8時近い。東京ならば6時半くらいの感覚か。やはり、ここは北海道なんだと再確認。

 さっきの本を読んでいた男性は5月に大工の仕事を辞め、以来、全国をバイクで旅をしているという。このキャンプ場に連泊中のようだ。バッテリー不調で、岩内のバイク屋で見てもらったところ、ジェネレーターかなにかがおかしくなっていて、その部品を待っているらしい。軽四輪で旅している男性がいて、野菜不足解消のため、荷台で野菜を育てながら旅をしている話を面白おかしく聞く。
 この時間になって、太陽がゆっくりとニセコアンヌプリを染めながら沈んでいく、その景色を肴に、一人でビールを飲む。思っていたほどには氷は溶けていない。心配していたのがバカみたいに思えてくる。500ミリリットル・ビール4本、シャケ缶で夕飯。暗くなってもキャンプ場備え付けのテーブルで1人飲んでいると、川崎からやってきた夫婦ライダーと大阪のカブ90ライダーと合流、一緒に飲み始める。その時間になると、星が満天に輝き始める。久しぶりの星空に感激。

 結局、この24時間で1000キロ近く走っているが、尻が痛くなっていないのが妙に嬉しい。以前、東京から四国まで24時間、1000キロ近く走ったときは、尻の皮がずるむけしているかと思ったくらいダメージがあったのに。今回はなんともない。……ひょっとしてあの経験で、尻の皮が厚くなったか、などと1人ほくそ笑む。
 午後10時くらいに地元の連中がどやどやとやってきて、炭をキャンプ場備え付けのカマにどかどかと放りこみ、ガスバーナーで豪快に火を点けて、カキ、ホタテなどを焼きはじめる。海で捕ってきたばかりだという。密漁じゃないかといぶかしむが、キャンプ場にいた全員におすそわけ。新鮮で、なかなかいける。
 そのあとゼファーでやってきたライダーのテント張りを手伝う。みんな、まだ飲んでいるが、疲れているせいか午後11時には寝る。夜明けの明るさに、はっと目が覚めて時計を見ると、まだ午前3時すぎ。やっぱり北海道だなと妙に感激しつつ、再び就寝。



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