前回からの続き
田園での生活
禁門の変後、朝廷は長州を「朝敵」とし、幕府に対して長州征伐の勅命を下した。
一方、長州内部では藩論が分裂しており、俗論派が政権をにぎっていた。
長州は征伐軍の要請に恭順し、なんとか征伐を免れる。
元治元年12月には高杉晋作が藩政を奪回しようと下関で挙兵した。
長州は完全に内乱状態におちいった。
そんな中、剣心は京の外れの農村で巴と二人暮らしていた。
元治元年の12月暮れ。
剣心は「検心」と名乗り、薬屋として生活。
血塗られた生活からはすっかり遠ざかっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/1f/2ca39814f8c8310a93fc51b0ca893aa8.jpg)
村の子供からは面倒見のよいお兄ちゃんとして慕われる日々。
貧農に生まれ早くに親兄弟を亡くし、10歳からは飛天御剣流の
苛烈な修行の日々を送り、14歳から現在までは人斬りとしての
血塗られた道を歩んできた剣心にとって、この農村での5ヶ月は
「幸せ」と呼べるものであった。
剣心はこのところ、よく笑うようになっていた。
せめて新年を迎えるまでは、この日々が続けばいい。
そう願っていた。
巴の過去
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/9f/658f087c607118e5b06b23514756b05f.jpg)
そんな中、巴の弟である「縁(えにし)」が剣心と巴の前に姿を現す。
自分たちの居場所を知っている者がいることに不審を覚える剣心。
どうやら穏やかに新年を迎えることはできないかもしれなかった。
縁来訪に動揺を覚えたのは巴も同じであった。
巴は剣心に自分の過去を話すことを決意する。
巴は江戸の御家人の娘であった。
裕福ではないが、貧しくもなく家族と平和に暮らしてきた。
そして、巴には許婚がいた。
相手は同じ御家人の家の次男で幼なじみであった。
文武はからきしだが誰にも優しく、努力の人であったという。
しかし、その許婚は京都見廻組に参加し、動乱の京都で命を落としたのだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/b5/2855e6a721295730dc62f2be2262b314.jpg)
巴は自分の過去を告白し、剣心の胸で泣いた。
剣心は巴の過去を受け止め、自らの過去も巴に語った。
そして、ひとつの悟りに達する。
飛天御剣流がいかな超越の剣でも、時代を変える力にはならない。
まして、人の幸せの全てを担うことなど出来はしない。
出来るのは、「この目に映る人々の幸せを一つ一つ守ること」であると。
剣心は、新時代が来たら人を斬ることなく守る道を探すことを決意する。
同時に、手にかけた人たちの幸せを奪った罪を背負い、償う道を探すことも。
そして、巴が動乱で一度は失った幸せを、今度は自分が築き、守り抜くことをも。
巴は自分が剣心を愛していることを悟り、微笑んだ。
次の日の朝、巴は剣心のもとを去る。
十字傷
巴は、幕府の隠密集団「闇乃武(やみのぶ)」が放った
緋村抜刀斎の弱点を探るための諜報員であった。
が、剣心を愛してしまった巴は偽りの弱点を報告をする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/c2/5b04094f727bd4c489f20adf12ac8525.jpg)
しかし、闇乃武の狙いは巴自体を抜刀斎の弱点に仕立て上げることだった。
抜刀斎を「結界の森」に誘い出し始末するために巴は利用されていたのだった。
巴を奪われたと思った剣心は怒り、結界の森に足を踏み入れる。
その森は、まさに結界であった。
襲い掛かる闇乃武の刺客たちに、剣心の六感は次々と奪われていく。
聴覚も視覚も狂わされたまま、満身創痍の剣心は闇乃武頭領である
「辰巳(たつみ)」のもとに辿り着くが、すでに剣心はまともに
闘える状態ではなくなっていた。
剣心は既に勝機なしと悟り、狂わされた視覚をあえて断ち、
辰巳に相討ち覚悟の特攻をしかける。そして―!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/d1/28de94955ffdde42d217f3af0edef016.jpg)
剣心の斬撃が繰り出される一瞬に、巴は辰巳の身体を押さえていた。
視覚を断ったままの剣心は巴に気付かず、巴の身体ごと辰巳を斬り伏せたのだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/3c/90656705b1209edcd7401fe39f49ad07.jpg)
巴の手から落ちた短刀が剣心の左頬に傷を付ける。
かつて付けられた傷の上から、新たな傷が剣心に刻まれた。
剣心の慟哭の中、巴は微笑みながら息をひきとったのであった。
後日、巴の日記より、巴の許婚の名を剣心は知ることになる。
「清里明良(きよさとあきら)」
それは、剣心の左頬に最初に傷を付けた相手の名であった。
そして、剣心が斬り殺した相手の名でもあった。
巴の許婚を殺したのが自分であったことに衝撃を受ける剣心。
思わず、頬の傷に手をやる。
巴の短刀と、その許婚により付けられた傷は十字となって
剣心の罪の証として左頬に深く刻み込まれていた・・・。
遊撃剣士として
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/28/0b5860658f3eca87afdf7c04de0d4bb8.jpg)
年が明け、田園を訪れた桂小五郎により、長州の人斬り稼業が
「志々雄真実(ししおまこと)」という人物に引き継がれたことが告げられる。
剣心は、これからは「遊撃剣士」として新時代を切り開く最前線に立って
欲しいのだという。
心に深い傷を負った剣心だったが、今ここで刀を捨てたらこれまで自分が
殺めてきた命すべてが本当の無に帰してしまう、
と新時代が来るまでは剣を振るうことを決意する。
そして、京の町に再び緋村抜刀斎の姿が現われる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/dd/739226d5187a3443ddc185bb31772fb1.jpg)
幕末の動乱期に再び姿を現した剣心は、宿敵となる新選組隊士
斉藤一と幾度か刃を交えた。
新選組隊士とでは、他に沖田総司、永倉新八とも交戦しているが
いずれも決着はつかずじまいであった。
そして、慶応4年(1868年)。剣心18歳。
新時代に生きる
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/d1/e8d6e063f1690b647ecbdcea5583813a.jpg)
戊辰戦争の第一の役である鳥羽・伏見の戦いに参戦した剣心は、
この戦いを最後に刀を置くことを決意する。
この戦いの中、剣心は巴の弟・縁の姿を目撃した。
その髪は真白に染まり、まるで幽鬼のようであったが、
すぐに縁は視界から消えた。
剣心が縁と再会するのはこれより10年後となるが、それはまた別の話。
鳥羽・伏見の戦い終結後、剣心は桂小五郎から許可をもらい、志士を抜けた。
すでに新時代の到来は目前に迫っていた。
剣心は、かつて巴に語った「新時代が来たら人を斬ることなく守る道を探す」
ことを実践しようとしていたのだった。
刀を持たずに旅立とうとする剣心に、一振りの刀を渡した人物がいた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/09/710589da5b86e5ceda8456814d0aece3.jpg)
新井赤空(あらいしゃっくう)。
維新志士たちの刀を打っていた刀匠で、人斬り時代の剣心の刀も
この人物の作であった。
その人物から新時代の幕開けに渡された刀は、
峰と刃が通常の刀とは逆に付いた「逆刃刀(さかばとう)」であった。
人を斬ることなく、新時代に生きる人を守る道を探す剣心にとっては
うってつけの刀であった。
剣心はこれより、全国を放浪して目に映る人々を助ける
流浪人(るろうに)としての人生を歩むこととなる。
次回へ続く
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るろうに剣心 明治剣客浪漫譚 追憶編 ディレクターズカット(DVD)
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禁門の変後、朝廷は長州を「朝敵」とし、幕府に対して長州征伐の勅命を下した。
一方、長州内部では藩論が分裂しており、俗論派が政権をにぎっていた。
長州は征伐軍の要請に恭順し、なんとか征伐を免れる。
元治元年12月には高杉晋作が藩政を奪回しようと下関で挙兵した。
長州は完全に内乱状態におちいった。
そんな中、剣心は京の外れの農村で巴と二人暮らしていた。
元治元年の12月暮れ。
剣心は「検心」と名乗り、薬屋として生活。
血塗られた生活からはすっかり遠ざかっていた。
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村の子供からは面倒見のよいお兄ちゃんとして慕われる日々。
貧農に生まれ早くに親兄弟を亡くし、10歳からは飛天御剣流の
苛烈な修行の日々を送り、14歳から現在までは人斬りとしての
血塗られた道を歩んできた剣心にとって、この農村での5ヶ月は
「幸せ」と呼べるものであった。
剣心はこのところ、よく笑うようになっていた。
せめて新年を迎えるまでは、この日々が続けばいい。
そう願っていた。
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そんな中、巴の弟である「縁(えにし)」が剣心と巴の前に姿を現す。
自分たちの居場所を知っている者がいることに不審を覚える剣心。
どうやら穏やかに新年を迎えることはできないかもしれなかった。
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巴は剣心に自分の過去を話すことを決意する。
巴は江戸の御家人の娘であった。
裕福ではないが、貧しくもなく家族と平和に暮らしてきた。
そして、巴には許婚がいた。
相手は同じ御家人の家の次男で幼なじみであった。
文武はからきしだが誰にも優しく、努力の人であったという。
しかし、その許婚は京都見廻組に参加し、動乱の京都で命を落としたのだった。
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巴は自分の過去を告白し、剣心の胸で泣いた。
剣心は巴の過去を受け止め、自らの過去も巴に語った。
そして、ひとつの悟りに達する。
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まして、人の幸せの全てを担うことなど出来はしない。
出来るのは、「この目に映る人々の幸せを一つ一つ守ること」であると。
剣心は、新時代が来たら人を斬ることなく守る道を探すことを決意する。
同時に、手にかけた人たちの幸せを奪った罪を背負い、償う道を探すことも。
そして、巴が動乱で一度は失った幸せを、今度は自分が築き、守り抜くことをも。
巴は自分が剣心を愛していることを悟り、微笑んだ。
次の日の朝、巴は剣心のもとを去る。
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巴は、幕府の隠密集団「闇乃武(やみのぶ)」が放った
緋村抜刀斎の弱点を探るための諜報員であった。
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巴を奪われたと思った剣心は怒り、結界の森に足を踏み入れる。
その森は、まさに結界であった。
襲い掛かる闇乃武の刺客たちに、剣心の六感は次々と奪われていく。
聴覚も視覚も狂わされたまま、満身創痍の剣心は闇乃武頭領である
「辰巳(たつみ)」のもとに辿り着くが、すでに剣心はまともに
闘える状態ではなくなっていた。
剣心は既に勝機なしと悟り、狂わされた視覚をあえて断ち、
辰巳に相討ち覚悟の特攻をしかける。そして―!
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視覚を断ったままの剣心は巴に気付かず、巴の身体ごと辰巳を斬り伏せたのだった。
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かつて付けられた傷の上から、新たな傷が剣心に刻まれた。
剣心の慟哭の中、巴は微笑みながら息をひきとったのであった。
後日、巴の日記より、巴の許婚の名を剣心は知ることになる。
「清里明良(きよさとあきら)」
それは、剣心の左頬に最初に傷を付けた相手の名であった。
そして、剣心が斬り殺した相手の名でもあった。
巴の許婚を殺したのが自分であったことに衝撃を受ける剣心。
思わず、頬の傷に手をやる。
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剣心の罪の証として左頬に深く刻み込まれていた・・・。
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年が明け、田園を訪れた桂小五郎により、長州の人斬り稼業が
「志々雄真実(ししおまこと)」という人物に引き継がれたことが告げられる。
剣心は、これからは「遊撃剣士」として新時代を切り開く最前線に立って
欲しいのだという。
心に深い傷を負った剣心だったが、今ここで刀を捨てたらこれまで自分が
殺めてきた命すべてが本当の無に帰してしまう、
と新時代が来るまでは剣を振るうことを決意する。
そして、京の町に再び緋村抜刀斎の姿が現われる。
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幕末の動乱期に再び姿を現した剣心は、宿敵となる新選組隊士
斉藤一と幾度か刃を交えた。
新選組隊士とでは、他に沖田総司、永倉新八とも交戦しているが
いずれも決着はつかずじまいであった。
そして、慶応4年(1868年)。剣心18歳。
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戊辰戦争の第一の役である鳥羽・伏見の戦いに参戦した剣心は、
この戦いを最後に刀を置くことを決意する。
この戦いの中、剣心は巴の弟・縁の姿を目撃した。
その髪は真白に染まり、まるで幽鬼のようであったが、
すぐに縁は視界から消えた。
剣心が縁と再会するのはこれより10年後となるが、それはまた別の話。
鳥羽・伏見の戦い終結後、剣心は桂小五郎から許可をもらい、志士を抜けた。
すでに新時代の到来は目前に迫っていた。
剣心は、かつて巴に語った「新時代が来たら人を斬ることなく守る道を探す」
ことを実践しようとしていたのだった。
刀を持たずに旅立とうとする剣心に、一振りの刀を渡した人物がいた。
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新井赤空(あらいしゃっくう)。
維新志士たちの刀を打っていた刀匠で、人斬り時代の剣心の刀も
この人物の作であった。
その人物から新時代の幕開けに渡された刀は、
峰と刃が通常の刀とは逆に付いた「逆刃刀(さかばとう)」であった。
人を斬ることなく、新時代に生きる人を守る道を探す剣心にとっては
うってつけの刀であった。
剣心はこれより、全国を放浪して目に映る人々を助ける
流浪人(るろうに)としての人生を歩むこととなる。
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