よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

体臭・口臭は健康のバロメーター

2022-06-13 14:24:10 | 健康・病気
 最近、「加齢臭」、「ミドル臭」、「スメハラ=スメルハラスメント」など体臭にまつわる「臭い」が話題になり、対策に悩んでいる方もおられると思います。一方異性!?の放つ魅力的な「匂い」もあります。今回は体臭について考えてみます。

 嗅覚は、五感(その他に視覚、聴覚、触覚、味覚)のなかでも最も主観的な感覚です。
 「臭い」は、揮発性化学物質が鼻腔奥の天蓋部粘膜にある嗅細胞を刺激し、それが電気信号として嗅神経を伝わり嗅球、扁桃体、視床下部、大脳皮質嗅覚部などを経由しながら情報処理され認識されます。すなわち「臭い」は脳で認識していることになり、人種、地域、生活環境、経験などによって培われた感覚であり、人それぞれ違うことになります。したがって、ある人にとっては、「心地よい匂い」も別な人には、「不快な臭い」と感じられたりします。

 さて体臭には、大きく分けて「皮膚」からと「口」からの二つがあります。

 「皮膚」から分泌される臭いの原因として、汗腺と皮脂腺があります。
汗腺はエクリン腺とアポクリン腺に分けられますが、エクリン腺は、全身の皮膚に分布しており、いわゆる玉のような汗で99%が水分で通常は臭うことはありません。一方、アポクリン腺は、脇、陰部、肛門周囲、乳首に分布しており、そこから出る汗は、乳白~乳黄色で栄養成分が豊富です。したがって時間が経つと皮膚常在菌により分解され発酵臭を発するようになります(腋臭など)。
 皮脂腺は、手のひらや足底を除く全身の皮膚に分布し、脂肪酸やトリグリセリド、ワックスエステルから構成される皮脂を分泌します。分泌物は、汗と混合し乳化して表皮を保護する働き(殺菌、保湿など)があります。
ストレス時には、体内から発する活性酸素により酸化され臭いの原因になります。俗にいう「加齢臭」は、この皮脂の酸化(パルミトオレイン酸が酸化されノイナールとなる)が原因です。「ミドル脂臭」は、脂肪酸が酸化されたペラゴン酸、ジアセチルが原因とされています。 

 「口」からの臭いは、特に「口臭」と呼ばれますが、2割が呼気からで残り8割が口腔内の問題と考えられています。
呼気からの臭いは、肝臓で解毒できなかった毒素や腸管で発生したガスが血流にのり、肺でのガス交換の際に排出されることによります。
 口腔内からの臭いの主因は、35歳以上の日本人の8割が罹患していると言われ歯周病です。通常口腔内には、700種、2000億個の常在菌が棲んでいます。口腔環境が不良であると、歯に歯垢が形成され、その周囲に細菌が増殖し慢性炎症を起こしているのが歯周病です。最近、歯周病は糖尿病や認知症などの疾患にも密接に関係していることがわかり、その対策が重要になってきています。
さて、病的な「口臭」には、①硫黄のようなにおい(虫歯)、②甘酸っぱいにおい(ケトン臭 飢餓、糖質制限食)、③腐った卵のようなにおい(胃腸障害)、④カビのようなにおい(肝機能障害)、⑤アンモニアのにおい(末期肝障害、腎機能障害)などが知られています。

 ここで、体臭が不快な臭いになりやすいライフスタイルをまとめます。
Ⅰ.腸内環境が悪く食物が腐敗する
 ① 早食い、胃が悪い②食物線維が不足③便秘④肉食 
Ⅱ.臭い分子が肝臓で解毒できず、血液をめぐり、呼気、汗から排泄される
 ⑤アルコール、肝機能が悪い⑥糖尿病、メタボ⑦中性脂肪が多い 
Ⅲ.汗腺や皮脂腺からのにおいが悪化する
 ⑧汗をかく習慣がない⑨ストレスが多い(精神的発汗 変な汗)
 ⑩慢性的に疲れている(アンモニア臭)

 では、「体臭」対策としてどのようなものがあるでしょうか。
 当然、上記のライフスタイルを避けるため、食生活改善、適度な運動、十分な休息が必要です。
 本来、健康な皮膚には個々に合った常在菌がバランスよく棲んでおり、このバランスを崩す石鹸やシャンプーなどを用いた頻回な洗浄はかえって良くないかもしれません。
 歯みがきの見直しも必要です。私たち自らが分泌する唾液は、一日1~1.5リットル分泌され、食物の消化や嚥下を助けることはもちろん、①洗浄作用②殺菌作用、細菌の共凝集抑制作用③歯表面のコーティング作用④口腔内pH調整作用⑤歯の再石灰化作用などがあり口臭予防に重要な働きをしてくれます。一方、歯周病菌は、1時間毎に2倍に増殖し、8時間後からバイオフィルム(菌膜)を作り歯垢を形成すると考えられています。したがって、十分は唾液分泌があれば、毎食後すぐに歯を磨く必要はなく(歯磨き粉も必要なし)、眠前と起床時の2回の歯磨きで十分です(ただし、磨き残しがないように)。

 体臭が「臭う」ことは、「他人に不快」で「自分に不健康」と認識し、健康管理のバロメーターとして気にしたいと思います。

 
 参考文献:桐村里紗『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』光文社新書

がんを抑える食事療法とは

2022-04-14 16:46:13 | 健康・病気
 前回、末期がん患者の代替療法について考察しました。今回は、その中の一つで重要な食事療法について掘り下げます。

 がん細胞には次のような特殊性があります。
① がん細胞は嫌気性糖産生を利用して分裂増殖する
嫌気性糖産生は、酸素を使いミトコンドリアを介する糖産生より100倍速くエネルギーを産生することができる(効率は悪い)。正常細胞より3~8倍ブドウ糖を消費する。
② がん細胞が分裂増殖していく時に必要な原料を作り出す
ブドウ糖を代謝する過程で生じる様々な分子を材料にがん細胞をつくる。
③ 次世代の細胞をつくるため化学反応を調整する
がん細胞は塩分を取り込み酸を出し、酸化還元反応を調節して分裂しやすい環境をつくる。
 すなわち、がん細胞には、多量のブドウ糖を消費・代謝し、周辺環境を酸性化する性質があります。
 
 したがって、がんに対抗する治療戦略としては、
① がん細胞に活動のための兵糧をなるべく与えない
日々の食事で必要量以上のブドウ糖を摂らない。正常細胞は脂肪を分解してできるケトン体をエネルギーにできる(がん細胞は原則できない)。
② がん細胞周辺の微細環境を酸性からアルカリ性に変える
塩分を控える。
③ がん細胞の成長促進のための環境や物質を与えない。
糖質を制限する(ケトン食の活用)。乳製品を摂らない。
④ がん発症の根本原因とされる慢性炎症を鎮める。
肥満の解消。NF-kBを抑えるハーブ類に含まれるパルテノライドを摂る。
⑤ 次世代の細胞をつくるための脂肪酸を合成させない。
ω-6脂肪酸はがん細胞の分裂および慢性炎症を促進する。脂肪酸合成酵素を阻害する(トリテルペノイド)を摂る。
⑥ 免疫力を高めて「がん」の発症や成長を抑制する。
丸山ワクチン(丸山ワクチンの濃度を高めたアンサー20)、キノコ類(βDグルカン)、海藻(フコイダン)等。ビタミンA・C・D・E、亜鉛

 具体的な食事術を箇条書きにしてみます。
 大原則:植物性の食材を中心に、未精製、未加工のものを丸ごと食べる
 基本ルール
・炭水化物は未精製のものを少々  玄米、全粒粉パンなど
・塩分の摂取を控えめに   重曹の服用
・たんぱく質は、植物性のものや青魚から  卵はOK
・野菜、果物、キノコ類をたっぷり  野菜400g以上/日
・脂質はω-9系(オリーブ油)、ω-3系(魚油、亜麻仁油、えごま油)、
中鎖脂肪酸(MCTオイル)を摂取 人工油の摂取はご法度
・乳製品を摂らない
・ハーブの活用 ウメテルペン(梅エキス)夏白菊(フィーバーフュー茶)

 これらがうまく出来ているかの評価する検査値目標として、
・尿PHを7.5~8以上に維持する
野菜、果物はよい(肉、魚、乳製品、穀類は酸性)
塩分は極力控える(カリウムをとる 尿中排泄量がナトリウムの11倍以上に
なるとよい)
・CRPを0.05以下に維持する
・好中球/リンパ球比を1.5以下に維持する
 白血球を5000以上、リンパ球2000程度
・腫瘍マーカーを注意深く監視する
・血糖値(HbA1cを5.8以下)、アルブミン値(4.0以上)

 古川先生は、個々の病態に応じて糖質制限を強化する、ケトン体+EPA+蛋白質中心の免疫栄養ケトン食を提唱しています。さらに効果を高めるため、プチ断食+高強度運動(ミトコンドリアの強化)。基礎体温を上げる(がん細胞は低温を好む、足湯が有効)。抗がん剤の副作用軽減(水素水、高濃度ビタミンC点滴)。睡眠の質を上げる。などの併用を勧めています。

 上記の食事療法を実践し、検査値で評価して、体をがんの棲み難い環境にすることができれば、たとえすべてのがん細胞が死滅しなくても増殖を止めることができ、かんと共存することができます(寛解)。
 また、この食事法は、がんの予防にも効果がありますし、肥満気味で生活習慣病が気になる方にもおすすめです。実行可能なところだけでも参考にされたらいかがでしょうか。

参考文献:ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』プレジデント社
和田洋巳 『がんを生き抜く最強ごはん』 毎日新聞出版 
古川健司 『ケトン食ががんを消す』   光文社新書

末期がんに有効な代替療法とは  ~がんサバイバーから学ぶ~

2022-02-15 15:14:22 | 健康・病気
 日本人の二人に一人は罹患するといわれる「がん」。現代においては、進行がんでさえ治癒率は飛躍的に向上しています。しかし、手術、放射線、抗ガン剤など最新治療によっても治癒が望めない末期がん状態の患者もおられます。
今回は、そんな状況から奇跡的に回復した「がんサバイバー」に共通する代替療法についてとりあげます。

彼らは、下記の身体三位一体を考え行動しています。

抜本的に食事を変える
 少しずつ砂糖・肉・乳製品・精製食品を減らす。徐々に野菜・果物の比率を増やし半分をめざす。有機食品に変える。起床時に浄水器の水にレモン果汁を加えてコップ1杯飲む。

治療法は自分で決める
受け身にならず自分で行動する。自分の意思で人生を変える。他人の批判に屈しない。質問したり、持ち込んだ資料を嫌がらない主治医を見つける。リサーチの方法を知っておく。伴走してくれるパートナーを見つける。

直感に従う
 身体は何が必要か知っている。直感にアクセスする方法はさまざま。起こすべき変化もさまざま。
 あえて何もしないリラックス時間を作る。直感を伝達する脳の大脳辺縁系にアクセスする方法(イメージ療法のためのCD、瞑想、自分で問いかけしながら日記を書く、夢を活用)

ハーブとサプリメントの力を借りる
消化を助けるサプリ(消化酵素、プロおよびプレバイオティクス)。
体内を浄化するサプリ(抗真菌作用オリーブの葉、トクサ、抗寄生虫効果黒クルミの殻、ニガヨモギ、抗菌、抗ウイルス作用ニンニク、オレガノ油、肝臓の排毒作用マリアアザミ、タンポポの根)
免疫力を強化するサプリ(ハーブ、ビタミン、キノコ、魚油、微量ミネラル)

抑圧された感情を解き放つ
思考(それに伴う感情の変化)について日記に書き留める。感情的になった瞬間のリストをつくる。毎日、「許す」練習をする。ストレス・マネジメントのコースを受講する。治療者かセラピストに会う。睡眠療法など幼少期トラウマなど深く埋もれた感情を解き放つ。

より前向きに生きる
自分・他者への愛、他者からの愛、無条件の愛 などの愛、喜び、幸福を感じると身体を治癒させるセロトニン、オキシトシン、ドーパミン、エンドルフィンが分泌される。良い感情も悪い感情も十分感じ尽くし、手放す。
一日の始めに笑う、感謝の気持ちをもつ。不安を助長するメディアや娯楽に注意する。一緒にいて楽しい人と付き合う。活動的になる。寝る前に確認する。

周囲の人の支えを受けいれる
「孤独感」は治癒の敵。身体の触れ合いは治癒を促す。
 大切な人に電話をかける。がん患者のグループに参加する。

自分の魂と深くつながる
人間の身体は、神のエネルギーの容器。再び神のエネルギーと繋がることで病気が治癒にむかう。日々の実践が大切。思考を止める。
深く呼吸する。外を歩く(「○○に感謝する」とマントラを唱える)。イメージや瞑想誘導音楽を使う。毎日の祈り。グループに参加する。

「どうしても生きたい理由」を持つ 
心の底からの自信をもつ。心が身体を導いていく。自分の使命を見つける。
何歳まで生きたいか、紙に書いてみる。自分にとって理想の弔辞を書いてみる。生きる喜びになっていることをリストに書き出す。
「何としても死にたくない」との思いではなく、「できる限り長く生きたい」という欲求が大切。
「なぜ生きたいと思うのですか?」「残りの人生でどんなことを体験したいですか?」こう考える時に、身体に爽快な生命エネルギーが沸き上がる。

 以上の9項目を著したケリー・ターナーは、「エンパワーメント」と呼ばれる  一人ひとりが生きる力を自らの内から引き出すことが最も重要と語っています。
 そして、「がんサバイバー」は自己変容を歓迎する姿勢をもっているのです。

参考文献:ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』プレジデント社

「副腎疲労」とは? ~疲れのたまった人は要注意~

2021-12-28 15:29:38 | 健康・病気
 現代社会では、身体的、精神的あるいは環境的など様々なストレスに上手に付き合っていくことが必要ですが、この時に重要な働きをする臓器が副腎です。

 副腎は、体がストレスに対処し、生き延びるのを助ける役割を果たすために様々なホルモンを分泌します。副腎髄質からは、呼吸循環に関わるアドレナリンやノルアドレナリン、副腎皮質からは、体液バランスに関わるアルドステロンや性ホルモン、コルチゾールなどが分泌されます。中でもコルチゾールは、抗ストレスホルモンと呼ばれ、①血糖値を正常化させる、②抗炎症作用、③白血球の制御、④循環器系への効果、⑤中枢神経系への効果などを介して、ストレス下の生理機能の恒常性を保つ働きをしています。このホルモンは、視床下部―脳下垂体―副腎で厳密に制御され体をストレスから守ってくれますが、ストレス過剰では枯渇してしまいストレスに対応が出来なくなってしまいます。この状態を「副腎疲労」と言います。
 ストレス対応能力には個人差が多いのですが、この能力は副腎のコルチゾール分泌能力に大きく左右されると言うこともできます。

 「副腎疲労」になると、朝起きるのがつらい、疲れがとれない、塩辛いものが無性に欲しくなる、体がだるい(エネルギー不足)、性欲の低下、病気やケガからの回復時間に時間がかかる、人生のすべてが虚しい、カフェインがないと仕事ができない、思考が定まらない、記憶があやふやなど様々な症状がでてきます。
 「副腎疲労」の原因となる生活習慣として、①睡眠不足、②栄養バランスの悪い食事、③疲労時に食べ物や飲み物を刺激剤として摂取すること、④疲れていても夜更かしすること、⑤長期間決定権のない立場や勝ち目のない状況におかれること、⑥完璧を目指すこと、⑦ストレス解消法がないこと、などがあります。

 さて、「副腎疲労」はどのように診断するのでしょうか。実は、副腎機能低下が重度(アジソン病)であれば、臨床症状も明らかで、血液検査などで比較的容易に診断できます。しかし、「副腎疲労」は一般の尿・血液検査、画像検査では異常はなく、医者からも「検査上、異常は見つかりません。疲れがたまっているようですから少し休養して下さい。」と言われることが多く、正確に診断できていないことがほとんどです。
 「副腎疲労」に関する質問表や一日のコルチゾール分泌能力を評価する唾液副腎ホルモン検査、24時間尿中コルチゾール検査などがありますが、一部の専門医で行われているに過ぎません。

 では、「副腎疲労」から抜け出し、副腎の健康を取り戻す方法について考えてみましょう。
 まずは、生活習慣の改善です。
① エネルギーを消耗するする生活状況(特定の人物・集団、特定の環境・建物、職場・家庭など)を排除したり改めたりする
② 内面のストレスを軽減する(状況についての認識を異なる枠組みで見る=リフレーミング)
③ リラクゼーション(瞑想法、ヨガ、太極拳、気功、深呼吸など)
④ 自由時間と休憩(楽しむことが重要)
⑤ 深い睡眠(室温は少し涼しく、必要ならサプリ、適度な昼寝)
⑥ 笑い、楽しみながらの運動

 次に、食事に関しては、エネルギー不足を解消するために栄養バランスのよい食事を規則正しくとることが基本です。低血糖発作を起こさないためには、急激に血糖を上げる砂糖・甘いものは避けるべきです。塩分は身体が欲している限り適量を積極的に摂取する必要があります。カフェイン・アルコール・グルテン(小麦製品)・乳製品・加工食品・揚げ物・アレルギー食品は避け、豆類・ナッツ・海藻・野菜・魚介類・きのこ・いも類を摂りましょう。
 サプリメント・薬としては、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、マグネシウム、亜鉛、ハーブ(甘草、アシュワガンダ、朝鮮人参、エゾウコギ、生姜、イチョウ葉)、副腎細胞エキス、ホルモン補充(コルチゾール、DHEA、プロゲステロン、プレグレノロン)などがあります。

 さらに、「副腎疲労」になっている人は高率に腸内環境も悪化しており、乳酸菌、消化酵素、抗炎症サプリ、抗真菌薬、真菌線維消化酵素、ビタミンDなども効果があります。
 もう一つ気をつけたいのは、日本人に多いと言われる重金属(特に水銀)中毒です。体にいい油と言われるω3系不飽和脂肪酸(EPA,DHA)は魚に含まれていますが、マグロなど大型魚には重金属も蓄積されています。水銀中毒は、「副腎疲労」の原因の一つで、疲労感、うつ、食後の腹部膨満感などが代表的症状です。解毒するには、暴露量を減らす、細胞内グルタチオン濃度を上げる、DMSAやαリポ酸などのデドックスサプリ、野菜(ブロッコリー、カリフラワー、パセリ、セロリ、パクチー)、抗酸化治療があります。
 これらの治療は、軽症であれば自分でできますが、重症な場合は、専門医の適切な助言や処方を受ける方が回復への早道になります。
 

参考文献:ジェームズ・L・ウイルソン『アドレナル・ファティーグ』中央アート出版社
杉岡充爾『すぐ疲れるが治る本』大和書房
     宮澤賢史『副腎疲労~私の治療法~』分子栄養学実践講座

アルツハイマー型認知症 ~最新の研究と治療~

2021-11-02 15:09:08 | 健康・病気
 「最近、物忘れがひどくなった」と感じていらっしゃいませんか?かく言う私も、「名前がでてこない」「物覚えが悪い」と感じることが頻回にあります。
無論、多くの場合、加齢による生理的な脳活動の衰えで病的なものではありません。しかし、日常生活に支障がでる(介護が必要となる)ほどの記憶障害をきたすと認知症と診断されます。今回は、65歳以上の日本人の有病率15%と推定され、認知症の7割弱を占めるアルツハイマー型認知症を取り上げます。

 アルツハイマー型認知症は、大脳皮質や海馬などに老人斑(アミロイドβ蓄積)神経原線維変化(タウ蛋白増加)を病理学的特徴とする変化がおこり、神経細胞死、シナプス減少、神経伝達物質(アセチルコリン)低下により、記憶と学習の障害を主体とする病気です。
緩徐進行性の認知機能低下があり、頭部MRIで脳の萎縮やSPECTで脳血流低下、アミロイド沈着などが確認されれば診断されます。治療としてアセチルコリンを増やすコリンエステラーゼ阻害薬、グルタミン酸過剰放出を抑制するNMDA受容体拮抗薬の内服や認知刺激、運動療法、音楽療法など様々の非薬物治療が行われています。
 ただ今までの治療では、進行を遅らせることはできても治すことは困難でした。過去数十年にわたり、世界中の研究者が治療薬を開発してきましたが、未だに画期的な治療薬は見つかっていません。その理由として、アミロイドβを分解・除去すれば病気が治るというほど単純でないことがあります。
以下に最新の研究、治療に対する考え方の進歩について紹介したいと思います。

 アミロイドβが生成されるのには、三つの原因があることがわかってきました。
感染性またはトランス脂肪、糖毒性、腸漏れなど非感染性による炎症
栄養素、ホルモン、脳細胞の栄養の低下あるいは不足
毒素(金属、カビなど生物毒素)
 これらに対する脳の防御反応として、神経突起の成長とシナプス維持を促し、記憶の形成と維持をサポートするためアミロイド蛋白前駆体(APP)が脳神経細胞から出現します。このAPPが、その時の細胞周囲の環境により2つに切断されればアミロイドβはできず成長する方向にすすみ、4つに切断されればアミロイドβが生成され脳細胞は分解される方向にすすみます。尚、分解されることも脳の自浄作用として必要なものです。しかし、この成長と分解バランスが崩れ、アミロイドβが過剰に蓄積されると脳神経細胞は破壊されアルツハイマー病が進行します。
 またはアルツハイマー病の遺伝的危険因子(ApoE4)もわかってきました。日本人の9%がApoE4遺伝子を保有していますが、この遺伝子を持たない人のアルツハイマー症発症リスクは9%ですが、ひとつ保有している人のリスクは30%、2つ保有している人のリスクは50%以上になると言われています。

 アルツハイマー病の原因は上記のように多彩ですが、自分がどのタイプにあてはまるかがわかれば、それに対応することにより、予防でき、進行を止めることも、回復させることもできるようになります。

 最近注目されているのは、感染性炎症をおこす歯周病です。代表的な歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌とその菌が分泌するジンジパインというたんぱく質分解酵素がアルツハイマー病患者のアミロイドβ蓄積部から検出されました。通常であれば、脳血管関門と呼ばれる防御機構により脳は、細菌やウイルスから守られていますが、PG菌はその関門を突破し、脳に炎症を起こすことがわかってきました。現在ジンジパイン阻害薬の臨床治験が行われています。また歯周病がひどくなれば、歯が脱落し、しっかり噛めなくなります。これも脳血流障害の原因となり認知機能を低下させます。
 糖尿病(高インスリン血症と高血糖)は、非感染性炎症を起こす最も重要な危険因子です。インスリンを分解するインスリン分解酵素(IDE)はアミロイドβの分解も行うため、インスリンが慢性的な高値の状態ではアミロイドβの分解ができなくなります。また高血糖が続くとAGEとよばれる終末糖化産物が産生され慢性炎症の原因になります。この状況を打開するには、体を軽いケトーシス状態にする必要があります。低炭水化物食、適度な運動、12時間の絶食を組み合わせる、中鎖脂肪酸オイル、オリーブオイル、アボカド、ナッツなどの不飽和脂肪を摂取することが有効です。
 栄養素としては、ビタミンB群、D、E、亜鉛、マグネシウム、ω3脂肪酸、クルクミン、アシュワガンダ、レスベラトロール、プロバイオティクス(いも類、たまねぎ、にんにくなど)、ブロッコリー、ハーブ、卵などがあり、食事やサプリとして積極的に摂りいれたいものです。
その他、適度な運動、十分な睡眠、過剰なストレスを避ける(十分な休養)、脳トレプログラムなども必要です。
 マグロ、メカジキなどの大型魚には神経毒である水銀が蓄積されているため、過剰摂取は禁物です。また歯科治療でアマルガムの詰め物がしてある場合は、速やかに撤去するべきです。解毒プログラムも効果があります。

 出来ることを今のうちから実行し、予防することが最善策と思います。

参考文献:日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』
デール・プレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』ソシム株式会社