さて今回は、生活習慣病の治療のもう一つの柱である運動療法についてお話したいと思います。
人以外の生物は、動けなくなるということはすなち、“餌がとれない=死”を意味しています。しかし現在の日本人は、動けなくても食べることができるため死ぬことはありません。しかし、運動は、①摂取するカロリーが基礎代謝量(呼吸、循環など安静にしていても生命活動に必要なエネルギー量)以上の場合に、その余分なエネルギーを消費する、②心肺機能を高める、③気分を高揚するなどさまざまな重要な役割を担っています。
運動療法の柱は、2本あります。一つは有酸素運動で、もう一つは筋力トレーニングです。
有酸素運動というのは、酸素を十分取り込みながら持続的な運動を行い、体内に脂肪として蓄えられたエネルギーを燃焼させる運動のことです。代表的な運動として、散歩、ジョギング、サイクリング、登山、水泳などがあります。例えば、体重60kgの人が、1時間散歩すると125Kcal消費します(水泳だと440kcal)。一般的には20分以上連続して行なうことが、体脂肪燃焼には効果的だと考えられています。
次に筋力トレーニングですが、これは筋肉量をアップすることにより基礎代謝を上げる効果があります(1kg筋肉が増えると50Kcal基礎代謝が増えます)。基礎代謝が上がると安静時のカロリー消費量が増え、食事で取り過ぎたカロリーが体に脂肪として蓄積されにくくなります。具体的には、自宅で腹筋や腕立て伏せをしたり、ジムで本格的に鍛えるということになります。
また最近では、運動とわざわざ畏まらなくても、日常生活での家事、動作をすることでもある程度の効果があると考えられています(非運動性行動熱発生 NEAT)。
以上、運動にもいろいろありますが、基本は歩くことです。「老化は足から」という言葉もありますが、筋肉の2/3が下半身にあるためエネルギー消費や筋力アップに効率的です。また足は第二の心臓といわれるように血液循環も良くなります。その他、認知症の予防には各種の脳トレよりも歩くことが最も効果的だといわれています。
ただし、運動も突然死、関節痛など体にとってマイナスの原因になることもありますので、心配な方は主治医にご相談ください。