よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

脳をベストの状態に維持する 生活習慣とは

2019-02-25 13:35:13 | 健康・病気
最近、物忘れがひどく脳の機能が落ちたと感じている方はいませんか?

脳は体重の2%しかありませんが、脳循環血流量は全体の15%、ブドウ糖消費量は25%を占める大食漢です。多量な酸素と栄養をもとに神経細胞が活発に活動し、体の司令塔としての役割を果たしています(注:体の調節は、脳単独ではなく、心、肺、消化管、筋、骨などあらゆる臓器と対話しながら行っています)。
加齢による物忘れは、ある程度は仕方ありませんが、そのスピードを遅らせていつまでもクリアな思考・記憶を保つことは十分可能です。

脳をいい状態に保つにはどういった生活がよいのでしょう。

食生活では、EPA&DHAを含む魚、良質の不飽和脂肪酸を含むオリーブ油、亜麻仁油など、ファイトケミカル、ポリフェノールと呼ばれる抗酸化物質を豊富に含む緑黄色野菜、果物、大豆、コーヒー、緑茶、うこん(ターメリック)など、抗炎症作用のあるセロリ、ナッツなどを積極的に摂取することが大切です。
避けるべき食事としては、肉(特に赤身)、乳製品、精製された穀物(パン、麺類を含む)、砂糖、アルコール、グルタミン酸ナトリウム(MSG)を含む加工食品、トランス脂肪酸(マーガリン、スナック食品など)、有害物質(重金属・化学物質)を含む食品あるいは生活用品(芳香剤、消臭剤、柔軟剤)などがあります。
これらの食事は一般的な健康食としてもお勧めですが、特定品目ばかりの過剰摂取は避けるべきで、バランスよく腹八分目は守っていただきたいと思います。避けるべき食事の中には、すでに私たちの食事に深く浸透して排除できないものもありますが、減らす意識を持つことが重要です。また、単純に魚が良くて肉が悪いというものではなく、どういった環境で育ったものか(飼料は何?抗生物質使用は?)など品質を気にする努力も必要ですし、体質・好みも個人差がありますから、自分に合った食事を見つけ楽しんで食事をすることも重要です。
尚、認知症予防として様々なサプリも販売されていますが、高価である割に、科学的に効果が検証されていなかったり、含有量が十分でなかったりします。飲む前に医師に相談されることをお勧めします。

次に運動です。運動は、そのレベルを選ぶことにより万人に副作用なく行える脳の機能を最善にする最強の方法です。

運動すると気分がすっきりした経験は皆様もあると思います。理由は、ストレスが解消されるから、筋肉の緊張がやわらぐから、脳内で麻薬様物質(エンドルフィン)が増えるからなどが知られていますが、一番は、脳の血流量が増え、脳がベストの状態になるからです。
私たちの祖先は、様々な環境変化に適応するために、身体能力を磨き、思考する脳を進化させてきました。一方現代人は、運動不足でストレス社会で生活しているために、脳の様々な病気(不安症、うつ病、パーキンソン病、認知症など)に悩まされるようになっています。

運動をすると、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの思考や感情にかかわる重要な神経伝達物質が増えることはよく知られています。それだけでなく、神経化学物質や成長因子(BDNFなど)が放出され、傷んだり委縮した神経細胞が修復され、成長することもわかってきました。実際のところ脳は筋肉と同じで、使えば育つし、使わなければ委縮することになります。

運動の種類ですが、有酸素運動、筋力トレーニングそれと日常生活活動に分けられます。
若くて元気な人は、比較的強い有酸素運動(最大心拍数⦅220-年齢⦆の80%)をすることにより、運動直後の学習能力が高まることが知られています。中高年の方は、最大心拍数の50~60%前後の有酸素運動(散歩など)を続けることにより(30分~1時間 4回/週)、神経細胞が活性化し、脳が強くなります。この際、暗算やしりとりなど頭の体操を一緒におこなうとより効果的です。
 筋力トレーニングは、無理のない重さのダンベルを10~15回を3セットを週2回が基本です。
これ以外には、テニス、ダンス、ゴルフなど友人と一緒にするスポーツも脳機能低下予防に有効です。また柔軟性やバランス感覚を養うストレッチ、ヨガ、太極拳、気功、体操なども一緒にしたい運動です。
運動をする時間もない人は、日常生活活動でも十分な効果が得られます。座ってじっとテレビを見るのではなく、掃除、洗濯、買い物、料理など家事のすべてが脳の活性化を促してくれます。

その他、十分な睡眠・休息をとる、瞑想をする、好奇心をもって新しいことに挑戦するなども脳機能アップに役立ちます。そして脳が強くなる生活習慣は、すなわち健康体をつくる生活習慣でもあります。
何より、生きがいをもって生活し、いくつになっても“人生で今が一番最高だ”と思える生き方を目指したいですね。


参考文献:NHK出版『脳を鍛えるためには運動しかない!』 著者 ジョン・レイティ
     ダイヤモンド社『脳にいい食事大全』 著者 ミシェル・ショーフロ・クック