訳・松永美穂
徳間書店
2010年6月 初版発行
278頁
Books for Teenagers(BFT)
徳間書店の児童書 10代~向けです
現在パレスチナで暮らす実在の女性、マルカ・マイが少女時代、第二次大戦終結前に体験した悲惨な出来事を元に創作された物語
1943年の夏の終り、当時ポーランドの一部だった町で母親と姉と暮らしていたマルカはユダヤ人迫害から逃れるため着のみ着のまま国境を越えハンガリーに向かう
山越えの途中、世話になった家で病気になってしまったマルカ
病気の子供は後で迎えにくればよい、と家人に薦められた母親はとりあえず上の娘と国境を越えることにする
ところが、そこにもドイツ軍のユダヤ狩りの手が及び始める
止むに止まれぬ状況の中、マルカは一人置き去りにされてしまい、たった7歳の子供の孤独な生活が始まる
医師の娘として不自由なく暮らしていたマルカがストリートチルドレンになり生き延びていくところは、悲惨です
生きるために大人に物乞いをし、盗みを働くマルカ
しかし、彼女は死者から物を奪うことだけはしませんでした
マルカを残してハンガリーに向かった母親の気持ちはどうだったのか
上の娘と自分を守るため、下の娘を捨てたのか
母親と姉の逃亡の旅も悲惨です
やっと落ち着いた母親はマルカを迎えに行くことにするのですが、大きく変わった状況に愕然とします
マルカは今どこにいるのか?生きているのか?
とんでもなく強い意志でマルカを探し続けた母親は、とうとうマルカと再会することが出来ました
そこで涙の抱擁、ハッピーエンド、のはずなのですが、複雑な思いが残りました
訳も分からぬうちに一人放り出されたマルカ
仕方が無かったとはいえ一時的には娘を捨てたことになった母親
いわゆるPTSDは癒えることはなかったのだと思います
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