新潮文庫
1990年6月 発行
2011年11月 23刷
解説・小笠原賢二
258頁
吉村さんの実弟の癌との壮絶な闘いを描いています
多くの親類縁者を癌で亡くしている自分には辛い部分もありましたが、目を逸らしてはいけないと思いながら読み切りました
若い頃、結核を患った「私」は「弟」の存在に助けられ命を救われたという思いがある
あの時死んでいたかもしれない自分が生きているのに、50歳という若さで余命宣告を受けた弟
強い絆で結ばれた弟には肺癌という病名を隠し通し、体調が悪くても仕事に追われていても病院に通い続ける私
癌と闘うのは本人は勿論、家族も同様
徐々に癌細胞に身体を冒され衰弱していく弟、弟の妻、親戚兄弟、病院のスタッフなどの様子と、私の葛藤を作家の冷静な目で描いていきます
終盤、まだ生きている弟の葬儀の段取りまで考える私の困惑ぶりはよくわかります
最期が近づくにつれ、そんな事を考えるものですし、それは一族の中の誰かがやらねばならぬ事なのです
今は、癌の告知は当たり前になっていますし、告知しないとしても多種多様な情報入手が可能な現代、患者に病名を隠し通すことはほぼ不可能といって良いでしょう
その日が来たら、いかに病と向き合い対処していくか
改めて考えさせられ、またタイトルの「冷たい」「熱い」に込められた作家の思いが伝わってくる1冊でした
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