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長野まゆみ「魚たちの離宮」

2021年01月04日 | な行の作家
河出文庫
1993年 7月 初版発行
1998年12月 8刷発行
146頁

夏のはじめから寝付いている友人の夏宿(かおる)を見舞いに訪れた市郎
夏宿を愛する弟の弥彦
謎のピアノ教師諒(まこと)
狐火の碧い炎
盂蘭盆の四日間、幽霊が出ると噂される古い屋敷にさまよう魂と魅力的な少年たちの『交感』を描きます

少し妖しく美しい、そして切ないストーリー
曖昧に終わる話ですが、それが良いです
古い言葉を使った文体、当て字がこの独特な世界を的確に表現しています

ギラギラと夏の太陽が照り付ける酷暑日にエアコン無しの部屋で読んだとしても、木陰の涼しさ、泉の水の冷たさが実感できそうです

長野さんがあとがきで「本書に描かれている盂蘭盆会の風習は今ではほとんど見られない」と書いておられます
1990年代前半ですらそうなら2021年を前にした今では本当にごく一部の家でしか行われない風習になってしまったでしょう

あとがきの最後の一文
かつてそれらのことばや風習が存在したときの、人々の悦びや哀しみをおろそかにしてはならないのである

長野さん、止められません

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